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二章 学園少女と遺物
些細な苦労
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少し時が経った、あれから裁判にてシスターイブに言い渡された判決が報道された。一時は犯行動機から情状酌量の余地ありと判断され、終身刑となる筈だったが、その後再度行われた裁判にて判決が変わった。裁判の結果は【死刑】。理由は自分の意志であった事、犯行が余りに惨い方法であった為である。三度目に行われた裁判でも判決は変わらず死刑判決が確定した。しかし執行日時は明かされておらず、数年はかかると思われる。
裁判の前に行われた事情聴取にて、シスターイブは犯行動機を語ったが話の際に出てきた“天使”については分かっておらず、取り調べを行った者達は精神的に追い込まれた彼女の妄想、或いはそこに付け込んだ何者かであると考えている。何れにしろ“天使”では無いと結論付けている。関係の無い話とされているが彼女曰く、その日“天使”の声を聞いた際教会の床に羽が落ていたのを見つけたと言う。
とある休日のとある平野にて、ローニャ達四人はゴブリンの討伐依頼を受け、現在ゴブリンの群れと対峙している。
十体以上のゴブリンに囲まれながらもあまり苦戦する事無く捌いている。
四人で連携し確実に数を減らして、下級のゴブリンを粗方片付けた辺りで高みの見物をしていた上位種のホブゴブリン達が動き出す。ホブゴブリンの内数体は魔法を発動し、数体は矢を番え、残りは接近戦を仕掛ける。しかし四人は焦らず対応する。マテリアが魔法を撃ち落としアリスががら空きになったホブゴブリンを狙い撃つ。
レーナは素早く弓矢部隊のホブゴブリンに接近し切り裂いていく、ローニャは接近戦部隊ホブゴブリンを的確に切り捨てて行く。それぞれの役割を熟しホブゴブリン達を仕留めて行った。
そんな中、一体のホブゴブリンがレーナに斬りかかる、レーナは攻撃を回避するがホブゴブリンは素早く切り返し片手剣で素早い連撃を繰り出しレーナに攻撃する。レーナは最初のニ、三回は回避や防御をしたものの対応しきれずその後の攻撃は掠め、最後は腕に深い傷を負ってしまった。
「ぎ…!」
アリスとマテリアの援護射撃でホブゴブリンは距離を取り、レーナも後に下がって体勢を立て直した。
「レーナは一旦応急手当てして。二人は残りのゴブリンをお願い!こいつは私が相手する。」
「了解!」
「了解です!」
「了解。でも気を付けろ、こいつ他のと明らかに違う、おそらく第二、三段階位の奴だ。」
「分かってる、さっきので強いって分かった。大丈夫、油断する気は無い。」
ローニャは残りを二人に任せ一体のホブゴブリンと対峙した。
ホブゴブリンはレーナ目掛けて走り出す、ローニャは瞬時にレーナの前に立ち剣でホブゴブリンの攻撃を防御する、ホブゴブリンは剣でローニャに斬り掛かる。剣は防御するがホブゴブリンは瞬時に剣を引きローニャに回し蹴りを繰り出した、ローニャはそれを剣で受け止めた。
「な、重!」
予想外に強く重い蹴りに軽く吹き飛ばされる。ホブゴブリンがレーナに近づく前に距離を詰め、ホブゴブリンに斬り掛かる、ホブゴブリンは予想していたかの様にローニャに向き直しローニャの攻撃を振り払った。ローニャは剣を弾かれるが、そのまま回転し剣を地面に擦り付けながら切り上げる、切り返しの速さに驚いた様にホブゴブリンは後ろに躱す。着地のタイミングで距離を詰め突きを繰り出す。だがあり得ない体の捩り方をされ、躱される。ホブゴブリンは足を大きく上げローニャの剣を踏みつけ地面にめり込ませた。直後にホブゴブリンの流れる様な斬撃が繰り出される、それをギリギリで躱し距離を取る、二本のナイフを取り出し投げた。ホブゴブリンは容易く弾き落としローニャに追撃を仕掛ける。ホブゴブリンの攻撃が当たる瞬間、ローニャは掌を突き出した、するとホブゴブリンの剣は空中で防がれた。ローニャは魔法の壁を作り防いだのだ。しかし障壁は簡単に破壊された。ローニャは構えてホブゴブリンが再び斬り掛かるのを待つ。しかしホブゴブリンは何かを察した様に一旦下がり様子を窺う。ローニャは隙と見てナイフを二本投げる、ホブゴブリンがナイフを弾いた瞬間、応急手当を終えたレーナがホブゴブリンの横腹に斬り掛かる。ホブゴブリンは体を捩り、躱しながら体を回転させレーナに向かって剣を振り払い、距離を取った。
「くそが…なんて動きしやがる。踊ってるみたいだ。」
レーナの言う通りホブゴブリンは度々踊るような動きをしながら躱す。何処かで覚えたのであろうその動きが予想しずらく戦い辛い。それ故に更にそのホブゴブリンの強さを際立たせている。
ホブゴブリンは長期戦になると感じた為かローニャでは無く、先程自分が負傷させたレーナの方が弱いと判断し、レーナに狙いを変えた。しかしこのホブゴブリンは頭が良い、レーナを無闇に攻撃すればローニャが何かを仕掛けてくると判断しローニャに向かって剣を投げた。ローニャは飛んできた剣を躱した、が次の瞬間、一瞬で間合いを詰めたホブゴブリンがローニャの腹に蹴りを入れた。
「がは…!」
思い切り蹴り飛ばされたローニャは何度も地面を転がった。
「ローニャ!」
レーナは吹き飛ばされたローニャに気を取られホブゴブリンに近付かれても反応出来なかった。
「やべ…」
後ろに下がる姿勢を取ったが間に合わない、ホブゴブリンはレーナに向かって剣を振り下ろした。
だが剣は炎の玉によって弾かれた。レーナは隙を見て距離を取った、それと同時にホブゴブリンに矢が飛んで行く。当たる訳も無いが、レーナが距離を取る時間は稼げた。ホブゴブリンは矢と炎が飛んできた方向を見る、攻撃をしたのは他のゴブリン達を片付け終えたアリスとマテリアだった。
四人から攻撃を受け状況が劣勢に成った事にホブゴブリンは怒りを露わにして咆哮を上げた。
