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第13章〜帝国編〜
閑話:戦いと復讐の聖戦
しおりを挟むロッテマリーside
今も鮮やかに思い出す。
領民達からの優しい眼差しと、変わる事のない平穏の毎日を笑顔で暮らしていた日々を。
「マリーお嬢様、今日も見回りですか?」
「お父君によろしくお伝えください。」
「そうですよ、領主のカイン様のお陰で、毎日こうして平穏に暮らせているんですから。」
消えていく。
領民達の皆んなの笑顔が。
「ーーっっ、たすけ、て、死にたく、ない、」
あの日。
我が領地へ攻め入った兵達により、綺麗な街並みも、領民達の平穏も奪われた。
私達が何をしたの?
「・・どうやら、お父上が戦を止めるよう皇帝陛下にお諌めした事が逆鱗に触れた様です。」
後に知る。
父が、領民達が死ぬ事になった理由を。
「・・戦を止める事は、父や領民達が殺されなければいけない理由になるの?」
湧き上がる怒り。
それでも、逃げる私の手から、また一つ守りきれなかった命が零れ落ちていった。
「・・許さない。」
許すものか。
大切な家族を、領民を虐げ殺した者達を。
絶望の中に燃え上がる怒り。
「ルル、ようやくね。」
「はい、お嬢様。お父君や領民の皆様もこの時をお喜びになって見守ってくださっている事でしょう。」
私達は笑い合う。
待ち侘びた復讐の瞬間を前に。
「・・何だ?」
「ふん、小娘が、こんな戦場に何をしている?」
「・・あの娘、どこかで見た事がないか?」
「確かに、あの娘の事は見覚えがある。あと、娘と一緒にいる獣人の女も見覚えがあるぞ。」
「「・・・。」」
笑い合った私達はリュストヘルゼ帝国の指揮官や、高位貴族の者達へ冷たい目を向ける。
忘れない。
あの痛みと絶望を味わった日々の事を。
「お前達は、私の主人の敵だ。それ故、この先に一歩たりとも進む事は叶わないと思え!」
漸くだ。
やっと、私の、私達の望んだ事が叶う。
「我が名は、カイン・シュトレーゼンが娘、ロッテマリー・シュトレーゼン。」
お前達が滅ぼした者の娘。
覚えている?
「あの日、私や、もう1人の子を見て不要と切り捨てた娘がいたでしょう?」
不要と切り捨てた私達の事を。
「なっ、カイン・シュトレーゼンの娘だと!?」
「っっ、まさか生きていたのか!?」
「馬鹿な、あの娘達は欠損が激しくて、長く生きてなどいられない身体だったぞ!?」
目を剥く指揮官や高位貴族達。
寵妃マリアに魅了され、自分の欲望の為に戦を広げようとした者達。
「・・貴方達は、変わらないのですね。今も昔も、こうして新たな戦いで血を流し、大きな悲しみと絶望を誰かに与えようとしている。」
ふざけるな。
奪われる者の気持ちなど知らないで。
「貴方達の事を、何があろうとも私は絶対に許しはしない!私の父を、領民を、美しかった街並みを奪ったお前達の事を!!」
これは、私の戦いだ。
私怨だと、私の事を笑えば良い。
それでも、私はこの心の内に宿った増悪と言う復讐に突き進む。
「私の大事な者達を切る時、笑っていたお前達の事を忘れない!」
許せるものか。
何の罪もない、領民達を笑って奪ったお前達の事を。
ただの私怨?
父や領民達の為の報復?
「違う、これは私とルルの戦いであり聖戦!自分の欲望の為に戦を広げ、流れる血を減らす為の!」
紅蓮 を私の敵へと向ける。
ルルも私同様に、敵へ自身の長槍である雷光を向けていた。
私達の気持ちは同じ。
「「お前達を必ず討ち滅ぼす!」」
同時に走り出す。
私達が味わった以上の絶望を与える為に。
「ひぃぃ、」
「あぎゃ、」
飛び散る敵の血。
容赦なく、徹底的に敵を切り捨てて行く。
「っっ、あぁぁ、腕が、」
「俺の足がっっ、」
あの日。
私達に絶望を与えた者がいたら殺さず、その戦意を無くす為に手足を切り落とす。
誰が簡単に死なせるか。
もっと絶望を味わってから死んでいけ。
「その悲鳴が、お前達が無情に散らした者達への慰めとなるのよ!」
聞こえますか?
天国のお父様、領民の皆んな。
貴方方の無念、怒り、痛みは私達が全て何倍にもして返すから。
「だから、安心して安らかにお眠りください。」
あの人は関係ない敵の心臓に紅蓮 を突き刺した。
どんどんと倒れ伏す敵達。
誰もが私やルルに勝てる者はいない。
「ーーーふむ、我々の出番はなさそうだな。」
残念そうに呟くのはアスラ様。
私達の側にいてくれていたもは、気配で感じていた。
「ディアに2人の事を頼まれたのだがな。こうも相手が弱くては良い所をディアに見せられないではないか。」
「えぇ、ディアに褒められる絶好の機会だと言うのに嘆かわしい。」
敵の弱さにお怒りの様子。
そんなにも、ディア様に褒められたかったのですね。
お気持ちわかります。
「ふふふ、大丈夫ですよ。お優しいディア様ならお褒めくださいますわ。」
「そうか?」
「ふむ、ならもう少し付き合うとするか。」
上機嫌になったお2人が逃げようと背を向けた敵兵達の目の前に躍り出る。
「何処へ行く気だ?」
「簡単に逃すと思うのか?」
「「「ひぃいぃぃ!!」」」
獰猛に笑うお2人に敵兵達は竦み上がった。
「あらあら、情けない。」
「これが一国の兵とは嘆かわしい事です。」
私とルルは冷ややかな目を、アスラ様とユエ様の姿に竦み上がる敵兵達へ向ける。
お2人は威圧感も魔力さえ抑えていると言うのに、一国の兵がこの様な有様では滑稽でしかない。
「・・いや、フェンリルや九尾が目の前にいたら逃げるからな?」
「厄災級のモンスターを前にして平然としていられる兵なんか、絶対にいないぞ!?」
ルインおじ様とヒューイット様にぼやいたら怒られるのはもう少し後。
リュストヘルゼ帝国の兵達を蹴散らしてからの話。
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