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男達のドタバタ③

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パルバンは、ロバートと別れてから、王太子殿下と極秘の会合の約束を取り付けた。

そこには次男のマルクス殿下も一緒に来ていた。

場所はパルバンが王宮で勤めている自分専用の執務室。

秘密とは言え昼間の仕事と称して会う方が逆に疑われない。

部屋には二人の殿下とパルバン、そしてパルバンの部下であるパーマン伯爵が、今度来国してくるワルシャイナ王国の王族を迎えるに当たっての会議をすることにしている。

「お忙しい中お越しいただきありがとうございます」

パルバンが二人の殿下に頭を下げると、周りを見回して手を挙げて、扉を閉めるように伝えた。

二人の殿下の信頼出来る近衛騎士達四人は部屋の中の扉で控えていた。

「この者たちはわたしと最後まで共に行動してくれる信頼のおける者たちです」
マルクス殿下が四人を見てにっこり微笑んだ。

近衛騎士団長、副団長三人という錚々たる顔触れだった。

「では始めましょう」
パルバンの声を聞いたパーマン伯爵はすぐにある書類を殿下二人に見せた。

「これは長年集めたものです。
国王が私用で使った国庫の金額と用途を書いております」

「父上はなんと愚かなんだ」

殿下二人は、湯水の如く使っていた金額を見て呆れ返っていた。

「ほとんどが愛人達に買い与えたものだ。さらに自分の都合の悪いことを揉み消すためにお金を使っている。
殺人の依頼は数人の貴族達にさせているみたいだな。その礼として高額な金を渡している」

「よくこれだけ調べたな」

パーマン伯爵は、悔しそうに話し出した。

「はい、わたしの友であり愛するシリアの恋人だった、ユージン様を殺した陛下をわたしは許せませんでした。でもわたしに出来ることは陛下の悪事を調べて残しておくことしかできませんでした。
そして今度は妻であるシリアを死なせました。
わたし達は愛情のある夫婦ではありませんでしたが信頼と友情を築き上げてきました。
大切な妻を殺した陛下を許すことは出来ません。陛下が今回妻を襲った事件の主犯、そして陛下からの指示だという証拠も証人も全て揃えてあります」

「わたしも弟のユージンを死なせたこと、今でも憎く思っている。だがまだあの頃のわたしでは国王を引き摺り下ろすほどの力はなかった。
今ならわたしもこの国の貴族達を把握しているし、味方につけることが出来る」

「わたしも兄上の力になるため精進して参りました。是非今国王を引き摺り下ろして退位させましょう」

マルクス殿下も力強く言った。

「近衛騎士団長、貴方達の協力が必要だ。信頼のおける部下達を集めしかるべき日に備えて欲しい」
パルバンが騎士達に頭を下げた。

「パルバン様、私たちもこれ以上陛下のご乱心にはついて行けません。
新しい国を是非作って若者達に生きる希望を与えてください」

今この国は国王の私利私欲のため財政が悪化して、国民に皺寄せがきている。
そのためいつ反乱が起きてもおかしくない状況でもあり、国を憂いている者たちはなんとかしようと動いていた。

そこに声をあげたのが、高位貴族の中でもみんなからの信頼が厚くこの国の元宰相でもあったパルバンだった。
パルバンも何度も国王に苦言をしてきたが聞く耳を持たず、国王はうるさいパルバンを黙らせるために役職を解いてしまった。

そして今は外務部に追いやられている。

おかげで自由に動けるようになったので、パーマンと共に陛下の悪事の証拠集めに奮闘していた。

そんな中、アイリスに助けられた。

アイリスを国王が狙っている情報も入っていて、アイリスが狙われる前に動く決心をした。

パーマンも別に家庭があるとはいえ、元々シリアを愛していた。でも愛を返してもらえない中、シリアに勧められ別の家庭を作った。

パーマン自身はアイリスを実の娘のように思ってはいた。ただ後ろめたさのためアイリスへの愛情を素直に表すことはできなかった。

だから、アイリスが陛下に狙われていると知り、なんとか情報を必死で集めていた。

そしてみんなの思惑が相俟って、今回決行することになった。

「ワルシャイナ王国の後ろ盾をロバートが取り付けてきました。向こうは口は出さないが見守ることを了承してくれました。
おかげで国内の混乱の中、他国が攻めてくることはないでしょう。ワルシャイナ王国が盾となり抑止力となってくれます」

「ロバート商会の会頭だったな、そしてワルシャイナ王国の王弟。そして我が姪アイリスの夫か」

「はい、左様でございます。ロバートが直に会いに行き約束を取り付けてくれました」

パルバンの言葉に殿下二人は納得し
「わかった、皆の期待に応えられるよう我らが動こう」

「わたしも兄上、そして姪のため、父を引き摺り下ろしましょう」


そしてこの話し合いの3ヶ月後、全ての準備を整えて、国王を捕らえ、法にのっとり裁判を行なった。

全ての罪を暴かれた国王とその側近たちを引き摺り下ろすのに一年近い歳月をかけた。

その間他国からの横槍も攻めてくることもなかった。

ワルシャイナ王国からの強力な後ろ盾のおかげだった。

そしてカルロス・バーナード殿下が国王として即位された。

宰相を始め新しい顔ぶれが役職につき、国が少しずつ回り始めた。



アイリスはその間、パルバンの屋敷で一切の情報を与えられずにのんびりと過ごしていた。

もちろん極秘の動きなので国民全体でも知るものは少なかったので、アイリスが知ることは難しかったのだが。

アイリスが知らされたのは国王の裁判が始まった後だった。








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