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ORDER-2 ホワイトソーダ

会いたくない客 -2-

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「Fマネ、僕フロア出ましょうか?」


すると深月の後ろから、厨房の奥に居た調理補助スタッフの酒井さかいがスッと顔を出す。

「僕、真野くんと代わりますよ。真野くん、調理補助いけるよね?
フロアで動いてるよりだいぶ楽なんじゃない?」

「え、あ、いや……でも」

深月はさらに青ざめる。
“会いたく無い人間が客として来ている”、だなんて。
そんな個人的な理由で周りの人に迷惑をかけるわけにはーーー。

だけど、やっぱり“大丈夫です”とは言えない。

臆病な自分に自己嫌悪しつつ、どうしようもできず下を俯く。

「真野くん、気にすんなよ。こんなこと滅多に無いんだからさ。
ほら、僕フロア出るから……ハンディこっちに寄越してよ。」

「………すみま、せん…」

涙ぐみそうになってしまうのを堪えて、深月は素直に応じた。
ホールスタッフがオーダー時に使用するハンディ端末を酒井に手渡し、厨房の奥へと入る。


「じゃ、酒井はフロア出てくれ。
……真野すまんな。ピーク抜ける21時までは何とか居られるか?」

「はい、…すみません。ありがとうございます…」


罪悪感と情けなさで潰れてしまいそうだった。

だけど同時に湧き上がるのは、どうしようも無い安堵感。
周りの先輩スタッフたちの優しさが心底有難くて。


そして。



すぐに気付き行動を起こしてくれた、篠原の姿を探す。

「……………」



篠原は黙ったまま厨房に背を向けて、片付けに使うテーブルダスターを一つずつ畳んでいた。
ホールスタッフの手が空いた時の、小さな時間潰しの仕事だ。





(篠原…………。ありがとう……)



深月たちのやりとりが聞こえる距離で、素知らぬ顔をする振りをして、しっかりと背中で聞いている………

その篠原の頼もしい後ろ姿を、厨房の中からじっと見つめる。

とても静かに、まるで大きな手のひらで優しく覆い隠すように……守ってくれた。


彼の優しさが、愛情がーー…痛いくらい心地よくて、だけど同時に切なくて苦しくて。




、貰ってしまってどうするの?と自分に問いかける。



ーーー答えなんてない。



キュウ、と音を鳴らして締め付けられ続ける心臓に、深月はただ喉を詰まらせていた。






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