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第21章 再会 友……よ?

第173話

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○ 前回のあらすじ 

 ーー 頭を撃ち抜かれ死んだ大輔が泣きながらピザを食ってたので笑いながら殴った。

 うん、さっぱり訳分からん。

 全部事実を並べただけなのに、余計に訳が分からない説明になってしまうとは、恐るべし異世界っ!恐るべしアフィーちゃん⁉︎

 ーー(『濡れ衣だぁっ⁉︎』)ーー

 ん?なんか今一瞬、またアフィーちゃんと繋がったような気がしたが、まあ、"気のせい"だろう。

 陰謀などを危惧したウッガから、連絡をもらってピザショップ【ハチーベ】に来てみれば、ソニア達が連れて来たダイという名の少年の正体は、俺がこちらの世界に来ることになった原因、《次元振動炉》実験施設をテロリストどもが占拠した事件の際に、命を落としてしまったかつての俺の相棒バディ、大輔の転生した姿だった。

 しかし……? 今の大輔改めダイ少年の年齢は十六歳。だが、俺がこちらに来てから過ごしたのはまだ約半年ほどである。

 次元の境界を越える時に、何かタイムラグでも発生していたんだろうか?いや、そもそもの話、なぜダイが転生を?しかも【勇者】って………っ?

 今度機会があれば、アフィーに聞いてみなくちゃいけないかな?

「『…クククッ!まっさか大翔までー、こっちで生まれ変わってるとはー、思わなかったぜー。あ~あ~、せっかくもうー、お前の顔を見なくて済むってー、清々してたのにー 』…グスッ」

 ムクリと体を起こしながら、憎まれ口を叩く大輔。だが、無理やり不本意だという表情を作ろうとしているが……、おい、やめろ。泣きそうになってんじゃんかお前。グスッとかやっちゃてるし!
 俺までもらい泣きしちゃうだろうが⁉︎

 そうなんだよなぁ、こいつは前世からそうだった。裏の世界に生きてるクセして感激屋で情に厚い奴だったな。
 だが反面、さっきまでターゲットの家族に同情して『可哀想だ』と涙ぐんでおきながら、いざになれば、まったくの情を挟まずターゲットに刃を刺し入れる非情さも併せ持った、紛うこと無き"プロ"でもあったのだが。

 ま、今はそんなことはいいか。

「『うるせーよ、そりゃこっちのセリフだってーの。性懲りもなく俺に間抜けなサル面見せやがって 』」

「『ンだとーーっ!』」
「『やンのかゴラっ!』」

 まだお互い膝をついたままにも関わらず、を飛ばし合う大輔と俺。

 だが、俺が縦にした拳を前に差し出せば、大輔も同じように差し出して、コツコツコツと、俺達だけが知る"ハンドサイン"で軽く拳を打つけ合う。最後に腕相撲の形でガッチリとお互いの掌を取り………。

「「『プッ!あはははははははははははははははっ!』」」

 ああ、間違いない、こいつは大輔だ。黙っていても、当たり前のようにお互いの呼吸が分かる。

 突然殴り合いを始めたと思えば、今度は大笑いをしている俺達を周りが呆然と見詰める中、二人で一頻り笑い合った後、改めて大輔が口を開こうとしたところで、側に居た見知らぬ少女が目に涙をいっぱい溜めて、必死な形相で大輔にしがみついた。

「ね、ねえ、ダイ!ダイったらっ‼︎ いったいどうしたのよ⁉︎ さっきからで喋ってるし!どうしちゃったのよぅ‼︎ 」
 「『わっ!ちょっ⁉︎ ティ、ティーリーーっ⁉︎ 』」

 半泣きになって、ガクガクと大輔…いや、彼女にとっては"ダイ少年"か。を揺らす少女。

「『おい、大輔。日本語のままじゃ通じないぞ?ってか、その様子だとやっぱり"転生"のことは話してないんだな?』」
「『あ!そうかー! そりゃ言っても信じてもらえないかもだしさー。お前はどうなんだー?』」
「『似たようなモンだ。ああ、そういや俺は"転生"じゃないぞ?』」
「は?何だそりゃー?』」
「『まあ、その辺は後でゆっくり話そうぜ?それよりそろそろ日本語をやめないと、彼女がマジ泣きしちまうぞ?』」
「『あ~、そうだなー 』」

 大輔に取り縋っているティーリという少女だけでなく、ソニア達までやたらと不安そうな顔でオロオロしているし、この辺りで一旦切り上げるべきだろう。

「あ~、ティーリ?ごめんなー 」
「ダイっ⁉︎ やっと…、戻っだぁっ‼︎ うわぁああぁぁぁんっ‼︎ 」

 ありゃ?一歩遅かったみたいだな?





