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シェリル夫人のお茶会②
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お茶会が始まりとりあえずわたしはひたすら貝になっていた。
皆さまがお話をされている間、和かに笑顔で相槌を打つ。
人見知りで話の苦手なわたしの社交術である。
この社交術?でいつも知らない方達との時間をなんとかやり過ごしていた。
知り合いがいれば少しは話せるんだけど…さすがに大物のお二人がいては緊張感が半端ないわ。
でも今日はいつも以上にわたしに話しかけてこられるような気がする。
「シャノン様はどう思われます?」
「今劇場の舞台では隣の国の演劇が行われているのよ、観にいかれましたか?」
何を聞かれても「すみません、存知上げません」
と答えるしかない。
(いやいや、わたしこの3ヶ月ひたすら市井で働いていたのよ、何もわからないわ)
「……そろそろ本題に入っても宜しいかしら?」
シェリル夫人が問いかけた。
わたしはポカンとして固まっていたら、三人がクスッと笑った。
「シャノン様、そんなに固くならないでくださいね。貴方の事情は全てお義母様に聞いているのよ」
マリアンナ様は全てを把握されていたみたいだった。
(何を言われるのかしら?あぁ、わたし顔がひきつっていないかしら?)
「そうよ、シャノン様は何も悪くないわ。ベルアート公爵は一体何を考えているのかしら?公爵としても騎士団副隊長としても恥ずかしい限りだわ」
と顔を顰めてマイナー公爵夫人が言った。
「あら、ラウル様は副隊長ではなくなったわ。隊での淫らな行為が発覚して今は謹慎処分中よ」
「え?……そうなんですか?」
(淫らな行為って?え?)
「シャノン嬢は知らなかったと思うけど、あのアイリス様と隊の執務室でそういう行為をしていたのが分かったの。いまは謹慎中だけど処分が決まれば除隊ね」
「・・・」
返事ができなかった。
二人が抱き合ってキスしていた場面を思い出して、たまらずに涙が出て溢れてきた。
ポロポロと出る涙は止まらなかった。
わたしはラウルと結婚してからの時間を思い出していた。
彼は忙しくゆっくり会う時間は少なかったが、朝起きた時にベッドの隣にいる彼の温かさにいつもホッとしていた。
「おはよう」と言って額にキスを落とし、ギュッと抱きしめてくれた。
朝食の時は、昨日あった出来事を彼が話してくれるのでそれを聞きながら朝食を食べた。彼はいつも柔かな人だった。
沢山の話題はないけれど、彼の優しい声を聞いているだけで幸せでいつも二人の間には穏やかな時間が流れていた。
わたしもラウルに対して少しずつ話すことにも慣れてきて政略結婚でもそこには愛ができていたのだと思っていた。
わたしも彼の優しさに惹かれていった。
アイリスから言われた言葉があたまに浮かぶ。
『シャノン、ラウル様に最近抱かれていないでしょ?貴方をみても全くそんな気にはならないって昨日もわたしの部屋のベッドの中で言ってたわ。お人形さんだって』
子どもの頃から言われていた言葉。
「『お人形さん』みたいだね」
身体が弱くて喘息の発作を起こすのでベッドの中で過ごすことが多かった。
何も出来ないわたしはいつも侍女達にお世話になってばかり。コップのお水も飲ませてもらい着替えも入浴も全てしてもらう。
わたしはただ寝ているだけ。
お父様の邪魔にならないように目に入らないようにベッドで寝るだけのお人形。
そんなわたしに生きる楽しさを教えてくれたのがロイズ達家族とシェリル夫人家族だった。
家庭の暖かさを知らないで育ったわたしは躊躇いながらも焦がれてしまった。
明るい笑い声、優しい瞳、楽しい会話、結婚したら、わたしにもそんな素敵な家庭を築けるかもしれないなんて期待していた。
夢は夢でしかなかった。
皆さまがお話をされている間、和かに笑顔で相槌を打つ。
人見知りで話の苦手なわたしの社交術である。
この社交術?でいつも知らない方達との時間をなんとかやり過ごしていた。
知り合いがいれば少しは話せるんだけど…さすがに大物のお二人がいては緊張感が半端ないわ。
でも今日はいつも以上にわたしに話しかけてこられるような気がする。
「シャノン様はどう思われます?」
「今劇場の舞台では隣の国の演劇が行われているのよ、観にいかれましたか?」
何を聞かれても「すみません、存知上げません」
と答えるしかない。
(いやいや、わたしこの3ヶ月ひたすら市井で働いていたのよ、何もわからないわ)
「……そろそろ本題に入っても宜しいかしら?」
シェリル夫人が問いかけた。
わたしはポカンとして固まっていたら、三人がクスッと笑った。
「シャノン様、そんなに固くならないでくださいね。貴方の事情は全てお義母様に聞いているのよ」
マリアンナ様は全てを把握されていたみたいだった。
(何を言われるのかしら?あぁ、わたし顔がひきつっていないかしら?)
「そうよ、シャノン様は何も悪くないわ。ベルアート公爵は一体何を考えているのかしら?公爵としても騎士団副隊長としても恥ずかしい限りだわ」
と顔を顰めてマイナー公爵夫人が言った。
「あら、ラウル様は副隊長ではなくなったわ。隊での淫らな行為が発覚して今は謹慎処分中よ」
「え?……そうなんですか?」
(淫らな行為って?え?)
「シャノン嬢は知らなかったと思うけど、あのアイリス様と隊の執務室でそういう行為をしていたのが分かったの。いまは謹慎中だけど処分が決まれば除隊ね」
「・・・」
返事ができなかった。
二人が抱き合ってキスしていた場面を思い出して、たまらずに涙が出て溢れてきた。
ポロポロと出る涙は止まらなかった。
わたしはラウルと結婚してからの時間を思い出していた。
彼は忙しくゆっくり会う時間は少なかったが、朝起きた時にベッドの隣にいる彼の温かさにいつもホッとしていた。
「おはよう」と言って額にキスを落とし、ギュッと抱きしめてくれた。
朝食の時は、昨日あった出来事を彼が話してくれるのでそれを聞きながら朝食を食べた。彼はいつも柔かな人だった。
沢山の話題はないけれど、彼の優しい声を聞いているだけで幸せでいつも二人の間には穏やかな時間が流れていた。
わたしもラウルに対して少しずつ話すことにも慣れてきて政略結婚でもそこには愛ができていたのだと思っていた。
わたしも彼の優しさに惹かれていった。
アイリスから言われた言葉があたまに浮かぶ。
『シャノン、ラウル様に最近抱かれていないでしょ?貴方をみても全くそんな気にはならないって昨日もわたしの部屋のベッドの中で言ってたわ。お人形さんだって』
子どもの頃から言われていた言葉。
「『お人形さん』みたいだね」
身体が弱くて喘息の発作を起こすのでベッドの中で過ごすことが多かった。
何も出来ないわたしはいつも侍女達にお世話になってばかり。コップのお水も飲ませてもらい着替えも入浴も全てしてもらう。
わたしはただ寝ているだけ。
お父様の邪魔にならないように目に入らないようにベッドで寝るだけのお人形。
そんなわたしに生きる楽しさを教えてくれたのがロイズ達家族とシェリル夫人家族だった。
家庭の暖かさを知らないで育ったわたしは躊躇いながらも焦がれてしまった。
明るい笑い声、優しい瞳、楽しい会話、結婚したら、わたしにもそんな素敵な家庭を築けるかもしれないなんて期待していた。
夢は夢でしかなかった。
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