【これはファンタジーで正解ですか?】燈編

司書Y

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告。新入生諸君

8 利き腕はあけておいて 1

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 電算部は魔道コンピューターを使って作り出した仮想現実の世界で行う戦闘訓練を主な活動内容としている。電算部という名前で誤解されがちなのだがゴリゴリの体育会系だ。似たような部活は全国に点在している国立のスレイヤー養成学科がある高校にはほとんど存在している。ちなみに普通(と評するのが適切であるかは非常に疑問ではあるが)の魔道コンピューターを扱う部活も存在している。そちらは、主に魔道技術科の生徒が在籍しているのだがそれはまた別のお話。
 魔道コンピューターは魔光や魔昏を供給することで疑似的な魔法を使用することができる魔法具の一種だ。女神川学園電算室で使用されているのは幻術の一種で、専用の巨大な幻術の発生装置に魔昏を供給して、実習室の中に仮想現実を作り出し、あらかじめプログラムされた戦闘訓練を行う。
 実習用の仮想現実の質は設備の値段とプログラムの精度に比例しているが、女神川学園のそれは国内最高峰。そして、走らせるプログラムは宙の自作だが、これも、市販のものとは比べ物にならない精度を誇っていた。

 と、ここまでの説明で何が言いたいのかというと、それは、中にいる者にとって、その世界が現実と見分けがつかないほどだということだ。視覚・聴覚・触覚などの五感は、完全に再現されていて、現実世界と何ら変わらない。そして、電算部の使用しているプログラムが市販のプログラムと違う点が一つある。
 電算部オリジナルプログラムの最大の特徴。

 致死量以下の痛覚の再現。

 法律で禁止されている致死量の痛覚の再現をかろうじて守ってはいるのだが、それ以下の痛みは現実と変わらずにあるということだ。通常のプログラムでは指を切った程度の痛みは再現されるが、プログラム内で負傷した場合身体の動きを抑制することで、痛みの表現に変えることが多い。特に学生の実習には痛覚の再現は好ましくないと指導要領にも記されている。
 しかし、電算部ではその制限を完全に取っ払ったプログラムを使用していた。腕が千切れれば腕が千切れた痛みが再現される。つまりは、死なない程度には痛い。いや、いってしまえば本当に死なないだけで死ぬほど痛い。
 実戦では痛いのが当たり前。痛覚を恐れない戦闘に慣れても意味がない。というのが、部の創設者の方針だったらしい。

 とにもかくにも、電算部の仮想現実実習はほぼ実戦と変わらないのであった。
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