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第29章 動乱 ロードベルク王国 組曲(スウィート)
第292話
しおりを挟むーーーー 時間は少し前に遡る。
「ーーーーー"鏖殺"ー だ。海賊共はゴプリンのようにただ叩き潰し、オークのように汚い悲鳴を上げさせてやるのだ。一隻足りとも逃すでないぞ!…いいなっ‼︎ 」
ー『『『『『アイアイ、マアァァァムッ‼︎ 』』』』』ー
「………良し。すまなかったな、通信に割り込んで 」
「いえ、お疲れ様でした!」
海上騎士団のST隊に檄を飛ばしたオルガは、通信士へと一言詫びてから通信用のインカムを返した。
「"鏖殺"…ですか?穏やかではありませんなぁ?」
通信を終えたオルガに、やれやれといった風情で話しかけたのは旗艦【ジークランス】艦長のトゥーゴである。
「なんだトゥーゴ艦長、不満か?」
「いえ、なかなか良い檄の飛ばし方でしたよ?さすがはオルガ司令です。ただ…、」
「ただ、なんだ?」
「そろそろ我々も参りませんか?実は私も年柄にもなく昂ぶっておりましてね?」
そう言ってトゥーゴはニヤリと口角を吊り上げた。
「…ふっ!はははっ!何だ、艦長もかっ?私もだよ、彼等に檄を飛ばしながら、私もどんどん昂ぶって来てな、身体が疼いて堪らないんだよ!」
その時、止んでいた爆音が再び鳴り始め、船体に僅かだがビリビリと小さな振動が走る。
「オルガ司令!敵、ヨゴルスカ艦隊、当艦隊に向けて再び魔法による攻撃を開始しました!」
「クククっ!フーリムンめ、奴はよほど"待て"も出来ない駄犬と見える。そう慌てずとも、貴様の地獄行きの片道切符はちゃーんと用意してあると言うのになぁ、………せっかちさんめ 」
楽しそうにカラカラと笑っていた笑顔から一転、ギラギラとした獰猛な笑みをその美貌に浮かべるオルガ。
「全艦、機関始動!全砲門開けっ‼︎ さあお前達、海賊狩りを始めるぞっ‼︎ 」
「司令、作戦の方は如何なさりますか?」
昂ぶる思いのまま、ついに攻撃命令を下したオルガに、トゥーゴはどのようにして作戦行動を取るのかを聞き返す。すると、オルガはニヤリと悪戯っ子のように笑い、トゥーゴの問いに答えた。
「"突撃"だ 」
「え?」
「全艦散開して横列陣形を取り、そのまま敵艦隊へと突撃。手当たり次第でいい、全ての海賊船を木っ端微塵にしてやれ‼︎ 」
楽しそうにそう叫んだオルガに、一瞬だけポカンとした表情になるも、すぐにトゥーゴはその顔に苦笑を浮かべる。
「それは………、また、えらく乱暴な作戦ですなあ 」
「いいだろう?そも、この船体で突撃しただけでも通常の帆船程度では耐えられまい。後は当たるを幸い、一隻残らず粉微塵に叩き潰してやれば良いだけの事だ。………あっ!て、訂正だ!敵艦隊、旗艦【バルデッシュ】、三番艦【ゴースティ】、並びに四番艦【ベルザール】だけには絶対に当てるな!彼の艦にはまだ連れ去られた民間人が捕らえられている。突撃開始と平行し、民間人救出の為、海上騎士団"特殊強襲部隊"の出撃準備を急がせろ!」
「はっ!」
ーーー フオォーーン、フオォーーン、フオォォーーーン! ーーー
艦内に作戦開始を告げる警報が鳴り響き、乗組員達の動きが一層慌ただしくなる。
「さて、それでは諸君、永らく待たせて済まなかったな。これより、海賊首領フーリムンの討伐と、ヨゴルスカ海賊船団の殲滅を開始する!微速前進、かかれええええええええ…っ‼︎‼︎ 」
『『『『『 アイアイ、マアァァーーーーァムッ‼︎‼︎‼︎ 』』』』』
ーーー 後の世に語られる、新生王国海軍の海賊船団討伐戦、通称『グランベルク大海戦』は、こうして火蓋を切られたのであった ーーーー 。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
いつもお読み下さりありがとうございます!
もう投票にはあまり関係ないかもしれませんが、短いですがこれで大賞期間最期の投稿となります。今回も、非常に多くの皆様に応援して頂き、本当に、本当にありがとうございました。
投票して下さった皆様、これを機にお気に入り登録して下さった皆様、いつも熱いお便り下さる方々など、本当に励みになりました。ありがとうございました。
これからも、拙作にお付き合い下さいますよう、何卒宜しくお願い致します。
ありがとうございました。
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