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二度目の人生にあなたは要らない。離縁しましょう。
【10】
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「はい、この国の人たちはイリアナ様に対して感謝すらしようとしない。今回の花火の打ち上げだって騎士達への労いと祝賀のためですよね?どれだけの人がイリアナ様に助けられたのか誰も理解していないです」
「ふふっ、でも、ありがとうって言ってもらえたわ。わたし今まで感謝されたことなかったの、ま、それくらいの魔力しかなかったもの」
「イリアナ様、突然魔法が使えるようになったのは何か原因があるんですか?」
「………わからないの。突然……体に魔力が溢れてくるのがわかって……」
ーー死んで巻き戻ったからなんて言えないわ。
でも、どうして巻き戻ったからと言ってこんなに魔力が……もしかしたらオーグならわかるかも。
「わたしはイリアナ様についていきます……リンデの森……はちょっと…だけ怖いですが、イリアナ様と別れるくらいなら大丈夫です!だって、あそこは魔法使いにとって神聖な森ですもんね?
でもいつ決行しますか?準備しないといけませんよね?荷物はどうなさいますか?」
「荷物は必要なものだけにするわ。セデンに貰ったものは置いて行くつもり。ただここでわたしに必要だからと国から買い与えられた(心のこもっていない)宝石は持って行くつもりなの」
「ああ、あの趣味の悪い宝石ですね?換金しちゃいましょう」
「うん、そうね」
ーーわたしの趣味ではない、こんなの誰が身につけるのかしら?と思われるような宝石。
多分一応王族の誰かが選んで買ったのだからそれなりの値段はするのだろうけど。
あれは王妃様の嫌がらせなのかしら?
「ミーナ、花火が打ち上げられる日はみんながそちらに気持ちが向いているだろうからわたしのことなんて気にもしないと思うの……だからその日にこの城を出るわ」
「花火の日……では2週間後ですね。何があってもわたしもついていきます!」
「ありがとう」
ーーミーナ、今度はわたしの力であなたの命を守るわ。次はミーナを死なせはしないわ。
わたしはミーナに花火の話を聞いたけど、誰もわたしにそのことを話してくれる人はいなかった。
毎日癒しの力を使っている王妃も、会うたびにあれだけ文句や嫌味を言うのにそのことは話さない。
レンは相変わらずセデンの代わりにわたしに用事を伝えにくる。だけどセデンはわたしの前に姿を現さない。
まるでもうわたしに用はないかのように。見事に避けられてしまっているの。
でもセデンが元気でいつものようにこの王城で執務を行なっているのも騎士達と鍛錬に参加して体を動かしているのも耳にしていた。
セデンはわたしを避けている。
それだけは感じる。巻き戻ってからひと月以上経つのに彼に一度も会っていない。
宰相もたまにわたしの部屋に顔を出すけど、アイリーン様との結婚の話をしてこない。
わたしの耳に入ってくる話が以前の時と比べて極端に少ない。
前の時は、わたしに会うとみんな嫌味のように自慢話やわたしを蔑むための話を楽しそうに聞かせてくれた。
特にアイリーン妃がいかにセデンに愛されているか……聞かなくてもわかるくらいに目の前でイチャイチャしていたのに……聞かされた。
セデンとアイリーン妃の二人で観劇へ行かれたり視察で旅行へ行ったりするのも知っていたわ。仕事だってアイリーン妃が負担になるからとわたしに回してきていた。
その仕事を持ってきた者たちが、その度にわたしに二人のことを話して聞かせてくれた。
思い出すだけでも……辛くなる。たとえセデンへの愛が失くなっていても……
「失礼するよ」
「今日はどうされたのですか?」
「イリアナ妃、美味しい茶葉を手に入れたんだ。一緒にお茶でもしようよ」
マルセル殿下は度々わたしの部屋を訪れるようになった。もちろん誤解されないように護衛と侍従も連れてくるので二人っきりで会うことはない。
彼が顔を出してくれると美味しいお茶とお菓子が毎回出される。
最近はそれが少し楽しみ。
セデンと会えなくなって共に食事をすることがないのでミーナが食事を持ってきてくれる。
その内容は……多分王太子妃が食べるようなものではない質素な食べ物だとわかる。
だけど幼い頃からマルワ国でも無能と呼ばれあまり王女として大切にされていたわけでもないので、今のところ平気かも。矢で殺される前の1年間はミーナが死んでから酷かったもの。
今はそれに比べたらミーナはまだ生きているし、マルセル殿下は優しいしレンもよく顔を出してくるし、あの宰相も以前ならわたしを嘲笑い嫌っていたのに、いまは仕事のことを話しにきて、会話をしている。
少しずつ記憶とは違う日々が……
マルセル殿下と二人でお茶をしていると。
「イリアナ妃は兄上に会った?」
「……いえ、お会いしていません」
「ふうん、どうしてだろう?兄上さっきこの部屋の近くを歩いていたんだ。イリアナ妃のところへ来ていたのかと思ったんだけどね?」
「……セデンとは最近会っていませんわ」
ーーあなたは知っていて訊いてるのよね?
だってニヤッと笑ったもの。
「ふうん、アイリーン嬢って名前聞いたことがある?」
「…………………全く」
ーーどうして宰相ではなく、マルセル殿下が?
