57 / 156
離縁してあげますわ!
【3】
しおりを挟む
とりあえず疲れて眠ることにした。
もう頭が働かない。
昨日の夜はずっと決済とは別の緊急命令により特別予算を組まなければいけなくなった。
そのため書類とのにらめっこでほぼ休みなく目と頭を動かした。まだまだ時間が足りなくて本当は仮眠するだけのつもりだった。
でも嫌な予感がした。うん、本当に嫌な予感が。多分出勤前のハンクスの様子がソワソワしていたからだと思う。
いつもと違う彼の様子に『??』と感じながら出勤した。
今日は帰らなきゃそう思った。
はああ、ハンクスに誘導されていたのね。
あの2人のあられもない姿を見せつけるための。
わたしに嫉妬をさせたい?
ーーうん、彼はわたしを愛していないから、それはない。
わたしと離縁を?
ーーそれならさっさと離縁城を叩きつけてくるわよね?
二人の性行為の姿をわたしに見せたかった?
ーーえ?ハンクスってそんな趣味があったの?
考えれば考えるほど不可解で不快。
もういいや、寝ちゃおう。
昼過ぎには起こしてもらえるようにファラには頼んだ。
ハンクスももう仕事に行っただろう。わたしが仕事に行けばまたすれ違うだけの生活。
まぁいいや、放っておこう。
✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎
はああ、なんて格好で外に出されないといけないんだ。
俺は裸で玄関へと放り出された。
ミュエルは恥ずかしさと悔しさで顔を真っ赤にして怒っている。
「いくらなんでも酷いわ!」
俺を見て睨む。
「もう!なんなの!ハンクスわたしを隠して!」
俺だって裸なんだ!
通りを歩く人に騒がれる前に俺は急いでパンツとシャツを着た。
ミュエルは俺の陰に隠れて急いで服を着ていた。
アリアと夫婦生活がうまくいかなくなってぎこちない時間だけが過ぎて行った。
だったらいっそ別れよう。
そんな時知り合ったのがミュエルだった。男爵令嬢のお堅い地味なアリアと違い、女らしく可愛く甘えるように擦り寄ってきた。
ミュエルは俺が働く公爵家のメイドで、彼女は男爵家の令嬢で行儀見習いで公爵家に働きにきている。
仕事場の女に手を出すのは後々面倒だ、切るのも簡単ではない。だから手を出す気などなかった。
そこに愛情なんてない。あるのは性欲だけだ。
ただミュエルは俺に愛情なんてない、ミュエルは俺が執事だから仕事を優遇してもらいたいために擦り寄ってきた。
そんな女だから後腐れがないと思い手をつけた。もしアリアのベッドで他の女を抱いているところをアリアが見たら……俺は仄暗い笑みを浮かべた。
いつも眼鏡をかけ疲れた顔をしているアリア。あんな女と結婚しなければいけなかった俺。あの女がショックを受ける姿を見ればこの気持ちも少しはスッキリするかもしれない。
公爵家の執事を務め、子爵家の当主である俺。そんな俺より優秀なアリア。
うちの使用人にも慕われ何かとイラつく。
俺なんか王族に顔すら覚えられていないと言うのにアリアは王族から声をかけられ親しく話しが出来る、たかが男爵家の娘のくせに。
なのに「出て行って!」と言われ服を窓から投げ捨てられ、思わずその服を拾いに外に出て締め出された。
考えてみれば自分の部屋に行き服を着ればよかったのに。ミュエルにだってとりあえず俺のシャツを貸せばよかったんだ。
服を着た俺が後で取りに行けばいいことなのに……
ハァーっとため息を吐いていればミュエルが「最低!」と俺の頬を一発叩いて働いている公爵家の屋敷の寮へとぷんぷん怒りながら帰って行った。
俺は玄関の鍵を閉められて「あいつら……」とギャザやファラに心の中で悪態をつきながらもアリアの味方のあいつらが玄関を開けることはないことをわかっているので、朝早くからやっている朝市へと向かった。
朝市の屋台で、何か朝食でも食べて仕事へ行くつもりだ。公爵家にも俺の部屋がある。そこには着替えもあるしシャワールームもある。
困ることは特にない。
そう、アリアとの関係だって……
もう頭が働かない。
昨日の夜はずっと決済とは別の緊急命令により特別予算を組まなければいけなくなった。
そのため書類とのにらめっこでほぼ休みなく目と頭を動かした。まだまだ時間が足りなくて本当は仮眠するだけのつもりだった。
でも嫌な予感がした。うん、本当に嫌な予感が。多分出勤前のハンクスの様子がソワソワしていたからだと思う。
いつもと違う彼の様子に『??』と感じながら出勤した。
今日は帰らなきゃそう思った。
はああ、ハンクスに誘導されていたのね。
あの2人のあられもない姿を見せつけるための。
わたしに嫉妬をさせたい?