「グアアァーー!!」
ホブゴブリンが咆哮を上げているその間に起き上がったローニャがホブゴブリンの懐に入り込む、ホブゴブリンは瞬時にローニャに向かって剣を振り払う、ローニャが後ろに下がるとホブゴブリンは一歩踏み込み両手で強く握り込こんだ剣を振り下ろす。ローニャに剣が当たる直前、ローニャは両手で剣を挟み、剣を止めた。それと同時に掌に作った防御魔法で剣をその場に固定した。
ホブゴブリンは驚いた様子で剣を動かそうとするがビクともしない、隙を見てローニャはホブゴブリンの腹に強烈なパンチを繰り出した。ホブゴブリンは顔を歪めながら怯んだ、その間にローニャは自分の剣を回収に走った。地面にめり込んだ剣を地面を抉りながら引き抜き再びホブゴブリンに向かって走り出す。
武器を失ったホブゴブリンに三人で攻撃を仕掛ける。ホブゴブリンは剣を諦めて三人の攻撃を華麗に躱しながら蹴りやパンチをしてレーナを攻撃する。
「くそ!なん何だこいつ!動きが早すぎて当たんねー!」
ホブゴブリンが三人の攻撃を躱している間にローニャが剣を回収して戻って来る、それに気付いたホブゴブリンはレーナに回し蹴りをする、レーナは防御の姿勢を取ったが吹き飛ばされた。レーナを退けてローニャが到着する前に剣に手を掛け引き抜こうとする。その間にローニャがホブゴブリンに近付き剣を振る、ホブゴブリンは咆哮を上げ思い切り力を込めて障壁を破壊し、その勢いのままローニャの剣に自分の剣を振る、二人の剣が『ガン!』と音を立て交わるとホブゴブリンの剣は砕けた。それと当時にローニャ剣からも『ビキ!』と音がして大きな亀裂が入った。しかし構わずローニャは剣を振りホブゴブリンの両腕を切断した。両腕を失ったホブゴブリンは堪らず逃げ出す。しかし逃げた方向はレーナが吹き飛ばされた方向であった。ホブゴブリンが逃げた先でレーナがホブゴブリンの前に立ち、二本のダガーをホブゴブリンの腹に突き刺し、そしてホブゴブリンの腹を切り裂いた。
「ぬああー!!」
ホブゴブリンは腸と血を撒き散らし苦しみの咆哮を上げながら倒れ込み、絶命した。
「はぁ…はぁ…」
ほんの十数分間の戦い、だが何時間も戦っているように思えた、それ程強い相手だった。ゴブリンの時は倒すのは容易かった、しかし進化が進めばこれ程までに苦戦する物なのかと実感したローニャ達だった。
「二人とも大丈夫!?」
アリスとマテリアは二人に駆け寄り地面にへたり込む二人を介抱した。
「痛む腕で刺したから刺し込み浅いかと思ったが、意外と行けたな…くそ…本気で痛ぇ…多分折れてんな。ローニャは?腹にいいの食らったろ。」
「私は問題な…ごほ…」
ローニャは少し血を吐き出した。
「無理してはいけませんわ、お薬を飲んで下さい、少しは楽になります。」
「助かる…」
二人は渡された薬を一気に飲み干した。
「おえ!ごほ…!ごほ…!」
口の中に苦味が広がる、決して美味しくはないが、飲んだ瞬間、痛みが少しだけ和らいだ。
「はぁ…はぁ…ありがとう…多少は楽になったかな…」
「良かったけど、一時的なものだから早く帰って治療しないと。」
「レーナさん転移できますか?」
「いや、前に街の外から転移したら怒られたから…っ…足で帰らないと、そいつの一部回収してとっとと帰ろうぜ。」
「そんな事言ってる場合じゃないと思うけど。大怪我だよ?」
「死ぬわけじゃないし大丈夫、とっとと行こうぜ。」
「分かった、ちょっと待ってて。」
アリスとマテリアはナイフを取り出し数体のゴブリンとホブゴブリンの耳を切り取り、それをローニャの鞄に詰め二人を支えながら街に帰った。
街からは少し離れていたが幸い馬車に乗る事が出来た為日暮れまでには帰る事が出来た。四人は真っ先に病院に駆け込んだ。
レーナは片腕に深い切り傷と骨折、ローニャは内臓が少し傷ついており出血していた為、二人共一日入院する事になった。
「いや~まさか入院になるとは。そんな酷いか?」
「私は前はしょっちゅうこんな傷負ってたよ?」
「酷いから入院なの。今日中には治しきれないって言われたでしょ?」
「ローニャさんはその古傷が酷いって話だったし。ついでに治してもらうと良いですわ。」
「ええ~…」
「ええ~じゃない、私達はギルドに依頼にさっきのホブゴブリンの事報告してくるから、抜け出したりしないでよ。」
「しねえって、いってらっしゃ~い。」
アリスとマテリアは手を振って病室を出た。
その後ギルドに訪れた二人は先程の事をギルドに報告した。
「進化段階が三段階?それは本当に?誇張してない?」
「してません!現に私達の仲間二人が大怪我して入院してます。今証拠だって出しましたよね?」
「でも三段階に突入してるなら子供ならとっくに死んでるはずじゃ…」
「私達の仲間にはローニャちゃんが居るんです、知ってますよね?」
「ああ…なるほど、そういう事なら納得。で?そのローニャさんは?」
「入院してます。」
「え!?あのローニャさんが怪我して入院してる!?三段階で!?それ本当に三段階目のホブゴブリンなの?四段階は行ってるんじゃ…」
「何でも良いですから早く回収隊を向かわせて下さい、早くしないと死体が野生動物に食べられてしまいますわ!」
「了解しました。じゃあ直ぐに回収を要請するわ。後日また来て。討伐数を確認次第、その分の報酬を用意するから。」
「分かりました。」
二人からの報告を受けた職員は慌てた様子で奥の扉に入っていった。その後もドタドタと職員が右往左往して忙しそうにしていた。二人は報告を済ませた後にギルドを後にした。
病室に戻った二人はローニャとレーナに報告を済ませた事を話した。
「お帰り~信じてもらえたか?」
「うん、ローニャちゃんの名前を出したら信じてくれたよ。」
「相変わらず有名人だな。」
「やめて、恥ずかしいから。」
半笑いでローニャをからかうレーナに対して、ローニャは顔を赤らめ恥ずかしがった。
「で?なんて報告した?」
