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67話 過去戻り編
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「マリアンヌ様はとても優しくていい匂いがするの」
「どんな臭いなの?」
「ふふ、甘くて優しくてあったかいの。お母様みたい」
「そうなのね、わたし達と一緒に帝国へ行っても大丈夫かしら?」
お祖母様の問いに、ユシリス様はわたしをチラリと見た。
わたしはユシリス様を見て微笑んで、頷いた。
「わたし、お祖父様とお祖母様と帝国へ行きたい。マリアンヌ様と一緒にいたい」
(よかった、ユシリス様がこれで幸せになれるわ
でもあの糞気持ち悪い公爵はどうなるのだろう?)
「お父様は追いかけてこない?わたしをまた屋敷に閉じ込めない?また鞭で叩かれない?」
わたしの考えていることがユシリス様に分かってしまったのか、ユシリス様はまた不安そうな顔をした。
「ユシリス、お前の父親は悪い事をしたんだよ、お前を叩いたり閉じ込めたりしてね。だから何があってももうユシリスとは会えないんだ。だから大丈夫だよ、帝国で幸せに暮らそう」
「うん!お姉ちゃんも一緒に暮らしたい!」
「え?」
「あっ!」
ユシリス様は、「しまった!」と言う顔をして手を口で押さえて、わたしの方を見た。
お祖父様やお祖母様にはわたしの姿は見えていない。
そこには誰も居ないはず。
なのに二人はわたしの姿が見えているように思えた。
「貴女がユシリスをずっと守ってくださったんですね」
優しい笑顔でわたしに話しかけてきたお祖父様。
「ユシリスを助けてくれてありがとうございました。この子がわたし達に心を開いてくれたのも貴女が優しく毎日そばに居てくれたからですよね?」
「え、ええ?見えるはずがないのに!」
わたしが驚いていると
「偶にぼんやりと人の気配が何故かしていました。
その気配がした時は、苦しんでいるはずのユシリスがとても安心して穏やかになっていました」
お祖母様がわたしに頭を下げた。
「わたしにも偶に見える時がありました。わたし達三人をじっと見ていましたよね?」
お祖父様にバレていたんだ。
わたしはユシリス様を預けるのに、この人達が適しているかずっと会話を聞いて確認していた。
「わたし達にユシリスを預けてくださいますか?この子をこれから幸せにしていきます」
「ユシリス様をお願いします」
わたしが頭を下げると
「お姉ちゃんもそばにずっと居てくれる?」
「ごめんね、お姉ちゃんもお父様に会いに行かないといけないの。ずっと素直になれなくて嫌ってばかりだったけど、もう一度やり直してみたいの」
「お姉ちゃんにもう会えない?」
「会えると思うわ、どんな形になるかどんな未来になっているか今はわからないけど、ずっと先で会えると思うの」
わたしは帰らないといけない。
この世界にずっと居られない。
もうここ最近、わたしは何かに引っ張られている。
よくわからない何かがわたしを呼んでいる。
もうこの世界には居られないんだろうと感じていた。
元の世界に戻れる?
戻ったら死んでいました……なんてあるのかな?
わたしがこの世界に干渉した所為で、わたしがいた世界は変わってしまっているのかしら?
記憶持ちの人、巻き戻った人、わたしがこの世界を変えた所為で、戻ってもわたしの知る世界ではないかも知れない。
戻るのが怖い。
「お姉ちゃん」と縋って懐いてくれるユシリス様とずっと居たいと、また、逃げ出してしまいたい気持ちになった。
でも、前に進む。
そう決めて頑張ってきた。
元の世界でわたしはまたあの痛くて辛い体が待っている。
刺されて傷ついた体、毒により苦しんだ体、考えただけでうんざりする。
でも、帰ろう。
辛くても苦しくても、前に進むために。
「ユシリス様、ずっと先の未来で会える事を楽しみにしています。お二人、どうぞユシリス様を幸せにしてくださいね、よろしくお願いします」
そうしてわたしは、この世界を後にした。
わたしはなんだったのだろう?
よくわからない存在としてひと月余りをこの不思議な世界で過ごした。
夢なのか、現実なのか?
