上 下
10 / 68
第一章 失われた記憶編

08.王子は追究する▼

しおりを挟む


「昼、なんで無視したの?」

縮こまって眠るベッドの中でノアの腕が伸びてくる。背中から撫でるように這ったその手は、薄いキャミソールワンピースの上からゆるく胸を揉んだ。

もう愛なんて無いであろう彼が、それでもまだ私と寝室を共にするのはおそらくこのためだろう。昼間はカーラと恋人同士のような純粋無垢な時間を過ごして、汚れた欲は夜の間に私に吐き捨てる。会話らしい会話なんて無くても、行為は続行されて一方的に終わりを迎える。我ながら、とても便利な婚約者だと思う。

眠った振りを続けていると、面白くなかったのか、片手が何の断りもなく下へと下がった。

「……っあ、」

下着越しに擦られて思わず声を上げてしまう。
クチュクチュと水音が小さく響いた。

「ねえ、リゼッタ。起きているんでしょう?」

ノアの舌が耳の中へと侵入する。長い指は変わらずに良いところをずっと攻めてくるから、気がおかしくなりそうでギュッと目を閉じた。

「…やぁ…耳やだ、やめて」
「好きだもんね。こうやってされるの」

もう狸寝入りは難しそうだし、今日の彼はどうやら私と会話を楽しみたいらしい。

「娼婦だったら、色んな経験を積んでるはずだ」
「経験?」
「例えば…こことか」
「……っひぁ!」

触れられたのはお尻。スルスルと撫で回されて、なんとも言えない感情が湧き上がって来る。

「俺とこっちでもした?」

怖くなって、大きく首を振った。
ノアとどころか、そこは誰にも許したことのない場所だ。そもそも出来れば使うことなく一生を終えたいし、性行為においてお尻を使うことのメリットが私には分からなかった。

「でも娼館では普通だよね。やってみようか」
「や…やだ、やめて!お尻は嫌、」
「どうせ使用済みでしょう?」
「したことないの、本当に…!」
「じゃあ…尚更いいね」

言いながらノアは私を押さえ付ける。下着を剥ぎ取られるとお尻を突き出した状態で下向きにされた。

「お願い…ノア…!」
「痛かったらごめん、きっと直ぐ良くなる」
「ーーーっんん!」

身体の肉が内側から抉られるような感覚。異物の侵入を拒むために全身が警告している。押し返そうと無意識のうちに力が働いているのに、ノアはそれすら構わずに腰を深く沈めた。

裂けているのではないかと思うぐらい痛い。前に回された手が入り口を弄るから、少し意識は分散するものの、違和感はずっとお尻に残っていた。

「……っすごいドロドロ、溢れてるね」
「ごめんなさ…い、あ、」
「お尻好き?両方が気に入ったのかな」
「っちが、そんなんじゃ…!」

打ち付けていた腰の動きが一瞬止まった。

「あのさ、もし俺の記憶が戻らなかったら悲しい?」
「…それは…悲しいです」
「なんで?」
「覚えていてほしい思い出もいっぱい…あるので」
「……ああ、そう」
「っひぁ!」

より深く入り込んだ肉棒が、めり込むように奥を突いた。身体がブルブルと震えるとプシッと水が跳ねる。

「お尻でイっちゃったね、さすが娼婦だ」
「違うの、本当に経験なくて…!」
「そんなのどうでも良いよ。もう少し頑張って」

仰向けにされると、前の穴に勢いよく挿入されて、私はまた大きく震える。ノアは、彼にしては珍しく、急ぐように動きを速めると射精した。ドクドクという脈を感じながら私はノアと視線を絡ませる。