「い、いい!さっき泣いちゃったのは、私がアンタのことをおじさんやおばさんに頼まれてるからってだけで、べ、別にアンタのことが心配だった訳じゃないんだからね!」

 おお…っ!ツンデレちゃんだ!

 さっきの大泣きが恥ずかしいのか、頬を真っ赤にしながら言い訳をするこの少女、大輔の転生した姿であるダイ少年の、すぐ隣の家に住んでいた幼馴染みなんだそうな。
 隣の家の幼馴染みの美少女で、勝気でツンデレでトドメにツインテ…。

 何だ?このめちゃくちゃなテンプレ具合は?まさかとは思うが…?

「おい、まさかお前、あの子に毎朝起こされてたり?」
「おー、よく分かるなー?そうなんだよ、昔っから朝勝手に部屋に入ってきてさー、参っちまうぜー!」

 なん………だとっ⁉︎ 大輔のクセに何というリア充!まるでラブコメの主人公じゃないか⁉︎ う、羨ましくなんてないからな!俺にだって超美人でダークエルフな婚約者とかいるんだからな!く、悔しくなんてないもん………!

『…もん!って、マスター、言えば言うほど"負け惜しみ感が……… 』

 黙りなさいアイちゃん!いいの!悔しくなんかないったらないの!

「あ~キムチェよ、儂は紅茶より秀真茶がいいんじゃがのぉ?」
「はい、そうではないかと先代様には秀真茶をご用意させて頂きました 」
「おお!気が利くのお、さすがヒロトのメイドじゃの 」
「恐れ入ります。お褒めの言葉、感謝の極みに御座います 」

 煩悶する俺の内心などお構いなく、テーブルに座る面々にキムチェ達が紅茶を配膳していく。
 そう、所変わって、ここは王都秀真屋敷、その一室である。
 つい騒ぎ過ぎてウッガに迷惑をかけてしまったので、取り敢えず場所を変えようと大輔達を連れてきたのだが、先程の会話からも分かる通り、今現在部屋の中に居るのは俺達だけじゃない。

「なあ、大翔ー? 場所を変えるっていうからついてきたけど、ここは何処なんだー?随分デッカい屋敷みたいだしー、あのとか、この人達は誰なんだー? 」
 
 大輔が首を傾げながら質問してきた。いやー、知らないってことは怖いね!

「おいヒロト、お前ぇの呼び出しはいっつも急だがよ、今日はまたいったい何の用事なんだ?一応俺もヒマじゃねーんだけどな?」
「よく言うぜ、アンタがそんなに勤勉なら、宰相さんはあんなに胃痛に悩まされちゃいないだろうが。まあ、急に呼び立てて悪かったよ。いい機会だから、話しておかなきゃならない事とかあったんでな、わざわざ御足労願った訳だ 」

 ニヤニヤと笑うおっさんにそう言い返し、もう一度部屋に集まってもらった面々を見渡してみる。

 セイリアに始まり、ラーナちゃん。レイナルドやスケールにカークス。
 
 王都への旅路の途中で出会った冒険者パーティ、ソニア、ゴウナム、アーニャ、マーニャの【蒼い疾風ブルーソニック】の四人。

【黒き武神】と呼ばれ、救国の英雄である爺さんジェイーネ・ラル・キサラギに、現辺境伯のランドさん。

 冒険者ギルド最高ギルド長で、同じく英雄【炎禍の魔女】の二つ名を持つ婆さんセイレン・キサラギと、その双璧として呼ばれ【氷結地獄コキュートス】の異名も持つ王立高等魔術学院のイラヤ学院長。

 この国のトップであるジオン陛下のおっさんにレイラ王妃、その王子王女であるゼルドにクローレシア。

 まだまだキムチェやサムゲータさんなど、ここにいない人達もいるが、こうして見るとたった半年で随分"縁"が出来たもんだなぁ………?
 今から話す話は、下手をすればその"縁"を壊してしまうかもしれない。そこが少し恐くもあるが、きっと、いずれ話さねばならないことだっただろう。
 
