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第28章 動乱 ロードベルク王国 前奏曲(プレリュード)

第262話 狂詩曲 (ラプソディ、もしくは異世界怪談)

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 実は俺は、ずっと気になっている事があった。

 かつて地球に居た頃に相棒バディだった大輔。大輔は、あの『次元振動炉奪還作戦』の際、突如として乱入して来たあの謎の黒いASDアーマードサポートドロイドに頭を撃ち抜かれて死亡した。

 それは間違い無い。だって、俺はその場面を直接見ていたのだから。あれは間違い無く即死だった。

 だから、もしもあの時、俺やアリーシャと同じように大輔の身体が次元の壁を越えて、このイオニディアに辿り着いていたとしてもそれは"遺体"の状態で、絶対に生きていることは出来なかったはずだ。

 魔法の存在するイオニディアだが、《治癒魔法》は存在するものの、ゲームなどのような都合の良い《蘇生魔法》だけは存在しないらしい。

 だが、俺は大輔に再会した。しかしそれは大輔が"生き返った"という意味ではない。こちらの世界で「ダイ」という少年として、大輔と、偶然、再会したのだ。

 地球でも、仏教などでは魂の永遠性を説き、全ての存在が仏と同じ存在まで昇華する修行として、何度も生死を繰り返す『輪廻転生』が説かれているが、このイオニディアでも、どうやらそうした〈転生〉のシステムが存在するらしい。

 いや、アフィーアフィラマゼンダ達のような、「神」が概念としてではなく実際に存在している訳だし、何てったって俺自身が"転移者"なんだから、今更生まれ変わりぐらい驚きゃしないけどさ。

 けれど、この世界には神が居て、生まれ変わりがあって、レイスやスケルトン、ゾンビにリッチなど、所謂「死霊系」と呼ばれる魔獣が存在する。

 ……だからこそ俺は考えた。

 神が現実のものとして在しまし、魂の存在が確立され、目に見えるモノとして死霊が確認出来るこの世界。

 ーーイオニディアに、『怖い話』は存在するのだろうか?ーーー と。

 元居た世界の地球では、軍事や医療技術の発達で、義体技術や病気やケガで失った欠損部位を治す為の、クローニングによる細胞再生医療、果ては遺伝子操作による強化生体兵器、バイオノイドといった新生命の創造と、漫画や映画であれば【神の奇跡】とされるような"禁断の領域"にまで、既に人類は足を踏み入れていた。
 しかし、それでも尚『魂』や『死後の世界』について、ほぼ万能となった科学の力でも、究明はなされてはいなかったのだ。

 故に、二十三世紀も目前となった大和でも、映画やゲームなどの各種コンテンツの"ホラー"というジャンルは全く消滅することは無く、毎年毎年必ず数本のホラー物が登場していたし、夏の夜のテレビ特番の定番と言えば、『あれは…、私が○○の頃です…』とか、『お分かりになっただろうか…?』というナレーションでお馴染みの【怪奇心霊特集】番組だった。

 大きな戦争が二度もあった後だ。戦場へと赴いた兵士達には、ほぼ全員が一度や二度はがあったりするし、かく言う俺も、任務中に殉職したはずの同僚の姿を隊舎で見たり、仲間達からから同じような話を飲み会の席で聞いた事は何度もある。

 兎角、そうした分野の事は無くなることは無く、二十二世紀の後半となっても、夏の夜の風物詩と言えば大人から子供まで"怪談"話だったのだ。

 ………いや、違うな?訂正しよう。

 そういった話が盛り上がるのは特に夏だったが、一年を通してそうした特番はやっていたし、人が寄れば下ネタと同様に人々の会話のネタになっていたのがそうした"心霊体験"の話だった。


 しかし、このイオニディアではどうだったか?