「ありのままを、ホブゴブリンに関しては三段階って伝えておいた。」
「妥当だな。あれで二段階はあり得ん。最悪四段階は有るかもな。」
「確かにその位の強さではあったけど、四段階ならもっと大きい筈だと思ったから敢えて三にした。」
「何にしろローニャさんが居なければ、私達確実に全滅してましたね。」
「うん、それもそうだし、早めに退治出来たのも良かったね。あんなのが野放しになってたら最悪五段階超えててもおかしく無かったかも。」
「五段階か…考えたくねぇな…」
四人はあのホブゴブリンが野放しになっていたらと考えている内に段々と雰囲気が暗くなって行った。そんな空気を変えようとローニャが話を切り出した。
「終わった事だしもう良いでしょ?後はギルドに任せよ。それよりレーナ。」
「ん?」
「さっきあいつと戦ってる時に剣から変な音がしたんだ、見てもらえる?」
「ああ、でも流石に退院したらな、今は無理。」
「了解。」
「あ、私達帰らなきゃ、二人共じゃあね、ゆっくり休んでて。」
「おう、お前らもな。」
アリスとマテリアは二人に手を振って部屋を出ていった。
〈【進化段階】とはゴブリン等の魔物に見られる成長過程の事。例として【第一段階】でゴブリンは【ホブゴブリン】へと進化する。【第二段階】でホブゴブリンが更には賢くなり個体によるが体が大きくなる。【第三段階】で更に知識が増え、更に人間等から戦闘技術を盗む等して扱う武器や戦闘技術が増える。【第四段階】は第三段階からそこまでの変化は無いものの、三段階よりも更には知識や戦闘技術が増え、個体によって大きくなる。【第五段階】は最終段階であり、ここで二つの進化を遂げる。一つは【ゴブリンキング、又はクイーン】となる。この進化を遂げると、この個体はこれ迄の進化の過程で蓄積した技術は衰えるものの、他のゴブリン種が無条件で従うようになり、これ迄蓄積した知識で人間の軍隊に引けを取らない程の戦術で軍団としてゴブリン達を操る。二つ目は【ゴブリンハンター】となる。この進化を遂げる事で、他のゴブリン種の群れで一切行動しなくなり単独行動を始める。単体であるものの、これ迄の進化の過程で得た知識や戦術を全て扱え、更に洗練されている為これ迄の進化の過程の個体より更には強くなる。しかし第五段階までになるには相当な時間を要する為、発生頻度は極めて低く、滅多に見られない。〉
〈【アベンジャー】大昔にゴブリンが魔獣化した状態でゴブリンハンターとなった個体。情報は殆ど無く発生したのは一度のみ、しかしこの個体によって村が1つ消滅した。〉
翌日
二人は無事退院する事ができた、二人は病室を出ると真っ先にガッツの店へ向かった。
昨日ローニャがした約束である、武器を点検するをする為にレーナは店に着くと直ぐにローニャから剣を受け取り台に置いて剣を観察した。だがじっくり見るまでもなく、剣には全体に広がるように大きな亀裂が出来ていた。
「酷でーなーこりゃ。多分今まで蓄積されてた分もあってガタが来たんだろう。」
「修繕できる?」
「う~ん、無理。」
「やっぱりか…」
「悪いな、多分師匠でも無理だろう。使われてる素材もわかんねぇし、補強とかも出来ないだろうな。」
「もう使わない方が良いかな?」
「いや、すぐ壊れるって事は無いだろう、そんなに脆くないだろうしな、ただ、今までみたいに、こいつで防御したり、投げたりすんのはやめといた方が良いな、それさえしなければ当分これ以上酷くなるって事は無いだろうな。」
「投げるな、防ぐなか…出来るかな…」
「投げんのはナイフで良いだろう?防御は最近覚えた防御魔法があるんだし、それで我慢しろ。」
「努力するよ。」
「おう。」
ローニャはレーナから剣を受け取り鞘に収めた。
「もう要はねえか?なんか補充してくか?」
「う~ん…一応ナイフ買っとく。」
「んじゃちょっと待っとけ。」
レーナはそう言って数本ナイフを取り出してローニャに私。ローニャは必要な分を手に取り代金を支払いナイフを鞄にしまった。
「ありがとう、じゃあね。」
「ああ、また明日な。」
結局、剣の修繕は出来ず、ローニャは少しがっかりした様子で帰った。
翌日
休日が終わりローニャ達は寮から教室へ向かう。その途中ローニャは廊下でレーナを見かけた。レーナは以前図書室で出会ったレーナの兄と何やら話しているようだった。会話内容は他の生徒達の声で聴こえなかったが、レーナ少々怪訝な顔で怒り気味に話をしており、兄がレーナの言葉に返すように口を動かすと、レーナは呆れた様子で溜息を吐きながら教室に向かっていった。ローニャはレーナを追い掛けるように教室に向かった。その際レーナの兄の前を通った際、レーナの兄はローニャを見下す様な目で見ていた。
教室に入りローニャはレーナに何の話をしていたのかを聞いてみたが「話したくない」と突き放されてしまった。ローニャはレーナの事を少し心配に思ったが、それ以上触れないようにした。
その日、最後の授業が終わると同時にレーナが足早に教室を去った、いつもなら少し談笑した後に解散するがその時のレーナは何処か焦っている様子だった。ローニャは気になってこっそりとついて行ってみるとレーナはまた兄と話していた。ローニャは朝よりも近付いて盗み聞きしてみる事にした。
「退け。てめぇと話す事は無いって言った筈だぞ。」
「俺はある。お前の都合などどうでもいい。生意気な口を聞く前にまず自分の行いを謝罪するのが先だろう。」
「だから、それについて前には私が悪いって事で話はついだろうが、いつまで掘り返す気だよ。」
「自分の行いに反省しているなら先ずは二人に謝るべきだろう、だがお前は謝罪すらしてないと聞いたぞ?」
「するわけ無いだろ、俺はもうあそこには帰らん、俺はもうお前の家族でもなんでもないんだ。それにあの時犯罪者をあの場所に飛ばしたのはあそこ以外に無かったからだ、前にも説明しただろうが。」
「言い訳をするな。理由が何であれ両親を危険に晒したのは事実だろう。」
