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第24章 混沌の序曲
第212話 閑話 勇者パーティ結成⁉︎ 4
しおりを挟む眩い光が止んだ後、修練場に降臨した魔法少女【トゥインクル・ティーリ】(笑)
ご丁寧にも、変身後のセリフとキュートなポーズを取る(強制)ところまでがセットとなった超親切(迷惑)設計アイテムであった!
「くぅ…っ!まさかこんな事になるなんて………っ!」
単なるパワーアップかと思いきや、とんだ羞恥プレイとなってしまったティーリだが、既に戦いは真っ最中。今更どうしようもない。
「ヒロトさんが言ってた精神的ダメージ、って、コレのことだったのね……⁉︎ で、でも、この魔力はすごいわ…!」
キラキラ、フリフリの異様に可愛らしい衣装だが、これらは術式によって周囲の魔素を変換し、元々の着用していた衣服や装備に融合、変化させている。
つまりはティーリは今、具現化された濃密な魔力そのものを着ているのと同じ。見た目はアレだが、その防御力たるや、騎士などが着る全身鎧を遥かに凌ぐ性能を持っているのだ。
「何だその格好は!ふざけているのかっ‼︎ 」
「きゃっ⁉︎ …っきゃ~~~~~~~~~~っ⁉︎ 」
あまりの出来事に、呆然となっていたティーリに向け、急にバーニャが飛び掛かり、飛び蹴りを放って来た。
それを回避する為、いつも通り軽くステップを切ったつもりのティーリだったが、ほんの少しだけ避けたつもりが、ポーーーーーーン!とまるで羽が生えたかのように十メートルほどジャンプしてしまう。
(「これ凄い!バーニャの攻撃を避けるのも結構余裕だったし、この身体能力!ヒロトさんが言ってた通り、私自身の能力が格段に跳ね上がっている⁉︎ でも、これなら…行けるわっ‼︎ 」)
「やあああああっ‼︎ 」
「せあああっ‼︎ 」
ーーー ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガンッ‼︎ ーーー
ティーリとバーニャの放つ拳が!脚が!魔法が所狭しと闘技場内に吹き荒れる!
「後衛職の魔法使いだと思ってたのにやるじゃない!」
「ちょっとズルだけどね!真剣勝負だもん、卑怯とかは言わないわよね!」
「当っ然!言う訳無いわ、女の真剣勝負ですものっ!」
『拳で語る』そんな漫画のようなことがあり得るのか?そう思う人もいるだろう。だが、二人の少女は今、確かに語りあっていた。ひとりの少年に対する想いを。自分が如何に真剣なのかを。
それが証拠に、激しい攻防の中で徐々に二人の表情には変化が生まれていた。厳しいだけだったその表情の中に、お互いに笑顔が混じり始めていたのだ。
お互いに譲ることの出来ない不倶戴天の恋敵。それは変わらない。だが………?
「そろそろ決めさせてもらうわ!《飛翔・螺旋烈渦暴風雷角》ぅぅぅぅぅっ‼︎ 」
「受けて立つわ!吹き飛びなさい《轟渦瀑流》‼︎ 」
バチバチと電光を纏った竜巻と化したバーニャと、ティーリが発動した巨大な岩塊すらも削り切るほどの大渦巻きがぶつかり合い、互いを呑み込み消し飛ばそうと火花を散らす。
「ああああああああああああああああああああああ…っ‼︎ 」
「はああああああああああああああああああああ……っ‼︎ 」
ーーー ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ、ゴォウッ‼︎‼︎ ーーー
《別属性》同士の魔力波動がうねりとなって、文字通り闘技場全体を揺るがしていく。
………が、終わりは突然訪れた。
『ピー、ピー、ピー!警告!警告!〈作動限界時間〉ノ五分ヲ経過シマス。〈作動限界時間〉ヲ超エルト、本機ハ残存魔力ヲ全テ解放シタ後二作動ヲ停止シマス。……残リ三十秒。カウントダウン開始シマス。二十九…二十八…二十七……… 』
「はあああああ……って!ちょっと待って!今、停止なんてしたらっ⁉︎ 」
『…十五…十四…十三……… 』
「きゃあああっ!ちょっと待ってっ⁉︎待ってったらっ‼︎ 」
大慌てのティーリだが、カウントダウンは止まらない。無機質な音声が、無情に淡々と読み上げていくだけ。
『………三……二……一。〈作動限界時間〉二達シマシタ。全残存魔力ヲ解放シマス 』
「イぃぃヤあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎ 」
グワッ‼︎っと一気に魔力が膨れ上がり、ティーリの魔法も、バーニャの攻撃も何もかもを巻き込んで、凄まじい勢いで魔力波動が弾けた………………。
「う…、くっ!どう…なったの………?」
「痛ぅ~~~~、痛たたた………!」
ほぼ同時に、ふらつきながらも身を起こしたティーリとバーニャ。どうやら 【バスターフルート】の強制残存魔力排出のせいで、共に技が消滅してしまったようだ。
「………っ!ティ、ティーリ、あなたその格好…っ⁉︎ 」
「え…?どうしたの?私の…格好……?」
バーニャの焦った声に、ボ~ッとしながらも自分の体を見降ろすティーリだが、次の瞬間、その顔が真っ赤に染まる。
「きゃあああああああああああああっ‼︎ な、何で⁉︎ 何で私こんな格好にいぃぃぃぃい‼︎ 」
慌てて自らの体を隠すように踞るティーリ。
なぜならば、ティーリの体を覆ってい服は、〈オーバーブースト〉の際に変質してしまい、魔力を使い果たしてしまった今では、ほんの申し訳程度で大事な部分に引っかかっているだけのボロ切れへと変わり果て、殆んど半裸の状態になってしまっていたのだ。
ファサリ……!
