39 / 53
再会。
しおりを挟む
パルバン様の屋敷にセルマ君達と暮らしだして8ヶ月が過ぎた。
ニコルちゃんもセルマ君もいつの間にかしっかりしてきて、わたしはいつも二人からお世話をしてもらっている。
「アイリス、ほらここにもあるわ」
「あら本当ね、ありがとう」
「まま、こっちの方がいっぱい」
「セルマ君も教えてくれてありがとう」
わたしの薬草探しは、パルバン様の屋敷の裏庭の奥の木々の多い場所でしていた。
子供達のほうが背が低いので、探すのも上手だ。
二人はとっても仲がいいので、いつも教えてくれる。
「セルマ、あなた生意気よ!わたしが先にアイリスに教えてあげたの!」
「ぼくのままなんだから、ぼくがおしえるの!」
「アイリスは本当のママじゃないでしょう?もしかしたらニコルのママになるかもしれないわ」
「ちがう!ぼくのまま!」
「うるさい!もう遊んであげないわよ」
「ぼくだってあそばない」
わたしが薬草を採っていると二人が仲良く顔を突き合わせて話していた。
「ニコルちゃんとセルマ君は本当に仲がいいのね。わたし二人が仲良しで嬉しいわ」
わたしが二人を見てにこにこしていると
「「うん、ナカヨシナノ」」
と、二人は少し変な顔をしながら笑い返した。
「うん?」
わたしが首を傾げると
「「なんでもない」」
と二人は口を揃えて言った。
「ふふ、仲良しさんね」
屋敷に戻ると、わたしに与えてもらった薬品部屋で薬草を広げて乾燥させる。
これは風の精霊さんがしてくれるので、あっという間に終わらせてくれる。
『風の精霊さん、いつもありがとう』
『どういたしまして』
わたしはそれから隣の調合室で一人薬を作り始める。
今は騎士さん達の傷薬が足りなくなってきたので、そちらを専念して作っている。
わたしがお屋敷にご厄介になっているので、お薬くらいはみんなのために作っている。
作った薬はミナがケースに詰めてくれる。
わたし達は屋敷のある敷地内だけでこの一年近くを過ごしてきた。
パルバン様曰く、「アイリスは今まだ危険な状態だからここからは出ては駄目だからね」
と言って外出の許可がおりない。
元々お家が大好きで大した趣味もないわたしは、外に出られなくても困ることはない。
まぁ、たまに森へ行って新しい薬草や花を探して回りたいなという欲望はあるけど、この広い敷地にはまだ探せてない薬草も見つかる。
だから今のところ不満はない。
そんな変わらない日々の中、私にとってドキドキの日がやって来た。
旦那様であるロバート様がこの屋敷に初めて顔を出したのだ。
ロバート様はパルバン様やネイサン様、マーティン様と楽しそうに挨拶をしていた。
三人は旦那様と知り合いのようだった。
あんなに親しそうに話す旦那様をわたしは2階の階段の陰からこっそりと見ていた。
旦那様は27歳だというのに、10歳も年下のわたしから見てもかっこいい。
お顔はもちろんかっこいいのだが、大人の仕草とか話し方、立っている姿もかっこいい。
この人はとてもモテて当然だとわたしは納得した。
だから、セルマ君のお母さんやルイーズ様が旦那様をお好きになったのだと、一人客観的に見ていた。
と言うか、わたし、今日初めてまじまじと見た気がする。こんな顔だったのだと知った。
旦那様もわたしの顔を覚えているかしら?
わたしのようにボヤッとしか覚えていないかもしれない。
て言うか、話があると聞いたけどわたしと何をお話しするのだろう。
セルマ君のこと?
離縁?
