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15話 エイミー編
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エイミーはアランが旅立って二日後に、アランが謹慎処分を受けたことを聞いた。
「人を助けて謹慎処分にするなんて酷すぎるわ!」
カイルの肩を両手でがっしりと掴んで、エイミーは文句を言った。
「エイミー、誰から聞いてきたんだい?」
「今日職場でアランのことを聞かれたの。わたし知らなくて、逆にどういう事か聞き返したわ」
「ごめんね、妊娠中のエイミーに言うと、興奮して大変なことになると思って落ち着いてから伝えるつもりだったんだ」
「アランは女性達を一人で助けたんでしょう?なのに謹慎させるなんて酷いわ」
「一応規則だからね。違反をして何もお咎めなしとはいかないんだよ、みんなの手前ね」
「だからと言って1ヶ月も謹慎にして王都から追放なんて酷いわ!」
「それは上の人達の彼への感謝の気持ち。お礼なんだよ」
「何故?どこが?どう考えたらそうなるの?」
エイミーはアランへの罰を聞いてから、家に帰るまで腹を立てていた。
カイルに当たっても仕方がないのはわかっていたが、彼ならどうにかしてくれるかもしれないとも思っていた。
エイミーと結婚して王位継承権は破棄して臣籍降下しても尚王族としての力は持っているから。
普段ならカイルの力に頼るのは嫌だが、アランが不当な謹慎処分を受けたことをどうにかしたかった。
駄目なら陛下に会いに言って話を聞いて貰おうかと思っていた。
「エイミー、まず落ち着いてくれるかい?それからゆっくり事情を説明するよ」
わたしはカイルにソファに座らされて、お水を渡された。
なんだか諭されている子どもみたいでちょっとムカつくがとりあえず言われるままにお水を飲んだ。
「美味しい」
わたしは興奮していたのか喉が渇いていたみたいだ。
「少しは落ち着いたかい?」
「ごめんなさい、カイル。
お腹の子どもにも良くないわよね、イライラしたら……」
「アランはね、一応みんなの手前、罰は受けないといけなかったんだ。規則を曲げるわけにはいかないからね。
それで謹慎処分ひと月という休暇を与えたんだ。でも謹慎処分は外出、出来ないだろう?
だから、王都から出るように言われたんだ。ひと月旅行してもいいし、何処かでゆっくり過ごしてもいい。頑張ったご褒美の特別休暇さ」
「えーー!!」
わたしは驚いて、口をぽかーんと開けてしまった。
「怒って損したわ!何アラン、ひと月も休みをもらったの?」
「エイミー、騎士団の人達はほとんどみんなわかっているよ。だって騎士団の中には、今回攫われた人が知人や恋人だった人もいたんだ。ましてや子ども達も攫われていたんだ。
みんなアランのおかげで助かったと感謝しているんだ。
でもそれでも規則は規則だから、仕方なくそれを逆手に取って厳しそうに見える謹慎処分を下したんだ。
でも降格処分はないよ」
「良かった。いい事して罰を与えられるなんてあまりにも理不尽だもの」
「うん、陛下に団長が報告に来た時は、一瞬僕も隣に居て腹が立っだけど、王都追放と言われてすぐにわかったよ。自由にしろと言っているんだってね」
「ところでうちに報告しに来ないでどこへ行ったのかしら?」
「アランは、ハディッド領のルーベン様のところに行っているよ」
「お祖父様のところ?」
「うん、たぶん暇なんでルーベン様と剣の鍛錬でもするつもりなんじゃない?」
「ずるいわ、わたしも行きたい!わたしもお祖父様と鍛錬したいわ」
「うん、やめておいてね。君のお腹の赤ちゃんが驚いてしまうからね」
「……ごめんなさい」
わたしはカイルに言われて恥ずかしくなった。未だにアランに対してライバル心が出てしまう。
「エイミー、アランがハディッド領へ行っているの?」
お母様が話を聞いて入ってきた。