話の内容を聞く限りどうやら事件の時の事を話しているようだった。
「チッ…」
「態度が悪いな。実の兄に対して失礼だと思ないのか?」
「は?この期に及んで兄貴面かよ気色悪りー。いいか?この際だから言っといてやる。確かにあの場所に犯罪者を飛ばしたのは俺の判断だ。でもそれは街中でドンパチやるより、人の居ない場所でやった方が安全だと思ったからだ。正直その判断は俺はこれっぽちも悪いのは思わん。お前が何度俺に謝罪を求めようとする気なんて無い。するとしてら村の奴らだけでお前とあの二人に対しては絶対にしない。それにてめぇはいつも妹だとか、あいつらの子供だとか言ってるけどな、そもそも私を追い出したのはお前らだし、その原因はお前なんだよ。そんな奴らを今更家族だ何て思いたく無い。私はもう家出したんだ、帰る気なんか毛頭無い。分かったら二度と話し掛けんな。」
レーナが兄を捲し立て、軽蔑の目を向けながら兄の横を通り過ぎようとする。その瞬間兄がするレーナの腕を掴んだ。
「離せ!気安く触んな!」
レーナは大声を上げその手を振り払った。
「何時までも子供の様に我儘を言うな。お前は【クロムウェル】の娘なんだぞ?俺の実の妹だ。逆らおうなんて考える方が間違いだ。いい加減帰って来い。あの時の事は今なら許してやる。両親もお前を心配しているんだぞ。俺があの家に帰る度にお前の事を報告しては二人はお前が帰って来る事を望んでる。実の娘なら親の期待に答えるべきだろう。」
「知った事か。勝手に家族ごっこやってろ、俺は関係無い。」
「おい!」
再び立ち去ろうとするレーナの腕を兄はまた掴もうとする、その腕を強く叩き返した。
「次俺に触ってみろ、殺すぞ…」
レーナは捨て台詞を吐いてその場を去っていった。
残されたレーナの兄は少し呆れた様子だった。
ローニャは二人の会話が終わりレーナがその場を立ち去ったのを見て別の道からレーナを追い駆けた。
レーナを跡を追っている
とレーナは校舎裏の人気の無い場所で石段に座り込んだ。ローニャは鞄から沢山の小さな木の実を取り出してレイに近付いた。そしてレーナの後ろに立ち、指で優しく叩いた。
「うお!」
レーナは驚いて少し飛び上がった。後ろを振り返りそれがローニャだと分かると少し安堵した様子だった。
「何だお前かよ。脅かすなよな。」
「ん…」
ローニャは取り出した木の実を半数差し出した。
「何だよこれ。」
「この間街の外で見つけたやつ。美味しいよ?」
「ああ…ありがと…」
レーナは差し出された木の実を一粒口に入れた。
「…すっぺぇなこれ。」
「酸味は強いけど、食べてると美味しく感じてくる。」
「そ…で?何の用なんだ?」
「いや~…レーナも大変なんだなって思って。」
「見てたのかよ。」
「うん…気になって…ごめんね。」
「良いよ別に、どうでもいい事だしな。」
「う~ん…何て言うか…兄弟って大変なんだね。」
「まあな、お前は兄弟とかって居ないのか?」
「居ない、一人っ子。」
「そっか…、なんか羨ましいな、一人の方が気楽そうだし。」
「そうなの?」
「何でお前が分かんねぇだよ、…あっ…そうかお前…なんか悪い。」
「ん?別にいいよ。」
「お互い幼い頃に実の親から離れてるから、普通の家族ってのが分からないんだな。それに、俺は師匠が居たからまだしも、お前は親の愛情すら殆ど分かんねえんだよな。」
「まぁ、そうだね。家族との思い出は殆ど無いかな。」
「恋しく思ったりしなかったのか?」
「家族が?そうだな、確かに最初の一年間は寂しかったよ。家族とか関係なく少しでも光が見えたら、其処に人が居るんじゃ無いかって期待した事が何度もあったんだ。結局全部ゴブリンだったり虫だっり何だけどね。それで、何時しか人なんて居る訳無いって諦めて、その場所で“生きる”って事だけを考えて生きる事にした。そしたら何時しか、あっさり家族とか、人に会いたいかとか、どうでも良くなって、その日を生きるって事だけが生きがいに成ってたんだ。変な話だけどね。」
「すげ~よなお前は、俺なら一年も保ちそうに無いな。」
「そうでもないかもだよ?試しに何処かの森で数日過ごしてみたら?案外そっちの方が生き易ったりするかもだよ?」
「ん~パス。流石にお前みたいに行かないと思うし、俺は人の居る暮らしで慣れちまってるから。」
「そっか。」
「でもまぁ、息抜きしたいってのはあるかな。仕事とか勉強とか忘れて面白い事がしたい。何かねぇかな~俺そういうの疎いんだよな。」
「私もわかんない。あの二人ならなにか知ってるかも。」
「かもな。でもま、その内なんかやりたい事が見つかるさ。それまではいつも通り過ごすよ。」
レーナは立ち上がり、軽く伸びをした。
「ん~…あぁ…なんかアイツの事なんでどうでも良くなっちまった。ありがとな、お陰で楽になった。」
「どういたしまして。」
「んじゃ、俺は帰るよ、またな。」
「あ、うん、またね。」
話を終えレーナは話をしてスッキリしたのか、少し気が晴れたような表情になった。レーナは首飾りを使い転移しようとした時だった。
「あ!二人共、見つけた!ちょっと来て!」
アリスが現れ慌てた様子だった。二人の手を掴み走って校門へと向かう。校門着くと門の前に場所が一台停まっていた。
「馬車?偉く綺麗な馬車だな、どっかの貴族か?」
その場所は真っ白で少し豪華な装飾が施され、御者はかっちりとした服装をしている。馬もかなり綺麗な毛並みをしていた。
その馬車の横でマテリアと一人の女性が話をしていた、近付くとその人物はカーバッツの奥さんだった。
「二人共、やっと来た。この方はマルクール婦人です。前に会った事有ると思いますが、覚えてますか?」
「ああ…【天使の首飾り】の所有者だろ?その人が何しに学園に?」
レーナがそう疑問を投げかけると女性が答えた。
「それは勿論、あなた達四人に用があるから。」
「私達?」
「そうよ、でも詳しい話は邸でするわ、まずは乗って。」
