あなたとの離縁を目指します

たろ

文字の大きさ
上 下
121 / 156
嫌です。別れません

28話

しおりを挟む
「リオ?」

 ぐったりしていて返事がない。

 またあの時のようにリオが病に罹った?

 慌ててリオの体に癒しの魔法を流す。

「やめな」

 背後から魔女さんが止める。

「リオが!」

 振り返り魔女さんに叫ぶ。

「あんたはまだ完全じゃない。だから庭の植物を育てながら少しずつ聖力を戻してるんじゃないか」

 ああ、そういうことだったんだ。魔女さんが『庭に出な!』といつもわたしに言ってくれていたのにはきちんと理由があったんだ。

「わたしの体なんてどうでもいいんです」

「また傷つくのはリオだろう?リオはマナのために会いたくもない父親のところへ行って魔道具を借りに行ったんだ。
 マナ、あんたが死にかかっている間の15年間、リオがどんな思いで過ごしてきたかわかるかい?」
 魔女さんは思い出しながら話を続けた。

「あんたの病気を治すためにあたしは薬を作り続けた、あんたの寿命を伸ばすためにあたしは新しい魔法を探して回ったんだ。
 その間、時間があればリオはマナのそばにいた。マナが目覚めたら楽な暮らしをさせてやりたいと必死で仕事も頑張った、どんなに大変だったかあたしは見てきたんだ」


「わたし……ごめんなさい。二人にたくさん迷惑と心配をかけたんですね」

「違う、リオの気持ちを考えてやりなと言ってるんだ。やっと目覚めたのにまた倒れたらリオはまた辛い思いをする」

「でもリオが……」

「このくらいならあたしの薬で治るさ。疲労回復と睡眠不足なんて大したことないさ。あとは昨日雨の中急いで帰ってきたからだろうよ。マナがいつこの屋敷を出て行くか心配でたまらないんだよ」

「心配……わたし、もう黙って出て行くつもりはないわ。リオはわたしが眠っている間に、成長して、もうわたしの知ってるリオではなく……いろんなことを経験していろんなことをこれまで耐え抜いてきたんですね」

「リオが自分で決めて頑張ったんだ。褒めてやりな、そして、リオを息子としてしか見れないかもしれないけど、成長して全く違う別人のリオがここにいる。子供の頃のリオではなく今のリオを見てやっておくれ」

「…………今のリオ……」

「ほれ、マナは部屋に戻りな。今夜はあたしがリオの病気は治すから」

「はい、リオをお願いします」







 それから数日後。


「マナ、心配かけてごめん」

 リオがシュンとしながら謝ってきた。

「ううん、謝らないで」

 リオはなにも悪くない。わたしは独りよがりだった。リオのため、そう思い込んで勝手にリオの病気をもらい、寿命を延ばした。
 残されたリオがこんなに傷つくなんて考えもしなかった。

 お嫁さんをもらうのにわたしは邪魔だと軽く考えていた。

 でもこの15年もの間、リオはとても苦しんだんだと思うと胸が張り裂けそうなくらい痛い。

 可愛いリオ、でも目の前にいるのはリオだけどリオじゃない。

 認めたくないけど、わたしのリオではなく、わたしの知らない別の大人のリオだと思う。

 そこに恋愛感情はないけど、一人の男の人として意識してしまう。

「マナ、僕のそばから離れないで」

 リオは何度もわたしにそう言って懇願した。

「うん、勝手にいなくならないから不安がらないで、ねっ?」

 わたしがそう返事をすると安堵して仕事へ行く。

 わたしが死にかけていたこの15年という月日はリオの心に酷い傷をつけてしまったようだ。

 魔女さんはそんなリオを心配しているのかと思っていたのに……

「ああ、楽しい楽しい。やっぱりこうじゃなきゃダメだ」
とゲラゲラと笑っていた。








 そんなわたし達を見た魔女さんは、一人嗤っていたことをわたしは知らなかった。

「マナ、あんたやっぱり囚われてしまったな………クククククッ」





◆ ◆ ◆

遅くなりました。すみません。




しおりを挟む
感想 154

あなたにおすすめの小説

半日だけの…。貴方が私を忘れても

アズやっこ
恋愛
貴方が私を忘れても私が貴方の分まで覚えてる。 今の貴方が私を愛していなくても、 騎士ではなくても、 足が動かなくて車椅子生活になっても、 騎士だった貴方の姿を、 優しい貴方を、 私を愛してくれた事を、 例え貴方が記憶を失っても私だけは覚えてる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ ゆるゆる設定です。  ❈ 男性は記憶がなくなり忘れます。  ❈ 車椅子生活です。

愛なんてどこにもないと知っている

紫楼
恋愛
 私は親の選んだ相手と政略結婚をさせられた。  相手には長年の恋人がいて婚約時から全てを諦め、貴族の娘として割り切った。  白い結婚でも社交界でどんなに噂されてもどうでも良い。  結局は追い出されて、家に帰された。  両親には叱られ、兄にはため息を吐かれる。  一年もしないうちに再婚を命じられた。  彼は兄の親友で、兄が私の初恋だと勘違いした人。  私は何も期待できないことを知っている。  彼は私を愛さない。 主人公以外が愛や恋に迷走して暴走しているので、主人公は最後の方しか、トキメキがないです。  作者の脳内の世界観なので現実世界の法律や常識とは重ねないでお読むください。  誤字脱字は多いと思われますので、先にごめんなさい。 他サイトにも載せています。

この誓いを違えぬと

豆狸
恋愛
「先ほどの誓いを取り消します。女神様に嘘はつけませんもの。私は愛せません。女神様に誓って、この命ある限りジェイク様を愛することはありません」 ──私は、絶対にこの誓いを違えることはありません。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。 ※7/18大公の過去を追加しました。長くて暗くて救いがありませんが、よろしければお読みください。 なろう様でも公開中です。

わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。

朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」  テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。 「誰と誰の婚約ですって?」 「俺と!お前のだよ!!」  怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。 「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」

運命だと思った。ただそれだけだった

Rj
恋愛
結婚間近で運命の人に出会ったショーンは、結婚の誓いをたてる十日前にアリスとの結婚を破談にした。そして運命の人へ自分の気持ちを伝えるが拒絶される。狂気のような思いが去った後に残ったのは、運命の人に近付かないという念書とアリスをうしなった喪失感だった。過去の過ちにとらわれた男の話です。 『運命の人ではなかっただけ』に登場するショーンの話です。未読でも問題なく読んでいただけます。

この罰は永遠に

豆狸
恋愛
「オードリー、そなたはいつも私達を見ているが、一体なにが楽しいんだ?」 「クロード様の黄金色の髪が光を浴びて、キラキラ輝いているのを見るのが好きなのです」 「……ふうん」 その灰色の瞳には、いつもクロードが映っていた。 なろう様でも公開中です。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】 僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。 ※他サイトでも投稿中

処理中です...