「そうみたい、わたし達に黙って行くなんて信じられないわ」
「わたしとアリシアもハディッド領へ行こうかしら?お父様達にも久しぶりにお会いしたいしね。
ハディッド伯爵になるミシェルも少しは使いモノになりそうだから、わたし達の助けがなくてもいいみたいだしね」
そう、アランのお母様であるメアリー様とわたしの伯母のハノン伯母様の二人は犯罪を犯して捕まった。
そのためアランは本当の父親でないわたしのお父様と暮らすことを悩んでいた。
わたしの母と再婚する時に出て行こうとしたが、卒業まではなんとか踏みとどまってくれた。
でも卒業して騎士団に入ると、侯爵家を除籍して平民になった。
もちろん今でもわたし達家族と行き来はあるが、やはり少し遠慮しているのがわかる。
でもだからといって、わたしではどうすることもできない。少し寂しくはあるけどアランにはアランの考えがあるのだと思う。
カイルとアランはずっと友人として今も付き合いをしていて、二人で飲むこともある。
お父様のレオナルドは二人が飲んだと聞くと、「どうして仲間に入れてくれないんだ」と、寂しそうにしている。
お父様はアランのことを自分の本当の子どもとして接してきた。
そしてそれはメアリー様が捕まって離縁しても、アランへの愛情は変わらない。
まあ、アランは素直ではないので、お父様に対しても素っ気ないんだけど。
「ルディア、僕も一緒にハディッド領へ行くよ。三人で行こう。うちのことはカイルにお任せするよ」
お父様がにこにこして、わたし達に「ね?」と聞いてきた。
「どうぞ三人で行ってきてください。こちらのことは心配しなくても大丈夫です」
カイルがにっこり微笑んだ。
(うっ、この笑顔はわたしも執務の手伝いをさせられるやつだわ)
わたしは顔を引き攣らせながら、仕方なく返事をした。
「アランによろしく伝えてね」
(ああ、明日からのわたしの楽しい読書の時間はなしだ。アランの奴、許しがたい)
「人を助けて謹慎処分にするなんて酷すぎるわ!」
カイルの肩を両手でがっしりと掴んで、エイミーは文句を言った。
「エイミー、誰から聞いてきたんだい?」
「今日職場でアランのことを聞かれたの。わたし知らなくて、逆にどういう事か聞き返したわ」
「ごめんね、妊娠中のエイミーに言うと、興奮して大変なことになると思って落ち着いてから伝えるつもりだったんだ」
「アランは女性達を一人で助けたんでしょう?なのに謹慎させるなんて酷いわ」
「一応規則だからね。違反をして何もお咎めなしとはいかないんだよ、みんなの手前ね」
「だからと言って1ヶ月も謹慎にして王都から追放なんて酷いわ!」
「それは上の人達の彼への感謝の気持ち。お礼なんだよ」
「何故?どこが?どう考えたらそうなるの?」
エイミーはアランへの罰を聞いてから、家に帰るまで腹を立てていた。
カイルに当たっても仕方がないのはわかっていたが、彼ならどうにかしてくれるかもしれないとも思っていた。
エイミーと結婚して王位継承権は破棄して臣籍降下しても尚王族としての力は持っているから。
普段ならカイルの力に頼るのは嫌だが、アランが不当な謹慎処分を受けたことをどうにかしたかった。
駄目なら陛下に会いに言って話を聞いて貰おうかと思っていた。
「エイミー、まず落ち着いてくれるかい?それからゆっくり事情を説明するよ」
わたしはカイルにソファに座らされて、お水を渡された。
なんだか諭されている子どもみたいでちょっとムカつくがとりあえず言われるままにお水を飲んだ。
「美味しい」
わたしは興奮していたのか喉が渇いていたみたいだ。
「少しは落ち着いたかい?」
「ごめんなさい、カイル。
お腹の子どもにも良くないわよね、イライラしたら……」
「アランはね、一応みんなの手前、罰は受けないといけなかったんだ。規則を曲げるわけにはいかないからね。
それで謹慎処分ひと月という休暇を与えたんだ。でも謹慎処分は外出、出来ないだろう?
だから、王都から出るように言われたんだ。ひと月旅行してもいいし、何処かでゆっくり過ごしてもいい。頑張ったご褒美の特別休暇さ」
「えーー!!」
わたしは驚いて、口をぽかーんと開けてしまった。
「怒って損したわ!何アラン、ひと月も休みをもらったの?」
「エイミー、騎士団の人達はほとんどみんなわかっているよ。だって騎士団の中には、今回攫われた人が知人や恋人だった人もいたんだ。ましてや子ども達も攫われていたんだ。
みんなアランのおかげで助かったと感謝しているんだ。
でもそれでも規則は規則だから、仕方なくそれを逆手に取って厳しそうに見える謹慎処分を下したんだ。
でも降格処分はないよ」
「良かった。いい事して罰を与えられるなんてあまりにも理不尽だもの」
「うん、陛下に団長が報告に来た時は、一瞬僕も隣に居て腹が立っだけど、王都追放と言われてすぐにわかったよ。自由にしろと言っているんだってね」
「ところでうちに報告しに来ないでどこへ行ったのかしら?」
「アランは、ハディッド領のルーベン様のところに行っているよ」
「お祖父様のところ?」
「うん、たぶん暇なんでルーベン様と剣の鍛錬でもするつもりなんじゃない?」
「ずるいわ、わたしも行きたい!わたしもお祖父様と鍛錬したいわ」
「うん、やめておいてね。君のお腹の赤ちゃんが驚いてしまうからね」
「……ごめんなさい」
わたしはカイルに言われて恥ずかしくなった。未だにアランに対してライバル心が出てしまう。
「エイミー、アランがハディッド領へ行っているの?」
お母様が話を聞いて入ってきた。
「そうみたい、わたし達に黙って行くなんて信じられないわ」
「わたしとアリシアもハディッド領へ行こうかしら?お父様達にも久しぶりにお会いしたいしね。
ハディッド伯爵になるミシェルも少しは使いモノになりそうだから、わたし達の助けがなくてもいいみたいだしね」
そう、アランのお母様であるメアリー様とわたしの伯母のハノン伯母様の二人は犯罪を犯して捕まった。
そのためアランは本当の父親でないわたしのお父様と暮らすことを悩んでいた。
わたしの母と再婚する時に出て行こうとしたが、卒業まではなんとか踏みとどまってくれた。
でも卒業して騎士団に入ると、侯爵家を除籍して平民になった。
もちろん今でもわたし達家族と行き来はあるが、やはり少し遠慮しているのがわかる。
でもだからといって、わたしではどうすることもできない。少し寂しくはあるけどアランにはアランの考えがあるのだと思う。
カイルとアランはずっと友人として今も付き合いをしていて、二人で飲むこともある。
お父様のレオナルドは二人が飲んだと聞くと、「どうして仲間に入れてくれないんだ」と、寂しそうにしている。
お父様はアランのことを自分の本当の子どもとして接してきた。
そしてそれはメアリー様が捕まって離縁しても、アランへの愛情は変わらない。
まあ、アランは素直ではないので、お父様に対しても素っ気ないんだけど。
「ルディア、僕も一緒にハディッド領へ行くよ。三人で行こう。うちのことはカイルにお任せするよ」
お父様がにこにこして、わたし達に「ね?」と聞いてきた。
「どうぞ三人で行ってきてください。こちらのことは心配しなくても大丈夫です」
カイルがにっこり微笑んだ。
(うっ、この笑顔はわたしも執務の手伝いをさせられるやつだわ)
わたしは顔を引き攣らせながら、仕方なく返事をした。
「アランによろしく伝えてね」
(ああ、明日からのわたしの楽しい読書の時間はなしだ。アランの奴、許しがたい)
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