どちらの話しもセルマ君とはお別れしないといけないことになってしまう。
(どうしよう……今の幸せな生活が続くわけがないとわかっていたのに……旦那様はいつも不幸を連れてくる人よね)
わたしは逃げ出したくなった。
でもまた逃げ出せばセルマ君やニコルちゃん、リイナ達だって悲しむし心配する。
もう逃げない。
(旦那様と話して、これから先どうするか決めないといけないわ)
客間に通された旦那様と久しぶりのご対面をした。
ニコルちゃんもセルマ君もいつの間にかしっかりしてきて、わたしはいつも二人からお世話をしてもらっている。
「アイリス、ほらここにもあるわ」
「あら本当ね、ありがとう」
「まま、こっちの方がいっぱい」
「セルマ君も教えてくれてありがとう」
わたしの薬草探しは、パルバン様の屋敷の裏庭の奥の木々の多い場所でしていた。
子供達のほうが背が低いので、探すのも上手だ。
二人はとっても仲がいいので、いつも教えてくれる。
「セルマ、あなた生意気よ!わたしが先にアイリスに教えてあげたの!」
「ぼくのままなんだから、ぼくがおしえるの!」
「アイリスは本当のママじゃないでしょう?もしかしたらニコルのママになるかもしれないわ」
「ちがう!ぼくのまま!」
「うるさい!もう遊んであげないわよ」
「ぼくだってあそばない」
わたしが薬草を採っていると二人が仲良く顔を突き合わせて話していた。
「ニコルちゃんとセルマ君は本当に仲がいいのね。わたし二人が仲良しで嬉しいわ」
わたしが二人を見てにこにこしていると
「「うん、ナカヨシナノ」」
と、二人は少し変な顔をしながら笑い返した。
「うん?」
わたしが首を傾げると
「「なんでもない」」
と二人は口を揃えて言った。
「ふふ、仲良しさんね」
屋敷に戻ると、わたしに与えてもらった薬品部屋で薬草を広げて乾燥させる。
これは風の精霊さんがしてくれるので、あっという間に終わらせてくれる。
『風の精霊さん、いつもありがとう』
『どういたしまして』
わたしはそれから隣の調合室で一人薬を作り始める。
今は騎士さん達の傷薬が足りなくなってきたので、そちらを専念して作っている。
わたしがお屋敷にご厄介になっているので、お薬くらいはみんなのために作っている。
作った薬はミナがケースに詰めてくれる。
わたし達は屋敷のある敷地内だけでこの一年近くを過ごしてきた。
パルバン様曰く、「アイリスは今まだ危険な状態だからここからは出ては駄目だからね」
と言って外出の許可がおりない。
元々お家が大好きで大した趣味もないわたしは、外に出られなくても困ることはない。
まぁ、たまに森へ行って新しい薬草や花を探して回りたいなという欲望はあるけど、この広い敷地にはまだ探せてない薬草も見つかる。
だから今のところ不満はない。
そんな変わらない日々の中、私にとってドキドキの日がやって来た。
旦那様であるロバート様がこの屋敷に初めて顔を出したのだ。
ロバート様はパルバン様やネイサン様、マーティン様と楽しそうに挨拶をしていた。
三人は旦那様と知り合いのようだった。
あんなに親しそうに話す旦那様をわたしは2階の階段の陰からこっそりと見ていた。
旦那様は27歳だというのに、10歳も年下のわたしから見てもかっこいい。
お顔はもちろんかっこいいのだが、大人の仕草とか話し方、立っている姿もかっこいい。
この人はとてもモテて当然だとわたしは納得した。
だから、セルマ君のお母さんやルイーズ様が旦那様をお好きになったのだと、一人客観的に見ていた。
と言うか、わたし、今日初めてまじまじと見た気がする。こんな顔だったのだと知った。
旦那様もわたしの顔を覚えているかしら?
わたしのようにボヤッとしか覚えていないかもしれない。
て言うか、話があると聞いたけどわたしと何をお話しするのだろう。
セルマ君のこと?
離縁?
