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2章 ある騎士の物語
第9話
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団長室へ行くとアンナがいた。
それだけで俺はホッとした。
団長は今女騎士が監禁された場所に行っているようだ。
「アンナ、絶対にここを出るな。もし誰かが何か言ってきて来るように言われてもそれは嘘だ。俺か団長が来るまでここにいろ。わかったな?」
「わかったわ、約束は守るわ」
「お願いだ、もし俺が怪我したとか殺されたと聞いてもそれは嘘だから信じないで」
俺はあの女ならしかねないと思いアンナにくれぐれも部屋から出ないように念を押した。
「では団長に合流してくる、影の皆さんアンナをよろしくお願いします」
俺はみんなに頭を下げてアンディと団長の元へ向かった。
目の前にいたのは女騎士が毛布に包まれて立っていた。
「大丈夫か?」
俺は慌てて駆け寄り聞いた。
「大丈夫です。服を脱がされるまでは抵抗しなかっただけです。脱がされた瞬間、股間を蹴り上げました」
俺はそれを聞いてプッと笑ってしまった。
アンディは横で「痛そう」と小さく呟いた。
まわりを見渡すとハック達5人が縄で縛られて寝かされていた。
公爵とセシリア様も縄で手と足を縛られていた。
殿下はそれを呆れた顔をして見ていた。
そして、両陛下が呆然と立ち尽くしていた。
周りには数十人の騎士と貴族が立って様子を伺っていた。
これだけの人数の口止めは無理だろう。
「公爵、君の性癖は調べが済んでいる。君が主犯だな、今までも何人もの女性たちを犯して殺しているだろう。そしてセシリア、君も同罪だ。君が公爵に頼んでいる証拠も見つけた。ハックを通して連絡を取っていたな、影が調べあげた。証拠は揃っているんだ。まあ、拉致した場所にいたこと自体が隠しようがない証拠だ」
「お兄様、わたしは何も知りません。ここに突然呼ばれただけですわ」
「『貴女が犯されるところを見るのはとても楽しみだわ、何人の男とするのかしら?とても楽しみよ。
泣こうと喚こうとここでは誰にも聞こえないの!どんどん叫びなさい!その声を聞くだけで興奮するわ!
ウィルはわたしが貰うわ、貴女なんかにもったいないわ』
これは影が全て聞いてまとめてくれたんだ。もっとここで読み上げようか?」
殿下はセシリア様を睨み上げていた。
「わ、わたしはそんなこと言わないわ」
小さな声でボソボソと言っているが誰も信用などしていない。
周りからの冷たい視線にセシリア様は両陛下を見て助けを求めた。
「お父様お母様、わたしを助けてくださいますよね?いつも何があっても揉み消してくれていたではないですか!!」
セシリア様はみんなの前で言ってはいけない事を叫んだ。
両陛下は真っ青になって震えて言い訳をした。
「何を言っているんだ。お前は犯罪を犯したんだ。きちんと償いなさい」
「そうよ、セシリア。貴女はしてはいけないことをしたのよ」
目が泳いでいた。誰かと目が合わないようにして娘を切り捨ててさっさとこの場から立ち去ってしまった。
公爵はあの優しい仮面を脱ぎ捨てて太々しく座ってムスッとしていた。
「こんなことをしてもすぐに釈放される、わたしは公爵なんだ、わたしは何も悪いことなどしていない」
と反省すらしていなかった。
セシリア様は俺に気づくとニヤッと笑った。
「貴女のアンナは無事かしら?わたしが捕まえられる前にアンナを犯れって命令したのよ。ふふふ、ニセモノを囮にした罰よ」
俺はその言葉を聞いて急いで団長室へ戻った。
「アンナ!」
部屋は荒らされていた。
「アンナ!どこだ!アンナ!」
影は三人とも傷だらけで座り込んでいた。そばには血を流した男たちが数名死んでいた。
「ウィル、ここよ」
声の方を見るとアンナはソファの下から出てきた。
話を聞くと俺が団長室から出てすぐにセシリア様の雇った殺し屋が数人押し入ってきたらしい。
アンナは俺が出てすぐに影が危険を察知してソファの下にある隠し扉に隠れていたらしい。
影は殺し屋と闘い相手に勝ったが薬を撒かれて痺れて動けなくなっていた。
「みなさん、アンナを守って下さってありがとうございました」
俺は泣きながらみんなにお礼を言った。
みんなは痺れていて話すことも動くことも出来なかった。
急いでアンディが医療班を呼んで来てくれた。
みんなが運ばれたあと、団長室を俺とアンナは黙々と片付けた。
体を動かしていないと今は脱力感で動けなくなりそうだった。
巻き戻ってやっとアンナを助けることが出来た。
