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Internally Flawless
13 融解 3
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もぞもぞと着替えながら、スイはアキが汚れたシーツをはがして、新しいシーツをマットレスにかけているのをじっと見ていた。背中だけじゃなくて、広い肩も、腕も、すごく高い位置にある腰も、何もかもすごく綺麗だ。
「あのさ。スイさん……」
背中を向けたまま、アキが言う。
「え?」
あんまり綺麗な背中に見入っていたせいで、スイはなんだか間抜けな声で返事をしてしまった。
「そんなに見つめられると、穴開きそうなんだけど……」
シーツを代え終わって、くるり。と振りむいたアキは少しだけ複雑な顔。
「俺の背中、そんなに好き?」
ぼっ。と。音が出そうなほどスイの顔が赤くなる。確かに見つめてはいたけれど、気付かれているとは思わなかった。恥ずかしい。
「……さっきまであんなに大胆だったのに、そんなことで真っ赤になっちゃうんだ」
にっこりと笑って、アキはスイの隣に座った。
「その顔、可愛いな」
アキはずるい。
「ね。スイさん黙ってないで。声、聞かせて?」
喧嘩した時はあんなに横暴だったくせに。その後だって、散々スイのことを放っておいたくせに。こんな風に急に甘やかして、沢山愛して、夢中にさせて、好き以外になにも考えられなくなってしまう。
「……アキ君はズルい」
だから、スイは思わず呟いた。
「ズルい俺は嫌い?」
さらり。と、アキの指が髪を梳く。真っすぐ真剣に見つめる赤い瞳に、今更だけれど、鼓動が早くなる。
「嫌い。……じゃない。好きだよ」
嫌い。だなんて、嘘でも言えなかった。これが全部夢で、言ってしまったらその夢が冷めてしまいそうで怖かった。
「も。喧嘩とかしたくない……」
会えなかった間考え続けたことが、口から零れる。
「そばにいないと。怖い。あのモデルの子……綺麗だけど、嫌いだ。アキ君とユキ君のそばにいてほしくない。ああ。こういうの。ホント嫌だ。誰かに嫉妬するのとか、やだ。俺、みっともない」
こんなことを言うつもりではなかった。困らせたくないし、折角二人きりの時間をこんな気持ちで過ごすのはもったいない。
けれど、一旦溢れ出してしまった言葉をスイは止めることができなかった。
「夢……怖かった。も。忘れなきゃってわかってるけど。怖い。ごめん。……ごめん。聞きたくないよな。こんなの。でも、あいつ……今日、一緒にいたあいつ。あの人に似てて……」
溢れ出した言葉を精査する余裕がない。だめだ。と思う前に、思いつくまま言葉になってしまう。
アキはスイの細い肩に手を回して、抱き寄せてくれた。肩に頭を預けると、アキの匂いがする。
「なんでも聞くから。なんでも言っていいよ。聞かせて。
ずっと、スイさんの声。聞きたかった。俺ももう、喧嘩とかしたくない。
スイさんの顔見られないのも、声聞けないのも拷問だった。嫉妬してくれたのは正直嬉しかったけど、スイさんが嫉妬する必要なんてねえよ。俺はスイさんしか好きじゃねえし。多分、ユキも同じだ」
ちゅ。と、スイの翠の髪にキスをして、アキが立ち上がる。
「ベッド行こ?」
それから、また、スイの身体を抱きあげて、ベッドまで運んでくれた。
「あのさ。スイさん……」
背中を向けたまま、アキが言う。
「え?」
あんまり綺麗な背中に見入っていたせいで、スイはなんだか間抜けな声で返事をしてしまった。
「そんなに見つめられると、穴開きそうなんだけど……」
シーツを代え終わって、くるり。と振りむいたアキは少しだけ複雑な顔。
「俺の背中、そんなに好き?」
ぼっ。と。音が出そうなほどスイの顔が赤くなる。確かに見つめてはいたけれど、気付かれているとは思わなかった。恥ずかしい。
「……さっきまであんなに大胆だったのに、そんなことで真っ赤になっちゃうんだ」
にっこりと笑って、アキはスイの隣に座った。
「その顔、可愛いな」
アキはずるい。
「ね。スイさん黙ってないで。声、聞かせて?」
喧嘩した時はあんなに横暴だったくせに。その後だって、散々スイのことを放っておいたくせに。こんな風に急に甘やかして、沢山愛して、夢中にさせて、好き以外になにも考えられなくなってしまう。
「……アキ君はズルい」
だから、スイは思わず呟いた。
「ズルい俺は嫌い?」
さらり。と、アキの指が髪を梳く。真っすぐ真剣に見つめる赤い瞳に、今更だけれど、鼓動が早くなる。
「嫌い。……じゃない。好きだよ」
嫌い。だなんて、嘘でも言えなかった。これが全部夢で、言ってしまったらその夢が冷めてしまいそうで怖かった。
「も。喧嘩とかしたくない……」
会えなかった間考え続けたことが、口から零れる。
「そばにいないと。怖い。あのモデルの子……綺麗だけど、嫌いだ。アキ君とユキ君のそばにいてほしくない。ああ。こういうの。ホント嫌だ。誰かに嫉妬するのとか、やだ。俺、みっともない」
こんなことを言うつもりではなかった。困らせたくないし、折角二人きりの時間をこんな気持ちで過ごすのはもったいない。
けれど、一旦溢れ出してしまった言葉をスイは止めることができなかった。
「夢……怖かった。も。忘れなきゃってわかってるけど。怖い。ごめん。……ごめん。聞きたくないよな。こんなの。でも、あいつ……今日、一緒にいたあいつ。あの人に似てて……」
溢れ出した言葉を精査する余裕がない。だめだ。と思う前に、思いつくまま言葉になってしまう。
アキはスイの細い肩に手を回して、抱き寄せてくれた。肩に頭を預けると、アキの匂いがする。
「なんでも聞くから。なんでも言っていいよ。聞かせて。
ずっと、スイさんの声。聞きたかった。俺ももう、喧嘩とかしたくない。
スイさんの顔見られないのも、声聞けないのも拷問だった。嫉妬してくれたのは正直嬉しかったけど、スイさんが嫉妬する必要なんてねえよ。俺はスイさんしか好きじゃねえし。多分、ユキも同じだ」
ちゅ。と、スイの翠の髪にキスをして、アキが立ち上がる。
「ベッド行こ?」
それから、また、スイの身体を抱きあげて、ベッドまで運んでくれた。
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