 魔法の存在の所為で歪な発達をしてはいるが、イオニディアの文明は未だ中世レベル。電気の明かりによって夜の暗闇が殆んど駆逐された地球の都市とは違い、魔道具の灯り以外は、昔ながらのランプやロウソクの灯りしか無いイオニディアの夜の闇は深く濃い。

 依頼で入った森で、野営の焚き火の灯りに照らし出された茂みの向こうや、ロウソクの揺れる灯りに動く柱の影、そうした闇の中からは、いつでもがこちらを覗いているような、闇の中へと手招きされているような、そんな生物としての始原的恐怖を感じさせる"闇"が広がっているのだ。

 なのだが、これまでセイリアやソニアなどの仲間達、近衛騎士団の連中や、そういった話が大好きな年代のはずの学院の生徒達からですら、一回としてそんな話しは聞いた事が無い。

 さて、どうなっているのやら?これはひとつこちらから聞いてみることにしよう。

 そうだな?まずはソニア達から…。

「え?『怖い話』…かい? そうだねぇ、まだ依頼なかばだってのに、森の中で回復用ポーションが切れちまった事があってさ~、あの時はさすがに怖かったねぇ…… 」
「だよなぁ…。あの頃はまだ冒険者にも成りたてで、ペース配分とかも全然分からなかったもんな」
「ヒロト兄ィにも会ってなかったから、まだまだ全然弱かったしね~」
「あの頃はまだまだ駆け出しで、稼ぎも少なかったですから、元々あんまり回復用のアイテムなんて持ってませんでしたけどね 」

 そんな新人冒険者が、よく陥入るピンチの思い出をしみじみ語るソニア達。ああ、万が一の時に、回復用のアイテムがあるのと無いのでは全然違うよなぁ…。そりゃ確かに"怖い"………って違う!
 怖いってのはそういう意味合いじゃ無い!

 ま、まあいいや、次行ってみよう。

 んじゃ、セイリア達はどうだろう?俺は次に「第二ゴーレム研究会」の部室を訪れてみた。お、皆んな居るな。では、もっと話を具体的にして…。

「ええと、『死霊系の怖い話』ですか?」

 そうそう!

「そうですねぇ?……あっ!『死霊系』だと、実体の無い魔力波動の塊ですから、単なる物理攻撃では効果が無いのが"怖い"です 」

 真面目な顔でセイリアがそう答えてくれるが、違う、聞きたいのはそういう話しじゃないんだ…!

「そういやあ、前に【国家錬金術師】達が、何かの実験に失敗して、城中にゴーストやレイスが大量召喚された事があったなぁ?あん時ゃあ駆除するのが大変でよ~、そん時にお袋がキレたのがメチャクチャ怖かったな……!」

 そりゃ確かに怖い。怖いが、それ死霊が怖いんじゃなくてレイラ王妃さんが怖かっただけだよな⁉︎ 

 はぁ……、もういい。ならば、この俺が聞かせてやろうじゃないか、真の"怖い話"、そう『怪談』を…!

 ………と、言う訳で、急遽『恐怖の怪談話 』独演ライブ、in 秀真屋敷 開催を決定!

 秀真屋敷にした理由は、単に「怪談話をするなら和室でしょ!」って事に過ぎないが、急に肌寒くなったり、生温くて妙に生臭~い風が吹いたり…、更には場面に合った"効果音"などのは、アイが魔法で担当してくれる。

『お任せ下さいマスター!完璧な演出で、皆さんを恐怖のに落としてみせますよ!』

 うん、ズンドコじゃなくてドン底ね、それだと何だか楽しくなっちゃいそうだから。

 まあ、そんな事はともかく、アイちゃんの気合いも充分。クックック…ッ!その"4D"ばりの特殊な演出で、今宵、参加者全員を恐怖のどん底まで突き落としてくれるわーーー!なんてね?

 で、始まりました怪談話の独演ライブ。参加者はセイリアにラーナちゃん、レイナルドにスケカクコンビなどのサムライ達に、ソニア達【蒼い疾風ブルーソニック】の四人。ゼルド達「第二ゴーレム研究会」のメンバーに、キムチェやナームルなどの喫茶店従業員達。更には話しを聞きつけた爺さんや婆さんに、何故か国王夫妻?までいやがる⁉︎

 しかも酒まで持ち込んで、その場だけは宴会の余興を観るモードに入ってやがるよ。

 暇なのか?暇なんだな?…良かろう!その余裕の表情を、恐怖で歪めてやろうじゃないか…!