そろそろアイリーン様が嫁いでくるだろうとは思っていたけど。
そう言えば舞踏会……でアイリーン様はみんなに注目されるのに……なかったわ。
そう……舞踏会がなかった……そんな話もわたし……耳にしていない。
中止になったのか元々ないのか。
それに魔獣騒動立って以前の時はなかったし、花火の打ち上げだって……
ミーナもまだ生きているし。マルセル殿下やレンとだってこんなに顔を合わせたことはない。
癒しの力が強くなったおかげで王妃に叩かれたりすることも減ったわ。嫌味や文句は変わらないけど以前ほど酷くない。
変わってきてる⁈
「ふふっ、でも、ありがとうって言ってもらえたわ。わたし今まで感謝されたことなかったの、ま、それくらいの魔力しかなかったもの」
「イリアナ様、突然魔法が使えるようになったのは何か原因があるんですか?」
「………わからないの。突然……体に魔力が溢れてくるのがわかって……」
ーー死んで巻き戻ったからなんて言えないわ。
でも、どうして巻き戻ったからと言ってこんなに魔力が……もしかしたらオーグならわかるかも。
「わたしはイリアナ様についていきます……リンデの森……はちょっと…だけ怖いですが、イリアナ様と別れるくらいなら大丈夫です!だって、あそこは魔法使いにとって神聖な森ですもんね?
でもいつ決行しますか?準備しないといけませんよね?荷物はどうなさいますか?」
「荷物は必要なものだけにするわ。セデンに貰ったものは置いて行くつもり。ただここでわたしに必要だからと国から買い与えられた(心のこもっていない)宝石は持って行くつもりなの」
「ああ、あの趣味の悪い宝石ですね?換金しちゃいましょう」
「うん、そうね」
ーーわたしの趣味ではない、こんなの誰が身につけるのかしら?と思われるような宝石。
多分一応王族の誰かが選んで買ったのだからそれなりの値段はするのだろうけど。
あれは王妃様の嫌がらせなのかしら?
「ミーナ、花火が打ち上げられる日はみんながそちらに気持ちが向いているだろうからわたしのことなんて気にもしないと思うの……だからその日にこの城を出るわ」
「花火の日……では2週間後ですね。何があってもわたしもついていきます!」
「ありがとう」
ーーミーナ、今度はわたしの力であなたの命を守るわ。次はミーナを死なせはしないわ。
わたしはミーナに花火の話を聞いたけど、誰もわたしにそのことを話してくれる人はいなかった。
毎日癒しの力を使っている王妃も、会うたびにあれだけ文句や嫌味を言うのにそのことは話さない。
レンは相変わらずセデンの代わりにわたしに用事を伝えにくる。だけどセデンはわたしの前に姿を現さない。
まるでもうわたしに用はないかのように。見事に避けられてしまっているの。
でもセデンが元気でいつものようにこの王城で執務を行なっているのも騎士達と鍛錬に参加して体を動かしているのも耳にしていた。
セデンはわたしを避けている。
それだけは感じる。巻き戻ってからひと月以上経つのに彼に一度も会っていない。
宰相もたまにわたしの部屋に顔を出すけど、アイリーン様との結婚の話をしてこない。
わたしの耳に入ってくる話が以前の時と比べて極端に少ない。
前の時は、わたしに会うとみんな嫌味のように自慢話やわたしを蔑むための話を楽しそうに聞かせてくれた。
特にアイリーン妃がいかにセデンに愛されているか……聞かなくてもわかるくらいに目の前でイチャイチャしていたのに……聞かされた。
セデンとアイリーン妃の二人で観劇へ行かれたり視察で旅行へ行ったりするのも知っていたわ。仕事だってアイリーン妃が負担になるからとわたしに回してきていた。
その仕事を持ってきた者たちが、その度にわたしに二人のことを話して聞かせてくれた。
思い出すだけでも……辛くなる。たとえセデンへの愛が失くなっていても……
「失礼するよ」
「今日はどうされたのですか?」
「イリアナ妃、美味しい茶葉を手に入れたんだ。一緒にお茶でもしようよ」
マルセル殿下は度々わたしの部屋を訪れるようになった。もちろん誤解されないように護衛と侍従も連れてくるので二人っきりで会うことはない。
彼が顔を出してくれると美味しいお茶とお菓子が毎回出される。
最近はそれが少し楽しみ。
セデンと会えなくなって共に食事をすることがないのでミーナが食事を持ってきてくれる。
その内容は……多分王太子妃が食べるようなものではない質素な食べ物だとわかる。
だけど幼い頃からマルワ国でも無能と呼ばれあまり王女として大切にされていたわけでもないので、今のところ平気かも。矢で殺される前の1年間はミーナが死んでから酷かったもの。
今はそれに比べたらミーナはまだ生きているし、マルセル殿下は優しいしレンもよく顔を出してくるし、あの宰相も以前ならわたしを嘲笑い嫌っていたのに、いまは仕事のことを話しにきて、会話をしている。
少しずつ記憶とは違う日々が……
マルセル殿下と二人でお茶をしていると。
「イリアナ妃は兄上に会った?」
「……いえ、お会いしていません」
「ふうん、どうしてだろう?兄上さっきこの部屋の近くを歩いていたんだ。イリアナ妃のところへ来ていたのかと思ったんだけどね?」
「……セデンとは最近会っていませんわ」
ーーあなたは知っていて訊いてるのよね?
だってニヤッと笑ったもの。
「ふうん、アイリーン嬢って名前聞いたことがある?」
「…………………全く」
ーーどうして宰相ではなく、マルセル殿下が?
そろそろアイリーン様が嫁いでくるだろうとは思っていたけど。
そう言えば舞踏会……でアイリーン様はみんなに注目されるのに……なかったわ。
そう……舞踏会がなかった……そんな話もわたし……耳にしていない。
中止になったのか元々ないのか。
それに魔獣騒動立って以前の時はなかったし、花火の打ち上げだって……
ミーナもまだ生きているし。マルセル殿下やレンとだってこんなに顔を合わせたことはない。
癒しの力が強くなったおかげで王妃に叩かれたりすることも減ったわ。嫌味や文句は変わらないけど以前ほど酷くない。
変わってきてる⁈
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