【完結】騎士様はいつも不機嫌 〜アラン二度目の恋〜

44話

団長に呼ばれて、言われた言葉から生活は落ち着いた。

『少しお前に対して騒ぎすぎだと思う、お前の気持ちを考えずすまなかった』

そしてその後もう一度団長は俺を呼んだ。

「アラン、俺は家族とお前の接触を嫌っていた。それは俺の嫉妬だ。ラウルとの繋がりが少しでも家族にあることが嫌だった」

団長は必死に頭を下げた。

「すまなかった。だがお前のことを嫌っていた訳ではない。心配ではあるんだ。その頑なな考え方……人間不信になっているくせにお人好しで困っている人を見ると放っておけない。
俺はお前のことが可愛くもある。矛盾しているのは俺がラウルより劣っているからだ。
お前の父親はとても優秀でかっこよくて公爵で、俺なんかよりずっと凄いんだ。だからお前に対しても嫉妬してしまった」

俺は団長のこの素直なところが好きだ。

真っ直ぐで、嘘がつけない。

「団長、自分自身もジンジャー嬢と敢えて関わるつもりはありません。たまたま何故か俺の前で彼女は事件を起こすんです。馬に体当たりされそうになったり、人に絡まれたり、迷子になったり…でもこれからは関わりあわないように気をつけます。
わたしもシャノン様には会いづらいですし……出来れば会いたくありません」

俺は素直な気持ちを伝えた。

「すまない、だがシャノンはお前をに気していた」

「ええ、以前お会いする機会が会った時に優しく話しかけられました」

「聞いたよ……あいつはお前が嫌なことを言われ続けていることをすごく心配していた」

「わたしは気にしてもらう資格などありませんが、そう言ってもらえるだけで有難いです」

俺は素直に頭を下げた。
そして団長に一言だけ伝えて部屋を後にした。

「団長、わたしは団長達が動いてくれたおかけで周りのうるさい雑音が減って感謝しています。わたしに詫びなど必要ありません」




そして俺はスッキリした気分で仕事の護衛に戻った。

今日はカイルの護衛だ。


「アラン、お疲れ様。団長は何か失礼なことを言わなかった？」

今は俺と仲の良い同僚と三人なので気軽に話すことが出来る。

「大丈夫だ。うるさい外野が静かになったんでお礼を言った」

「うん、外野は少し黙らせないとね、もちろんそこには父上や団長達もだけどね、あの人達は心配と好奇心で君に煩いくらい色々言ってたからね、少しは反省したらいいと思うんだ」

カイルの笑顔はあまりにも爽やかでそれが不気味だった。
何か言ったのだろうと思ったが聞くのはやめておこうと思った。

コイツが俺に対して分が悪いことはしないことはわかっている。
何も言わないのなら敢えて聞かない。

「ことろでアランは義父上にお見合いをさせられたんだろう？
イーゼ・ジリニア侯爵令嬢18歳だっただよね？」

「そうだ………うん⁈やばい！俺返事するのも忘れていた」

そう、完全に最近の騒動で頭からスッポリと抜けていた。

「どのくらい忘れていたの？」

「…………三週間……いや、それ以上かな…」

「ハァー、それはアランの悪評がまた出ても仕方がないよね？」

「確かにアラン、それは酷いぞ」
隣の同僚も苦笑いをしていた。

「でも、カイル様、アランの悪い噂は最近聞きません、相手のジリニア侯爵令嬢はお優しい方なのでしょうね」

「優しい？うーん、あの子はさっぱりしていて話しやすい子だったよ」
俺は思い出しながら答えた。

「確か学園を卒業したら事務官として働くと言っていたよ、侯爵令嬢らしからぬ話し方で面白い子だった」

俺が笑いながら言うと二人がキョトンとしていた。

「どうしたんだ？二人とも？」

「アランが女性の話を笑いながらするなんて初めて見た」

「僕もだよ、学生の時はアランは女の子に囲まれてにこにこしていたけど、目は笑っていなかった。イーゼ嬢かぁ、ちょっと会ってみたいね」

「カイル様、陛下のようなことになりますよ！」

「あ！世話や興味は駄目だったんだ」

二人の会話を聞いて、イーゼ嬢のことをそんなに楽しそうに話したのか？と思いながらも、適当に流しておくことにした。