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「はあ、わたしの11歳の誕生日は散々だったわ……でもしばらくはターナからの意地悪な言葉を聞かなくていいから気が楽だわ、それにみんなの顔色を見て笑顔でいなくてもいいし、ゆっくり過ごそう」

わたしはベッドの上で好きな本を読み漁って過ごした。
心配してメリッサが昼間はそばに居てくれた。

お母様は仕事の合間に会いにきて、わたしの傷を治療してくれた。

「アイシャ、昨日はごめんなさいね、あなたの誕生日だったのに…退院したらお祝いをしましょうね」
とわたしの機嫌を取ろうとしてくれた。

わたしは別に怒ってもショックでもなかった。

ただ少し寂しかっただけ。

お父様は仕事が忙しくてまだ会いには来てくれなかった。
ターナは来る気はないみたいでなんの音沙汰もない。

わたしを怪我させた張本人は、もちろん顔を見せには来なかった。もちろん来ても許すつもりはない。

人に怪我させておいて謝りもしないなんて、いくら王子だからと言って許せるわけがない。



「アイシャ様、頭の痛みはどうですか?」

「うん、お母様が治療してくれたのでずいぶん良くなったわ。もう2日もベッドの上にいるのよ?退院してもいいと思うのだけど」

「駄目です!頭はあとで悪くなることもあるらしいのです。まだしばらくはじっとしていてください!」

「そんなに心配しなくてもいいと思うのだけど」

「代わりにわたし、図書館で本を借りてきました。アイシャ様の好きな魔法の歴史の本です」

「ありがとう、退屈だったの」
昔は我が国以外にも魔法を使える人たちが沢山いた。
今は我が国ルビラ王国にしか残っていないらしい。

「ねぇ?ミケランは寂しがっていないかしら?」

「ミケランはずっとアイシャ様のベッドから離れようとしません。帰るのを待っているのでしょうね」

「え?ちゃんと食べているのかしら?」

「一応夜はわたしの部屋に連れて帰って餌をあげて、一緒に寝ております」

「ありがとう、これで安心してここに居られるわ」

「アイシャ様……旦那様もターナ様もお見舞いにすら来ないなんて……わたしは悔しいです、いつも我慢されて使用人にまで酷い噂をされて、どうしてアイシャ様一人が辛い思いをしないといけないのですか?」

「仕方がないの、わたしは誰にも似ていないから……みんながわたしはレオンバルド家の子ではないと思っているの……わたしも最近はよくわからないの。
お父様もお母様もとても優しいしターナは意地悪だけど別に酷いことをするわけではないわ。
でもね、わたしはあの三人の中に入れないの、入ってはいけない気がするの」

メリッサはこれ以上何も言ってこなかった。

それからわたしは1週間入院して無事に退院することができた。

ロウトとメリッサが迎えに来てくれたので、わたしは仕事中のお母様に挨拶だけして屋敷へと帰ることにした。

「アイシャ、退院祝いと遅くなったけど誕生日祝いを明日しましょう」

お母様が申しわけなさそうに言ってくれた。

「ありがとうございます、お母様」
わたしは精一杯の作り笑顔でお礼を言った。

屋敷に帰るとターナがわたしを出迎えてくれた。

「お姉様、鈍臭いですね、転んで怪我をして入院するなんて!公爵令嬢として如何なものかしら?」

うん、ターナはターナだった。

腹も立たずなんだかターナらしくてわたしは可笑しくなってクスッと笑うと

「し、失礼ですわ!お姉様!さすがどこの子かわからないだけありますね、ああ、良かった、お姉様と同じ血が流れていなくて」

ターナの言葉に周りにいた使用人達はクスクス笑っていた。
もうみんなの中でわたしはよその子になっているのだろう。

「ターナ様!何を言っているのですか?アイシャ様は旦那様達の子供です!」
それを聞いていた侍女長が真っ青な顔をしてターナに反論してくれた。

侍女長はわたしが産まれる前からいるので本当のことを知っている。

侍女長は使用人達がわたしが貰い子だと思っていることに驚いていた。

わたしに対して嘲りの眼差しで見ている使用人がいることを知らなかったみたいだ。

「侍女長、わたしは気にしていないわ、疲れたからメリッサ、部屋へ行きたいの」

「お姉様ったら、本当のことを言われて逃げるのね」

ターナはわたしが悲しそうな顔をしていないことに腹を立てて、次は何を言おうかと考えているみたいだった。

「ターナ、ごめんなさい、部屋へ行きたいの。通してくれる?」

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