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月夕に落ちる雨の名は
今は昔 3 なんてこと 3
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権六に、次に会ったのは、数時間後のことだった。
壊れかけの小屋の壁をあちこち傷だらけになりながらなんとか壊して、無理矢理外に出て、走って向かった領主の屋敷の前に、彼はいた。
「ああ……なんてこと」
変化が解けるのは、相手に正体がバレたとき、化けている本人が変化をやめたとき、それから、化けている本人が死んだとき。
けれど、権六の姿は、黒羽狐のままだった。
黒羽狐の姿のまま、その首は領主の屋敷の前に晒されていた。あんなに似ていると思っていたのに、それが権六だと女にはすぐに分かった。そして、権六が残した思いの強さを知った。
「……一人も欠けてはダメだとあなたが言ったのではないですか」
ふらふら。と、近づいてその首に手を伸ばす。けれど、触れる前にその手は遮られた。
「いたぞ!!」
領主の部下たちに押さえつけられる。非力な女が逆らうことだと不可能だった。
壊れかけの小屋の壁をあちこち傷だらけになりながらなんとか壊して、無理矢理外に出て、走って向かった領主の屋敷の前に、彼はいた。
「ああ……なんてこと」
変化が解けるのは、相手に正体がバレたとき、化けている本人が変化をやめたとき、それから、化けている本人が死んだとき。
けれど、権六の姿は、黒羽狐のままだった。
黒羽狐の姿のまま、その首は領主の屋敷の前に晒されていた。あんなに似ていると思っていたのに、それが権六だと女にはすぐに分かった。そして、権六が残した思いの強さを知った。
「……一人も欠けてはダメだとあなたが言ったのではないですか」
ふらふら。と、近づいてその首に手を伸ばす。けれど、触れる前にその手は遮られた。
「いたぞ!!」
領主の部下たちに押さえつけられる。非力な女が逆らうことだと不可能だった。
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