 …って事で、先ずは小手調べ。「怪談」と言えば日本人にはお馴染み、『東海道四谷怪談』と『番町皿屋敷』の古典から行ってみよう!

 ヒュ~~、ドロドロドロドロ………!

「恨めしや、イェーモン様ぁぁぁぁぁ… 」

「六まぁぁぁい…、七まあぁぁぁい…、一枚足りなああああああああぁぁぁいぃぃぃっ‼︎ 」

 そのまま話すと何のこっちゃか分かりにくいといけないので、以前セイリア達に話して聞かせた時代劇のように、"異世界アレンジ"をして話してみたんだが……、ここでの事が起こってしまった…っ⁉︎

「く…っ!ううぅ…、何と酷い…。さぞや、さぞや無念であったろう………!」
「何と非道な!女性を弄び、尚且つ邪魔になったからと毒殺するなど、男の風上にも置けん‼︎」
「たかが皿一枚で無礼打ちなど、何という仕打ちを!同じサムライとして許せん‼︎」

 あれ?秀真のサムライ組が怖がるんじゃなくて、話の中のイェーモン達サムライの非道な行いに対して怒り出しちゃったよ⁉︎
 特に男の身勝手な欲望によって酷い目にあわされた経験を持つ、シイラに惚れているスケールなんて寸前になってる⁉︎

「お皿…、割る…、ひいいいっ⁉︎ごめんなさい、もう割りません!許して下さいエピフリヤ侍女長様あああっ!」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいいいいいっ!」

 こっちはこっちで秀真屋敷のメイドさん達や喫茶店の女の子達が、が呼び起こされてしまったのか、お話しとは別のところでパニクってる⁉︎ 

 うぅ~~~~ん?ダメだ、下手に時代劇っぽい話しにした所為で、返ってヘンな部分で食いついちゃったよ⁉︎

 仕切り直し、仕切り直し。

 
 さて…、これは失敗だったな。"怖い話"をというペースが、そもそも参加者全員に無いのだ。これでははずがない。

 何故『怪談』が、日本の夏の風物詩となったのか?それは、「暑い夏を、ゾッとする話しで暑気払いして涼む為だ」と言われているが、実はそれは俗説らしい。

 実際は「涼み芝居」と称し、夏に歌舞伎の演目として、幽霊の登場する恐ろしい芝居を上演し始めた事で庶民の間に広まり、それは日本の夏に必ずある、"お盆"という風習に関係して、農村などで行なわれていた「盆狂言」に起源を発すると、ある民俗学者は語っている。

 お盆には、先祖、死者が幽世かくりよ(隔世)、つまりあの世から常世とこよ(この世)へと帰って来ると仏教では説かれている。ただし、その時には弔われる事の無い無縁仏や、無念を残したまま死んだ怨霊なども常世へと舞い戻り、恨み辛みを語る為に現れると言われていた。

 「盆狂言」とは、そんな浮かばれぬ霊の為に苦しみを知り、鎮魂をする為の芸能として始まったらしいのだが、納涼歌舞伎を人々が観劇するようになり、それが『怖い話』そのものを楽しむ"娯楽"として、「怪談」が庶民の間に広まっていった………。ということなんだそうだ。

 そういった意味ではサムライ達のあの反応は、では正しいんだろうが………、違う、そうじゃない。俺が欲しい反応はそれじゃないんだ!


 仕方がない、こうなれば"都市伝説"でも何でもいい、絶対に怖がらせてやる!


 ーーー【廃病院】

 怖い話というと、ほぼ必ずある話。怖いもの知らず、または怖いもの見たさの若者達が、肝試しに廃病院へと訪れ、怪奇現象に遭遇するというお話し………。


「む、沢山の死霊に囲まれる?そうか、死霊系特化迷宮ダンジョンだったのですかっ?」
「いや、死霊術師ネクロマンサーのアジトだったのかもしれん。どちらにしても、通常の装備だと厄介な相手だな…?」

 ……真面目な顔で語り合うアシモフとゼルド。違うっ!次っ!


