11 / 22
報告書 1
日報 10
しおりを挟む何はともあれ、何とかかんとか、邪魔ばかり入ってなかなか出来なかった冒険者登録だったが、オーク出現の騒ぎで救人達から注目が逸れた隙に、無事?登録を済ませることが出来た。
振り返り、ふと冒険者ギルド内を見渡せば、ちらほらと残っているのは女性冒険者ばかり。男達は喜び勇んでオーク討伐に飛び出して行ったらしい。
(世界は違っても男はバカばっかりだってことかぁ…… )
「キュウトさん、一応登録は出来ましたけど、これからどうしますか?」
「そうだなぁ……? システィーナさん、オークの討伐って、報酬出るんですかね?」
「当然出ると思いますよ?倒したオークの”討伐証明部位”を持って行けば換金してもらえるはずです 」
「そっかぁ…… 」
ふむ……?と腕を組んで思案する救人。その姿を見ていたシスティーナが何かに気付いたように 「あっ!」っと大きな声を上げる。
「わっ!? どうしたのシスティーナさん?」
「キュ、キュウトさん……?」
突然の大声に吃驚した救人がシスティーナの方を見ると、システィーナは真っ赤になってプルプルと震えていた。
「見損ないました!キュウトさんまで女の子の裸が見たいなんて…っ!? 」
「違うよっ!? 」
「え~~っ!キュウトきゅんもそういうのが見たいの~? もうっ!言ってくれれば私が見せてあげるのにぃ~♪」
システィーナの言葉を聞きつけたライラが、すぐ様ニヨニヨと笑みを浮かべて尻馬に乗っかって来る。
「誤解だ! 濡れ衣だ~~~~~~っ!?
」
涙目のシスティーナにニマニマと明らかに分かっていて揶揄っているのが丸分かりのライラ。
とにかく変態の濡れ衣を晴らす為に、必死で言い訳を始める救人だった。
「システィーナさん違うって! ほら俺、いきなりこの国に飛ばされて来たから一文無しだろ?だから、少しでもこの国のお金を稼ぎたいなぁ~って、それだけだよ!ライラも分かっていて揶揄わないでくれよ、ややこしくなるからっ!」
捲し立てるようにオーク討伐に赴く理由を二人に話す救人。本当の事を言っている筈なのに、何故か言い訳がましく聞こえてしまうのはこの際仕方無いだろう。
「そ、そうだったんですか…、あっ!いえ、さ、最初っから信じていましたよ私は!? 」
「んふふ~~!そういうことにしといてあげるわ!でも、見たくなったら私に言ってね?キュウトきゅんならいつでも見せてあ・げ・る!ウフフ~♪ 」
それを聞いたシスティーナとライラの反応は二者二様、取り繕うシスティーナに全く信じていないライラ。そんな二人の反応に、それ以上の弁解を諦めて、ガックリと肩を落とす救人だった。
「はぁ…、もういいです、じゃあ行って来ます 」
「あっ!? ま、待って下さいキュウトさん、私も行きますっ!」
冒険者ギルドを出て行こうとする救人を、システィーナが慌てて追いかけて来る。
「え?システィーナさんは女の子なんだから行かない方がいいんじゃないのか?」
「大丈夫です!オーク程度なら全然平気です。オークは男の人には問答無用で襲って来ますから、キュウトさん一人では集団だと怪我をするかもしれません!」
両手を胸の前に持って来て、フンスッっと力説するシスティーナ。その拍子に”むにゅり”と形を変えた胸を凝視しそうになって、慌てて視線を引き剥がす救人。
「そ、そっか!あ、ありがとうシスティーナさん! じゃ、じゃあ行こうか!」
若干”挙動不審”になりながらも、どうにか冒険者ギルドを出発した救人達だった。
ーー「ブキャキャキャキャキャッ! 」
ーー「ブキャーーッ!」
「いやぁーーっ!やめて、この変態豚猿っ!! 」
「ダメぇぇっ!? 引っ張らないでぇっ!」
街の中へと行ってみると、かなり数のオークが”涌き”で発生したようだ。あちこちに被害者である服を食べられてしまった素っ裸の女の子達がその身をかばうように蹲り、周りには既に冒険者達に倒されたのか、それ以上に倒されたオークが転がっている。
「うわぁ……、これは酷い…… 」
「ダメっ! 見ちゃダメですよキュウトさん!」
顔を真っ赤にさせたまま、近くの商店や民家の人に頼んで上衣やシーツ等を借り、裸に剥かれた女の子達に大急ぎで掛けて行くシスティーナ。
(側に寄る訳にはいかないし、取り敢えず今のところは新手が来ても大丈夫なように周りを警戒していればいいかな?)
