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2章  ある騎士の物語

第1話

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俺は確かに死んだはずだった。
なのに俺は今愛する彼女と朝を迎えていた。
アンナの家のベッドの横には幸せそうに寝ているアンナが居る。

震える手でアンナの頬を触る。
温かい温度が伝わってくる。
俺は彼女を抱きしめて離さなかった。

「ウィル、どうしたの?苦しいわ」
アンナは驚いて目を覚ました。

「何でもない。……ところで今は…何日だったかな?」

「何を言っているの。今日はわたしの家に挨拶に行く日でしょう?」

「あ….7月14日だったか」

(アンナがあの女に無理矢理拉致されて乱暴されるまで後1ヶ月ないのか)

俺は「ごめん、ごめん」と笑って誤魔化した。

彼女の両親に挨拶をして今日は彼女と別れて自分が住んでいる寮へ戻った。

俺一人ではその日アンナを助けても、別の日にアンナがまた襲われたら助けることは難しい。
予測できるのはその日だけだ。

あの女はアンナが襲われているところを見ていたと言っていた。

ギリギリだが、アンナが拉致されるまでは手出しできない。
あの女の証拠を掴まなければ安心してアンナと過ごすことは出来ない。

俺は団長の元へ一か八か行って話すことにした。

団長は難しい顔をして聞いていた。
俺はひたすらアンナがされたこと、これから起こることを全て話した。
信じてもらえるためにいくつかのこれから起こる事件や災害のことも話した。

俺の頭がおかしいと信じて貰えないかもしれない。牢屋に入れられるか解雇されるかわからない。

俺が騎士を辞めたとしてもあの女の執拗さを考えるとアンナへの仕打ちは辞めないはずだ。
俺が彼女の傀儡になればいいのだ。わかっている。アンナを助けられないならばアンナと別れて俺はあの女の傀儡になる。
本当は殺したいが俺があの女を殺せば男爵家でしかない実家は一瞬で握りつぶされ王族殺しとして親戚一同が処刑される。
だから、アンナを助けるには団長の力がなければ無理だ。団長の協力を得られなければ俺はアンナと別れる決心をしていた。

最後まで話し終えて団長の顔を見つめた。

団長は何も話そうとしない。じっと考え込んでいるようだった。
俺は死刑宣告を受ける前の気分でじっと待ち続けた。

どれだけ待ったのだろう。

「……最近よく夢を見るんだ……ウィルが牢に入っている夢……そしてセシリアが……隣の国へ嫁に行くんだ……」
団長は長い溜息を吐いた。

ハァーー……

「その夢と今お前が話したことがほとんど同じなんだ。全部の話しを夢で見たわけではない。でもみた夢をつなぎ合わせるとお前の話に全てかち合うんだ……これはいったいどう言うことだ。確かにセシリアがお前を気に入っていて無理矢理自分の護衛にした。そしてお前を常にそばに置きたがっている、でもまさかあの娘がそんなことまでするのか?いや、でも夢でも確かにしていた。俺は見過ごしたせいで後悔しかなかった。夢の中では……いや、待て……どうすればいいのか……すまん、まだ頭がついていかない」

団長は考え込んでいるのかひとりぶつぶつと呟いていた。

団長はベルを鳴らして
「アンディ・フォーテを呼んでくれ」
と、部下に頼んだ。

その間も団長は独り言をずっと言っては紙に何かを書いてまたしばらく考え込んでまた紙に書くと言う作業を繰り返していた。

俺はそれを黙って立ってみていた。
アンディは前回俺の次にあの女から狙われた男だった。俺と同じ部隊で後輩でもあるが自分とはそこまで親しくはなかった。

アンディなら話せば協力してもらえるかもしれない。次に狙われることを信じてもらえればだが。



★ ★ ★

『ある騎士』の死んだその後を書いてみました。

もしよろしければ読んでみてくださいね。

一日一話の更新で……何話になるのかはまだわかりませんが、書き始めたばかりなので……すみません、よろしくお願いします








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