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Internally Flawless
15 捜査 4
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◇翡翠◇
職場である賃貸ホールを出ようとしたところで顔を合わせたナオを捕まえて、スイは近所にある喫茶店にいた。今時珍しい全面禁煙どころか、禁煙席すらない全席喫煙席と言うのが気に入って、ほぼ毎日のように通っている喫茶店だ。非喫煙者のナオには申し訳ないが、この店のコーヒーがまたかなりの良品な上に、職場の人間を見かけたことがないのもスイにとっては居心地がいい場所だった。
ブレンドとメープルトーストを注文して四人掛けの席に座る。ナオはアメリカンとナポリタンを注文して後に続いた。
「スイさん。こんなとこ、いつ見つけたの? いつもPCの前にいたような気がするんだけど……」
店の中をきょろきょろと見回しながら、ナオが聞いてくる。
確かに、あの賃貸ホールや、舞台装飾班の仕事場であった賃貸倉庫ではPCをずっと開いていた。その実全く仕事はしていなかったのだが、かわりに不穏当なプログラムがいくつか出来上がってしまったのは、ナオには内緒だ。
「休憩時間は人のいないとこ探しまわってたから」
苦笑して、スイは答えた。それは、人嫌いだからというわけではない。
「『調べ物』するときには、タバコ吸いたいし。ごめん。一本いいかな?」
指でタバコを吸う仕草をすると、『どうぞ』と、ナオが答えた。
愛飲しているタバコを一本、ケースから出して、銜えて、紙マッチで火をつける。ふ。と、目を閉じ、ゆっくりと燻らせると、ナオのため息が聞こえた。
「スイさん」
正面に座っているナオから、顔を逸らして紫煙を吐きだす。
「? なに」
それから、正面を向き直ってナオの顔を見ると、彼は少し困ったような顔をしていた。
「それ、ヤバいって」
ナオが言っている意味が分からなくて、スイは首をかしげる。何か注意されるようなヤバいことをしてしまったのだろうか。それとも、煙草。本当は嫌だったのだろうか。
「ヤバいって、俺、なんか失敗した? えと、こないだ渡した『従業員』のリストなんかおかしかった? 俺なりにちゃんと裏付けもしたつもりだったんだけど……」
アキにも話したが、舞台装飾のスタッフの中の容疑者については、殆ど検証が終わっていた。『従業員』はその符丁だ。最初は全員を一人一人検証する必要があると思っていたのだが、思いがけないヒントを見つけて、その作業は2週間目に入る頃には終わっていた。
「や。リストの方は多分完璧……。でも、そうじゃなくて……」
スイの顔を見て、ナオはまた、ため息をつく。
職場である賃貸ホールを出ようとしたところで顔を合わせたナオを捕まえて、スイは近所にある喫茶店にいた。今時珍しい全面禁煙どころか、禁煙席すらない全席喫煙席と言うのが気に入って、ほぼ毎日のように通っている喫茶店だ。非喫煙者のナオには申し訳ないが、この店のコーヒーがまたかなりの良品な上に、職場の人間を見かけたことがないのもスイにとっては居心地がいい場所だった。
ブレンドとメープルトーストを注文して四人掛けの席に座る。ナオはアメリカンとナポリタンを注文して後に続いた。
「スイさん。こんなとこ、いつ見つけたの? いつもPCの前にいたような気がするんだけど……」
店の中をきょろきょろと見回しながら、ナオが聞いてくる。
確かに、あの賃貸ホールや、舞台装飾班の仕事場であった賃貸倉庫ではPCをずっと開いていた。その実全く仕事はしていなかったのだが、かわりに不穏当なプログラムがいくつか出来上がってしまったのは、ナオには内緒だ。
「休憩時間は人のいないとこ探しまわってたから」
苦笑して、スイは答えた。それは、人嫌いだからというわけではない。
「『調べ物』するときには、タバコ吸いたいし。ごめん。一本いいかな?」
指でタバコを吸う仕草をすると、『どうぞ』と、ナオが答えた。
愛飲しているタバコを一本、ケースから出して、銜えて、紙マッチで火をつける。ふ。と、目を閉じ、ゆっくりと燻らせると、ナオのため息が聞こえた。
「スイさん」
正面に座っているナオから、顔を逸らして紫煙を吐きだす。
「? なに」
それから、正面を向き直ってナオの顔を見ると、彼は少し困ったような顔をしていた。
「それ、ヤバいって」
ナオが言っている意味が分からなくて、スイは首をかしげる。何か注意されるようなヤバいことをしてしまったのだろうか。それとも、煙草。本当は嫌だったのだろうか。
「ヤバいって、俺、なんか失敗した? えと、こないだ渡した『従業員』のリストなんかおかしかった? 俺なりにちゃんと裏付けもしたつもりだったんだけど……」
アキにも話したが、舞台装飾のスタッフの中の容疑者については、殆ど検証が終わっていた。『従業員』はその符丁だ。最初は全員を一人一人検証する必要があると思っていたのだが、思いがけないヒントを見つけて、その作業は2週間目に入る頃には終わっていた。
「や。リストの方は多分完璧……。でも、そうじゃなくて……」
スイの顔を見て、ナオはまた、ため息をつく。
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