 ーーー【テケテケ】

 言わずと知れた超有名なお話し。バリエーションは様々だが、上半身のみのオバケが、手で這いずり(走り?)ながら追いかけて来るというもの。

「ああ~、グールかな?ゾンビかな?アレしつこいんだよね~、臭いし。ボク、大っ嫌い!」
「だよなぁ、一撃で頭を潰さなきゃならないわ、メンドイわのクセに、報酬低くて割に合わないしなぁ… 」

 うへぇ!と、嫌そう~~な顔のマーニャにゴウナム。そうそう、ゾンビは頭を潰すのがお約束…って、違う⁉︎ 次ぃ…っ‼︎


 ーーー【ベッドの下】

 これも有名な都市伝説。遊びに来た友人の様子がおかしい。何故か異様に外に連れ出そうとするのだ。あまりに外に行こうと誘うので、コンビニでも行くか?と外に出て見れば、『ベッドの下に包丁を持った女が居たんだ…っ⁉︎ 』………ってなお話し。これも色々なバージョンが存在するようだ。


「ベッドの下に⁉︎ ……暗殺者アサシンでしょうか…っ?」
「まさかに忍びこむとは…⁉︎ 相当以上の手練れかもしれません!」
「屋敷の警備体制はどうなっている!」

 突如騒ぎ始めたコイルマイルを始めとした秀真屋敷の使用人達。
 いやいやいや…っ!俺の話しじゃないから!この屋敷の話でもないからぁぁぁっ⁉︎  次ぃ…っ!

「こぉんな顔だったかぁぁい?」

「シェイプシフターですねっ!」

 …違うっ!次っ!

「乗せたはずの女の姿は無く、乗り合い馬車のシートがグッショリと濡れていた…… 」

「それはもしかして水精霊ニンフだったのでは…?ラッキーでしたね!」

 ………次…っ!

「ある寝苦しい夜、ふと寝返りを打つと、そこには見知らぬ女の顔が………!」

「そんな知らない女を連れ込むなら、なぜわだしを呼んで下ざらないのでずか、ヒロド様ああああああああっ‼︎ 」

 違うからああああああああああっ⁉︎


 結局、その後は勘違いして大泣きを始めてしまったセイリアを必死に宥める事になり、初の『異世界怪談』の独演ライブはグダグタのまま終了する事に………。


 ……人は、を恐れる。そんな想いが、科学の発達していなかった時代、"家の軋む音"など、説明出来ない自然現象やモノに人々は姿を与え、名前を名付けた。それが怪異だ。
 目に見えないからこそ、説明出来ないからこそ、人はそこに恐怖を感じるのだ。

 しかし……、イオニディアにはそのし、説明出来てしまう。

 これでは誰も恐怖を感じない。
 死の恐怖を感じたとしても、それは負けるかもしれない、とか、パーティ全滅、とかに対する恐怖でしかないのだ。

 く………っ‼︎ 悔しいが…、俺の負けだ………っ‼︎ 

 まだグスグスと鼻を鳴らすセイリアを宥めながら、この世界に来て初めての敗北感に打ち拉がれていると、爺さんが話しかけて来た。

「何じゃヒロト、もう終わりか?『身の毛もよだつ~』とか言ってた割には、大したこと無かったのう? 」

 くうっ!屈辱だ‼︎ 爺さんが特に勝ち誇るでもなく、ふ~ん?って感じに言ってるのが、余計に心に刺さるぅ⁉︎

「ところでヒロトよ、ひとつ聞きたいんじゃがの?」
「………何だ?」
「さっき、皆と一緒に出て行ったようじゃが……… 」










「…………途中から、お前の横に居った女はいったい何者だったんじゃ?」





「…………………………………は?」







~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 如何でしたでしょうか?

 以上、納涼お盆SSでした。(笑)

 いつもお読み下さりありがとうございます!
 今年もまたファンタジー大賞にエントリーさせて頂きました!
 宜しければ是非、また応援宜しくお願い致します‼︎
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