上 下
41 / 63

40話  ジンジャー編

しおりを挟む
アラン様と知り合ってから、わたしはいつも彼を目で追ってしまう。

両親やお兄様に劣等感を感じてお父様の言葉に傷ついている時、彼の言葉に救われた。

彼が何かをしてくれた訳ではない。

なのに何故なんだろう。




いつもアラン様の周りには人がいる。

もちろん騎士仲間や友人。

アラン様は大して愛想がいい訳でもないのに彼に惹かれて人が寄ってくる。

わたしは王宮内の図書館によく本を読みにきている。

最初はアラン様に会えるとかそんな目的ではなくて、この図書館にしかない蔵書も多く、本好きには楽しい場所として通った。

大好きなエイミー様も司書として働いていて、わたしにオススメの本を色々と紹介してくれる。

最近は陛下ともお知り合いになって、今まで知らなかった我が国の歴史などを詳しく話してくれるので会うのがとても楽しい。

でも最近は図書館に来る理由が変わった。
アラン様が護衛として陛下に付いていることが多いので密かに会えることを楽しみにしている。

アラン様と話せる訳でもないけど、姿を見れるだけで幸せだった。

なのに入ってきたアラン様の噂話にわたしは胸が痛くて、辛くて、どうしていいか分からなくなってしまった。

浮かない顔をしていたわたしを見て陛下は「何かあったの?」と聞いてきた。

わたしはアラン様をチラッと見て、「何もないです」と答えた。

すると陛下は、「ちょっと待ってて」と言うとアラン様を、陛下が手を振り、ここに来いと呼んだ。


「何かご用でしょうか?」

「ジンジャー嬢が話したい事があるそうだ」

「かしこまりました、では後日、時間がある時にでも……失礼致します」

アラン様はそう言うとさっさと去ろうとした。

陛下の前から去ろうとすると
「アラン待て、そんなに直ぐ立ち去らなくてもいいだろう。お前は今から休憩だ」

「チッ」
アラン様が舌打ちすると陛下はジロッとアラン様を見て

「わたしは帰るから、ではまた後で」
と言って陛下は去って行った。


アラン様は仕方がなさそうに言った。

「俺に用とは何でしょう?」

わたしは、俯いてしまった。
何を言えばいいのかしら?

「特に話したい事があったわけではないのです」
必死で言葉を探した。

「でしたら俺は休憩になったので、失礼します」


「……あ、あの……最近わたしのことを……避けてはいませんか?」

アラン様は嫌な顔をした。

「特に貴女と関わる用事がありませんのでお会いすることも話すこともないだけです」

確かにそうだけど……

「……そうですよね……ごめんなさい。
最近メイ・ボガード様とお付き合いをされていると噂で聞きました。それなのにわたしが話しかけたら駄目でしたね」

「え?メイと俺が付き合っている?」

「はい、メイ・ボガード様が怪我をされてアラン様が血相を変えて会いにいかれたと、皆様が話されていました」

わたしはメイ・ボガード様とアラン様のことが気になって仕方がなかった。

「なのに……アラン様はイーゼ・ジリニア様とお見合いをされたと聞きました」

わたしは二人の噂を聞いてとっても辛くて、気になって仕方がない……この気持ちをどうしていいのか分からなかった。

「俺が二股をかけていると?もし、そうだとしても君には全く関係ないし、俺にそれを聞く必要はないよね?」

わたしは聞いてはいけないことを聞いたのだと分かっていた。
だってアラン様の彼女でもないし、そんなに仲が良い訳でもない。
何度か助けていただいただけで、特別親しい訳でもない。

「………す、すみません、気になってしまって……」

わたしは目に涙がたまって下を向いてしまった。

「失礼する」

アラン様の冷たい一言にわたしは固まってしまった。

図書館にはわたしとアラン様の話を聞き耳立てて聞いている人が多かった。

「あの子、アラン様の知り合いかしら?」

「あんな風に聞いたら怒るのもわかるわ、まるで浮気でもしているみたいに言われてアラン様、可哀想よ」

わたしが言った言葉はやはり駄目だったんだと……周りの人のヒソヒソ話で感じた。

でも我慢できなかった。

アラン様が誰か一人に視線を向けている姿を考えると悲しくて辛かった。

これが恋だと自覚してから、ずっと落ち込んでいた。

陛下にボソッと話したら、「アランに直接聞いてみたら?」と機会を与えてくれた。

なのにあんな聞き方しかできなくて……

怒らせてしまった。

わたしはしばらく呆然としていた。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

悪役令嬢なので舞台である学園に行きません!