「あ!待ってくれ…下さい。まず理由を教えてもらわないと。」
「それもそうね、と言って深い意味は無いわ、ただあなた達にお礼をしたいだけなの、それから謝罪も込めて。とりあえず乗って、学園長様には夫が話を通してるわ。」
四人は顔を見合わせ不思議に思いながら、馬車に乗り込んだ。
裁判の前に行われた事情聴取にて、シスターイブは犯行動機を語ったが話の際に出てきた“天使”については分かっておらず、取り調べを行った者達は精神的に追い込まれた彼女の妄想、或いはそこに付け込んだ何者かであると考えている。何れにしろ“天使”では無いと結論付けている。関係の無い話とされているが彼女曰く、その日“天使”の声を聞いた際教会の床に羽が落ていたのを見つけたと言う。
とある休日のとある平野にて、ローニャ達四人はゴブリンの討伐依頼を受け、現在ゴブリンの群れと対峙している。
十体以上のゴブリンに囲まれながらもあまり苦戦する事無く捌いている。
四人で連携し確実に数を減らして、下級のゴブリンを粗方片付けた辺りで高みの見物をしていた上位種のホブゴブリン達が動き出す。ホブゴブリンの内数体は魔法を発動し、数体は矢を番え、残りは接近戦を仕掛ける。しかし四人は焦らず対応する。マテリアが魔法を撃ち落としアリスががら空きになったホブゴブリンを狙い撃つ。
レーナは素早く弓矢部隊のホブゴブリンに接近し切り裂いていく、ローニャは接近戦部隊ホブゴブリンを的確に切り捨てて行く。それぞれの役割を熟しホブゴブリン達を仕留めて行った。
そんな中、一体のホブゴブリンがレーナに斬りかかる、レーナは攻撃を回避するがホブゴブリンは素早く切り返し片手剣で素早い連撃を繰り出しレーナに攻撃する。レーナは最初のニ、三回は回避や防御をしたものの対応しきれずその後の攻撃は掠め、最後は腕に深い傷を負ってしまった。
「ぎ…!」
アリスとマテリアの援護射撃でホブゴブリンは距離を取り、レーナも後に下がって体勢を立て直した。
「レーナは一旦応急手当てして。二人は残りのゴブリンをお願い!こいつは私が相手する。」
「了解!」
「了解です!」
「了解。でも気を付けろ、こいつ他のと明らかに違う、おそらく第二、三段階位の奴だ。」
「分かってる、さっきので強いって分かった。大丈夫、油断する気は無い。」
ローニャは残りを二人に任せ一体のホブゴブリンと対峙した。
ホブゴブリンはレーナ目掛けて走り出す、ローニャは瞬時にレーナの前に立ち剣でホブゴブリンの攻撃を防御する、ホブゴブリンは剣でローニャに斬り掛かる。剣は防御するがホブゴブリンは瞬時に剣を引きローニャに回し蹴りを繰り出した、ローニャはそれを剣で受け止めた。
「な、重!」
予想外に強く重い蹴りに軽く吹き飛ばされる。ホブゴブリンがレーナに近づく前に距離を詰め、ホブゴブリンに斬り掛かる、ホブゴブリンは予想していたかの様にローニャに向き直しローニャの攻撃を振り払った。ローニャは剣を弾かれるが、そのまま回転し剣を地面に擦り付けながら切り上げる、切り返しの速さに驚いた様にホブゴブリンは後ろに躱す。着地のタイミングで距離を詰め突きを繰り出す。だがあり得ない体の捩り方をされ、躱される。ホブゴブリンは足を大きく上げローニャの剣を踏みつけ地面にめり込ませた。直後にホブゴブリンの流れる様な斬撃が繰り出される、それをギリギリで躱し距離を取る、二本のナイフを取り出し投げた。ホブゴブリンは容易く弾き落としローニャに追撃を仕掛ける。ホブゴブリンの攻撃が当たる瞬間、ローニャは掌を突き出した、するとホブゴブリンの剣は空中で防がれた。ローニャは魔法の壁を作り防いだのだ。しかし障壁は簡単に破壊された。ローニャは構えてホブゴブリンが再び斬り掛かるのを待つ。しかしホブゴブリンは何かを察した様に一旦下がり様子を窺う。ローニャは隙と見てナイフを二本投げる、ホブゴブリンがナイフを弾いた瞬間、応急手当を終えたレーナがホブゴブリンの横腹に斬り掛かる。ホブゴブリンは体を捩り、躱しながら体を回転させレーナに向かって剣を振り払い、距離を取った。
「くそが…なんて動きしやがる。踊ってるみたいだ。」
レーナの言う通りホブゴブリンは度々踊るような動きをしながら躱す。何処かで覚えたのであろうその動きが予想しずらく戦い辛い。それ故に更にそのホブゴブリンの強さを際立たせている。
ホブゴブリンは長期戦になると感じた為かローニャでは無く、先程自分が負傷させたレーナの方が弱いと判断し、レーナに狙いを変えた。しかしこのホブゴブリンは頭が良い、レーナを無闇に攻撃すればローニャが何かを仕掛けてくると判断しローニャに向かって剣を投げた。ローニャは飛んできた剣を躱した、が次の瞬間、一瞬で間合いを詰めたホブゴブリンがローニャの腹に蹴りを入れた。
「がは…!」
思い切り蹴り飛ばされたローニャは何度も地面を転がった。
「ローニャ!」
レーナは吹き飛ばされたローニャに気を取られホブゴブリンに近付かれても反応出来なかった。
「やべ…」
後ろに下がる姿勢を取ったが間に合わない、ホブゴブリンはレーナに向かって剣を振り下ろした。
だが剣は炎の玉によって弾かれた。レーナは隙を見て距離を取った、それと同時にホブゴブリンに矢が飛んで行く。当たる訳も無いが、レーナが距離を取る時間は稼げた。ホブゴブリンは矢と炎が飛んできた方向を見る、攻撃をしたのは他のゴブリン達を片付け終えたアリスとマテリアだった。
四人から攻撃を受け状況が劣勢に成った事にホブゴブリンは怒りを露わにして咆哮を上げた。
「グアアァーー!!」
ホブゴブリンが咆哮を上げているその間に起き上がったローニャがホブゴブリンの懐に入り込む、ホブゴブリンは瞬時にローニャに向かって剣を振り払う、ローニャが後ろに下がるとホブゴブリンは一歩踏み込み両手で強く握り込こんだ剣を振り下ろす。ローニャに剣が当たる直前、ローニャは両手で剣を挟み、剣を止めた。それと同時に掌に作った防御魔法で剣をその場に固定した。
