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特別編「寝苦しい夜に贈る物語」
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今年も暑い夏がやってきましたね。
そんな夜に贈りたい「寝苦しい夜に」Ver.です。
さぁ、行ってらっしゃい。
『青色の夏』
じっとりと張りつく汗をタオルで拭う。木陰のベンチも生温かった。空の青と白のコントラストはとっくに見飽きていて、地面の蟻の方が興味を持てるくらいだ。
「むつや君?」
その声に顔を上げると、麦わら帽子を被った少女がいる……。
「あ!」
「あって失礼でしょ」
そう言ってからから笑った。
「響香……?」
「私、久しぶりに帰ってきてるの」
可憐にワンピースをひらつかせ、隣に腰掛けた。
「暑いね」
パタパタと扇いでいる君は、日焼けしていない白い肌で……。
「――俺、アイス買ってくるっ」
返事も聞かずに走り出した。どっと吹き出る汗を振り切るかのように、スーパーに入る。寒いくらいにかけられたクーラーが心地よかった。迷わずアイスコーナーヘ向かい、ソーダ味のアイスを手に取った。喉も渇いてるかもしれないな。そうしてお茶とひんやりラムネも抱える。
ベンチに戻ると響香は麦わら帽子を外して待っていた。
「あ! おかえりー」
「ただいま」
「どっちがいい?」
「ひんやりラムネっ」
「はい、どーぞ」
「ありがとう」
目をきらきらさせて受け取っている。響香は変わらないな。そう思って、ソーダアイスを食べながら何気なく空を仰ぐ。さっきよりもずっと青い……。棒に溶けたアイスが滴るころ、再び響香の方を見た。
「あっ! むっちゃん! アイスたれてる」
あわてて動かした手から見事にアイスは落っこちる。
「やっちゃったねー」
響香のその声は弾んでいるようにも聞こえた。
「とりあえず、手洗ってくる」
水で遊んでいる小学生軍団を少し待って手を洗った。夏は手が乾くのも早い。
「遅かったね」
「小学生が水風船に使っててさ」
「なるほどね!」
アスファルトに溶けた水色の液体。よく見ると何匹か蟻が来始めていた。
「冷たっ!」
左頬にひんやりラムネのボトルがある。
「ひんやりしたでしょ?」
いたずらっ子のように笑う。こっちの気も知らないで、ったく。
「顔赤いよ?」
そう言った響香の顔もほんの少しだけ赤色に染まっていた――。
さて、今夜の物語はいかがだったでしょうか。
夏の青いもの、色々あるでしょう。
これからどんどん暑くなりますから、水分補給もしっかりとしてお過ごしくださいね。
それでは、
「おやすみなさい」
そんな夜に贈りたい「寝苦しい夜に」Ver.です。
さぁ、行ってらっしゃい。
『青色の夏』
じっとりと張りつく汗をタオルで拭う。木陰のベンチも生温かった。空の青と白のコントラストはとっくに見飽きていて、地面の蟻の方が興味を持てるくらいだ。
「むつや君?」
その声に顔を上げると、麦わら帽子を被った少女がいる……。
「あ!」
「あって失礼でしょ」
そう言ってからから笑った。
「響香……?」
「私、久しぶりに帰ってきてるの」
可憐にワンピースをひらつかせ、隣に腰掛けた。
「暑いね」
パタパタと扇いでいる君は、日焼けしていない白い肌で……。
「――俺、アイス買ってくるっ」
返事も聞かずに走り出した。どっと吹き出る汗を振り切るかのように、スーパーに入る。寒いくらいにかけられたクーラーが心地よかった。迷わずアイスコーナーヘ向かい、ソーダ味のアイスを手に取った。喉も渇いてるかもしれないな。そうしてお茶とひんやりラムネも抱える。
ベンチに戻ると響香は麦わら帽子を外して待っていた。
「あ! おかえりー」
「ただいま」
「どっちがいい?」
「ひんやりラムネっ」
「はい、どーぞ」
「ありがとう」
目をきらきらさせて受け取っている。響香は変わらないな。そう思って、ソーダアイスを食べながら何気なく空を仰ぐ。さっきよりもずっと青い……。棒に溶けたアイスが滴るころ、再び響香の方を見た。
「あっ! むっちゃん! アイスたれてる」
あわてて動かした手から見事にアイスは落っこちる。
「やっちゃったねー」
響香のその声は弾んでいるようにも聞こえた。
「とりあえず、手洗ってくる」
水で遊んでいる小学生軍団を少し待って手を洗った。夏は手が乾くのも早い。
「遅かったね」
「小学生が水風船に使っててさ」
「なるほどね!」
アスファルトに溶けた水色の液体。よく見ると何匹か蟻が来始めていた。
「冷たっ!」
左頬にひんやりラムネのボトルがある。
「ひんやりしたでしょ?」
いたずらっ子のように笑う。こっちの気も知らないで、ったく。
「顔赤いよ?」
そう言った響香の顔もほんの少しだけ赤色に染まっていた――。
さて、今夜の物語はいかがだったでしょうか。
夏の青いもの、色々あるでしょう。
これからどんどん暑くなりますから、水分補給もしっかりとしてお過ごしくださいね。
それでは、
「おやすみなさい」
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