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断罪されてシスターになった私は隣国で幸せに生きていきます。
第一話 断罪のその後
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「なぜあなたがここに?」
元婚約者の突然の訪問に、私は驚くことしか出来なかった。ここは王都から遠く離れた隣国との境の地の孤児院。私がシスターとして働いている場所でもある。まさか彼がこんなところに現れるなんて……。
私はエレオノーラ。かつての私は高貴な家柄の令嬢として生まれた。第一王子のアドリアン殿下と婚約したこともあって、まさに順風満帆な人生だった。そう、5年前のあの日、殿下の誕生日パーティーで悪役令嬢として断罪されるまでは。
アドリアンは深く息をつき、ゆっくりと語り始めた。
「エレオノーラ、君を突き放したことを本当に後悔している。僕は君の言うことを聞こうともせず、アイラの言うことだけを信じてしまった」
アイラ……またその名前を聞く日が来るとは。彼女は今や王太子妃、このままいずれ王妃になることが決まっている。私からすべてを奪った因縁の男爵家令嬢でもある。
「わたくしが彼女にきつく当たっていたのも本当ですし、殿下に彼女と必要以上に話すなと言ったのは事実ですわ」
「あぁ、事実だ。事実だからこそ僕は妄信的に彼女を信じ、そして庇ってしまった。君の真意など気付かずに」
はぁ、今さらですか。婚約者がいるのに明らかに色目を使っている女がいたら誰だって注意するでしょう。殿下の悪評に繋がるとわかりきっているのですから。それがもし隣国の王女だとしたら何も言いません。爵位が低い男爵家の令嬢だからこそ苦言を呈したのです。
あなたの周りにそれを指摘する人が私以外にもいたのにそれでもアイラを選んだのではないですか。可愛いのは認めますがあんな明らかな地雷女に引っ掛かる殿下にこっちは幻滅しかしていないのが伝わってくれているといいのですが。
「仰りたいことがよくわかりませんが、殿下の中でわたくしの正当性が認められたということでしょうか? たくさんの貴族の前で断罪されたわたくしが今さらどうにもならないと思いますが」
「本当にすまなかった。君が言っていた通り、アイラはとんでもない女だった。王太子妃になった途端に人が変わったかのように傲慢で我儘な女に変わってしまったのだ。本当に自分のことしか考えていない女なんだ。あの女が王妃になったのでは国が崩壊する」
あなたが大勢の貴族の前で私を断罪してまで彼女を選んだからこそ王も引けなくなって男爵家令嬢なんかが王太子妃になることを認めたのではないですか。今さら相手が傲慢で我儘だろうが知ったことですか。
「はぁ、では国が崩壊しないように殿下が頑張ってください。わたくしには関係のないことですから。では失礼します」
私は教会の中に入り扉を閉めました。殿下が何かを叫んでいるようですが、教会の厚い扉に阻まれて内容はわかりません。まぁ、知りたくもないですが。結局殿下は何を言いに来たのかわからないままですが、もしもよりを戻したいなどと言われたり、王太子妃を断罪して欲しいなどと言われたら思うとゾッとしてそれ以上話をしていられませんでした。
そういえば公爵家令嬢時代の執事から王国に関する手紙が来ていましたね。王太子妃が自分の実家である男爵家の爵位をあげて侯爵にしろと騒いでいるのに、殿下は叱りもせず王に頼み込み認めさせてしまった。そのことがきっかけで、元々他貴族からの支持が少なく、王太子として懐疑的な意見が多かった殿下の王位継承権の順位が下げられるとか。
はぁ、もう勝手にやってください。
元婚約者の突然の訪問に、私は驚くことしか出来なかった。ここは王都から遠く離れた隣国との境の地の孤児院。私がシスターとして働いている場所でもある。まさか彼がこんなところに現れるなんて……。
私はエレオノーラ。かつての私は高貴な家柄の令嬢として生まれた。第一王子のアドリアン殿下と婚約したこともあって、まさに順風満帆な人生だった。そう、5年前のあの日、殿下の誕生日パーティーで悪役令嬢として断罪されるまでは。
アドリアンは深く息をつき、ゆっくりと語り始めた。
「エレオノーラ、君を突き放したことを本当に後悔している。僕は君の言うことを聞こうともせず、アイラの言うことだけを信じてしまった」
アイラ……またその名前を聞く日が来るとは。彼女は今や王太子妃、このままいずれ王妃になることが決まっている。私からすべてを奪った因縁の男爵家令嬢でもある。
「わたくしが彼女にきつく当たっていたのも本当ですし、殿下に彼女と必要以上に話すなと言ったのは事実ですわ」
「あぁ、事実だ。事実だからこそ僕は妄信的に彼女を信じ、そして庇ってしまった。君の真意など気付かずに」
はぁ、今さらですか。婚約者がいるのに明らかに色目を使っている女がいたら誰だって注意するでしょう。殿下の悪評に繋がるとわかりきっているのですから。それがもし隣国の王女だとしたら何も言いません。爵位が低い男爵家の令嬢だからこそ苦言を呈したのです。
あなたの周りにそれを指摘する人が私以外にもいたのにそれでもアイラを選んだのではないですか。可愛いのは認めますがあんな明らかな地雷女に引っ掛かる殿下にこっちは幻滅しかしていないのが伝わってくれているといいのですが。
「仰りたいことがよくわかりませんが、殿下の中でわたくしの正当性が認められたということでしょうか? たくさんの貴族の前で断罪されたわたくしが今さらどうにもならないと思いますが」
「本当にすまなかった。君が言っていた通り、アイラはとんでもない女だった。王太子妃になった途端に人が変わったかのように傲慢で我儘な女に変わってしまったのだ。本当に自分のことしか考えていない女なんだ。あの女が王妃になったのでは国が崩壊する」
あなたが大勢の貴族の前で私を断罪してまで彼女を選んだからこそ王も引けなくなって男爵家令嬢なんかが王太子妃になることを認めたのではないですか。今さら相手が傲慢で我儘だろうが知ったことですか。
「はぁ、では国が崩壊しないように殿下が頑張ってください。わたくしには関係のないことですから。では失礼します」
私は教会の中に入り扉を閉めました。殿下が何かを叫んでいるようですが、教会の厚い扉に阻まれて内容はわかりません。まぁ、知りたくもないですが。結局殿下は何を言いに来たのかわからないままですが、もしもよりを戻したいなどと言われたり、王太子妃を断罪して欲しいなどと言われたら思うとゾッとしてそれ以上話をしていられませんでした。
そういえば公爵家令嬢時代の執事から王国に関する手紙が来ていましたね。王太子妃が自分の実家である男爵家の爵位をあげて侯爵にしろと騒いでいるのに、殿下は叱りもせず王に頼み込み認めさせてしまった。そのことがきっかけで、元々他貴族からの支持が少なく、王太子として懐疑的な意見が多かった殿下の王位継承権の順位が下げられるとか。
はぁ、もう勝手にやってください。
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