どちらの話しもセルマ君とはお別れしないといけないことになってしまう。
(どうしよう……今の幸せな生活が続くわけがないとわかっていたのに……旦那様はいつも不幸を連れてくる人よね)
わたしは逃げ出したくなった。
でもまた逃げ出せばセルマ君やニコルちゃん、リイナ達だって悲しむし心配する。
もう逃げない。
(旦那様と話して、これから先どうするか決めないといけないわ)
客間に通された旦那様と久しぶりのご対面をした。
72
お気に入りに追加
5,104
あなたにおすすめの小説
夫はオシドリ夫婦と評される※ただし相手は妻の私ではない
キムラましゅろう
恋愛
クロウ子爵家の一人娘リゼットには単身赴任中の入婿である夫がいる。
訳あって短期間だけ知人の娘に変身して魔法省にてバイトをする事になったリゼット。
奇しくもバイト先は夫の職場。
訳ありの訳ありであくまでも他人になりすまして仕事をするリゼットは単身赴任中の夫がオシドリ夫婦と評判なのだという事を知る。
ただしそれは妻であるリゼットではない同僚女性との間で評されているものであった……。
さてリゼット、どうする?
作者は元サヤハピエン溺愛主義でございます。
いつも無理やりこじつけからの〜捻じ曲げて元サヤに持って参りますので、アンチ元サヤの方はそっ閉じをお勧めいたします。
いつもながらの完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティのお話です。
誤字脱字も大変多いです(断言)何卒ご了承のほどお願い申し上げます。
そしてモヤり、イライラ等による血圧の上昇も懸念されます。
コレらの注意事項をよくお読みになられて、用法用量を守って正しくお読みくださいませ。
小説家になろうさんでも投稿しています。
前世を思い出したのでクッキーを焼きました。〔ざまぁ〕
ラララキヲ
恋愛
侯爵令嬢ルイーゼ・ロッチは第一王子ジャスティン・パルキアディオの婚約者だった。
しかしそれは義妹カミラがジャスティンと親しくなるまでの事。
カミラとジャスティンの仲が深まった事によりルイーゼの婚約は無くなった。
ショックからルイーゼは高熱を出して寝込んだ。
高熱に浮かされたルイーゼは夢を見る。
前世の夢を……
そして前世を思い出したルイーゼは暇になった時間でお菓子作りを始めた。前世で大好きだった味を楽しむ為に。
しかしそのクッキーすら義妹カミラは盗っていく。
「これはわたくしが作った物よ!」
そう言ってカミラはルイーゼの作ったクッキーを自分が作った物としてジャスティンに出した…………──
そして、ルイーゼは幸せになる。
〈※死人が出るのでR15に〉
〈※深く考えずに上辺だけサラッと読んでいただきたい話です(;^∀^)w〉
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げました。
※女性向けHOTランキング14位入り、ありがとうございます!!
【完結】皆様、答え合わせをいたしましょう
楽歩
恋愛
白磁のような肌にきらめく金髪、宝石のようなディープグリーンの瞳のシルヴィ・ウィレムス公爵令嬢。
きらびやかに彩られた学院の大広間で、別の女性をエスコートして現れたセドリック王太子殿下に婚約破棄を宣言された。
傍若無人なふるまい、大聖女だというのに仕事のほとんどを他の聖女に押し付け、王太子が心惹かれる男爵令嬢には嫌がらせをする。令嬢の有責で婚約破棄、国外追放、除籍…まさにその宣告が下されようとした瞬間。
「心当たりはありますが、本当にご理解いただけているか…答え合わせいたしません?」
令嬢との答え合わせに、青ざめ愕然としていく王太子、男爵令嬢、側近達など…
周りに搾取され続け、大事にされなかった令嬢の答え合わせにより、皆の終わりが始まる。
あなたと別れて、この子を生みました
キムラましゅろう
恋愛
約二年前、ジュリアは恋人だったクリスと別れた後、たった一人で息子のリューイを生んで育てていた。