「どんな臭いなの?」
「ふふ、甘くて優しくてあったかいの。お母様みたい」
「そうなのね、わたし達と一緒に帝国へ行っても大丈夫かしら?」
お祖母様の問いに、ユシリス様はわたしをチラリと見た。
わたしはユシリス様を見て微笑んで、頷いた。
「わたし、お祖父様とお祖母様と帝国へ行きたい。マリアンヌ様と一緒にいたい」
(よかった、ユシリス様がこれで幸せになれるわ
でもあの糞気持ち悪い公爵はどうなるのだろう?)
「お父様は追いかけてこない?わたしをまた屋敷に閉じ込めない?また鞭で叩かれない?」
わたしの考えていることがユシリス様に分かってしまったのか、ユシリス様はまた不安そうな顔をした。
「ユシリス、お前の父親は悪い事をしたんだよ、お前を叩いたり閉じ込めたりしてね。だから何があってももうユシリスとは会えないんだ。だから大丈夫だよ、帝国で幸せに暮らそう」
「うん!お姉ちゃんも一緒に暮らしたい!」
「え?」
「あっ!」
ユシリス様は、「しまった!」と言う顔をして手を口で押さえて、わたしの方を見た。
お祖父様やお祖母様にはわたしの姿は見えていない。
そこには誰も居ないはず。
なのに二人はわたしの姿が見えているように思えた。
「貴女がユシリスをずっと守ってくださったんですね」
優しい笑顔でわたしに話しかけてきたお祖父様。
「ユシリスを助けてくれてありがとうございました。この子がわたし達に心を開いてくれたのも貴女が優しく毎日そばに居てくれたからですよね?」
「え、ええ?見えるはずがないのに!」
わたしが驚いていると
「偶にぼんやりと人の気配が何故かしていました。
その気配がした時は、苦しんでいるはずのユシリスがとても安心して穏やかになっていました」
お祖母様がわたしに頭を下げた。
「わたしにも偶に見える時がありました。わたし達三人をじっと見ていましたよね?」
お祖父様にバレていたんだ。
わたしはユシリス様を預けるのに、この人達が適しているかずっと会話を聞いて確認していた。
「わたし達にユシリスを預けてくださいますか?この子をこれから幸せにしていきます」
「ユシリス様をお願いします」
わたしが頭を下げると
「お姉ちゃんもそばにずっと居てくれる?」
「ごめんね、お姉ちゃんもお父様に会いに行かないといけないの。ずっと素直になれなくて嫌ってばかりだったけど、もう一度やり直してみたいの」
「お姉ちゃんにもう会えない?」
「会えると思うわ、どんな形になるかどんな未来になっているか今はわからないけど、ずっと先で会えると思うの」
わたしは帰らないといけない。
この世界にずっと居られない。
もうここ最近、わたしは何かに引っ張られている。
よくわからない何かがわたしを呼んでいる。
もうこの世界には居られないんだろうと感じていた。
元の世界に戻れる?
戻ったら死んでいました……なんてあるのかな?
わたしがこの世界に干渉した所為で、わたしがいた世界は変わってしまっているのかしら?
記憶持ちの人、巻き戻った人、わたしがこの世界を変えた所為で、戻ってもわたしの知る世界ではないかも知れない。
戻るのが怖い。
「お姉ちゃん」と縋って懐いてくれるユシリス様とずっと居たいと、また、逃げ出してしまいたい気持ちになった。
でも、前に進む。
そう決めて頑張ってきた。
元の世界でわたしはまたあの痛くて辛い体が待っている。
刺されて傷ついた体、毒により苦しんだ体、考えただけでうんざりする。
でも、帰ろう。
辛くても苦しくても、前に進むために。
「ユシリス様、ずっと先の未来で会える事を楽しみにしています。お二人、どうぞユシリス様を幸せにしてくださいね、よろしくお願いします」
そうしてわたしは、この世界を後にした。
わたしはなんだったのだろう?
よくわからない存在としてひと月余りをこの不思議な世界で過ごした。
夢なのか、現実なのか?
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