だが、そんなティーリに、すかさずマントを被せた者が居た。
「ダ、ダイ………っ⁉︎ 」
「ほら見ろ~~、無茶するからだぜーー? 怪我とかはしてないかー?」
「ど、どうして…っ?」
「さっきヒロトが来ててなー、こうなるって教えてくれてたんだよー。ったくよー、もっと詳しく教えておけよなー!」
そう、ヒロトが言っていた"体と精神に受けるダメージ"とは、痛みとかそんな事ではなく、この事であったのだ。
余談だが、この事をヒロトが知ったのは、【国家錬金術師】達の【バスターフルート】お披露目の時。
だが、その時は嬉々としてポーズを取っていた【魔法少女】へと変化したむさい漢の娘が、突然素ッ裸になったのだから、ダメージを受けたのはむしろヒロトの方だったりしたのだが……。
「そ、そう…だったの…。あ、ありがとう 」
「お、おーう… 」
「と、ところで…………、見た?」
「えっ!あ、いや、見てない!見てないぞー‼︎ 」
「うそっ!顔が赤いもん、見たんでしょうっ!」
「見てねぇよっ!誰がお前のなんかーーっ!」
「な、何ですってぇぇぇっ!」
ちょっとはいいムードになりかけたのに、すぐに相変わらずギャイギャイと言い合いを始める二人。
そんな二人の後ろに、近付いてくるひとりの人影があった。
「クックック…!相変わらず仲がよろしゅうござんすねぇ?」
「「ロースゥさん………!」」
近付いて来た人影。それはバーニャの母、この勝負をするきっかけとなった張本人、ロースゥであった。
「さてさて、どうやら勝負は引き分けのようでござんすが、如何なされますか?日を改めて再戦、と致しますかえ?」
ニッコリと笑うロースゥに、答えたのはダイ………、ではなくティーリだった。
「ロースゥさん、私が納得すればこの勝負は終わり、でいいんでしたっけ?」
「そうですねぇ、ふふふ…、どういたされやすか?」
「今の勝負で、バーニャの本気がどれほどの物かは分かりました。だけど…、だからって、すぐに嫁、とかなんてやっぱり認められません!けど…、私が認めないとバーニャは旅に出ないといけないんですよね?」
「そうでござんすね、それが仕来りでござんすから 」
少しだけ俯き、考える素ぶりをしていたティーリは顔を上げ、真っ直ぐにロースゥの目を見て口を開く。
「それなら私から提案です。私達はずっとこの【獣王闘国】に居る訳じゃありません。もしもバーニャがダイに嫁いでも、結局この国からは出ることになります。だったら…!」
ティーリは振り向き、今度はバーニャを見詰める。
「バーニャ、あんた私達のパーティ【閃光の一撃】に入りなさい!」
「え………っ!」
「あんたの本気だけは認めてあげる!どっちみち国を出る事になるんだったら、私達と一緒に行きましょう。もっと時間をかけて、お互いに理解し合って、それで納得したら、ダイの片側の隣は譲ってあげてもいいわ!」
「ティ、ティーリ………っ‼︎ 」
言ってて自分でも恥ずかしいのか、真っ赤になりながらバーニャを認める言葉を言うティーリ。
ただし、やっぱり素直ではなく、まずはパーティメンバーとしてなんだからね!とするあたり、ツンデレの面目躍如であろう。
「ありがとう、ティーリ!」
「まだよ!まだ納得してないからね!まだパーティに入れてあげるだけなんだからね!」
「うん、うん!あなたの事も大好きよ、ティーリ!」
満面の笑顔でティーリへと抱き着くバーニャ。そんなバーニャの態度に、真っ赤になった顔で釘を刺しながらも、しっかりと受け止めているティーリだった。
「ふふ…っ!あちしの見込んだ通り、やっぱりティーリさんは粋な女子でごさんしたなぁ 」
ひとり満足気に微笑むロースゥを見て、あっ!と気付いて愕然とした表情になるダイ。
「ロースゥさん、もしかしてー、最初っからこれを狙ってた………のか?」
「ふふ、どうでござんしょうねぇ…?まあ、これでバーニャは晴れてお側に置いて頂ける事になりやしたし、以後宜しゅう御頼申し上げますえ、婿様?」
「~~~~~~~~~~っ⁉︎ 」
ゾクッとする程の流し目をダイにくれながら、フフフと笑うロースゥ。
まったくもって女は怖い…!と内心震えるダイである。
ちなみに、問題の仕来りだが、実際に該当する前例も存在する為、本当に有るにはある。
だが、その前例を適用したのがロースゥの嫁入りなら、その仕来りを決めたのもロースゥだ、というのが一番の問題なのではあるのだが…。
とにもかくにも、バーニャという仲間を得て、"未覚醒勇者"ダイのパーティが新たに結成されたのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
いつもお読み頂きありがとうございます!
閑話だからといって、少々悪ノリか過ぎたような気がしないでもありませんが………。
バケモノ揃いのヒロト達の中で、唯一の一般人のティーリには、いずれ改良型の【魔導機杖】は装備させようと思っています。
【魔法少女】になるかどうかはわかりませんが、開発陣の"拘り"如何でしょう。(笑)
ファンタジー大賞期間もそろそろ終わり。期間中には、皆様には沢山の御支援を頂き、本当にありがとうございました。
この場をお借りして感謝を。ありがとうございました。
今後ともよろしくお願い致します。
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