クリスとは二度と会わないように生まれ育った王都を捨て地方でドリア屋を営んでいたジュリアだが、偶然にも最愛の息子リューイの父親であるクリスと再会してしまう。
自分にそっくりのリューイを見て、自分の息子ではないかというクリスにジュリアは言い放つ。
この子は私一人で生んだ私一人の子だと。
ジュリアとクリスの過去に何があったのか。
子は鎹となり得るのか。
完全ご都合主義、ノーリアリティなお話です。
⚠️ご注意⚠️
作者は元サヤハピエン主義です。
え?コイツと元サヤ……?と思われた方は回れ右をよろしくお願い申し上げます。
誤字脱字、最初に謝っておきます。
申し訳ございませぬ< (_"_) >ペコリ
小説家になろうさんにも時差投稿します。
わたしの婚約者の好きな人
風見ゆうみ
恋愛
わたし、アザレア・ミノン伯爵令嬢には、2つ年上のビトイ・ノーマン伯爵令息という婚約者がいる。
彼は、昔からわたしのお姉様が好きだった。
お姉様が既婚者になった今でも…。
そんなある日、仕事の出張先で義兄が事故にあい、その地で入院する為、邸にしばらく帰れなくなってしまった。
その間、実家に帰ってきたお姉様を目当てに、ビトイはやって来た。
拒んでいるふりをしながらも、まんざらでもない、お姉様。
そして、わたしは見たくもないものを見てしまう――
※史実とは関係なく、設定もゆるく、ご都合主義です。ご了承ください。
もう離婚してください!
キムラましゅろう
恋愛
わたしの旦那は誉れ高き王宮精霊騎士。
優しくて甘ったれで、わたしの事が大好きな旦那。
でも旦那には遠征地ごとに妻と子どもがいるのだ。
旦那はわたしが本妻だというけれど、
ハッキリ言ってもうウンザリ。
こんな好色旦那、とっとと捨てて、新しい人生を送ってやる!
だけど何故かなかなか上手くいかない……なんでやねん!
※クルシオ王国カンサイ州出身の妻が時々カンサイ州語を炸裂させます。
超ゆるゆる設定。
非リアリティ主義のお話です。
細かいツッコミは勘弁していただけると助かります。
性描写はありませんが、
性的な表現、そしてワードが出てきます。
苦手な方は回れ右をお薦めいたします。
そしてイライラ系旦那が出て来ます。
血圧が上がるのを避けたい方も
回れ右をお願いいたします。
小説家になろうさんの方では別バージョンのラストで投稿しております。
相手不在で進んでいく婚約解消物語
キムラましゅろう
恋愛
自分の目で確かめるなんて言わなければよかった。
噂が真実かなんて、そんなこと他の誰かに確認して貰えばよかった。
今、わたしの目の前にある光景が、それが単なる噂では無かったと物語る……。
王都で近衛騎士として働く婚約者に恋人が出来たという噂を確かめるべく単身王都へ乗り込んだリリーが見たものは、婚約者のグレインが恋人と噂される女性の肩を抱いて歩く姿だった……。
噂が真実と確信したリリーは領地に戻り、居候先の家族を巻き込んで婚約解消へと向けて動き出す。
婚約者は遠く離れている為に不在だけど……☆
これは婚約者の心変わりを知った直後から、幸せになれる道を模索して突き進むリリーの数日間の物語である。
果たしてリリーは幸せになれるのか。
5〜7話くらいで完結を予定しているど短編です。
完全ご都合主義、完全ノーリアリティでラストまで作者も突き進みます。
作中に現代的な言葉が出て来ても気にしてはいけません。
全て大らかな心で受け止めて下さい。
小説家になろうサンでも投稿します。
R15は念のため……。
【完結】お前なんていらない。と言われましたので
高瀬船
恋愛
子爵令嬢であるアイーシャは、義母と義父、そして義妹によって子爵家で肩身の狭い毎日を送っていた。
辛い日々も、学園に入学するまで、婚約者のベルトルトと結婚するまで、と自分に言い聞かせていたある日。
義妹であるエリシャの部屋から楽しげに笑う自分の婚約者、ベルトルトの声が聞こえてきた。
【誤字報告を頂きありがとうございます!💦この場を借りてお礼申し上げます】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる