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第28章 動乱 ロードベルク王国 前奏曲(プレリュード)
第261話 交声曲の2 (カンタータ)
しおりを挟む「あっ!お婆様、その前に、私達お婆様にお土産があるんです!」
それまでの雑談に区切りを付け、真面目な話に移ろうとしたところで、唐突にエリアスが声を上げた。
普段割と大人しく、控えめな態度ばかりだったエリアスのその快活な自己主張に、ほんの少し驚くアベリストヴィズ。
「私にかい?へえ…、そいつは嬉しいねえ!」
「はい!とっても美味しいんです!フォーファー、人数分の取り皿と、小さめのフォークを用意してくれますか?あ!あなたの分もですよ?」
「い、いえ私如きがご一緒するなど……⁉︎」
「ダメです!『美味しいものは皆んなで食べた方がもっと美味しい』って、ヒロト様も仰ってました。本当に美味しいですから、私はフォーファーにも食べてもらいたいです!」
グッと胸の前で小さな手を握りしめ、皆んなで食べる事が大事だと主張するエリアス。そのほんの少しだが小さな変化に、しかし、大きな成長に、危険な目には会わせたかもしれないが良い経験だったようだとアベリストヴィズは頬を緩めた。
「あっはっはっ、アンタの負けだよフォーファー。次期女皇帝様からのお達しだ、諦めて、さっさと自分の分も持って来るんだね 」
「………かしこまりました 」
そう言われてしまえば、フォーファーには返す言葉が無い。僅かな葛藤の後、息を吐いたフォーファーは、諦めて自分の分も含めてフォークと取り皿を用意するのだった。
「あ!テーブルに着くんだから、その邪魔くさい鎧も脱ぐんだよ?」
「…っ⁉︎ ………分かりました………」
フォーファー、完全敗北の瞬間であった。
「さて!ではアリーシャ様、まずはアレを出して下さい!」
「ふふっ、はいはい、分かってますよエリアス様 」
元気いっぱいなエリアスに促され、アリーシャが魔法袋から皿ごとテーブルの上に取り出した"モノ"に、全員の視線が集中する。…が、ニコニコ顏のエリアスに対して、アベリストヴィズ、マリーベル、フォーファーの三人は微妙な表情で固まってしまった。
「え…っと、エリアス?「美味しい」ってことは、コレは食べ物でいいのかい?」
「その…、気を悪くしたらごめんなさいね?私にはその…、真っ黒に焼け焦げたパンケーキにしか見えないのだけど… 」
「エ、エリアス様?無礼を承知で申し上げますが、あまり変なものを陛下のお口に入れるのは………⁉︎ 」
三者三様ではあるが、三人の顔に浮かんでいる感情は「困った⁉︎」というものだ。なぜなら、自信満々なエリアスが満面の笑顔でお土産だと取り出した物は、まるで焼き加減に失敗したパンケーキに、真っ黒な泥が塗りたくられたようなモノが皿に乗せてあるようにしか見えなかったからだ。
そんな三人の様子を見て、エリアスとアリーシャは顔を見合わせてクスクスと笑う。
「では、ここはひとつ、私が取り分けさせて頂きますね 」
アリーシャが取り出したモノ、とは「チョコレートケーキ」だ。
実は「金の若木亭」でヒロトがチョコレートケーキを取り出した時、喜んだのは"それが何なのか?"を知るアリーシャとトーレスだけで、エリアスやザインも初めはまったく同じ反応をしたのだ。
その美味しさを知った今では、忌避感などまったく感じないが、その"見た目"から来るインパクトに、最初の一口を口にするまでに勇気や決意や覚悟など、色々なものが必要であったのだ。
それだけに、ヒロトから貰った数多くのお土産の中でも、アベリストヴィズに渡す最初のお土産は、絶対にこれにしようと二人で決めていたのだ。
案の定、アリーシャが取り分けたものに手を付けられず、フォークを持った姿勢で困惑した表情のまま、三人は動かない。
「あら?皆様、お食べにならないのですか?こんなに美味しいのに…… 」