ーー「ブキャーッ!ブキョキョキョキョッ!! 」
救人が周囲を警戒していると、20匹ほどのオークの群れが近付いてくるのが見えた。
「うわぁ…、本当に豚顔の猿なんだ…… 」
ある程度は想像していたものの、思っていた以上にキモいその姿にドン引きする救人だったが、即座に頭を切り換える。
『『『『ブキャッハァーーーーッ!! 』』』』
(「ヒャッハァーーッ!」ってかよ!? お前ら何処の世紀末のチンピラだっての!)
何処かで聞いた様な奇声を上げ、一斉に飛び掛かってくるオーク達。よく見れば頭部にはタテ髮らしきものが生えていて、何となく”モヒカン”っぽく見えない事もない。
上下左右から救人に襲い掛かるオーク達。システィーナの心配していた事が正にコレだ。例えオークの身体が小さく、個々の戦闘力が低くても、一度に群がられては余程の実力が無い限り、無傷で対処するのは難しいだろう。
「キュウトさんっ!! 」
その様子を見て悲鳴を上げるシスティーナだったが、救人に焦りは無い。
何故なら救人は一対多数の戦いには慣れている。皆さんも御存知であろう、ヒーロー物にはお約束、怪人と戦う前には必ず多数の”ザコ戦闘員との戦闘は付き物”だからだ。
いくらザコ戦闘員とはいえ、機械的、生物的に改造され、そのパワーやスピードは常人を大きく上回る。
そんな戦闘員に対して、始めの内は変身せず、怪人が現れるまでは生身のまま倒して行くのが普通であった。
そんな救人であるから、いくら鋭い爪や牙を持ったモンスターであろうと、単体が普通の状態で常人の力を下回るようなオークでは話にならない。
拳で、手刀で、蹴りで。次々と群がるオーク達を叩きのめし、確実に倒して行く。そして ーーーー、
「ラストォォォッ!」
ーー「ブギョワッ!? 」
最後の一匹の頭部を、踵落としでそのまま地面へと叩き付ける救人。20匹いたオーク達は、素手の救人によって文字通り”瞬く間”に討伐されてしまった。
「すごい…、キュウトさん……っ!? 」
思わず感嘆の声を漏らすシスティーナ。普通の冒険者といえば剣で戦うことがスタンダードだ。その為振り始めから振り下ろし、その次の攻撃が斬り上げだろうが横薙ぎだろうが、攻撃から攻撃の間にどうしても隙が出来てしまい、ある程度の実力はあっても素早く、尚且つ数が多い場合は擦り傷ぐらいは負うのが当たり前なのだが、救人は擦り傷どころかその身に触れさせてすらいなかった。
だがまあこれは救人の戦闘スタイルが”徒手空拳”であった事も大きいだろう。素早い相手に対しては小刀やナイフ、小回りが利き、取り回しの良い武器がやはり有効だ。
だが、救人はその武器すら持ってはいない。それなのに、その一撃一撃は彼女の腰に下げたメイスの一撃よりも重く、破壊力があった。
しかも、20匹全てのオークを倒した今も、油断なく”残心”の構えを取る救人の周りの空気が揺らぎ、その身体からは何か、陽炎の様なモノが立ち昇っているのが見える。
(「あれは…っ! キュウトさんの身体から、目に見える程濃密な”魔力”が立ち昇っている!? あんな風に魔力が見えることなんて普通はあり得ない、何て魔力密度なの! キュウトさん、あなたはいったい……っ!? 」)
システィーナが驚くのも無理は無い。魔力とは本来空気と同じで無色透明、火にしろ水にしろ、”魔法”という方法で物理的な”現象”が生じる事で、初めて目にすることが出来る。感じる事は出来ても目視することは出来ないのが魔力なのだ。
ーーゥウゥンッ!ゥウゥゥンッ!ゥゥウゥンッ…ッ!!ーー
だが、そんなシスティーナの思考を無理矢理断ち切るように、突如としてまた、けたたましいサイレンの音がメイズロンドの街に響き渡る。
「そんな…っ!二回も連続して【次空震】が発生するなんて!? しかもこの鳴り方は出現ランク(不明)ですって!?キュウトさん……っ! 」
サイレンの音に動揺し、辺りを見回していたシスティーナがもう一度視線を救人の方に戻すと、救人の前方20メートル程の位置から、まるで地面を通り抜けるかの様に”涌き”出でた巨大な影があった。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。
おっす、わしロマ爺。ぴっちぴちの新米教皇~もう辞めさせとくれっ!?~
月白ヤトヒコ