本当はキスして欲しかった。
甘い甘い口付けで安心したくて。

言葉に出来ない思いを抱えたまま、身体を離して、頭から服を被るノアの背中を私は見つめた。


しおりを挟む
感想 138

あなたにおすすめの小説

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

子ども扱いしないでください! 幼女化しちゃった完璧淑女は、騎士団長に甘やかされる

佐崎咲
恋愛
旧題:完璧すぎる君は一人でも生きていけると婚約破棄されたけど、騎士団長が即日プロポーズに来た上に甘やかしてきます 「君は完璧だ。一人でも生きていける。でも、彼女には私が必要なんだ」 なんだか聞いたことのある台詞だけれど、まさか現実で、しかも貴族社会に生きる人間からそれを聞くことになるとは思ってもいなかった。 彼の言う通り、私ロゼ=リンゼンハイムは『完璧な淑女』などと称されているけれど、それは努力のたまものであって、本質ではない。 私は幼い時に我儘な姉に追い出され、開き直って自然溢れる領地でそれはもうのびのびと、野を駆け山を駆け回っていたのだから。 それが、今度は跡継ぎ教育に嫌気がさした姉が自称病弱設定を作り出し、代わりに私がこの家を継ぐことになったから、王都に移って血反吐を吐くような努力を重ねたのだ。 そして今度は腐れ縁ともいうべき幼馴染みの友人に婚約者を横取りされたわけだけれど、それはまあ別にどうぞ差し上げますよというところなのだが。 ただ。 婚約破棄を告げられたばかりの私をその日訪ねた人が、もう一人いた。 切れ長の紺色の瞳に、長い金髪を一つに束ね、男女問わず目をひく美しい彼は、『微笑みの貴公子』と呼ばれる第二騎士団長のユアン=クラディス様。 彼はいつもとは違う、改まった口調で言った。 「どうか、私と結婚してください」 「お返事は急ぎません。先程リンゼンハイム伯爵には手紙を出させていただきました。許可が得られましたらまた改めさせていただきますが、まずはロゼ嬢に私の気持ちを知っておいていただきたかったのです」 私の戸惑いたるや、婚約破棄を告げられた時の比ではなかった。 彼のことはよく知っている。 彼もまた、私のことをよく知っている。 でも彼は『それ』が私だとは知らない。 まったくの別人に見えているはずなのだから。 なのに、何故私にプロポーズを? しかもやたらと甘やかそうとしてくるんですけど。 どういうこと? ============ 番外編は思いついたら追加していく予定です。 <レジーナ公式サイト番外編> 「番外編 相変わらずな日常」 レジーナ公式サイトにてアンケートに答えていただくと、書き下ろしweb番外編をお読みいただけます。 いつも攻め込まれてばかりのロゼが居眠り中のユアンを見つけ、この機会に……という話です。   ※転載・複写はお断りいたします。

【完結】ひとりぼっちになった王女が辿り着いた先は、隣国の✕✕との溺愛婚でした

鬼ヶ咲あちたん
恋愛
側妃を母にもつ王女クラーラは、正妃に命を狙われていると分かり、父である国王陛下の手によって王城から逃がされる。隠れた先の修道院で迎えがくるのを待っていたが、数年後、もたらされたのは頼りの綱だった国王陛下の訃報だった。「これからどうしたらいいの?」ひとりぼっちになってしまったクラーラは、見習いシスターとして生きる覚悟をする。そんなある日、クラーラのつくるスープの香りにつられ、身なりの良い青年が修道院を訪ねて来た。

伯爵は年下の妻に振り回される 記憶喪失の奥様は今日も元気に旦那様の心を抉る

新高
恋愛
※第15回恋愛小説大賞で奨励賞をいただきました!ありがとうございます! ※※2023/10/16書籍化しますーー!!!!!応援してくださったみなさま、ありがとうございます!! 契約結婚三年目の若き伯爵夫人であるフェリシアはある日記憶喪失となってしまう。失った記憶はちょうどこの三年分。記憶は失ったものの、性格は逆に明るく快活ーーぶっちゃけ大雑把になり、軽率に契約結婚相手の伯爵の心を抉りつつ、流石に申し訳ないとお詫びの品を探し出せばそれがとんだ騒ぎとなり、結果的に契約が取れて仲睦まじい夫婦となるまでの、そんな二人のドタバタ劇。 ※本編完結しました。コネタを随時更新していきます。 ※R要素の話には「※」マークを付けています。 ※勢いとテンション高めのコメディーなのでふわっとした感じで読んでいただけたら嬉しいです。 ※他サイト様でも公開しています

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

散りきらない愛に抱かれて

泉野ジュール
恋愛
 傷心の放浪からひと月ぶりに屋敷へ帰ってきたウィンドハースト伯爵ゴードンは一通の手紙を受け取る。 「君は思う存分、奥方を傷つけただろう。これがわたしの叶わぬ愛への復讐だったとも知らずに──」 不貞の疑いをかけ残酷に傷つけ抱きつぶした妻・オフェーリアは無実だった。しかし、心身ともに深く傷を負ったオフェーリアはすでにゴードンの元を去り、行方をくらましていた。 ゴードンは再び彼女を見つけ、愛を取り戻すことができるのか。

好きな人の好きな人

ぽぽ
恋愛
"私には10年以上思い続ける初恋相手がいる。" 初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。 恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。 そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。

処理中です...