ーーうん、彼はわたしを愛していないから、それはない。
わたしと離縁を?
ーーそれならさっさと離縁城を叩きつけてくるわよね?
二人の性行為の姿をわたしに見せたかった?
ーーえ?ハンクスってそんな趣味があったの?
考えれば考えるほど不可解で不快。
もういいや、寝ちゃおう。
昼過ぎには起こしてもらえるようにファラには頼んだ。
ハンクスももう仕事に行っただろう。わたしが仕事に行けばまたすれ違うだけの生活。
まぁいいや、放っておこう。
✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎
はああ、なんて格好で外に出されないといけないんだ。
俺は裸で玄関へと放り出された。
ミュエルは恥ずかしさと悔しさで顔を真っ赤にして怒っている。
「いくらなんでも酷いわ!」
俺を見て睨む。
「もう!なんなの!ハンクスわたしを隠して!」
俺だって裸なんだ!
通りを歩く人に騒がれる前に俺は急いでパンツとシャツを着た。
ミュエルは俺の陰に隠れて急いで服を着ていた。
アリアと夫婦生活がうまくいかなくなってぎこちない時間だけが過ぎて行った。
だったらいっそ別れよう。
そんな時知り合ったのがミュエルだった。男爵令嬢のお堅い地味なアリアと違い、女らしく可愛く甘えるように擦り寄ってきた。
ミュエルは俺が働く公爵家のメイドで、彼女は男爵家の令嬢で行儀見習いで公爵家に働きにきている。
仕事場の女に手を出すのは後々面倒だ、切るのも簡単ではない。だから手を出す気などなかった。
そこに愛情なんてない。あるのは性欲だけだ。
ただミュエルは俺に愛情なんてない、ミュエルは俺が執事だから仕事を優遇してもらいたいために擦り寄ってきた。
そんな女だから後腐れがないと思い手をつけた。もしアリアのベッドで他の女を抱いているところをアリアが見たら……俺は仄暗い笑みを浮かべた。
いつも眼鏡をかけ疲れた顔をしているアリア。あんな女と結婚しなければいけなかった俺。あの女がショックを受ける姿を見ればこの気持ちも少しはスッキリするかもしれない。
公爵家の執事を務め、子爵家の当主である俺。そんな俺より優秀なアリア。
うちの使用人にも慕われ何かとイラつく。
俺なんか王族に顔すら覚えられていないと言うのにアリアは王族から声をかけられ親しく話しが出来る、たかが男爵家の娘のくせに。
なのに「出て行って!」と言われ服を窓から投げ捨てられ、思わずその服を拾いに外に出て締め出された。
考えてみれば自分の部屋に行き服を着ればよかったのに。ミュエルにだってとりあえず俺のシャツを貸せばよかったんだ。
服を着た俺が後で取りに行けばいいことなのに……
ハァーっとため息を吐いていればミュエルが「最低!」と俺の頬を一発叩いて働いている公爵家の屋敷の寮へとぷんぷん怒りながら帰って行った。
俺は玄関の鍵を閉められて「あいつら……」とギャザやファラに心の中で悪態をつきながらもアリアの味方のあいつらが玄関を開けることはないことをわかっているので、朝早くからやっている朝市へと向かった。
朝市の屋台で、何か朝食でも食べて仕事へ行くつもりだ。公爵家にも俺の部屋がある。そこには着替えもあるしシャワールームもある。
困ることは特にない。
そう、アリアとの関係だって……
906
お気に入りに追加
2,644
あなたにおすすめの小説
愛なんてどこにもないと知っている
紫楼
恋愛
私は親の選んだ相手と政略結婚をさせられた。
相手には長年の恋人がいて婚約時から全てを諦め、貴族の娘として割り切った。
白い結婚でも社交界でどんなに噂されてもどうでも良い。
結局は追い出されて、家に帰された。
両親には叱られ、兄にはため息を吐かれる。
一年もしないうちに再婚を命じられた。
彼は兄の親友で、兄が私の初恋だと勘違いした人。
私は何も期待できないことを知っている。
彼は私を愛さない。
