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第12章〜獣人編〜
獣人化スキル
しおりを挟むガルムンド王国の王家の血を引く、ルルーシェル。
そんなルルーシェルの存在を、王家は放置するだろうか?
答えは否だ。
「私の可愛いルルーシェルが、ガルムンド王国の王子達に政治利用される未来しか想像が出来ない!」
顔が青ざめる。
ヤバい、ルルーシェルをガルムンド王国の武術大会へ出場させる訳にはいかない!
「ふふ、ご心配なく、ディア様。私をディア様の元から引き離そうとする者など許しませんから。」
ぎらぎらと、剣呑に光るルルーシェルの瞳。
その瞳は全く笑っていない。
「ルルーシェル?」
「私の事を利用する?ふふふ、その瞬間に相手の喉に噛み付いてやりますよ。」
・・半端なく怖いです、ルルーシェルさん。
ひくつく頬。
好戦的なのは、獣人族の血ですか?
「まぁ、よく言ったわね、ルルーシェル。それでこそ、私が姉と慕う貴方だわ!」
怯える私の横で、ルルーシェルの物騒な発言にロッテマリーが大絶賛。
・・マジ、ですか!?
「あー、なら、ルルーシェルは武術大会への出場は諦めないと?」
「当然です。」
ルルーシェルが拳を握り闘志を燃やす。
「必ずや、大会で優勝と言う名の栄冠を、ディア様に捧げると誓いますよ!当然、他の出場者など完膚なきまでに蹴散らして見せましょう!」
「・・さいですか。」
不安はある。
が、可愛い私のルルーシェルがやる気なら、全力でサポートしますとも。
「アディライト、他の皆んなにも、ルルーシェルの力になるように伝えて?鍛錬の相手とか。」
「かしこまりました。」
アディライトが恭しく私の指示に頷く。
これで、他の皆んなもルルーシェルの力になってくれる事だろう。
とりあえず、安堵するのだった。
「ーー・・ディア様、何をそんなに憂えているのですか?」
夜になってそろそろ寝室のベッドで寝ようと横になる私の顔を、コクヨウが覗き込む。
「んー、分かる?」
「分かりますよ、ディア様の事なら。」
「そうなの?」
「どれだけ、僕がディア様の事を見ていると思っているのですか?当然、どんな変化も分かりますよ。」
「ふふ、嬉しい。」
コクヨウの言葉に私の顔に笑みが浮かぶ。
「ディア様がそんなに憂えているのは、ルルーシェルの事でしょうか?」
「うん、まさかルルーシェルがガルムンド王国の王家の血筋だとは夢にも思わなかったわ。」
溜息を吐く。
今のルルーシェルとロッテマリーの生まれを知るのは私達の中の数名と、2人の事を売ってくれたハビスさんだけらしい。
「だけど、ルルーシェルの血筋の事は、ハビスさんも知らないのでしょうね。彼女が、ガルムンド王国の王家の血筋とは。」
ルルーシェルの血筋を知っていたら、ガルムンド王国へ知らせていた事だろう。
そうすれば、ルルーシェル達2人の命は助かったとしても王家に利用されていた可能性がある。
「・・ディア様がそんなにも気にされているのはルルーシェルが持つ、『獣人化』のスキルが理由ですね?」
コクヨウと同じ様にディオンも私の顔を覗き込む。
「ん、ルルーシェルが持つ『獣人化』はガルムンド王国の王位継承に必要なスキルなんだもの。それを、王家の血筋のルルーシェルが持つなんて、不安しかないわ。」
獣人化
爆発的に力を増幅させる。身体に相当な負荷がかかる為、連続しては使用は不可。
このスキル、強力なだけあり後の反動が大きい。
私もルルーシェルに、『獣人化』のスキルの使用は本当に身の危険な場合だけ許可を出している。
「ルルーシェルに聞いたけど、ガルムンド王国は『獣人化』のスキル保有者が次代の王位継承者なのよね。」
リリスが集めた情報によると、今の王には8人の王子と6人の王女がいるらしい。
その中で『獣人化』のスキル保有者は4人。
「第1王子、第4王子、第7王子、第5王女の4人が『獣人化』のスキル保有者。本人達がその事実を知っているかは分からないけれど。」
スキルの鑑定が出来るのは、今まで聖皇国パルドフェルドの神官だけだった。
それも、一部の人間が知る秘密。
鑑定のスキル保有者の子供を早期に発見しては、聖皇国パルドフェルドは教会に取り込んできていたらしいからね。
だから、誰も自分のスキルを把握する事は出来なかった。
「今では、クレイシュナの指示の元に誰でもスキルの鑑定が出来るように改革も始まったし、ガルムンド王国の王子達もいずれは『獣人化』のスキルを自分達が持っているか知る事になるでしょうね。」
『獣人化』のスキルを持つ、王位継承候補の王子達が多くいるのは良い。
が、そのせいでガルムンド王国の王位の継承問題が激化するのは必須だもの。
「その中で、ルルーシェルの大会優勝は注目を浴びてしまうでしょう?」
何かしらの対策は必要かしら?
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