普通であればこういう場合、初めに匙をつけるのは一番目上の者、つまりはアベリストヴィズだ。しかし、このままではいつまで経っても埒が開かないだろうし、すっかり予想出来ていた事なので、まずエリアスがひと掬い、チョコレートケーキを食べて見せる。
「ん~~~~~~っ!やっぱり美味しいです!」
頬に手を添え、見ている方が笑顔になるような、そんなほっこりとした幸せそうな笑顔を浮かべるエリアス。
そんなエリアスの様子を見て、まずはアベリストヴィズが三角形に切り取られたケーキの一番先をほんのちょっぴりとだけをフォークで掬い取り、恐る恐る口へと入れた。
「………………こ、これはっ⁉︎ 」
掬い取ったのはほんの少し。それが舌先に触れた瞬間、アベリストヴィズの味覚は、今まで感じた事の無い"未知の味覚"に、激しい衝撃を受ける。
「あ、甘いっ⁉︎ …いや?ほろ苦さもある。ほろ苦さと甘さ、それが絶妙に絡み合って………っ?美味いっ‼︎ 」
カッ!と目を見開いたアベリストヴィズは、今度は大きく掬い取り、バクリと二口目を口に入れて咀嚼する。
「うむむむぅ…っ?何だい、このフワッフワな生地は⁉︎ 上の黒いのと一緒に食べると美味さが倍増するよ⁉︎ 何だい?何なんだい、この食べ物はぁ…っ!」
恐る恐るだったさっきとは一転、今度は夢中になって猛然と食べ始めたアベリストヴィズ。そんなアベリストヴィズの様子を見て、マリーベルとフォーファーも躊躇いながらフォークの先に乗る程度の少量を掬い取り口に入れると………、
「「~~~~~~~~~~~~っ⁉︎ 美味しいっ‼︎ 」」
そうなれば後は簡単、夢中になって食べ始めた三人の様子を、ハイタッチを交わしながら"してやったり"と笑みを交わすエリアスとアリーシャの二人。
その後は、定番のイチゴのショートケーキやチーズケーキ、彩りどりの果物を乗せたフルーツタルトやプリンまでを魔法袋から次々と取り出してテーブルに並べながら、一生懸命に食べる三人に、笑顔で給仕役を始めるのだった。
「………ふう、甘い物は嫌いじゃないが、こんなに物を食べて幸せな気分になったのは初めてだよ…… 」
「そうですねぇ……。でも、ズルいわ!私がお嫁に行ってから、こ~~んな美味しい物のお店がグランベルクに出来るなんてっ‼︎」
ポッコリと脹れたお腹をさすりながら、満足気にアベリストヴィズが呟けば、それに同意しながらも、しきりに悔しがるマリーベル。と、いうのも、食べている途中で「これほどの物をどうしたのか?」という話になり、これらの物をヒロトから貰い、それがヒロトが王都グランベルクで開いている喫茶店【御菓子猫】のメニューだと聞かされたからだ。
ついでに言えばマリーベルの母親であるレイラ王妃も大好きで、妹のクローレシアなど、学院の帰りに殆んど毎日のように通っている常連だと聞かされたのもその一因であろう。
「す、すみませんエリアス様、アリーシャ様!食べることに夢中になるあまり、お二人に給仕の真似事をさせてしまうなんて…っ⁉︎ 」
「ふふふっ!気にしないでフォーファー。これは私達の悪戯だったの。逆に謝らなければならないのは、その悪戯に引っ掛けてしまった私達の方なのよ?」
「大成功でしたね、エリアス様 」
ハッ!と「チョコレートショック」からフォーファーが我に返ったのは、数々のスイーツを食べ終え、最後に出された"カーフ"の香りを嗅いだ時だった。
侍女の身でありながら、仕えるべき高貴な方に召使いの真似事をさせてしまったなんて⁉︎ と、激しく自己嫌悪に陥るフォーファーに、エリアスはそれも含めて全てが悪戯だったと、小さな舌をペロリと出して笑う。
釈然としないのは変わらないが、そう言われてしまえばフォーファーも納得するしかない。
「あっはっは!そうかい、悪戯かい。そりゃあ私達は見事に引っ掛かっちまったねぇ!…うん、このカーフも美味い。こりゃエリアス達に完敗だね 」
「はい!完全勝利です!」
聡明ではあれ、いや"聡明"であるからこそ、聞き分けの良過ぎたエリアス。それが、普通の孫が祖母に対するが如く可愛い悪戯までを考えるようになった。
それがとても嬉しくて、また一口、そんな感情を口の中の甘味と共に、ゴクリとカーフで飲み込むアベリストヴィズだった。
「しかし…、アリーシャの他にも『女神の客人』が来ていたとはねぇ…。アリーシャと坊やを退けた手並み、魔道具の知識。おまけにあのチョコレート!………アリーシャ、同郷の誼で、何とかこちらに引っ張れないかい?」
食後のカーフをいたく気に入ったらしいアベリストヴィズは、もう一杯アリーシャにカーフを淹れてもらいながら、アリーシャにそう尋ねる。
「難しい……、と思います。ザイン王太子を呼び捨てで呼ぶほど、ロードベルク王家と懇意にしているようですし、何と言っても【黒き武神】のお孫さんと、もう婚約しているらしいです 」
「婚約っ?【黒き武神】の孫と⁉︎ ……そりゃ驚いた…。う~~ん?でもさ、そこはほら、アンタも「ウッフ~~ン」って、色仕掛けか何かで 」
「む、むむむむむ無理です、そんな事!それに、一緒に連れてたソニアさんもそうらしいですし…。私なんて……… 」
真っ赤になって手をブンブンと振りながら、そうゴニョゴニョと尻すぼみになって行くアリーシャ。
(「ありゃ?意外と脈ありかい?おやおや、ビュークの坊や、頑張らないとヒロトって奴にアリーシャを取られちまうよ?」)
「まあいいさ、そっちは追い追いね。取り敢えずは敵じゃないってだけで充分さ 」
「あっ!でもでもアリーシャちゃん、ヒロトさんには是非!このリィーンドゥーンにも喫茶店の支店を出すようにお願いしてね!絶対よっ?ねっ!」
「は、はい!分かりましたマリーベル様⁉︎ 」
フンフン!と鼻息も荒く、アリーシャに詰め寄るマリーベル。どうやらヒロトの知らないところで、いつの間にか喫茶店【御菓子猫】の"世界展開"が決定してしまったようである。
「あ、あの、お婆様っ?それで一息吐いたところでご報告なのですが…っ!」
『女が三人寄れば姦しい』とは言うが、どんどん話が変な方向へと流れかけているのを止めようと、アリーシャが声を上げた事で、やっと本来の目的へと話が戻るのだった。
「ふ~~む…?【虹】ねえ?そりゃ、またぞろ厄介そうな連中が出て来たもんだねぇ…… 」
軽く背を反らし、足を組み替えながらアベリストヴィズはそう呟く。
「はい。"人型の巨獣"について、何がしかの情報をお聞きできないか?と思い立ち、トーレス様をお訪ねしたのですが…… 」
「〈藪を突いた〉ら、蛇どころかとんでもない"大蛇"が出て来ちまった訳だね 」
「その通りです、お婆様 」
エリアスとアリーシャは、バーミンダーム城へと訪れたその主目的、ベインズディンガスで得た情報の報告を、アベリストヴィズにしたのだった。
ふむ?と、またひとつ呟き、椅子の肘掛けに肘をつきながら顎へと手をやるアベリストヴィズ。
エリアス達からの報告は、そのどれひとつを取っても驚くべきものばかりであった。
ベインズディンガスの街の近くの森に現れたという「人型の巨獣」、その未知なる脅威に対して何でもいいから情報は無いか?と、そんな軽い気持ちでエリアスを送り出した。
ところが、その人型の巨獣は自然発生的な物ではなく、巨獣の生体素材を利用して生み出された、人為的なゴーレム兵器であるという。しかも、先頃帝国にも軽くはない被害をもたらした【黒い魔獣】騒ぎも、どうやらアリーシャが【 虹 】と名付けたその謎の組織が関係していたようだと言うではないか。
しかもベインズディンガスではエリアスの暗殺計画までが秘密裏に実行されており、万が一の為に護衛に付けたはずの近衛騎士団はまさかの全滅。たまたま居合わせた「ヒロト・クーガ」という『来訪者』と、彼の配下の【蒼い疾風】という名の冒険者パーティが居合わせなければ、孫娘とも思っている可愛いエリアスとアリーシャ(ついでにピュークも)も、下手をすれば棺に入れられ、冷たい骸と変わり果てた姿で再会することになるところであったかもしれない。
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王族であるエリアスには、当然ながら生活の不自由など無い。だが、王族である以上、常に侍女や召使いが側に居て、本当の意味でひとりになれることなどありはしない。
と、いうことは、常に王女としての振る舞いに気を付けなければいけないということで、それは時にアベリストヴィズであっても息が詰まるような時だってあるのだ。
不自由は無いが、不自由が無い故の自由が無い不自由。
いずれエリアスは自分の後を継ぐ為、本格的に女皇帝となる勉強を始めなければならない。その前に、ほんの少しだけでも子供らしく、自由に羽を伸ばさせてやりたいという、そんな気持ちでエリアスを使いに出したのだ。
勿論、万全には万全を期する為、最精鋭ではないにせよ、"要人護衛"の訓練も兼ねて、若手の近衛騎士の中でも腕利きの者を十五人、騎士団長に選抜させ、旅を楽しむエリアスには気取られないよう、密かに陰から護衛するようにさせたのだ。
それが、それがまさか、こんな事になろうとは⁉︎ エリアスには見えない角度で、ギシリと歯を軋らせるアベリストヴィズ。
「まったく……、マリーとベルファストの婚姻を契機に、やっと戦時体制を解くことが出来て、これからもっと内政に力を入れようかって時に…。本当に腹立たしいったらありゃしないよ…! 」
アベリストヴィズは、己の見通しの甘さと、エリアスを害そうとした者達への憤慨に、腹の中が煮え滾るほどの怒りを感じていたが、それをおくびにも出さず、やれやれという疲れた表情を作って溜め息を吐いて見せる。
しかし、彼女にとって厄介な話はむしろここからが本番であった。
「アベリ…いえ、お婆様、実は【 虹 】についての事でもう一点、どうしても御報告しなければならないことが…… 」
「何だいアリーシャ、まだあるのかい? ケーキも食べたし、正直、もうお腹がいっぱいなんだけどねぇ…。いいよ、言ってごらん 」
「ありがとうございます。実は、残念ながら【 虹 】と、アイルーグラウド王国が繋がっている可能性があります」
「何だって…っ⁉︎」
何とか先程の怒りを体の奥深くまで飲み込み、冷静さを取り戻しかけていた矢先に、アリーシャの口から特大の爆弾が飛び出した。その為、平静を装うことも忘れ、つい素のまま驚いた声を出してしまったアベリストヴィズ。
「…と、すまないね驚かせて。アリーシャ、続きを頼むよ。そこまで言い切るってことは、何がしかの確信があるんだね?」
「………はい。しかもこの話しは、先だってのエリアス様の暗殺未遂事件にも絡んできます」
そう前置きして、アリーシャは語り出す。【 虹 】とは、地球の言語でイタリア語であること。ヒロトからの情報で、その幹部達は同じくイタリア語で虹の一色とその順番の数字を、その名に冠しているらしいという事。
そして………、新たに現れた「アイルーグラウド王国」の姫の名が、イタリア語で「橙色」と「二番」を意味するという事を……。
「根拠だけで、確実な証拠がある訳ではありません。ですが、これだけ状況証拠か揃っていて、"ただの偶然"で済ましてしまうほど、私は馬鹿ではないつもりです 」
静かに、しかし眼光鋭くアリーシャの話を聞いていたアベリストヴィズは、腹の中に溜まった熱い物を吐き出すように、長々と息を吐く。
「ふうぅぅぅぅぅ……っ、まったく………。分かった。状況は不明なままだが、この帝国にも不穏な連中が蠢いているのは確かなようだね?」
僅かな時間、まるで瞑目するように目を閉じたアベリストヴィズだったが、その目が再び開かれた時、瞳には焔が灯ったかの如く煌々とした光が宿っていた。
