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第25章 対決‼︎ 元祖ゴーレム研究会
第230話 ガールズトーク? 2
しおりを挟むいつもお読み下さりありがとうございます。話の繋がり的に、231話と230話を入れ替えました。よろしくお願いします。
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「じゃあ、改めて……っ!」
「「「「「 カンパ~~~~~~イっ‼︎ 」」」」」
ここはグランベルク城の一角、第三王女クローレシアの私室。その一室から、陽気で楽しそうな乾杯の声と共に、カチンカチンカチンッ!とグラスを軽く打ち合わせる音が響く。
「おめでとうございます、クローレシア様。やりましたね!」
「ありがとうラーナ。やっとルクスをバカにしていた奴等に、ルクスの凄さを思い知らせてやれた。本当に嬉しい。これもみんなメイのお陰。ありがとうメイ 」
内輪とはいえ、関係者を含めた多数での祝勝会を終え、今はクローレシアの私室で、クローレシア、セイリア、メイガネーノの女子部員三人と、セイリアの専属侍女兼護衛であるラーナと、飲み物や軽食、スイーツを持って来てもらったキムチェ、それと当然のようにクッキーを齧っているノアだけでの二次会、つまり女子会を楽しんでいる最中だ。
ラーナからの賛辞の言葉に、ありがとうとの礼の言葉を返しながら、自らもメイガネーノへと礼の言葉を発するクローレシア。
ロードベルク王国において、ゴーレムとは"=対巨獣戦兵器"という認識が強い。その為ゴーレムといえば一般的に十メートルを超す巨大なモノ、というイメージが強い。
そうした認識の中で、ルクスヴィータはミスリルという希少金属で出来たゴーレムはいえ、その小型の体躯の為に"ワガママ姫の道楽の玩具"と、陰で揶揄されていたのを知っているクローレシアは、内心忸怩たる思いを重ねて来たのだ。
そういった意味でも、今日の競技会での「ゴーレム研究会」との対戦で圧倒的な勝利を納めたことを一番喜んでいるのはクローレシアであろう。
そんなクローレシアからの感謝の言葉に、メイガネーノは慌ててかぶりを振る。
「ふぇっ⁉︎ いや、そんな、私なんて全然!私なんかより、クーガ先生の方がずっと!」
「ううん、確かにヒロトの発想はスゴい。でもそれは"地球の知識"があったからこそ。それもメイの発明がなければ実現しなかった。だからルクスが強くなれたのもメイの発明あってこそ。本当に…ありがとう………!」
色々な想いを感謝の言葉に乗せて、メイガネーノへと頭を下げるクローレシア。これまでの様々な出来事が頭を過ぎったのだろう、最後の方はやや涙声になっていた。
「そんな!私こそクーガ先生に出会えてなければ、本当にただの落ちこぼれでした!それから、セイリア副会長やクローレシア様、ゼルド会長やアシモフ先輩、王様、【国家錬金術師】の皆さんに会えたお陰で"居てもいい場所"を見つけたんです。お礼を言うのはむしろ私の方で…っ⁉︎ 」
「いや、ヒロト様も仰っていた。『自分は異世界の知識を応用しているに過ぎない。本当に凄いのは、天才なのは、"この世界にはまだ存在していなかったモノ"を生み出したメイガネーノやアシモフだ。あいつらのお陰で、俺もやりたかった事が実現出来た 』…とな。だからメイガネーノ、自分を卑下する必要はない。君はもっと胸を張っていいんだ。それに、君はもう【国家錬金術師】なんだ。今まで君を笑っていた奴等の前でも、堂々としていればいいのだ。なんと言ったって"国家"が君の才能を認めているんだからな!」
「セイリア副会長………!」
わたわたと手を振って、自分の事を引いて話すメイガネーノの肩に手を置いて、セイリアがにっこりと微笑む。
「ありがとう…ございます。私、クーガ先生に、皆さんに会えて本当に良かった……。私、今、本当に幸せでずぅ………っ‼︎ 」
クローレシアやセイリアの優しい言葉に感激し、とうとう泣き出してしまったメイガネーノ。ヒロト達に出逢うまで、周りから笑われ続けた所為で、メイガネーノはすっかり自分に自信を失くして引っ込み思案になってしまっていた。
メイガネーノは、【国家錬金術師】になれた事よりも何よりも、この愛すべき仲間達に出逢えたことをこそ女神に感謝するのだった。
「さあ皆さま、湿っぽいのはそこまでにしましょう。せっかくのお祝いのスイーツが塩辛くなってしまいますよ?」
と、そこでキムチェが両手をパンッ!と打ち合わせて冗談を言い、何となくしんみりとしてしまった雰囲気を変えてくれたことで、部屋の中の空気が元に戻り、クローレシアやメイガネーノは再び美味しいカーフやお菓子を堪能し始めるのだった。
