Yesterday's HERO

クラピナ

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レンくんと食べるミルクレープは大層な高級品ではないにしても、私にとって特別だった。








「おいしいです」

「こんなん甘ったるくて食べられへんわ」

「レンくんの好きな食べ物はなんですか?」

「肉」

「来年のバレンタインデーは肉にしますね」

「男の一大行事、ぶち壊しにする気やろ」

「えぇ、喜んでくれるかと思ったんですけど」






恋愛沙汰は得意ではない。

レンくんのことは好きだ。
でもそれは単なる憧れであり、その先にどうこうしようとは思っていない。

これはある種のマインドコントロール。
自分にそう言い聞かせないと、レンくんのことばっかり考えて、レンくんのせいで心臓がきゅっと萎縮して、レンくんと会えばまるで私が私じゃないみたいに声が高くなってドキドキして、動きがぎこちなくなる。

恋に自制が効いたら苦労しないだろう。
どうしようもない感情に振り回されるのは時間の無駄だと、ずっと思っていたのに。






「レンくん」

「なに?」

「好き」



ベッドに座っていたレンくんに飛びついた。
そのまま後ろに倒れて、大好きなぬくもりを目一杯感じた。





「…え、好きって」

「お兄ちゃんみたいに、優しい」

「…そうやな、悠里は妹みたいやけど」

「お兄ちゃんって呼ぼうかなぁ?」

「うわ、勘弁」




顔は見えないけれど、レンくんの鼓動がしっかりと聞こえてくる。

私の顔が見えなくても、きっと鼓動の速さのせいで「好き」が故意的なものだとバレているんだろうなと思った。
生憎、レンくんは"鈍感"とは言えない。






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