ファンタジー
教皇ロマンシス。歴代教皇の中でも八十九歳という最高齢で就任。
前任の教皇が急逝後、教皇選定の儀にて有力候補二名が不慮の死を遂げ、混乱に陥った教会で年功序列の精神に従い、選出された教皇。
元からの候補ではなく、支持者もおらず、穏健派であることと健康であることから選ばれた。故に、就任直後はぽっと出教皇や漁夫の利教皇と揶揄されることもあった。
しかし、教皇就任後に教会内でも声を上げることなく、密やかにその資格を有していた聖者や聖女を見抜き、要職へと抜擢。
教皇ロマンシスの時代は歴代の教皇のどの時代よりも数多くの聖者、聖女の聖人が在籍し、世の安寧に尽力したと言われ、豊作の時代とされている。
また、教皇ロマンシスの口癖は「わしよりも教皇の座に相応しいものがおる」と、非常に謙虚な人柄であった。口の悪い子供に「徘徊老人」などと言われても、「よいよい、元気な子じゃのぅ」と笑って済ませるなど、穏やかな好々爺であったとも言われている。
その実態は……「わしゃ、さっさと隠居して子供達と戯れたいんじゃ~っ!?」という、ロマ爺の日常。
短編『わし、八十九歳。ぴっちぴちの新米教皇。もう辞めたい……』を連載してみました。不定期更新。
拝啓神様。転生場所間違えたでしょ。転生したら木にめり込んで…てか半身が木になってるんですけど!?あでも意外とスペック高くて何とかなりそうです
熊ごろう
ファンタジー
俺はどうやら事故で死んで、神様の計らいで異世界へと転生したらしい。
そこまではわりと良くある?お話だと思う。
ただ俺が皆と違ったのは……森の中、木にめり込んだ状態で転生していたことだろうか。
しかも必死こいて引っこ抜いて見ればめり込んでいた部分が木の体となっていた。次、神様に出会うことがあったならば髪の毛むしってやろうと思う。
ずっとその場に居るわけにもいかず、森の中をあてもなく彷徨う俺であったが、やがて空腹と渇き、それにたまった疲労で意識を失ってしまい……と、そこでこの木の体が思わぬ力を発揮する。なんと地面から水分や養分を取れる上に生命力すら吸い取る事が出来たのだ。
生命力を吸った体は凄まじい力を発揮した。木を殴れば幹をえぐり取り、走れば凄まじい速度な上に疲れもほとんどない。
これはチートきたのでは!?と浮かれそうになる俺であったが……そこはぐっと押さえ気を引き締める。何せ比較対象が無いからね。
比較対象もそうだけど、とりあえず生活していくためには人里に出なければならないだろう。そう考えた俺はひとまず森を抜け出そうと再び歩を進めるが……。
P.S
最近、右半身にリンゴがなるようになりました。
やったね(´・ω・`)
火、木曜と土日更新でいきたいと思います。
スキル【合成】が楽しすぎて最初の村から出られない
紅柄ねこ(Bengara Neko)
ファンタジー
15歳ですべての者に授けられる【スキル】、それはこの世界で生活する為に必要なものであった。
世界は魔物が多く闊歩しており、それによって多くの命が奪われていたのだ。
ある者は強力な剣技を。またある者は有用な生産スキルを得て、生活のためにそれらを使いこなしていたのだった。
エメル村で生まれた少年『セン』もまた、15歳になり、スキルを授かった。
冒険者を夢見つつも、まだ村を出るには早いかと、センは村の周囲で採取依頼をこなしていた。
カードで戦うダンジョン配信者、社長令嬢と出会う。〜どんなダンジョンでもクリアする天才配信者の無双ストーリー〜
ニゲル
ファンタジー
ダンジョン配信×変身ヒーロー×学園ラブコメで送る物語!
低身長であることにコンプレックスを抱える少年寄元生人はヒーローに憧れていた。
ダンジョン配信というコンテンツで活躍しながら人気を得て、みんなのヒーローになるべく日々配信をする。
そんな中でダンジョンオブザーバー、通称DOという正義の組織に所属してダンジョンから現れる異形の怪物サタンを倒すことを任せられる。
そこで社長令嬢である峰山寧々と出会い、共に学園に通いたくさんの時間を共にしていくこととなる。
数多の欲望が渦巻きその中でヒーローなるべく、主人公生人の戦いは幕を開け始める……!!
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる