上 下
9 / 10
断罪されてシスターになった私は隣国で幸せに生きていきます。

第一話 断罪のその後

しおりを挟む
「なぜあなたがここに?」

 元婚約者の突然の訪問に、私は驚くことしか出来なかった。ここは王都から遠く離れた隣国との境の地の孤児院。私がシスターとして働いている場所でもある。まさか彼がこんなところに現れるなんて……。

 私はエレオノーラ。かつての私は高貴な家柄の令嬢として生まれた。第一王子のアドリアン殿下と婚約したこともあって、まさに順風満帆な人生だった。そう、5年前のあの日、殿下の誕生日パーティーで悪役令嬢として断罪されるまでは。

 アドリアンは深く息をつき、ゆっくりと語り始めた。

「エレオノーラ、君を突き放したことを本当に後悔している。僕は君の言うことを聞こうともせず、アイラの言うことだけを信じてしまった」

 アイラ……またその名前を聞く日が来るとは。彼女は今や王太子妃、このままいずれ王妃になることが決まっている。私からすべてを奪った因縁の男爵家令嬢でもある。

「わたくしが彼女にきつく当たっていたのも本当ですし、殿下に彼女と必要以上に話すなと言ったのは事実ですわ」

「あぁ、事実だ。事実だからこそ僕は妄信的に彼女を信じ、そして庇ってしまった。君の真意など気付かずに」

 はぁ、今さらですか。婚約者がいるのに明らかに色目を使っている女がいたら誰だって注意するでしょう。殿下の悪評に繋がるとわかりきっているのですから。それがもし隣国の王女だとしたら何も言いません。爵位が低い男爵家の令嬢だからこそ苦言を呈したのです。
 あなたの周りにそれを指摘する人が私以外にもいたのにそれでもアイラを選んだのではないですか。可愛いのは認めますがあんな明らかな地雷女に引っ掛かる殿下にこっちは幻滅しかしていないのが伝わってくれているといいのですが。

「仰りたいことがよくわかりませんが、殿下の中でわたくしの正当性が認められたということでしょうか? たくさんの貴族の前で断罪されたわたくしが今さらどうにもならないと思いますが」

「本当にすまなかった。君が言っていた通り、アイラはとんでもない女だった。王太子妃になった途端に人が変わったかのように傲慢で我儘な女に変わってしまったのだ。本当に自分のことしか考えていない女なんだ。あの女が王妃になったのでは国が崩壊する」

 あなたが大勢の貴族の前で私を断罪してまで彼女を選んだからこそ王も引けなくなって男爵家令嬢なんかが王太子妃になることを認めたのではないですか。今さら相手が傲慢で我儘だろうが知ったことですか。

「はぁ、では国が崩壊しないように殿下が頑張ってください。わたくしには関係のないことですから。では失礼します」

 私は教会の中に入り扉を閉めました。殿下が何かを叫んでいるようですが、教会の厚い扉に阻まれて内容はわかりません。まぁ、知りたくもないですが。結局殿下は何を言いに来たのかわからないままですが、もしもよりを戻したいなどと言われたり、王太子妃を断罪して欲しいなどと言われたら思うとゾッとしてそれ以上話をしていられませんでした。

 そういえば公爵家令嬢時代の執事から王国に関する手紙が来ていましたね。王太子妃が自分の実家である男爵家の爵位をあげて侯爵にしろと騒いでいるのに、殿下は叱りもせず王に頼み込み認めさせてしまった。そのことがきっかけで、元々他貴族からの支持が少なく、王太子として懐疑的な意見が多かった殿下の王位継承権の順位が下げられるとか。

 はぁ、もう勝手にやってください。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されました。あとは知りません

天羽 尤
恋愛
聖ラクレット皇国は1000年の建国の時を迎えていた。 皇国はユーロ教という宗教を国教としており、ユーロ教は魔力含有量を特に秀でた者を巫女として、唯一神であるユーロの従者として大切に扱っていた。 聖ラクレット王国 第一子 クズレットは婚約発表の席でとんでもない事を告げたのだった。 「ラクレット王国 王太子 クズレットの名の下に 巫女:アコク レイン を国外追放とし、婚約を破棄する」 その時… ---------------------- 初めての婚約破棄ざまぁものです。 --------------------------- お気に入り登録200突破ありがとうございます。 ------------------------------- 【著作者:天羽尤】【無断転載禁止】【以下のサイトでのみ掲載を認めます。これ以外は無断転載です〔小説家になろう/カクヨム/アルファポリス/マグネット〕】

やって良かったの声「婚約破棄してきた王太子殿下にざまぁしてやりましたわ!」

家紋武範
恋愛
 ポチャ娘のミゼット公爵令嬢は突然、王太子殿下より婚約破棄を受けてしまう。殿下の後ろにはピンクブロンドの男爵令嬢。  ミゼットは余りのショックで寝込んでしまうのだった。

私を陥れたつもりのようですが、責任を取らされるのは上司である聖女様ですよ。本当に大丈夫なんですか?