「フォーファー、"オゥローラ"を呼んでおくれ。エリアス、マリー、アリーシャ、済まないね、私はそろそろ仕事に戻るとするよ 」
「はい、畏まりました陛下 」
「分かりましたアベリストヴィズ様、…ご無理をなされてはいけませんよ?」
「失礼致します。陛下 」
アベリストヴィズの発する魔力波動に、エリアス達はアベリストヴィズのほんのひと時の休息の時間が終わった事を感じ取る。
アベリストヴィズは、"優しいお婆様"から、巨大帝国を統治する偉大なる"女皇帝"の姿へと、たった今戻ったのだ。
陽は既に傾き、部屋の中は夕陽に照らされ赤く染まっていた。エリアス達が退出し、ガランとした室内は、豪奢であるだけに、逆に寂しく見える。
ーーー コン、コンッ!ーーー
そんな室内に響くノックの音。アベリストヴィズは、視線だけでフォーファーに合図を送ると、フォーファーは小さく頭を下げて扉を開いた。
「陛下、お召しによりオゥローラ、参上仕りました 」
部屋に入って来たのは美しい金髪をした侍女服の美女であった。
「よく来てくれたねオゥローラ。早速で悪いが、頼みたい仕事がある。命の保証は無い危険な任務だ。出来るかい………? 」
アベリストヴィズが座る執務机は窓際にあり、夕陽が差し込んでいる事で逆光になり、オゥローラからはその表情は見えない。だが、そんなアベリストヴィズを見て、オゥローラの全身にゾクリッ!と冷たい物が走って行く。
逆光の差し込む暗い室内の中で、その目が、アベリストヴィズの眼だけが、爛々と鬼火の様な光を放っている様に見えたのだ。そして、黙っていても自然に身体が震え出してしまう様な冷たい魔力波動。
激昂している訳では無い。声を荒げているわけでもない。だが、間違いない、女皇帝陛下は激怒している…‼︎
身の周りの世話をする侍女達は、いちいち膝を突いて礼の姿勢を取ることは無い。しかし、オゥローラはアベリストヴィズの冷たく押し潰されるかの様な魔力波動を前にして、思わず跪いて頭を垂れた。
「何なりとお申し付け下さい、女皇帝陛下。私は陛下の忠実なる下僕、どの様なお役目でも謹んで賜ります」
「そうかい、ありがとうよオゥローラ。ならば…、オゥローラ、特務騎士隊【ジンガー】を率いてアイルーグラウド王国を探れ。手段は問わん、必要なら私の名の下に全てを許可する。どの様な些細な事でもいい、この私に楯突いた愚か者共を探り出せ。いいね? 」
「はっ!御命確かに頂戴致しました。オゥローラ以下、特務騎士隊【ジンガー】、この命に代えても必ずや陛下の御命令を遂行致します! 」
「よし。では行け 」
「はっ!失礼致します 」
オゥローラが退出したことで、再び室内は静寂が戻ってくる。扉を閉めたフォーファーは、まるで彫像のように微動だにしないままそこに居た。
そんなフォーファーを、まるで居ないものであるかの様に背を向けて立ち上がったアベリストヴィズは、眼下に広がる帝都リィーンドゥーンを窓から見下ろしながらポツリと呟いた。
「この私に、女皇帝アベリストヴィズに、随分と舐めたマネをしてくれたじゃないか…。【 虹 】だと?現体制をブチ壊すだと?…いいだろう、その喧嘩、買ってやる。地獄すら生温いと思う目に合わせてやるよ………‼︎ 」
真っ赤に染まるリィーンドゥーンの市街は、まるで怒りに燃え滾るアベリストヴィズの心中の炎に照らし出されているかの様に、赤く、紅く染まっているのだった。
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いつもお読み下さりありがとうございます!
今年もまたファンタジー大賞にエントリーさせて頂きました!
宜しければ是非、また応援宜しくお願い致します‼︎
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