真鍮とアイオライト 1

司書Y

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絵本

絵本 2

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 安堵して、俺は窓に背を向けた。
 本棚と本棚の間から、見えた読書用のテーブル。
 そこに、何かがいた。
 いや。正確にはいたわけじゃない。
 空気の歪のようなものがあって、そこになにかあるのがわかる。水に食塩水などの密度の濃い液体を加えた時のように、もやもやと空気に密度の濃い何かが加わったできた歪が見えているように思えた。

 だから、俺はそっと、眼鏡を外した。

 そこには、恐らく小学校に入るか入らないかくらいの女の子がいた。もう少ししたら雪が降る季節だというのに、半そでののワンピースを着ている。色は淡いオレンジ色。
 袖から伸びた腕も、裾から見える脚も、同じ年頃の子と比べると随分と細い。骨と皮ばかりとまではいかないけれど、病的なほど白く、少し力を入れたら折れてしまうのではないかと思うくらいには細かった。
 髪が長く、二つに結わえているけれど、片方は少し下がり気味で、左右のゴムの色が違う。顔は今は向こうを向いていて見えないけれど、大きな瞳のおとなしそうな少女だと、俺は知ってる。
 その子が、じっとカウンターの向こうに見える自動ドアを見つめていた。

 外した眼鏡をエプロンの前ポケットに入れて、俺はゆっくりと歩き出した。その子をびっくりさせたくなかった。
 初めてその子を見かけた日、ちょっとした不注意で、持っていた本を落としてしまって驚かせてしまった。その子は落ちた本を怯えたように見て、それからきょろきょろとあたりを見回して、ほう。と、ため息のような安堵の吐息を漏らすのと同時に消えた。

 おそらく、彼女には俺が見えない。
 だから、音を立ててそばに行くと驚いてしまう。
 慎重に気づかれないよう、注意を払って、彼女の後ろから近づく。近づく途中で、近くにあった小さな子供用の椅子を音を立てないように持ち上げる。幸い、図書館の床は絨毯が敷かれているから気づかれずに済んだ。
 そして、彼女の近くにそっと、その椅子を置く。
 それから、そのまま彼女のそばを離れる。

 カウンターに戻って、俺は選書用の資料に目を落とした。
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