ホブゴブリンは驚いた様子で剣を動かそうとするがビクともしない、隙を見てローニャはホブゴブリンの腹に強烈なパンチを繰り出した。ホブゴブリンは顔を歪めながら怯んだ、その間にローニャは自分の剣を回収に走った。地面にめり込んだ剣を地面を抉りながら引き抜き再びホブゴブリンに向かって走り出す。
武器を失ったホブゴブリンに三人で攻撃を仕掛ける。ホブゴブリンは剣を諦めて三人の攻撃を華麗に躱しながら蹴りやパンチをしてレーナを攻撃する。
「くそ!なん何だこいつ!動きが早すぎて当たんねー!」
ホブゴブリンが三人の攻撃を躱している間にローニャが剣を回収して戻って来る、それに気付いたホブゴブリンはレーナに回し蹴りをする、レーナは防御の姿勢を取ったが吹き飛ばされた。レーナを退けてローニャが到着する前に剣に手を掛け引き抜こうとする。その間にローニャがホブゴブリンに近付き剣を振る、ホブゴブリンは咆哮を上げ思い切り力を込めて障壁を破壊し、その勢いのままローニャの剣に自分の剣を振る、二人の剣が『ガン!』と音を立て交わるとホブゴブリンの剣は砕けた。それと当時にローニャ剣からも『ビキ!』と音がして大きな亀裂が入った。しかし構わずローニャは剣を振りホブゴブリンの両腕を切断した。両腕を失ったホブゴブリンは堪らず逃げ出す。しかし逃げた方向はレーナが吹き飛ばされた方向であった。ホブゴブリンが逃げた先でレーナがホブゴブリンの前に立ち、二本のダガーをホブゴブリンの腹に突き刺し、そしてホブゴブリンの腹を切り裂いた。
「ぬああー!!」
ホブゴブリンは腸と血を撒き散らし苦しみの咆哮を上げながら倒れ込み、絶命した。
「はぁ…はぁ…」
ほんの十数分間の戦い、だが何時間も戦っているように思えた、それ程強い相手だった。ゴブリンの時は倒すのは容易かった、しかし進化が進めばこれ程までに苦戦する物なのかと実感したローニャ達だった。
「二人とも大丈夫!?」
アリスとマテリアは二人に駆け寄り地面にへたり込む二人を介抱した。
「痛む腕で刺したから刺し込み浅いかと思ったが、意外と行けたな…くそ…本気で痛ぇ…多分折れてんな。ローニャは?腹にいいの食らったろ。」
「私は問題な…ごほ…」
ローニャは少し血を吐き出した。
「無理してはいけませんわ、お薬を飲んで下さい、少しは楽になります。」
「助かる…」
二人は渡された薬を一気に飲み干した。
「おえ!ごほ…!ごほ…!」
口の中に苦味が広がる、決して美味しくはないが、飲んだ瞬間、痛みが少しだけ和らいだ。
「はぁ…はぁ…ありがとう…多少は楽になったかな…」
「良かったけど、一時的なものだから早く帰って治療しないと。」
「レーナさん転移できますか?」
「いや、前に街の外から転移したら怒られたから…っ…足で帰らないと、そいつの一部回収してとっとと帰ろうぜ。」
「そんな事言ってる場合じゃないと思うけど。大怪我だよ?」
「死ぬわけじゃないし大丈夫、とっとと行こうぜ。」
「分かった、ちょっと待ってて。」
アリスとマテリアはナイフを取り出し数体のゴブリンとホブゴブリンの耳を切り取り、それをローニャの鞄に詰め二人を支えながら街に帰った。
街からは少し離れていたが幸い馬車に乗る事が出来た為日暮れまでには帰る事が出来た。四人は真っ先に病院に駆け込んだ。
レーナは片腕に深い切り傷と骨折、ローニャは内臓が少し傷ついており出血していた為、二人共一日入院する事になった。
「いや~まさか入院になるとは。そんな酷いか?」
「私は前はしょっちゅうこんな傷負ってたよ?」
「酷いから入院なの。今日中には治しきれないって言われたでしょ?」
「ローニャさんはその古傷が酷いって話だったし。ついでに治してもらうと良いですわ。」
「ええ~…」
「ええ~じゃない、私達はギルドに依頼にさっきのホブゴブリンの事報告してくるから、抜け出したりしないでよ。」
「しねえって、いってらっしゃ~い。」
アリスとマテリアは手を振って病室を出た。
その後ギルドに訪れた二人は先程の事をギルドに報告した。
「進化段階が三段階?それは本当に?誇張してない?」
「してません!現に私達の仲間二人が大怪我して入院してます。今証拠だって出しましたよね?」
「でも三段階に突入してるなら子供ならとっくに死んでるはずじゃ…」
「私達の仲間にはローニャちゃんが居るんです、知ってますよね?」
「ああ…なるほど、そういう事なら納得。で?そのローニャさんは?」
「入院してます。」
「え!?あのローニャさんが怪我して入院してる!?三段階で!?それ本当に三段階目のホブゴブリンなの?四段階は行ってるんじゃ…」
「何でも良いですから早く回収隊を向かわせて下さい、早くしないと死体が野生動物に食べられてしまいますわ!」
「了解しました。じゃあ直ぐに回収を要請するわ。後日また来て。討伐数を確認次第、その分の報酬を用意するから。」
「分かりました。」
二人からの報告を受けた職員は慌てた様子で奥の扉に入っていった。その後もドタドタと職員が右往左往して忙しそうにしていた。二人は報告を済ませた後にギルドを後にした。
病室に戻った二人はローニャとレーナに報告を済ませた事を話した。
「お帰り~信じてもらえたか?」
「うん、ローニャちゃんの名前を出したら信じてくれたよ。」
「相変わらず有名人だな。」
「やめて、恥ずかしいから。」
半笑いでローニャをからかうレーナに対して、ローニャは顔を赤らめ恥ずかしがった。
「で?なんて報告した?」
「ありのままを、ホブゴブリンに関しては三段階って伝えておいた。」
「妥当だな。あれで二段階はあり得ん。最悪四段階は有るかもな。」
「確かにその位の強さではあったけど、四段階ならもっと大きい筈だと思ったから敢えて三にした。」
「何にしろローニャさんが居なければ、私達確実に全滅してましたね。」
「うん、それもそうだし、早めに退治出来たのも良かったね。あんなのが野放しになってたら最悪五段階超えててもおかしく無かったかも。」
「五段階か…考えたくねぇな…」
四人はあのホブゴブリンが野放しになっていたらと考えている内に段々と雰囲気が暗くなって行った。そんな空気を変えようとローニャが話を切り出した。
「終わった事だしもう良いでしょ?後はギルドに任せよ。それよりレーナ。」
「ん?」
「さっきあいつと戦ってる時に剣から変な音がしたんだ、見てもらえる?」
「ああ、でも流石に退院したらな、今は無理。」
「了解。」
「あ、私達帰らなきゃ、二人共じゃあね、ゆっくり休んでて。」
「おう、お前らもな。」
アリスとマテリアは二人に手を振って部屋を出ていった。
〈【進化段階】とはゴブリン等の魔物に見られる成長過程の事。例として【第一段階】でゴブリンは【ホブゴブリン】へと進化する。【第二段階】でホブゴブリンが更には賢くなり個体によるが体が大きくなる。【第三段階】で更に知識が増え、更に人間等から戦闘技術を盗む等して扱う武器や戦闘技術が増える。【第四段階】は第三段階からそこまでの変化は無いものの、三段階よりも更には知識や戦闘技術が増え、個体によって大きくなる。【第五段階】は最終段階であり、ここで二つの進化を遂げる。一つは【ゴブリンキング、又はクイーン】となる。この進化を遂げると、この個体はこれ迄の進化の過程で蓄積した技術は衰えるものの、他のゴブリン種が無条件で従うようになり、これ迄蓄積した知識で人間の軍隊に引けを取らない程の戦術で軍団としてゴブリン達を操る。二つ目は【ゴブリンハンター】となる。この進化を遂げる事で、他のゴブリン種の群れで一切行動しなくなり単独行動を始める。単体であるものの、これ迄の進化の過程で得た知識や戦術を全て扱え、更に洗練されている為これ迄の進化の過程の個体より更には強くなる。しかし第五段階までになるには相当な時間を要する為、発生頻度は極めて低く、滅多に見られない。〉
〈【アベンジャー】大昔にゴブリンが魔獣化した状態でゴブリンハンターとなった個体。情報は殆ど無く発生したのは一度のみ、しかしこの個体によって村が1つ消滅した。〉
翌日
二人は無事退院する事ができた、二人は病室を出ると真っ先にガッツの店へ向かった。
昨日ローニャがした約束である、武器を点検するをする為にレーナは店に着くと直ぐにローニャから剣を受け取り台に置いて剣を観察した。だがじっくり見るまでもなく、剣には全体に広がるように大きな亀裂が出来ていた。
「酷でーなーこりゃ。多分今まで蓄積されてた分もあってガタが来たんだろう。」
「修繕できる?」
「う~ん、無理。」
「やっぱりか…」
「悪いな、多分師匠でも無理だろう。使われてる素材もわかんねぇし、補強とかも出来ないだろうな。」
「もう使わない方が良いかな?」
「いや、すぐ壊れるって事は無いだろう、そんなに脆くないだろうしな、ただ、今までみたいに、こいつで防御したり、投げたりすんのはやめといた方が良いな、それさえしなければ当分これ以上酷くなるって事は無いだろうな。」
「投げるな、防ぐなか…出来るかな…」
「投げんのはナイフで良いだろう?防御は最近覚えた防御魔法があるんだし、それで我慢しろ。」
「努力するよ。」
「おう。」
ローニャはレーナから剣を受け取り鞘に収めた。
「もう要はねえか?なんか補充してくか?」
「う~ん…一応ナイフ買っとく。」
「んじゃちょっと待っとけ。」
レーナはそう言って数本ナイフを取り出してローニャに私。ローニャは必要な分を手に取り代金を支払いナイフを鞄にしまった。
「ありがとう、じゃあね。」
「ああ、また明日な。」
結局、剣の修繕は出来ず、ローニャは少しがっかりした様子で帰った。
翌日
休日が終わりローニャ達は寮から教室へ向かう。その途中ローニャは廊下でレーナを見かけた。レーナは以前図書室で出会ったレーナの兄と何やら話しているようだった。会話内容は他の生徒達の声で聴こえなかったが、レーナ少々怪訝な顔で怒り気味に話をしており、兄がレーナの言葉に返すように口を動かすと、レーナは呆れた様子で溜息を吐きながら教室に向かっていった。ローニャはレーナを追い掛けるように教室に向かった。その際レーナの兄の前を通った際、レーナの兄はローニャを見下す様な目で見ていた。
教室に入りローニャはレーナに何の話をしていたのかを聞いてみたが「話したくない」と突き放されてしまった。ローニャはレーナの事を少し心配に思ったが、それ以上触れないようにした。
その日、最後の授業が終わると同時にレーナが足早に教室を去った、いつもなら少し談笑した後に解散するがその時のレーナは何処か焦っている様子だった。ローニャは気になってこっそりとついて行ってみるとレーナはまた兄と話していた。ローニャは朝よりも近付いて盗み聞きしてみる事にした。
「退け。てめぇと話す事は無いって言った筈だぞ。」
「俺はある。お前の都合などどうでもいい。生意気な口を聞く前にまず自分の行いを謝罪するのが先だろう。」
「だから、それについて前には私が悪いって事で話はついだろうが、いつまで掘り返す気だよ。」
「自分の行いに反省しているなら先ずは二人に謝るべきだろう、だがお前は謝罪すらしてないと聞いたぞ?」
「するわけ無いだろ、俺はもうあそこには帰らん、俺はもうお前の家族でもなんでもないんだ。それにあの時犯罪者をあの場所に飛ばしたのはあそこ以外に無かったからだ、前にも説明しただろうが。」
「言い訳をするな。理由が何であれ両親を危険に晒したのは事実だろう。」
話の内容を聞く限りどうやら事件の時の事を話しているようだった。
「チッ…」
「態度が悪いな。実の兄に対して失礼だと思ないのか?」