主人公以外が愛や恋に迷走して暴走しているので、主人公は最後の方しか、トキメキがないです。
作者の脳内の世界観なので現実世界の法律や常識とは重ねないでお読むください。
誤字脱字は多いと思われますので、先にごめんなさい。
他サイトにも載せています。
半日だけの…。貴方が私を忘れても
アズやっこ
恋愛
貴方が私を忘れても私が貴方の分まで覚えてる。
今の貴方が私を愛していなくても、
騎士ではなくても、
足が動かなくて車椅子生活になっても、
騎士だった貴方の姿を、
優しい貴方を、
私を愛してくれた事を、
例え貴方が記憶を失っても私だけは覚えてる。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるゆる設定です。
❈ 男性は記憶がなくなり忘れます。
❈ 車椅子生活です。
この誓いを違えぬと
豆狸
恋愛
「先ほどの誓いを取り消します。女神様に嘘はつけませんもの。私は愛せません。女神様に誓って、この命ある限りジェイク様を愛することはありません」
──私は、絶対にこの誓いを違えることはありません。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
※7/18大公の過去を追加しました。長くて暗くて救いがありませんが、よろしければお読みください。
なろう様でも公開中です。
わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。
朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」
テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。
「誰と誰の婚約ですって?」
「俺と!お前のだよ!!」
怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。
「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」
運命だと思った。ただそれだけだった
Rj
恋愛
結婚間近で運命の人に出会ったショーンは、結婚の誓いをたてる十日前にアリスとの結婚を破談にした。そして運命の人へ自分の気持ちを伝えるが拒絶される。狂気のような思いが去った後に残ったのは、運命の人に近付かないという念書とアリスをうしなった喪失感だった。過去の過ちにとらわれた男の話です。
『運命の人ではなかっただけ』に登場するショーンの話です。未読でも問題なく読んでいただけます。
この罰は永遠に
豆狸
恋愛
「オードリー、そなたはいつも私達を見ているが、一体なにが楽しいんだ?」
「クロード様の黄金色の髪が光を浴びて、キラキラ輝いているのを見るのが好きなのです」
「……ふうん」
その灰色の瞳には、いつもクロードが映っていた。
なろう様でも公開中です。
虐げられた令嬢は、姉の代わりに王子へ嫁ぐ――たとえお飾りの妃だとしても
千堂みくま
恋愛
「この卑しい娘め、おまえはただの身代わりだろうが!」 ケルホーン伯爵家に生まれたシーナは、ある理由から義理の家族に虐げられていた。シーナは姉のルターナと瓜二つの顔を持ち、背格好もよく似ている。姉は病弱なため、義父はシーナに「ルターナの代わりに、婚約者のレクオン王子と面会しろ」と強要してきた。二人はなんとか支えあって生きてきたが、とうとうある冬の日にルターナは帰らぬ人となってしまう。「このお金を持って、逃げて――」ルターナは最後の力で屋敷から妹を逃がし、シーナは名前を捨てて別人として暮らしはじめたが、レクオン王子が迎えにやってきて……。○第15回恋愛小説大賞に参加しています。もしよろしければ応援お願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる