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41話

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アイシャ様は三週間ぶりに目を覚まされた。

始めはボッーとして今の状況を掴めずにいた。

「………キリアン君?」

アイシャ様が目覚めた。

「久しぶりね、大きくなったわね」

何故か違和感がある。
何処が?
俺は違和感の正体を探した。

「アイシャお姉ちゃん?」
キリアン様が驚いた声でアイシャ様に話しかけた。

「うん、キリアン君魔法が使えたのね、今のアイシャちゃんもすごい魔法使いなのよ。二人とも凄いわ」

……………アイシャ様ではない。

記憶を持ったアイシャ様かと思ったのに
………もう一人のアイシャ様だった。




◇ ◇ ◇

アイシャちゃんは、夢から出ようとしなかった。

わたしが何度も話しかけたけど、わたしの声が聞こえない。


『アイシャのこと忘れていてごめんね。わたしがアイシャを忘れたらアイシャの存在が消えてしまうわよね。わたしはもう貴女を忘れないわ………一緒にこの夢の中で過ごしましょう……』

そう言ってアイシャちゃんは眠り続けた。

わたしは11年間もアイシャちゃんの中でもう一人のアイシャとしてほとんど意識がないまま過ごし続けていたらしい。

アイシャちゃんが前世を思い出した時わたしも完全に自分を取り戻してしまった。

夢の中で何度もアイシャちゃんに話しかけた。

『起きて!ここで眠っては駄目!』

『貴女はわたしではないの、ここで、この世界で、別のアイシャとして幸せに暮らして!』

でも病気に負けてしまった心の弱いわたしが、彼女に何を伝えても、アイシャちゃんはわたしの記憶の所為で悲しみに包まれてしまった。

生きる気力のない前世のわたしに。

でもわたしはアイシャちゃんに生きて欲しい。

わたしはもう貴女の記憶から消えるから、幸せになって欲しい。

どうしてわたしをアイシャちゃんの中に生き返らせるの?

アイシャちゃんはわたしではない。

アイシャちゃんは前世のわたしなんか忘れて幸せにならないといけないの。

なのにキリアン君の光の魔力がアイシャちゃんではなくわたしを眠りから目覚めさせてしまった。

わたしは呆然とするしかなかった。

そして、目の前に大きくなったキリアン君がいた。

わたしは思わずキリアン君に前世のように話しかけてしまった。

「………キリアン君?」

キリアン君を見つめた。

「久しぶりね、大きくなったわね」

キリアン君は驚きながらもわたしに声をかけた。

「アイシャお姉ちゃん?」

「うん」

そして振り返りロウトさんとメリッサさんを見て、話しかけた。

「ロウトさん、メリッサさん、初めまして。
アイシャちゃんの中であなた達を見ているので初めましてはおかしいかもしれないけど、今のわたしは前世のアイシャです。アイシャちゃんはわたしの前世の記憶と今までの傷ついてしまった心が邪魔をして眠り続けているの……そのまま起きてこようとしないの」

「……アイシャ様は眠っているのですか?」
ロウトさんが心配そうに聞いてきた。

「ええ、そうなの。わたしはアイシャちゃんの記憶と融合してわたしの意識は失いアイシャちゃんになるはずなのに何故かわたしの意識の方がはっきりとしているの」

「もしかしたら、アイシャは死にたいのかもしれない……体を維持させるためにアイシャお姉ちゃんがいるのかもしれない」

「うん、わたしもそう思うの。この体は衰弱して行ってるのがわかるわ。
眠りから醒めなければ死んでしまうわ、死なないように無意識で体がわたしを目覚めさせてしまったのかもしれない」
わたしは自分の胸に手を当てて
「アイシャちゃん、貴方は生きなきゃ駄目だよ、わたしと違ってみんなに愛されているじゃない」

キリアン君が大きな声で

「アイシャお姉ちゃんだってみんなに愛されていたんだ!本当は生きていて欲しかった。なのに小さかった僕は馬鹿だからアイシャお姉ちゃんの気持ちを優先してしまったんだ、ごめんなさい。……アイシャお姉ちゃん」

「違うわ、わたしはもう生きることはできなかった。もし手術してもその時は助かったかもしれないけどもう手の施しようはなかったわ。自分の体だからわかっているの」

それに……

「わたしは誰からも必要とされていなかったしね」
わたしはなんとかみんなの前で微笑んでみせた。

「アイシャお姉ちゃんは知らないんだよ。みんながどれだけ悲しんだか……2歳の僕は残酷だった。今の僕なら助けてあげられたのに……」

「キリアン君、わたしは貴方のおかげで幸せに死んでいけたの。後悔はしていない。
ただこの体のアイシャちゃんが心配なの。アイシャちゃんはリサ様に疎まれているのね、それを感じて傷ついているの。それに妹さんのターナちゃんのことも悩んでいるみたい、そのうえわたしの前世の記憶のせいでダメージを受けてしまっているの」

「……わたし達の大事なアイシャ様は目覚めるのでしょうか?」

「………分からない……でもわたしは死んだ人間よ、アイシャちゃんを早く戻してあげたいの」





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