上 下
68 / 76
第五章 エバートン家の花嫁

68.二人の初夜▼

しおりを挟む


 どうしてこうなったのだろう。

 私は服を着てベッドの上に正座している。私の前には同じく服を着たままのルシウスが不安そうな顔で膝を突き合わせて座っている。頼むから、そんな顔をしないでほしい。というか、今まであんなにノリノリで進めておいて、そんなのってアリ?


「ごめんなさい、もう一度だけ確認するけど…えっと……未経験なのよね?」
「うん。だから、前にシーアが部屋に来るって言った時は焦ったよ。色々と本があったから」
「……そうなんだ」

 それは勉強用の、ということだろうか。

「でも、あまりに手慣れていない?普通はもっと恥じらいとか…」
「あ…途中までは経験あるんだけど、挿入となるとちょっと避けてたんだ」
「避ける……?」
「そういう時の女の子って少し恐ろしいだろう?目がドロドロしているというか、」

 それはいつも彼が私に向けているものだ。
 彼自身気付いていないの?

 いずれにせよ、コトを進めるためには私はこの関門を突破する必要がある。つまり不慣れな私がリードしてでも、ルシウス・エバートンを私の中に案内しなければいけない。出来るかどうかではなく、今日こそやる。


「学園に入ってからは、君にしか興味がなかったからそういう相手も居なかったし……」
「貴方、ロカルドの親友のわりには身持ちが堅いのね」
「好きでもない女の子とするのって気が進まない。それだけの話だよ」
「………そう」

 サラッとのしかかる三年分の想いが、これからの行為にどういった影響を及ぼすのか危惧しながら、私はルシウスに向き直った。

「ええっと…じゃあ、始めるわね」
「うん、途中で止めても良いから無理しないで」

 小さく頷いて、ルシウスのシャツに手を掛けた。途中まででも経験があるなら是非とも彼に積極的に進めてほしいのに、何故今日に限ってしおらしい態度を貫くのか謎だ。

 プチプチとすべてのボタンがはだけると、肌色が目に入って急激に恥ずかしくなってきた。進められるのだろうか、この先を、私が手綱を握って。たぶん無理。

(いいえ、シーア……やるのよ)

 目を見開いてルシウスの肩を掴む。そのまま首筋に口付けようとしたところで、私の額をルシウスの手が押し返した。

「なに?」
「ドラキュラが血を吸うみたいな怖い顔で迫るから、」
「だって……」

 よく分からなくて、という言い訳がましい言葉は尻すぼみに小さく消えていった。ルシウスはいつもの調子で笑いながら私をそっと抱き締める。

 そして、そのままベッドの上に組み敷いた。

「……え、ルシウス…?」
「じゃあさ、教えてよ…シーア」
「な、なにを、」
「分からないから、何が良いか全部教えて」
「ーーーっあ!」

 大きな手が服の上から胸の肉を揉む。どういうわけか、ブラウスの下でホックが外されて、胸を覆っていた不要な布たちは私の首回りに集結した。

 露になった淡い色の尖りを指先で弄られると、もうどうにも我慢できなかった。

「あ、ああ…っ、」
「ツンツンしてたら硬くなるね。なんでかな」
「わ、わかんな……ッ…あ、舌、だめっ」

 大きく撫で回して肉の形をやわやわと変えながら、もう片方を口に含んで転がされる。犬のように甘噛みしたかと思えば、愛おしそうに吸ったりするから、何がなんなのか分からず私はずっと声を漏らしていた。

「んんっ、あ、ルシウス…!」
「ねえ、気付いてる?」
「……ん、なにが…?」
「シーアの腰ずっと動いてる。見てみようか?」
「………っ!」

 恥ずかしくなって、全神経を集中して身体が動かないように意識するも、クリクリと胸の先端を摘まれるとまた何も考えられなくなった。

 こんなの、抗えない。ずっと慣らすように植え付けられた気持ち良さを身体は覚えてしまっている。今更まともなフリをしろなんて無理な話。


「あ、すごい。シーアは濡れやすいの?」
「そんな…しらなっ、あ、ああ…ッ」

 ショーツの上から割れ目を擦るように上下していたルシウスの指が、もはや役目を果たしていない布切れの隙間から蜜穴に差し込まれた。グチュッと耳を塞ぎたくなるような音を立てて中へ中へと侵入する。

 私はこの指にもう知られてしまっている。
 自分の弱いところ、涙が出るぐらい善いところ。

「えっと…確か、ここが好きなんだよね?」
「っひぅ!あ、そこだめ、んん、あっ」
「なんでダメって言うの?奥は嬉しそうなのに」

 ヒクヒクして喜んでる、と耳元で甘えるように言われると、今すぐ気絶したいぐらい恥ずかしくなった。膣奥に辿り着いた指先はその天井を遊ぶように擦る。強弱を付けて触れられると、本当に応えるように収縮する感覚があって戸惑った。

「一回、気持ち良くなっちゃおうか」
「……?…え、あ、またそれっ!」

 愉しそうなルシウスの顔を見上げるとすぐに、熱い芯芽を捉えられる。指を膣内に入れられたまま捏ねるように押されると、身体の中を何かが駆け上がってくるようで、私はそれが何なのかを知るために目を閉じた。

「ーーーーんんっ!」

 自分を翻弄する指の動きに加えて、首筋を舐め上げられるゾクゾクした気持ち良さは大きな波になって私を呑み込む。気付いた時にはただぼーっと天井を見ていた。


「………シーア?」
「……ごめんなさい、また一人で、」

 泣きそうになりながら謝ると、ルシウスは優しく頭を撫でてくれる。穏やかな表情に安心していたら、ひんやりした手が私の太腿の上に乗った。するすると肌の上を這ったその手はおへその下を撫でる。

「次は二人で……一緒に、良い?」

 狡い男に誘われて、私はただ一つ頷いた。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん
恋愛
 こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。 *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

恋が終わる、その隙に

七瀬菜々
恋愛
 秋。黄褐色に光るススキの花穂が畦道を彩る頃。  伯爵令嬢クロエ・ロレーヌは5年の婚約期間を経て、名門シルヴェスター公爵家に嫁いだ。  愛しい彼の、弟の妻としてーーー。  

処理中です...