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第3章〜恋愛編〜
狂気の愛
しおりを挟む私の心は歪で、空虚で空っぽ。
渇き切った私の渇望は、今、この心を満たしたいと叫んでいる。
「こんな風に泣くぐらいなら、昨日はディオンを私の元へ寄越さなければ良かったのよ。馬鹿な子ね、コクヨウは。」
コクヨウの涙を拭う。
「っっ、でも、ディア様は、お望みだったのでは?ディオンからの愛情も。」
「えぇ、そう、ね。私には必要だった、ディオンからの愛情も。そして、コクヨウからの愛情もね?」
「なら、後悔はありません。ディア様からの罰は甘んじてお受けします。」
罰、ねぇ。
「罰として私に触れのを禁止にしたら、コクヨウはどうする?」
「っっ、うぇ、!?」
「ん?罰、受けるんでしょう?」
にっこりと笑った。
昨日はさんざんコクヨウにあたふたさせられたんだもん、これぐらいの可愛い意地悪は良いよね?
「・・あの、その、」
「んー、しばらく話すのも罰として禁止にしようかなぁ?」
「っっ、なっ、そんな、ディア様!?」
コクヨウが小さく悲鳴を上げた。
その顔は何故か青い。
「それだけは、どうかお許しを!ディア様ッ!!」
「どうして?罰、甘んじてお受けするってコクヨウが言ったんだよ?」
「っっ、ですが、ディア様に触れられず話せないなんて、この世の終わりです!地獄ですよ!!」
「そんな大げさな。」
「大げさでは無いです、ディア様!」
コクヨウが顔を歪ませた。
泣き顔のコクヨウに、私の中の女の部分が歓喜する。
求められている。
私はコクヨウから強く、深く。
「ふふっ、」
やだ、こうしてコクヨウをあたふたさせるの楽しいかも。
コクヨウの顔を覗き込む。
「ねぇ、コクヨウ、そんなに私に触れたい?」
足りないよ、コクヨウ。
ちっぽけな愛情だけじゃ、この私の渇いた心は満たされないの。
「ーーー・・コクヨウ、私の事が欲しい?」
もっと、欲して?
深く、そして強く、私だけを。
我慢するのは止めた。
あちらの世界の良い子だった私は、昨日死んでしまったの。
「・・・ディア、様?」
困惑するコクヨウ。
でも、それでも許してやらない。
簡単には、ね?
「だったら、私を強く繋ぎ止めてくれないとダメじゃない。」
我儘になるの。
欲しいものを得る為に。
「コクヨウ、そんなんじゃ、私の中の餓えは満たされないよ?」
可哀想なコクヨウ。
こんな最低な私なんかに囚われてしまうなんて、ね。
でも、もう放してあげない。
「好きだよ、私のコクヨウ。」
貴方は私だけのもの。
「っっ、」
驚愕に目を見開くコクヨウの唇を私は指先でなぞった。
「コクヨウ?」
「っっ、」
ぶるりと、コクヨウが身を震わす。
その瞳に宿る熱。
「ふふふ、もう一度、聞くね?コクヨウ、私が欲しい?」
あぁ、そうよ、コクヨウ。
もっと心の底から強く私だけを愛し、求めて?
「っっ、はい、」
「コクヨウだけじゃ満足しない、そんな最低な女でも?」
「かまいません。僕はディア様が、ディア様だけが欲しいッ!」
「ふふ、」
私の手首を掴んだそのコクヨウの手の熱さに私は微笑んだ。
「ーー・・じゃあ、私にコクヨウの全てを頂戴?」
差し出して?
コクヨウ、貴方の命さえも。
「そうしたら、ご褒美にコクヨウに私をあげる。」
あげるよ。
コクヨウが全てを差し出してくれるなら、私の愛情を貴方へ。
「だから、私を愛して?」
狂おしいほど、強く私を愛して欲しい。
私だけを。
「他の人になんて、絶対にあげない。」
貴方達は、私だけのもの。
誰にも触れさせない。
「貴方達に触れて良いのは私だけ。」
この身体も、声も、目も、髪の毛の先まで私の為にあるの。
「私の愛おしいコクヨウ。」
私だけの貴方達。
「ねぇ、絶対に私を置いて行かないでね?最後の時も。」
置いて行かれるのは、もう嫌。
それなら、私も一緒に連れて行って欲しいと願う。
「私の願い、叶えてくれる?」
多くは望まない。
私だけを愛し、ずっと側にいる事。
それだけで良いの。
「っっ、はい、必ずッ、絶対にディア様の願いは叶えます。死す時も、その後もディア様のお側に!」
「ありがとう、コクヨウ。」
コクヨウの胸に凭れる。
「ディオン、も、ね?私を離さないって誓ってくれたの。」
「そう、でしょうね。ディオンも、ディア様を手離せるとは思えませんし。」
「・・・コクヨウ、も、私を、絶対に離さないでね?」
「例えディア様の命令でも離してやれません。好きです、ディア様。愛してます、貴方だけを。」
「ふふっ、」
あぁ、心地いい。
うっとりと、コクヨウの胸に凭れながら回される力強い腕に包まれて目を瞑る。
「・・・食事、しなくちゃ、ね?」
「アディライトが食事の用意をしていましたから、皆んなディア様を待っていると思います。」
「うーん、分かってるけど、」
離れたくない。
もう少しこのまま、コクヨウの居心地の良い腕の中に。
「食事しないんですか?」
「別にそうじゃない、けど、まだコクヨウに甘えてたいの。」
「っっ、」
跳ねるコクヨウの心音。
「ーー・・あぁ、ディア様。本当に貴方を愛してます。」
「ふふ、」
髪に落ちるコクヨウの唇を私は笑って受け入れた。
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