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二度目の人生にあなたは要らない。離縁しましょう。
【26】
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アイリーンを地下牢に閉じ込めたまま俺は城内の現在の状況を調べた。
母上はアイリーンに巻き戻し前も今回も洗脳されていた。俺にとっては尊敬し優しい母上だった。なのにイリアナに対して罵倒し、自らのためだけに魔法を使わせ美貌を保とうとしていた。
アイリーンの魔法が解けてからの母上は虚無感と後悔で一気に老けてしまったようだ。
「わたしは……何故あんなことを……」
俺自身も母上がしたことを知らずにいた。
イリアナがこの城でどれだけ辛い日々を過ごしていたか全く気が付かずに。
それ以外にもイリアナの侍女が居なければイリアナはまともな食事すら出されなかったらしい。
俺は巻き戻し前、いくら洗脳されていたとはいえ全く気が付かなかった。
俺が彼女といる時は不思議に俺自身も頭の中のモヤは消えてイリアナを愛することができた。離れるとイリアナへの愛情はすぐに消え去る。
そして巻き戻ってからはアイリーンの魔法に惑わされることはなかった。しっかり意識を保っていたのに、最後はアイリーンの魔法に負けてしまった。
アイリーンはしばらくは地下牢で過ごさせる予定だ。
魔力封じをさらに強化させアイリーンは牢の中でただじっとしていることしかできなかった。
俺はリンデの森へ向かった。
「オーグ!その長い髭そろそろ剃りましょう?」
「俺は別に困らない」
オーグはイリアナの言葉を無視して薬草を集めていた。
イリアナは「もう!」と頬をぷくっと膨らませながらオーグを見て仕方なく笑った。
「オーグは本当はかっこいいのに!そんなんじゃいつまで経ってもお嫁さんなんて来ないわよ!」
「俺は、イリアナがそばにいたらいい」
「オーグのこと生まれてくる赤ちゃんも怖がって泣くかもしれないわ」
「………俺の髭で……遊んではくれないかな?」
「うーん、どうかしら?……ふふっ、わたしはオーグのお髭大好きだったわ……だけど赤ちゃんを抱っこするのに流石にその髭は長すぎるわ、顔にかかってしまうもの」
「そうか………まぁ、赤ん坊のためなら……剃るしかないか」
オーグがため息をついて「後で剃るよ」と呟いた。
イリアナがあんなに生き生きした姿を見たのは何年ぶりだろう。幼い頃、一緒に過ごした時のことを思い出すと俺は自分がしたことが恥ずかしくて悔しくて顔を出すのを躊躇ってしばらく離れたところから二人を眺めた。
俺の子供がイリアナのお腹にいる。
そう思うだけで愛おしくて……
だが、俺は二人の幸せな時間を壊しにきてしまったようだ。
リンデの森が突然空が暗くなり辺りが重たい空気が漂い始めた。
「オーグ……どうしたのかしら?突然空が真っ暗だよ?」
「イリアナ、急いで小屋に戻ろう」
「うん」
オーグはイリアナを抱きかかえて走り始めた。
オーグは俺に気が付いていたようだ。
「セデン!お前も来い!」
オーグの言葉にイリアナが驚き目を見開いて俺を見た。
「セデン?」
俺は……イリアナになんと言えばいいのかわからず「イリアナ………」と彼女の名を呼ぶことしか出来なかった。
母上はアイリーンに巻き戻し前も今回も洗脳されていた。俺にとっては尊敬し優しい母上だった。なのにイリアナに対して罵倒し、自らのためだけに魔法を使わせ美貌を保とうとしていた。
アイリーンの魔法が解けてからの母上は虚無感と後悔で一気に老けてしまったようだ。
「わたしは……何故あんなことを……」
俺自身も母上がしたことを知らずにいた。
イリアナがこの城でどれだけ辛い日々を過ごしていたか全く気が付かずに。
それ以外にもイリアナの侍女が居なければイリアナはまともな食事すら出されなかったらしい。
俺は巻き戻し前、いくら洗脳されていたとはいえ全く気が付かなかった。
俺が彼女といる時は不思議に俺自身も頭の中のモヤは消えてイリアナを愛することができた。離れるとイリアナへの愛情はすぐに消え去る。
そして巻き戻ってからはアイリーンの魔法に惑わされることはなかった。しっかり意識を保っていたのに、最後はアイリーンの魔法に負けてしまった。
アイリーンはしばらくは地下牢で過ごさせる予定だ。
魔力封じをさらに強化させアイリーンは牢の中でただじっとしていることしかできなかった。
俺はリンデの森へ向かった。
「オーグ!その長い髭そろそろ剃りましょう?」
「俺は別に困らない」
オーグはイリアナの言葉を無視して薬草を集めていた。
イリアナは「もう!」と頬をぷくっと膨らませながらオーグを見て仕方なく笑った。
「オーグは本当はかっこいいのに!そんなんじゃいつまで経ってもお嫁さんなんて来ないわよ!」
「俺は、イリアナがそばにいたらいい」
「オーグのこと生まれてくる赤ちゃんも怖がって泣くかもしれないわ」
「………俺の髭で……遊んではくれないかな?」
「うーん、どうかしら?……ふふっ、わたしはオーグのお髭大好きだったわ……だけど赤ちゃんを抱っこするのに流石にその髭は長すぎるわ、顔にかかってしまうもの」
「そうか………まぁ、赤ん坊のためなら……剃るしかないか」
オーグがため息をついて「後で剃るよ」と呟いた。
イリアナがあんなに生き生きした姿を見たのは何年ぶりだろう。幼い頃、一緒に過ごした時のことを思い出すと俺は自分がしたことが恥ずかしくて悔しくて顔を出すのを躊躇ってしばらく離れたところから二人を眺めた。
俺の子供がイリアナのお腹にいる。
そう思うだけで愛おしくて……
だが、俺は二人の幸せな時間を壊しにきてしまったようだ。
リンデの森が突然空が暗くなり辺りが重たい空気が漂い始めた。
「オーグ……どうしたのかしら?突然空が真っ暗だよ?」
「イリアナ、急いで小屋に戻ろう」
「うん」
オーグはイリアナを抱きかかえて走り始めた。
オーグは俺に気が付いていたようだ。
「セデン!お前も来い!」
オーグの言葉にイリアナが驚き目を見開いて俺を見た。
「セデン?」
俺は……イリアナになんと言えばいいのかわからず「イリアナ………」と彼女の名を呼ぶことしか出来なかった。
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