神々廻
恋愛
ある日、前世でプレイしていた乙女ゲーに転生した事に気付いたアリサ・モニーク。この乙女ゲーは悪役令嬢にハッピーエンドはない。そして、ことあるイベント事に死んでしまう....... だが、ここは乙女ゲーの世界だが自由に動ける!よし、学園に行かなければ婚約破棄はされても死にはしないのでは!? 全8話完結 完結保証!!

【完結】え?嫌です、我慢なんて致しません!わたしの好きにさせてもらいます

たろ
恋愛
★ 失った記憶編③のお話になります! わたしに興味のないお母様。 とっても優秀なお姉様。 わたしは屋敷の中でいつも一人。 侍女長がわたしを育てる係。 なのにこの人が最悪で、食事は抜かれるし厳しい家庭教師をつけて体罰を容認しているので見えないところはあざだらけ。 でも平気。 だってみんなが寝ている時にこっそり料理長はいつも美味しい料理を食べさせてくれるし、こっそりと助けてくれる人もいる。 でもね、王太子の婚約者になったら王宮でさらに酷い目に遭い出したの。 世間ではピンクの髪、可愛らしい庇護欲を誘う容姿が、隣国の王子を誑かした男爵令嬢と被るらしい。 わたしは8歳にして何故か悪女で嫌われ者? 家でも王宮でも学校でも嫌われ者のカトリーヌ。 何故か男の人には好かれるのに女の人には嫌われまくる侯爵令嬢の話です。 本当は、家族に愛されたい、好きな人に愛されたい、愛を求めているのに愛してもらえない、いじっぱりな女の子が少しずつ本当の愛を知っていく。 そして本当にわたしを愛してくれたのは…… ★たまに残酷な場面があります ★かなりイライラする場面もあります

【完結】政略結婚だからこそ、婚約者を大切にするのは当然でしょう?

つくも茄子
恋愛
これは政略結婚だ。 貴族なら当然だろう。 これが領地持ちの貴族なら特に。 政略だからこそ、相手を知りたいと思う。 政略だからこそ、相手に気を遣うものだ。 それが普通。 ただ中には、そうでない者もいる。 アルスラーン・セルジューク辺境伯家の嫡男も家のために婚約をした。 相手は、ソフィア・ハルト伯爵令嬢。 身分も年齢も釣り合う二人。 なのにソフィアはアルスラーンに素っ気ない。 ソフィア本人は、極めて貴族令嬢らしく振る舞っているつもりのようだが。 これはどうもアルスラーンの思い違いとは思えなくて・・・。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

私は貴方から逃げたかっただけ

jun
恋愛
電話の向こうから聞こえた声は、あの人の声だった。 その人に子供が出来たなら、私は邪魔なんだろうな…。 一人で出産し、一人で息子を育てた麻美。 麻美を探し続け、やっと見つけた雅彦。 会えなかった年月は、麻美を強くした。 麻美を失った雅彦は自暴自棄になっていた。

兄のお嫁さんに嫌がらせをされるので、全てを暴露しようと思います

きんもくせい
恋愛
リルベール侯爵家に嫁いできた子爵令嬢、ナタリーは、最初は純朴そうな少女だった。積極的に雑事をこなし、兄と仲睦まじく話す彼女は、徐々に家族に受け入れられ、気に入られていく。しかし、主人公のソフィアに対しては冷たく、嫌がらせばかりをしてくる。初めは些細なものだったが、それらのいじめは日々悪化していき、痺れを切らしたソフィアは、両家の食事会で……

処理中です...