 信頼しているのならば尚更のこと。

「まあそう焦るなよ、大す………"ダイ"。そうだな、紹介がてら順番に教えてやるよ。まずは……… 」




「んな………っ!お、王様ぁ~っ⁉︎ 」
「くくく【黒き武神】様に、え、【炎禍の魔女】様………っ⁉︎ 」

 え~~っと?何でこうなった?この場では初となるダイとその幼馴染みであるティーリちゃん。二人は只今、絶賛である。

 何故こうなったかと言えば…、失礼にならないように一応陛下おっさんから…と、身分の順番に紹介していったんだが、紹介し始めた途端、二人の顔が凍りつき、カタカタと震え始めたと思ったら突然 ガバッ!と椅子から飛び降りて、床に平伏してしまったのだ。

「え~~と?何してるんだお前?」
「な!何って、お前はバカかーっ⁉︎ へ、陛下だぞ?王様なんだぞーっ?なにおっさん呼ばわりしてるんだよおぉぉぉーーっ⁉︎ 」 
「いや、おっさん陛下はおっさんだし?」

 どうやらダイ達は目の前に座っているのが国王と分かった為に、慌てて跪いたようだ。この辺りの感覚は、"転移"である俺と違い、こちらで生まれ育った故であるんだろうか?

「いや、それを言ったら、さっきお前が"ジジイ言葉の坊主"って言った相手は【黒き武神】様だぞ?」
「~~~~~~っっ⁉︎ も、申し訳ありませんでしたぁぁぁっ⁉︎ 」

 再び額を床に打つける勢いで頭を下げるダイ。あ~~、話が進まない……。

「よいよい、己が見た目がのは充分承知しておるさ。目くじらを立てるような歳でもないしの?だいたい、その程度で腹を立てていたら、ヒロトの奴などどうする?」
「そうそう、コイツまったく遠慮ってもんが無ぇからな!」

「んだよ~、爺さんやおっさん陛下がその方がいいって言ったんじゃねーかよ 」
「いや教官、いくら『それでいい』って言われても、王族や大貴族相手にアッサリそれを実行できるのは教官くらいだからな………? 」
 
 ………バカなっ⁉︎ に、俺が"可哀想な子を見る目で見られているなんてっ?

「それでヒロトよ、そろそろ儂等を呼び付けた訳を聞かせて欲しいんじゃがのう?それからそこの坊や達のこともな 」
「分かってるよ爺さん。だが、ちょっとだけ待ってくれ 」

 いつもの"悪戯っ子"の笑顔で俺に話を促す爺さん。あ~、やっぱり気がついてるんだろうな、この顔は。

 俺は今だ平伏した姿勢のままの"大輔"に話し掛ける。

「『大輔、お前、ティーリちゃんに"転生"のことは話してあるか?』」
「『あ~~。いやー、いつかは話さなきゃなー、とは思ってるんだけどさー。普通は信じてもらえるような話じゃねーし、まだ話してねーんだよなー 』」
「『そっか………。実は俺もまだだ。だけど、もう二度と会えないと思っていたお前にこうして会ったのは、ちょうどなんじゃないのか?と思ってな。お前はどうするよ?』」
「『……っ⁉︎ ………そうかー、なるほどそうかもなー。そうだなー、なかなかひとりじゃがつかなかったけどー、お前が居た方が信じてもらえるかなー?………うん、よし俺も話すわー!』」

 先程ピザショップ【ハチーベ】で、如何にも"仲の良い?知り合いです!"と言わんばかりの殴り合いを演じた俺達だ。今話しているといい、俺のことを話すなら必然的に大輔のことについても話さなきゃいけないからな、一応確認を取ったが、大輔自身もいずれティーリちゃんに話さねばならないなら、今、俺も居るここで話すことに決めたようだ。

「さて、そろそろかの?」
「ヒ、ヒロト様⁉︎ い、今の言葉はいったい………っ!」
「ダ、ダイ⁉︎ ま、またダイがおかしく………っ⁉︎ 」

「「「「 ……………………… 」」」」

 何かを待つような爺さん達年配組に対して、セイリアやティーリちゃん、ソニア達など若年組は不安気な表情を浮かべている。

「ああ、腹は決まったよ、爺さん。今から、ずっと俺の…いや、秘密を話そうと思う 」

 スゥと息を吸い込み、再度覚悟を決めて口を開く。


 ーーー「俺は、俺達は、こことは違う世界からやって来たんだ……… 」ーーーー 








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