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第4章〜暗躍編〜
終結
しおりを挟む皆んなによってあっという間に倒されていく、ベルゼが用意したキメラ達。
「バカなッ!!?」
その現実に焦るのは、ベルゼだけ。
一人驚愕の声を上げる。
「貴方に弄ばれて作られた可哀想な僕のキメラ達も、私の子達には敵わないね?」
「っっ、このッ!」
「そんな風に暴れても無駄だよ?誰もベルゼ、貴方の事を助けられないもの。」
お前の見方など、この場にはいない。
ベルゼがこの場から自力で逃げ出す事は不可能。
狩るものが、獲物に。
獲物が、狩る方へと変わった。
「どう?お前では私達には勝てないとお分かりいただけた?」
変わる私達の立場。
今、ベルゼは私に狩られる側の立場となった。
「なっ、そん、な、」
「何も知らないで私にあんな提案を持ちかけるんだもの、とても可笑しかったわ。途中からは貴方に哀れみまで感じていたのよ?」
「ぐっ、」
ベルゼの顔が屈辱に染まる。
「良いわね、その顔。お前に相応しい表情だ。」
そうだ、思い知れ。
もう、自分には何も出来ないと。
「好き勝手生きてきたのだから満足でしょう?貴方のご自慢のキメラ達と一緒に眠りなさいな。」
魔王様の為?
だから、何をしても良いの?
「ーーー・・ベルゼ、お前如きが私達の脅威となる事さえあり得ないと知れ、下郎。」
「っっ、」
口元を戦慄かせるベルゼへと吐き捨てる。
希望など与えない。
それほどの事をベルゼはしたのだから。
「1人で永遠の孤独を味わいながら、あの世で己の罪を自覚なさい。」
命を弄んだ罪を自覚しろ。
そっと、氷漬けで動けないベルゼの心臓へと手を添える。
「っっ、や、止めろっっ、!!」
「ふふふ、貴方が崇める魔王様には二度と会えないだろうけど良いよね?」
「ひっ、い、嫌だ、魔王様!」
恐怖に歪む、ベルゼの顔。
その顔を見ても、私の心はベルゼに対して何一つ動かされる事はない。
「ーーー・・さようなら、ベルゼ。貴方に永遠の孤独の眠りを、『コキュートス』。」
喚くベルゼの心臓へ自分の魔力を流し込む。
私のオリジナル氷魔法、『コキュートス』は、その魔法を向けた対象の意識さえも凍らせてしまう
まさに、即死系魔法である。
「がっ、っっ、」
流し込まれる私の魔力に呻くベルゼ。
それも、ほんの一瞬。
「ーーー、ま、・・おう、さ、ま、・・。」
消えていくベルゼの瞳の輝き。
私の魔法『コキュートス』で心臓を完全に凍結された瞬間、ベルゼは一切の動きを止めた。
「ーー・・お休みなさい、ベルゼ。」
恐怖に目を見開いたまま絶命したベルゼに同情なんかしない。
してなんかやらないよ。
だってベルゼは、私の敵だもの。
だってお前は私の可愛い、リリスの配下の子達を殺したのだから。
「ーー・・ディア様。」
コクヨウの声に、ベルゼの身体から視線を外して後ろへと振り返る。
「コクヨウ、皆んなは無事?」
「はい、ディア様。皆んな、ディア様を悲しませるような事はしておりません。」
「うん、それなら良いの。」
皆んなの無事な姿を見て、ほっと安堵の息を吐き出す。
信じていたとは言え、誰かが傷付くかも知れない事への恐怖心がなかった訳ではないから。
「・・・ギルドに、魔族の事を報告しなくちゃ、ね。」
気が重い。
こうして魔族が暗躍していた事が知れれば、国の上層部は慌ただしくなるだろう。
そして、その魔族を倒した私達は国に目を付けられる。
「気が重いわ。」
戦争の道具にはなりたくない。
皆んなの事も、戦争の道具にはさせないが、欲深い権力者達が煩わしく言ってくるのは確実だろう。
私が望んでいるのは、皆んなとの平穏な生活なのに。
「はあ、それでも、ギルドへ魔族の事を報告しない訳にはいかないのよね。」
この国に拠点を持とうとしている私としては、魔族の暗躍で荒らされるのは、とても不本意だ。
なら、国に働きかけ、魔族への対処をしてもらうしかない。
ベルゼとキメラ達の遺体である身体を、冒険者ギルドへの証拠品として空間収納の中へとしまう。
「ベルゼを倒した事で、私達のステータスも上がったかしら?」
鑑定で自分のステータス画面を呼び出す。
名前:ディアレンシア・ソウル
LV118
性別:女
年齢:16
種族:人族
称号:世界を渡りし者、神に見守られし者、寵愛し者、魔族討伐者
HP:46940/46940
MP:40210/40210
スキル
言語理解、空間収納、鑑定、経験値倍増、マップ、気配察知、危険察知、隠蔽、状態異常耐性、体力回復上昇、魔力回復上昇、攻撃力上昇、防御力上昇、身体強化、精神耐性、全属性魔法、詠唱破棄、武器作成、思考加速、剣術、体術、転移、従魔召喚、スキル付与、スキル改変、リバイブ、経験値共有、魔道具製作
ユニークスキル
創造魔法
従魔:リリス
従魔:アスラ
従魔:ユエ
装備品:期間の首飾り
レベルも一気に10も上がっている。
しかも、増えている私の称号、魔族討伐者。
魔族討伐者
魔族を倒した勇者のみに贈られる称号。
「・・これ、も、冒険者ギルドへは黙っていた方が良いようね。」
私、勇者じゃないし。
いくら魔族であるベルゼを倒したとは言え、何故この称号が私に出たのかしら?
謎である。
「ディア様、迷宮攻略の証の魔石です。」
アディライトが差し出す魔石。
「これで、この街の迷宮攻略は終わったね。」
魔石を受け取る。
この部屋のボスは最後まで出なかったが、ベルゼのせいだろうか?
「ーーー・・コクヨウ。」
目の前のコクヨウへと手を伸ばす。
「帰りたいわ。」
「ディア様のお望みのままに。」
コクヨウに抱え上げられた私は、そのまま目を瞑る。
今は、休みたい。
もう、何も考える事なく。
「ーー・・お疲れ様でした、ディア様。」
コクヨウの声を最後に、私の意識はゆっくりと闇に沈む。
私達のルーベルン国のダンジョンの攻略は、こうして終わった。
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