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~その後の出来事~

207 恭 ◇ Kyoh クッキー

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ある満月が綺麗な夜でした。
私は中々寝付けなくて、夜中にクッキーを作っていました。
この時間にお茶をする気にも、本を読む気分にもなれなくて…明日の、おやつ用にでも焼こうと思ったの。

   ****

① 小さく切った無塩バターと卵黄を、あらかじめ常温に戻しておく。
薄力粉、粉砂糖、アーモンドパウダーを振るって、冷蔵庫で30分くらい冷やしておく。
② バターが白っぽく、ふんわりとするまで混ぜる。
※但し、混ぜ過ぎると空気が入り過ぎるので注意。
③ 卵黄、紅茶の順に加え、適度に混ぜ合わせる。
④ ③に薄力粉とベーキングパウダー、アーモンドパウダー、粉砂糖を、
2~3回に分け、振るい入れる。ここで塩を、ほんの少しだけ入れる。
ヘラで切るように、さっくりと混ぜ合わせる。
⑤ 出来上がった生地を手早く纏め、棒状にして、ラップに包む。
※バターが体温で溶けてしまうので、生地には極力、長時間触れない様。
⑥ 冷凍庫で⑤の生地を2時間ほど寝かせる。
⑦ 冷やした生地を端から、少し薄めに切る。
⑧ 170度の余熱で温めたオーブンで10分くらい焼き、更に鉄板の前後の向きを反対にして8分くらい焼く。

   ****

祖母様ばあさまが得意だった、紅茶クッキー。
祖父様じいさまがブレンドした、バタークッキーに合う紅茶の茶葉。
同じく、オリジナルにブレンドした香草入りのお塩は、隠し味に。風味にアクセントをつけるの。
私が幼い頃。お祖母様と、よく一緒に作ったわ。ただ、言われた事をするだけの、お手伝い程度だったけれど…。手作りのクッキーは〝お祖母様の味〟なの。
お祖母様みたいに、味の種類バリエーションがあるわけではないけれど、最近、少しは上達したのよ。

私は、お庭に面した席に座って、練り上げた生地を寝かせている間ぼんやりとしていました。
「最近、紅茶味ばっかりだから、次は違う味にも挑戦チャレンジしてみようかしら…」
その時でした。突然、窓越しに〝何か〟が現れたの!!
それまで全然、気付かなかったから、びっくりして飛び上がってしまいました。
……だ、誰?!
現れたのはフードで顔を隠した、真っ白なマントを羽織った人でした。
風で揺れるマントの裾から、僅かに見える華奢な脚と、ハイヒールのショートブーツ。
……女の人?
私が固まっていると、その人が一歩…また一歩とこちらに近付いてきます。
凝視していたら、不意に、ふわりと温かなものに包まれた感じがして…次の瞬間、破裂音に近い高音が、まるで銃声のように私の鼓膜を揺らす。
見ると、確かに閉まっていた筈の窓の鍵が…勝手に開いている!
……な、何で? 
窓枠に手を添えていた、その人が、片手でフードを取り去る。
「……!!」
喉の奥で声にならない悲鳴が上がる。けれど、声は出なかった。出せなかった。

「こんばんは。〝恭ちゃん〟」

目の前に立っていたのは〝碧い瞳の私〟でした。
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