「は?この期に及んで兄貴面かよ気色悪りー。いいか?この際だから言っといてやる。確かにあの場所に犯罪者を飛ばしたのは俺の判断だ。でもそれは街中でドンパチやるより、人の居ない場所でやった方が安全だと思ったからだ。正直その判断は俺はこれっぽちも悪いのは思わん。お前が何度俺に謝罪を求めようとする気なんて無い。するとしてら村の奴らだけでお前とあの二人に対しては絶対にしない。それにてめぇはいつも妹だとか、あいつらの子供だとか言ってるけどな、そもそも私を追い出したのはお前らだし、その原因はお前なんだよ。そんな奴らを今更家族だ何て思いたく無い。私はもう家出したんだ、帰る気なんか毛頭無い。分かったら二度と話し掛けんな。」
レーナが兄を捲し立て、軽蔑の目を向けながら兄の横を通り過ぎようとする。その瞬間兄がするレーナの腕を掴んだ。
「離せ!気安く触んな!」
レーナは大声を上げその手を振り払った。
「何時までも子供の様に我儘を言うな。お前は【クロムウェル】の娘なんだぞ?俺の実の妹だ。逆らおうなんて考える方が間違いだ。いい加減帰って来い。あの時の事は今なら許してやる。両親もお前を心配しているんだぞ。俺があの家に帰る度にお前の事を報告しては二人はお前が帰って来る事を望んでる。実の娘なら親の期待に答えるべきだろう。」
「知った事か。勝手に家族ごっこやってろ、俺は関係無い。」
「おい!」
再び立ち去ろうとするレーナの腕を兄はまた掴もうとする、その腕を強く叩き返した。
「次俺に触ってみろ、殺すぞ…」
レーナは捨て台詞を吐いてその場を去っていった。
残されたレーナの兄は少し呆れた様子だった。
ローニャは二人の会話が終わりレーナがその場を立ち去ったのを見て別の道からレーナを追い駆けた。
レーナを跡を追っている
とレーナは校舎裏の人気の無い場所で石段に座り込んだ。ローニャは鞄から沢山の小さな木の実を取り出してレイに近付いた。そしてレーナの後ろに立ち、指で優しく叩いた。
「うお!」
レーナは驚いて少し飛び上がった。後ろを振り返りそれがローニャだと分かると少し安堵した様子だった。
「何だお前かよ。脅かすなよな。」
「ん…」
ローニャは取り出した木の実を半数差し出した。
「何だよこれ。」
「この間街の外で見つけたやつ。美味しいよ?」
「ああ…ありがと…」
レーナは差し出された木の実を一粒口に入れた。
「…すっぺぇなこれ。」
「酸味は強いけど、食べてると美味しく感じてくる。」
「そ…で?何の用なんだ?」
「いや~…レーナも大変なんだなって思って。」
「見てたのかよ。」
「うん…気になって…ごめんね。」
「良いよ別に、どうでもいい事だしな。」
「う~ん…何て言うか…兄弟って大変なんだね。」
「まあな、お前は兄弟とかって居ないのか?」
「居ない、一人っ子。」
「そっか…、なんか羨ましいな、一人の方が気楽そうだし。」
「そうなの?」
「何でお前が分かんねぇだよ、…あっ…そうかお前…なんか悪い。」
「ん?別にいいよ。」
「お互い幼い頃に実の親から離れてるから、普通の家族ってのが分からないんだな。それに、俺は師匠が居たからまだしも、お前は親の愛情すら殆ど分かんねえんだよな。」
「まぁ、そうだね。家族との思い出は殆ど無いかな。」
「恋しく思ったりしなかったのか?」
「家族が?そうだな、確かに最初の一年間は寂しかったよ。家族とか関係なく少しでも光が見えたら、其処に人が居るんじゃ無いかって期待した事が何度もあったんだ。結局全部ゴブリンだったり虫だっり何だけどね。それで、何時しか人なんて居る訳無いって諦めて、その場所で“生きる”って事だけを考えて生きる事にした。そしたら何時しか、あっさり家族とか、人に会いたいかとか、どうでも良くなって、その日を生きるって事だけが生きがいに成ってたんだ。変な話だけどね。」
「すげ~よなお前は、俺なら一年も保ちそうに無いな。」
「そうでもないかもだよ?試しに何処かの森で数日過ごしてみたら?案外そっちの方が生き易ったりするかもだよ?」
「ん~パス。流石にお前みたいに行かないと思うし、俺は人の居る暮らしで慣れちまってるから。」
「そっか。」
「でもまぁ、息抜きしたいってのはあるかな。仕事とか勉強とか忘れて面白い事がしたい。何かねぇかな~俺そういうの疎いんだよな。」
「私もわかんない。あの二人ならなにか知ってるかも。」
「かもな。でもま、その内なんかやりたい事が見つかるさ。それまではいつも通り過ごすよ。」
レーナは立ち上がり、軽く伸びをした。
「ん~…あぁ…なんかアイツの事なんでどうでも良くなっちまった。ありがとな、お陰で楽になった。」
「どういたしまして。」
「んじゃ、俺は帰るよ、またな。」
「あ、うん、またね。」
話を終えレーナは話をしてスッキリしたのか、少し気が晴れたような表情になった。レーナは首飾りを使い転移しようとした時だった。
「あ!二人共、見つけた!ちょっと来て!」
アリスが現れ慌てた様子だった。二人の手を掴み走って校門へと向かう。校門着くと門の前に場所が一台停まっていた。
「馬車?偉く綺麗な馬車だな、どっかの貴族か?」
その場所は真っ白で少し豪華な装飾が施され、御者はかっちりとした服装をしている。馬もかなり綺麗な毛並みをしていた。
その馬車の横でマテリアと一人の女性が話をしていた、近付くとその人物はカーバッツの奥さんだった。
「二人共、やっと来た。この方はマルクール婦人です。前に会った事有ると思いますが、覚えてますか?」
「ああ…【天使の首飾り】の所有者だろ?その人が何しに学園に?」
レーナがそう疑問を投げかけると女性が答えた。
「それは勿論、あなた達四人に用があるから。」
「私達?」
「そうよ、でも詳しい話は邸でするわ、まずは乗って。」
「あ!待ってくれ…下さい。まず理由を教えてもらわないと。」
「それもそうね、と言って深い意味は無いわ、ただあなた達にお礼をしたいだけなの、それから謝罪も込めて。とりあえず乗って、学園長様には夫が話を通してるわ。」
四人は顔を見合わせ不思議に思いながら、馬車に乗り込んだ。
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