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四章 まるで幻想物語

193 ◆□■◇ これからずっと

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「ね、ねえ? これで…終わり?」
不安そうに膝の上で拳を握り、小首を傾げた少女が震える声で言った。
次の瞬間、少女が息を呑み、少しだけ後退あとずさりした。
突然現れた発光する白銀色の線が、本の表紙を這うように一筆書きで模様を描いていたのである…。
描かれたのは、何やら紋章の様だった。
「何でしょう? これ…」と茶髪の少年が言うと、碧と金の瞳の男が静かに言った。
封印ロックか」
「え?」
数秒だけ光を放っていた不思議な紋章は、羊皮紙の頁の文字と同じく表紙に吸い込まれて見えなくなった。
「本、見ますよ」
突然、碧い瞳の男がひょいと本を取り上げた。他の四人の顔に、戸惑いが浮かぶ。
「何して…!」
「大丈夫ですよ」
焦る黒髪の少年の声を無視し、男は平然とした態度で、真ん中辺りの頁をパラパラと素早く捲っていく。
「ほら」
ぴたりと手を止め、広げて見せたのは、つい先程まで開かれていた〝羊皮紙の頁〟だった。が、何も書かれていない…まっさらだった。
「元々、最初は無かった頁だ。お狐さまが、本に綴じてくださったんだろう」
言い終わると同時に、お狐さまが再び姿を現した。碧い瞳の男が訊く。
契約書これも、解除術で読めるようになるのか?」
『ああ』

……交渉成立。

一瞬の。同じ顔をした二人の男の口元に、それぞれ違う笑みが浮かぶ。
満足そうな笑みと、安堵の笑みが…
「解りました」「はい」

「アキちゃん? これで、もう御祈りの日に、行方不明になるはいなくなる…のよね?」と、少女が小声で茶髪の少年に問う。
「今の話からすると、そうですね」
茶髪の少年が答えると、黒髪の少年も口を開いた。
「…俺達が、あの本に書かれたことを全て守れば、だろ?」
「そうですね」
「これから…ずっと…私達の〝役目〟ね」
茶髪の少年と少女が頷いた。
お狐さまは尾を揺らし、そんな彼等を眺めていた。

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