団長を始めみんなが俺の話を信じてくれてなんとか助けることができた。
前回はわからなかったハックと公爵の犯罪も明るみに出て捕まえられた。
俺はひたすら片付けた。
◆ ◆ ◆
『内緒で死ぬことにした ~いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を~』
7月30日から新連載スタートです。
よろしければ読んでみてくださいね。
よろしくお願いします。
それだけで俺はホッとした。
団長は今女騎士が監禁された場所に行っているようだ。
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「わかったわ、約束は守るわ」
「お願いだ、もし俺が怪我したとか殺されたと聞いてもそれは嘘だから信じないで」
俺はあの女ならしかねないと思いアンナにくれぐれも部屋から出ないように念を押した。
「では団長に合流してくる、影の皆さんアンナをよろしくお願いします」
俺はみんなに頭を下げてアンディと団長の元へ向かった。
目の前にいたのは女騎士が毛布に包まれて立っていた。
「大丈夫か?」
俺は慌てて駆け寄り聞いた。
「大丈夫です。服を脱がされるまでは抵抗しなかっただけです。脱がされた瞬間、股間を蹴り上げました」
俺はそれを聞いてプッと笑ってしまった。
アンディは横で「痛そう」と小さく呟いた。
まわりを見渡すとハック達5人が縄で縛られて寝かされていた。
公爵とセシリア様も縄で手と足を縛られていた。
殿下はそれを呆れた顔をして見ていた。
そして、両陛下が呆然と立ち尽くしていた。
周りには数十人の騎士と貴族が立って様子を伺っていた。
これだけの人数の口止めは無理だろう。
「公爵、君の性癖は調べが済んでいる。君が主犯だな、今までも何人もの女性たちを犯して殺しているだろう。そしてセシリア、君も同罪だ。君が公爵に頼んでいる証拠も見つけた。ハックを通して連絡を取っていたな、影が調べあげた。証拠は揃っているんだ。まあ、拉致した場所にいたこと自体が隠しようがない証拠だ」
「お兄様、わたしは何も知りません。ここに突然呼ばれただけですわ」
「『貴女が犯されるところを見るのはとても楽しみだわ、何人の男とするのかしら?とても楽しみよ。
泣こうと喚こうとここでは誰にも聞こえないの!どんどん叫びなさい!その声を聞くだけで興奮するわ!
ウィルはわたしが貰うわ、貴女なんかにもったいないわ』
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殿下はセシリア様を睨み上げていた。
「わ、わたしはそんなこと言わないわ」
小さな声でボソボソと言っているが誰も信用などしていない。
周りからの冷たい視線にセシリア様は両陛下を見て助けを求めた。
「お父様お母様、わたしを助けてくださいますよね?いつも何があっても揉み消してくれていたではないですか!!」
セシリア様はみんなの前で言ってはいけない事を叫んだ。
両陛下は真っ青になって震えて言い訳をした。
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目が泳いでいた。誰かと目が合わないようにして娘を切り捨ててさっさとこの場から立ち去ってしまった。
公爵はあの優しい仮面を脱ぎ捨てて太々しく座ってムスッとしていた。
「こんなことをしてもすぐに釈放される、わたしは公爵なんだ、わたしは何も悪いことなどしていない」
と反省すらしていなかった。
セシリア様は俺に気づくとニヤッと笑った。
「貴女のアンナは無事かしら?わたしが捕まえられる前にアンナを犯れって命令したのよ。ふふふ、ニセモノを囮にした罰よ」
俺はその言葉を聞いて急いで団長室へ戻った。
「アンナ!」
部屋は荒らされていた。
「アンナ!どこだ!アンナ!」
影は三人とも傷だらけで座り込んでいた。そばには血を流した男たちが数名死んでいた。
「ウィル、ここよ」
声の方を見るとアンナはソファの下から出てきた。
話を聞くと俺が団長室から出てすぐにセシリア様の雇った殺し屋が数人押し入ってきたらしい。
アンナは俺が出てすぐに影が危険を察知してソファの下にある隠し扉に隠れていたらしい。
影は殺し屋と闘い相手に勝ったが薬を撒かれて痺れて動けなくなっていた。
「みなさん、アンナを守って下さってありがとうございました」
俺は泣きながらみんなにお礼を言った。
みんなは痺れていて話すことも動くことも出来なかった。
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