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二度目の人生にあなたは要らない。離縁しましょう。
【28】
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「坊ちゃん、さっさと城へお帰り。そしてアイリーンを牢から出すんだ」
「アイリーンは罪を犯している、牢から出すことはできない」
アイリーンを解放すればまた何をしでかすかわからない。
「ふうん、じゃあイリアナとお腹の赤ちゃんはまた死んでもいいんだ?」
ニヤニヤ笑うマリーン。
オーグは何か魔法をかけられているのだろう。どうにか抗おうとしているのがわかる。生汗をかき唇を噛み締めて必死で体に力を入れているのがわかる。
イリアナはずっと周りを見ていた。
何かが見えるのだろうか?………妖精?リデンの森には妖精がいるとオーグが話してくれたことがあった。魔法が使えない俺にはわからないがイリアナはこの森の妖精達に愛されていると言ってたな。
この状況をなんとかするには……俺は、ポケットに手を入れてイリアナへのプレゼント用の小さな箱を気づかれないように握りしめた。
ーーこれなら……
「イリアナ達は確かに大切だ……しかし、俺はこの国の王太子だ。この国の民の命が危険な目に遭うかもしれない。お前の言うことは聞けない……だが、マリーン、君はアイリーンを助け出したいほど彼女に愛情を持っているようには見えない」
「ふん、アイリーンはわたしの道具だ。道具をお前らから好き勝手にされているのは面白くない。それに、脅威になる錠なんてこの世にあっては困るんだよ。アイリーンを連れ戻し、しばらくはその錠を使って対策を練らないとあたしも落ち落ちとのんびりとしていられないからね」
ーー娘が道具?
オーグと無理やり関係を結び子を産んで、自分の道具としてしか見ていない?
ーー吐き気がする。
アイリーンに対して思わず同情の気持ちが湧いてしまった。愛されて生まれたわけではない彼女に。
マリーンが夢中で話している間そっとイリアナは俺に視線を向けた。
ーーイリアナ……待ってて……君達は俺の命に替えても守るから。
“セデン、じゃま”
“セデン、じっとしてて”
ーーえっ?
“オーグは動けない”
“マリーンやっつける”
“わたし達とイリアナで”
ーー待って、俺の手の中にイリアナへのプレゼントがあるんだ。アイリーンの黒魔法を防ぐためのピアスを贈ろうと思って持ってきたんだ。
“これ?”
“イリアナにわたす?”
ーー渡してもらえるのか?
“いいよ”
“セデン命かける?”
ーーもちろんだ
“だったらマリーンを怒らせて”
“マリーンに殺されそうになって”
“褒めちぎってもいいよ”
“やさしくはなしかける?”
ーーああ、いいだろう。国民の命は差し出せないが俺の命ならいくらでも差し出す。
隙を作ればいいのか?
褒めるか怒らせる?両極端な頼みだな?
“うん”
“ふふふっ”
「マリーン、君はオーグを愛しているからアイリーンを産んだんだろう?」
「はあ?あたしがオーグを?バカ言っちゃ困るね?オーグとの子供を産むのは最強の魔法使いを作り出すためだった。なのにアイリーンはあたしほどの魔力も持っていなかった。オーグの魔法の才能も引き継いでいないしね。
オーグの娘のイリアナは最強の力を持って生まれたくせに力を使えずにいる。だったらさっさと殺すか洗脳してあたしのおもちゃにする予定だったのに、イリアナには親からの保護魔法が効いていて簡単に手が出せない。だからアイリーンを使って心を壊すことにしたんだ。心が弱れば保護魔法だって弱る、最後はイリアナもあたしのおもちゃにして粉々に壊す予定だったんだ」
ーーふざけるな!
握りしめた手が震える。殴りつけたい。でも今は……この女に俺が殺されるほど怒らせるんだ。いや、褒める?どちらが隙を作れる?
マリーンが愉しそうに嗤う姿を見て俺は……
「アイリーンは罪を犯している、牢から出すことはできない」
アイリーンを解放すればまた何をしでかすかわからない。
「ふうん、じゃあイリアナとお腹の赤ちゃんはまた死んでもいいんだ?」
ニヤニヤ笑うマリーン。
オーグは何か魔法をかけられているのだろう。どうにか抗おうとしているのがわかる。生汗をかき唇を噛み締めて必死で体に力を入れているのがわかる。
イリアナはずっと周りを見ていた。
何かが見えるのだろうか?………妖精?リデンの森には妖精がいるとオーグが話してくれたことがあった。魔法が使えない俺にはわからないがイリアナはこの森の妖精達に愛されていると言ってたな。
この状況をなんとかするには……俺は、ポケットに手を入れてイリアナへのプレゼント用の小さな箱を気づかれないように握りしめた。
ーーこれなら……
「イリアナ達は確かに大切だ……しかし、俺はこの国の王太子だ。この国の民の命が危険な目に遭うかもしれない。お前の言うことは聞けない……だが、マリーン、君はアイリーンを助け出したいほど彼女に愛情を持っているようには見えない」
「ふん、アイリーンはわたしの道具だ。道具をお前らから好き勝手にされているのは面白くない。それに、脅威になる錠なんてこの世にあっては困るんだよ。アイリーンを連れ戻し、しばらくはその錠を使って対策を練らないとあたしも落ち落ちとのんびりとしていられないからね」
ーー娘が道具?
オーグと無理やり関係を結び子を産んで、自分の道具としてしか見ていない?
ーー吐き気がする。
アイリーンに対して思わず同情の気持ちが湧いてしまった。愛されて生まれたわけではない彼女に。
マリーンが夢中で話している間そっとイリアナは俺に視線を向けた。
ーーイリアナ……待ってて……君達は俺の命に替えても守るから。
“セデン、じゃま”
“セデン、じっとしてて”
ーーえっ?
“オーグは動けない”
“マリーンやっつける”
“わたし達とイリアナで”
ーー待って、俺の手の中にイリアナへのプレゼントがあるんだ。アイリーンの黒魔法を防ぐためのピアスを贈ろうと思って持ってきたんだ。
“これ?”
“イリアナにわたす?”
ーー渡してもらえるのか?
“いいよ”
“セデン命かける?”
ーーもちろんだ
“だったらマリーンを怒らせて”
“マリーンに殺されそうになって”
“褒めちぎってもいいよ”
“やさしくはなしかける?”
ーーああ、いいだろう。国民の命は差し出せないが俺の命ならいくらでも差し出す。
隙を作ればいいのか?
褒めるか怒らせる?両極端な頼みだな?
“うん”
“ふふふっ”
「マリーン、君はオーグを愛しているからアイリーンを産んだんだろう?」
「はあ?あたしがオーグを?バカ言っちゃ困るね?オーグとの子供を産むのは最強の魔法使いを作り出すためだった。なのにアイリーンはあたしほどの魔力も持っていなかった。オーグの魔法の才能も引き継いでいないしね。
オーグの娘のイリアナは最強の力を持って生まれたくせに力を使えずにいる。だったらさっさと殺すか洗脳してあたしのおもちゃにする予定だったのに、イリアナには親からの保護魔法が効いていて簡単に手が出せない。だからアイリーンを使って心を壊すことにしたんだ。心が弱れば保護魔法だって弱る、最後はイリアナもあたしのおもちゃにして粉々に壊す予定だったんだ」
ーーふざけるな!
握りしめた手が震える。殴りつけたい。でも今は……この女に俺が殺されるほど怒らせるんだ。いや、褒める?どちらが隙を作れる?
マリーンが愉しそうに嗤う姿を見て俺は……
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