遠くて近い世界で

司書Y

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Internally Flawless

01 矜持 02

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 ◇翡翠◇

 一日目。

 その日は特に変わったことのないいつも通りの一日だった。アキとユキはセイジが持ってきた依頼のショーモデルの警護の仕事が始まって、数時間ごとの交代で警護にかりだされている。アキの担当時間が終わって、ユキの担当時間になる前の時間。ここ数日はそのほんの数時間だけが、三人で過ごせる時間だった。

「アキ君……遅いな」

 キッチンから、リビングの壁掛け時計を見て、スイはユキに言った。
 帰ってくる予定の時間からすでに1時間以上経っている。何かトラブルでもあったのかと少しだけ不安になった。

「大丈夫。俺のところに何も連絡がないってことはなにもないよ」

 リビングでゲームをしながら、スイの心の中を見透かしたようにユキが言う。スイの方なんて見ていなかったくせに、相変わらず鋭い。何も考えていないようでいて、不意に核心をついてくる。
 それから、振り返って、ずっと見てましたけど何か? みたいな顔をして笑ってくれる。

「そだな」

 ユキの笑顔は屈託なくて、安心させてくれる。
 ここ数日はのんびりと二人と過ごす時間はなかったから、その笑顔が見られるのがスイは嬉しかった。早くアキに帰ってきてほしいと思うのもそれが理由の一つだ。

 やっぱりと言うべきか、スイはかのショーモデルのお眼鏡にはかなわなかったようだ。というよりも、面接どころか書類選考で落とされた。もちろん、こんな仕事をしている以上、書類に写真なども載っているわけではないのだが、聞いたところによると、身長、体重だけで判断されたらしい。
 もちろん、アキとユキの二人は“採用試験”に合格となった。だから、二人の了解を得て、スイは一人の仕事を受けることにした。アキがいないので表の仕事は受けることができない。だから、以前のエージェントやら、仲介屋に連絡を取って、仕事を探していた。
 別に食うには困らないので、のんびり探そうと思っていたのだが、意外にも意外な場所から連絡を受けることになる。アキに帰ってきてほしいもう一つの理由はそこにあった。

 ばたん。
 と、少し乱暴にドアを閉める音が響く。それは、リビング側のエントランスからで、それから、少し急ぐような足音。でも、それがアキの足音だと、スイにはすぐに分かった。

「スイさん!」

 その声と、リビングのドアが開くのが同時だった。
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