木山楽斗
恋愛
平民であるため、類稀なる魔法の才を持つアルエリアは聖女になれなかった。 しかしその実力は多くの者達に伝わっており、聖女の部下となってからも一目置かれていた。 その事実は、聖女に選ばれた伯爵令嬢エムリーナにとって気に入らないものだった。 彼女は、アルエリアを排除する計画を立てた。王都を守る結界をアルエリアが崩壊させるように仕向けたのだ。 だが、エムリーナは理解していなかった。 部下であるアルエリアの失敗の責任を取るのは、自分自身であるということを。 ある時、アルエリアはエムリーナにそれを指摘した。 それに彼女は、ただただ狼狽えるのだった。 さらにエムリーナの計画は、第二王子ゼルフォンに見抜かれていた。 こうして彼女の歪んだ計画は、打ち砕かれたのである。

婚約破棄されたので、被害者ぶってみたら国が滅びた

ひよこ1号
恋愛
とある学園の卒業パーティーで行われる断罪劇。 その動きを事前に察知した公爵令嬢クローディアは、ギャクハーエンドなるものを目指していた男爵令嬢マリアンヌの様に、被害者ぶって反撃を開始する。 学内の大掃除のつもりが、どんどん事態は大きくなって……? *** 全五話

安息を求めた婚約破棄

あみにあ
恋愛
とある同窓の晴れ舞台の場で、突然に王子から婚約破棄を言い渡された。 そして新たな婚約者は私の妹。 衝撃的な事実に周りがざわめく中、二人が寄り添う姿を眺めながらに、私は一人小さくほくそ笑んだのだった。 そう全ては計画通り。 これで全てから解放される。 ……けれども事はそう上手くいかなくて。 そんな令嬢のとあるお話です。 ※なろうでも投稿しております。

婚約破棄をされて魔導図書館の運営からも外されたのに今さら私が協力すると思っているんですか?絶対に協力なんてしませんよ!

しまうま弁当
恋愛
ユーゲルス公爵家の跡取りベルタスとの婚約していたメルティだったが、婚約者のベルタスから突然の婚約破棄を突き付けられたのだった。しかもベルタスと一緒に現れた同級生のミーシャに正妻の座に加えて魔導司書の座まで奪われてしまう。罵声を浴びせられ罪まで擦り付けられたメルティは婚約破棄を受け入れ公爵家を去る事にしたのでした。メルティがいなくなって大喜びしていたベルタスとミーシャであったが魔導図書館の設立をしなければならなくなり、それに伴いどんどん歯車が狂っていく。ベルタスとミーシャはメルティがいなくなったツケをドンドン支払わなければならなくなるのでした。

【完結】一途な恋? いえ、婚約破棄待ちです

かのん
恋愛
 周囲の人間からは一途に第一王子殿下を慕い、殿下の浮気に耐え忍ぶ令嬢に見られている主人公リリー。 (あー。早く断罪イベント来て婚約破棄してくれないかな)  公爵家の麗しの姫君がそんなこと思っているだなんて、誰も思っていなかった。  全13話 毎日更新していきます。時間つぶしに読んでいただけたら嬉しいです。 作者かのん

10日後に婚約破棄される公爵令嬢

雨野六月(旧アカウント)
恋愛
公爵令嬢ミシェル・ローレンは、婚約者である第三王子が「卒業パーティでミシェルとの婚約を破棄するつもりだ」と話しているのを聞いてしまう。 「そんな目に遭わされてたまるもんですか。なんとかパーティまでに手を打って、婚約破棄を阻止してみせるわ!」「まあ頑張れよ。それはそれとして、課題はちゃんとやってきたんだろうな? ミシェル・ローレン」「先生ったら、今それどころじゃないって分からないの? どうしても提出してほしいなら先生も協力してちょうだい」 これは公爵令嬢ミシェル・ローレンが婚約破棄を阻止するために(なぜか学院教師エドガーを巻き込みながら)奮闘した10日間の備忘録である。

処理中です...