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30話

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しばらく待っていると、もう一人の騎士さんが戻ってきた。

「お嬢さま、今からヴィクトリア様のお部屋へお連れ致します」
と言って、連れていってくれた。




「院長先生、少しお話をしたいのですが……」

「こちらへいらっしゃい、エリーゼ」

先生が座っている横に座るように促された。

「先生、わたしは3年半も経っているというのに、まだ殿下とお父様を許せないのです。
頭ではわかっています。今のお二人が前回のような事はしていないことも。
でも今回もお父様はわたしが6歳の時にはわたしを屋敷に一人で放置していました。巻き直しになって慌ててわたしとの関係を修復しようとしましたがわたしはそれを受け入れられませんでした」

先生はわたしにそっと寄り添い、背を撫でてくれた。

その手がとても優しくてわたしの棘でできた心をそっと癒やしてくれた。

「貴女が受けた前回の人生はとても辛いものだったのよね。でもね、貴女の友人達も辛い中、貴女を心配して探して会いにきてくれた。貴女だけがまだ前に進もうとしていない。
わたしはねエリーゼ、あの二人を許してあげろとは言わないわ。でもね、あの二人に凝り固まった気持ちだけで生きるなんて馬鹿らしいと思うの」

「馬鹿らしい?」

「そうよ、だって貴女の人生よ。
せっかくやり直しが出来ているんだから、逃げたり過去に囚われて苦しんだりするより、今からの人生を楽しまなきゃ勿体無いわ」

「……でもどうしたらいいのかわかりません」

「そうかしら?孤児院で過ごした3年半は、自分でいろんなことを考えて学んで動いて、貴方はしっかり楽しんで生きていたじゃない。
これからもそうしていきましょう。とりあえずまず考えてみましょう」

「考える?」

「そうよ。今現在、ニューベル公爵とハウエル公爵が暗躍しているのは確かだわ。そのことにはわたし達は見守るしかないわ。
でもねマリーナ様には近づく事はできるわ。マリーナ様がクロード王子に近づいたのはまだ先の話よね?今のマリーナ様はまだ何も知らない子どもだと思うのよ」

「……そうですね」
あの意地悪でわたしを馬鹿にした嘲笑う姿しか覚えていないので、思い出すだけで嫌な気分になった。

「エリーゼ、前回の時のマリーナ様はまだいないのよ。陛下に言ってお茶会を開いて貰いましょう。今どうなっているのか知る必要があるわ。貴方はしばらくは公爵令嬢に戻ってね」

院長先生は何か悪戯をするような楽しそうな顔をしてわたしを見た。

わたしは嫌ですと言えずに
「はい」と頷くしかなかった。

まさかのマリーナ様との直接対決?




それから本当に二週間後という早さで、王宮内の庭園で第一王子主催のお茶会が開かれた。

わたしはドレスすら持っていないので慌てたが、なぜか私に合うドレスがすぐに用意された。

アフタヌーンドレスは絹で作られいた。

わたしの金髪にブルーの瞳に合うように、淡いピンク色で前はシンプルに作られているが、後ろにはふんだんにレースを付けて歩くたびに後ろがフワフワしてとても可愛い。

アクセサリーは子どもなのでたくさん付けずにブルーの大きめのブローチを一つ用意されていた。

このブルーの石はブルーサファイアで「慈愛」という言葉の意味がある。

(これはもしかしてお父様?)

「慈愛」には文字通り「常に慈(いつく)しみを注(そそ)いでかわいがる(愛する)心」
親が自分の子供に対するような深い愛情を表すのに使われることが多い言葉だが、それを知って送ったの?

(お父様がわたしにドレスと宝石を送ってくださるはずがないわ)

わたしは、一瞬頭に浮かんだことを全て否定して、誰が作ってくれたかわからないけど、有り難く着させて頂くことにした。



騎士様が護衛で庭園まで連れて行ってくれた。


「ありがとうございました」
わたしはいつもそばに居てくれる顔見知りになった騎士様にお礼を言って、グッと気合を入れて10数人集まっているお茶会の席へ顔を出した。

するとカイラとエレンが
「エリーゼ、ここよ」
と手を振って招いてくれた。
わたしはホッとして二人の席へ行くとそこには見覚えのある顔がいた。

そう、幼い頃には会った事はなかったけど、忘れる事はないがそこにあった。

「初めまして、エリーゼ・バセットでございます」

わたしはマリーナ様と今回、初めて対峙した。














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