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その人が好きなんですね?なるほど。愚かな人、あなたには本当に何も見えていないんですね。
第三話 ベラの正体
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女優のベラがレイモンドの前から姿を消して一年が経とうとしていた。
「リック、そろそろお前とキャメロンの結婚式だな。まさか僕より先にお前が結婚することになるとはな」
「そうですね、兄上。私も信じられません。本当であれば兄上とキャメロンが夫婦になるはずのところを私と結婚することになるなんて、申し訳ない気持ちもありますが幸せです」
「申し訳ない? むしろもらってくれて良かったよ。あの女は真面目なお前とお似合いだ。もちろん良い意味でだからな?」
レイモンドは馬鹿にしたような口調でそう言うと、弟リックの肩に手を置いた。
「お似合いだなんて照れますね。ありがとうございます。私は幸せになってみせます」
*****
そうして結婚式当日。いよいよ新婦の入場。会場の視線は教会の入口に向かった。
「ん? あれはキャメロン……か?」
レイモンドは違和感を覚えた。
レイモンドの違和感とは関係なく式は進んでいく。
そうして新婦が薄いヴェールをあげて顔が見えた瞬間、レイモンドは思わず立ち上がった。
「なぜだ!? なぜベラがここにいる?」
弟リックと結婚式をあげている女性は、自分が恋に落ち、行方がわからなくなってからずっと探していた女優のベラであった。どうやら見間違いではない。
急に大声をあげて席を立ったレイモンドのことを教会にいる全員が見つめている。
新婦キャメロンが新郎リックと神父に耳打ちすると、みんなが見つめるレイモンドの方に歩み寄ってきた。新婦が新郎から離れてどこかに行くなどという通常では起りえない事態に皆がざわめきながらその様子を見つめていた。
キャメロンはレイモンドの耳元まで顔を近づけた。
「地味で面白みのない令嬢で申し訳ありませんでした。でも前髪と服装と喋り方が違うだけでわたくしだとわからなかったレイモンド様もどうかと思いますよ。わたくしのことを何も見えていなかったのですね」
キャメロンが小声でそう呟くとレイモンドは叫びだした。
レイモンドは強制的に教会から出された。泣きながら叫ぶレイモンドは壊れてしまったかのように見える。
式が再開され、キャメロンとリックはとても幸せそうな表情を浮かべている。そうして結婚式は無事に執り行われた。
=== 完 ===
「リック、そろそろお前とキャメロンの結婚式だな。まさか僕より先にお前が結婚することになるとはな」
「そうですね、兄上。私も信じられません。本当であれば兄上とキャメロンが夫婦になるはずのところを私と結婚することになるなんて、申し訳ない気持ちもありますが幸せです」
「申し訳ない? むしろもらってくれて良かったよ。あの女は真面目なお前とお似合いだ。もちろん良い意味でだからな?」
レイモンドは馬鹿にしたような口調でそう言うと、弟リックの肩に手を置いた。
「お似合いだなんて照れますね。ありがとうございます。私は幸せになってみせます」
*****
そうして結婚式当日。いよいよ新婦の入場。会場の視線は教会の入口に向かった。
「ん? あれはキャメロン……か?」
レイモンドは違和感を覚えた。
レイモンドの違和感とは関係なく式は進んでいく。
そうして新婦が薄いヴェールをあげて顔が見えた瞬間、レイモンドは思わず立ち上がった。
「なぜだ!? なぜベラがここにいる?」
弟リックと結婚式をあげている女性は、自分が恋に落ち、行方がわからなくなってからずっと探していた女優のベラであった。どうやら見間違いではない。
急に大声をあげて席を立ったレイモンドのことを教会にいる全員が見つめている。
新婦キャメロンが新郎リックと神父に耳打ちすると、みんなが見つめるレイモンドの方に歩み寄ってきた。新婦が新郎から離れてどこかに行くなどという通常では起りえない事態に皆がざわめきながらその様子を見つめていた。
キャメロンはレイモンドの耳元まで顔を近づけた。
「地味で面白みのない令嬢で申し訳ありませんでした。でも前髪と服装と喋り方が違うだけでわたくしだとわからなかったレイモンド様もどうかと思いますよ。わたくしのことを何も見えていなかったのですね」
キャメロンが小声でそう呟くとレイモンドは叫びだした。
レイモンドは強制的に教会から出された。泣きながら叫ぶレイモンドは壊れてしまったかのように見える。
式が再開され、キャメロンとリックはとても幸せそうな表情を浮かべている。そうして結婚式は無事に執り行われた。
=== 完 ===
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