「でも、ラーナちゃんはともかく、私までよろしかったのですかセイリア様?」
「問題ないさ。キムチェにはいつも「御菓子猫」で美味しいお茶やお菓子をご馳走してもらってるし、そもそもキムチェはヒロト様の直臣と同じだ。いつも総店長職で忙しい分、一緒に楽しんでくれると嬉しいな 」
「ありがとうございます、セイリア様 」
ラーナは元々セイリア付きのため、一緒にいて当然。だが、自分は今でこそヒロトの直属のような形ではあるが、元はキサラギ家で働いていた田舎育ちのいち侍女に過ぎず、その主人であったセイリア達の集まり、しかも王女の私室で行われているパーティーに参加するのは如何なものか?と最初は辞去しようとしたのだが、セイリアどころかクローレシアにまで止められたのだ。
「その通り。いつもキムチェにはお世話になっているし、料理だけ運ばせてサヨナラなんて言わない。それに、セイリアやラーナ、キムチェにはヒロトの『お嫁さんズ』として、メイにゼルドとの男女交際について教えてあげて欲しい 」
「ちょっ!ク、クローレシア様…っ⁉︎ 」
「お………っ⁉︎ 」
「「『お嫁さんズ』…っ⁉︎ 」」
クローレシアの"爆弾発言"に、さっきとはまた違った意味で真っ赤になってワタワタとしだすメイガネーノ。セイリア、ラーナ、キムチェの三人も真っ赤な顔になり、ニヤニヤとしているのはクローレシアただひとりだ。
「クローレシア様⁉︎ わ、私達は、その、セイリア様やヒロト様にまだお仕えする身で…っ!」
「そ、そうです!そんな、お嫁さんなんて、まだ………っ⁉︎ 」
「まだ?」
「「あ…っ!」」
「まだ…っ?」
「「~~~~~~っ⁉︎ 」」
不意を突かれて焦った為か、ついつい本音がポロリと出てしまい、さらに真っ赤になって押し黙るラーナとキムチェ。その視線がチラチラと向く先は当然セイリアの方だ。
「はっはっはっ!何を今さら焦っているのだ?ラーナとキムチェの気持ちなど、私やクローレシア様だけでなく、ソニア達にだってとっくにバレバレだぞ?」
「「え…っ⁉︎ 」」
「二人とも、いっつもヒロトが居る時は目で追いかけてたし、【御菓子猫】とかでもヒロトのとなりに座るセイリアを、いつも羨ましそうに見てた。バレバレ。ねえ、メイ?」
「あ、はい。たぶん気付いてないのはゼルド会長やご本人のクーガ先生くらいだと思いますよ?」
ラーナとキムチェにとって、セイリアは仕えるべき主人、また元主人である。はっきり言ってしまえば"横恋慕"である事には違いない為、そうでなくてもきちんと"婚約者"としての立場にあるセイリアの目がどうしても気になってしまうラーナとキムチェの二人。
しかしセイリアにはまるで気にしてないように笑い飛ばされたばかりか、自分では上手く気持ちに蓋をしていたつもりだったのに、周りに居る殆んどの人間に自分達の想いがバレていると聞かされては、驚くどころか自分はそんなに露骨だったのかと我が事ながら呆れるしかない。
ただ、"最も気付いて欲しい"とも言える相手であるヒロト自身には気付いてもらえていない、というのは悲しい限りだが。
「仕方がないですよ、ラーナちゃん、キムチェさん。同じ女の子なんですから、そういう事はどうしたって分かっちゃいますよ 」
苦笑しながら、そう二人をフォローする言葉をかけるメイガネーノ。
実際、こういった場合には男は女性のちょっとした変化にも気付かない、気付けないなど、結構無頓着な事が多いのだが、目線の動きや雰囲気の違いなど、そういった感情に対しては女性の方が何倍も敏感であるらしい。
「そうだぞ。ラーナ、私の部屋にヒロト様や私達を模った人形が飾ってあるだろう?」
「あ、はい…!」
「アレはアイ様がお造りになった物を頂いたんだが、その名も『マスターの"お嫁さん"シリーズ 』だそうだぞ?まあ、その中に何故かチェヂミまで入っているのはどうなのか?とは思うがな 」
「アイ様にまで………っ!」
最初に紹介された時には正直言って信じられなかったが、何度も言葉を交わした今では信じるしかない、"ヒロトの中に居る"という不思議な存在。
闇の上級精霊であるノアによれば、その力は大精霊にも匹敵するほどであるというが、さすがに現時点では人間ですらない相手にまでバレていると知って、ガックリと項垂れるラーナとキムチェ。
「………あの、それでセイリア様はいいんですか……?」
「いえ、その…、さすがにセイリア様がいらっしゃいますので充分に分は弁えてるつもりです。妻に~などと大それたことは考えておりませんが、ご不快ではありませんか………?」
ラーナとキムチェ共に、この封建制度のある社会で生きてきた身だ。そのような社会では、恋愛というものにすら"身分の差"というものが壁として立ちはだかることは"常識"として熟知している。ヒロトに対して思慕の念は持っていても、『側に居たい』と願うだけで、妻や側室など正式な相手ではなく、愛妾程度でも構わないと思っていた。
しかしそれはあくまで個人的な願い。正式な相手であるセイリアはどう思うかなど分からない。況してやセイリアは仕えるべき主人、元主人であり、もしも不況を買ってしまえば大変なことになってしまう。そんな気持ちから、恐る恐るセイリアに対して確認の言葉を口にしてしまう二人であった。
「………む?う~~~~ん………?そうだな、正直に言ってしまえばヒロト様を"独り占めしたい"という気持ちもあるにはある 」
笑顔からほんの少しだけ難しい顔になり、そう答えたセイリアの言葉に、「やはり⁉︎ 」と顔を青くするラーナとキムチェであったが、そんな二人に向かいセイリアは言葉を続ける。
「だが、ヒロト様はとても器の大きなお方だ。彼の方はまだまだこれからこの世界の歴史上類を見ない程の事を成されるだろう。そうなった時、正直私ひとりでは支え切れないとも思ってるんだ。だから、ヒロト様を"一緒に支えてくれる者達"が必要なんだと思う 」
と、そこでセイリアは彼女の祖父や祖母譲りの悪戯っ子のような笑顔を浮かべて二人にこう言い放った。
「………だから、折衷案だ。私は積極的に応援はしないが、邪魔もしないし不快にも思わないから、自分達でヒロト様の御心を射止めてみせろ。それが私が認める条件だ。どうだ、挑戦してみるか? 」
ニヤリと、しかし邪気や含みも一切無いセイリアの笑顔に呆気に取られていたラーナとキムチェであったが、ハッと我に返った二人は慌ててセイリアに返事を返す。
「………は、はい!頑張りますっ‼︎ 」
「受け賜わりました。必ず!」
まあ、このような提案というか譲歩の言葉を吐いてる時点で八割、九割は認めているも同然なのだが、何も無しに認めるのではなく、自分達で辿り着いてみせろと条件付けをすることで、二人のセイリアに対する気兼ねを減らす為だけの言葉であろう。そしてそのちょっとした企みは、ラーナとキムチェのやる気に満ちた笑顔を見れば大いに成功したといえるだろう。
「良かったですね、ラーナちゃん、キムチェさん!」
「ありがとうございます、メイガネーノ様」
「はい、セイリア様に認めて頂けるように全力を尽くします 」
メイガネーノからの祝福の言葉に、嬉しそうに返事を返すラーナとキムチェ。
だか、そんな三人の後ろから、これもまた"親譲り"の人の悪い笑みを浮かべた人物がそっと近づいてきた事には気付かない。
「ん、良かった良かった。で、話が纏まったところでメイにゼルドとの交際についてアドバイスをあげて欲しい 」
「ク、クローレシア様⁉︎ で、ですから、私とゼルド会長はまだそんな………!」
「"まだ"?」
「……あっ!」
「まだ…っ?」
「~~~~~~っ‼︎ 」
先程と同じ揚げ足取りで、真っ赤になるメイガネーノをニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべながら追い詰めるクローレシア。
「それからメイ、いつまで私を「クローレシア様」と呼ぶの?メイは友達、私も「メイ」と呼んでいるのだから、メイにも私を「レーシア」と呼んで欲しい 」
「いえ、それはさすがに…!」
「…公の場では仕方ないから我慢する。でも、こういうプライベートではそう呼んで欲しい。………ダメ?」
「クローレシア様……… 」
元々"変人"扱いをされていた上に、クローレシアは王族。そんな彼女に気軽に話しかけてくる者など皆無である。つまりは"ボッチ"だったクローレシアにとって、メイガネーノは初めて出来た気兼ね無く話せる"友達"だ。そんなメイガネーノと、もっと仲良くなりたいという、小さいことかもしれないが、クローレシアにとっては大きな大きな願いが言わせた言葉だった。
自らも「落ちこぼれ」と呼ばれ、学園では友人など殆んどいないメイガネーノには、クローレシアの気持ちがよく分かってしまう。だからメイガネーノは………、
「分かりました…。これからもよろしくね、レーシア…!」
「………うん‼︎ 」
お互いに笑顔を浮かべ、その存在を確かめるようにしっかりと抱きしめ合いハグを交わす二人。クローレシアとメイガネーノ、二人が友達から"親友"になった瞬間だった。
…だがしかし、そんな"いい話"で終わらないのがこの面々である。
「………と、言う訳で、大事な友達であるメイの男女交際へのアドバイスを… 」
「……もうっ!レーシア~~~~っ!」
と、まあ、別室では男達が黒い笑顔を浮かべて楽しそうに悪巧みに興じているなか、年頃の女の子らしく夜通しキャイキャイと美味しいスイーツや"恋バナ"で盛り上がるのだった。
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