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二章 学園少女と遺物
罰願の天使
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狂気とも言える笑い声を上げる文字通り天使の姿をしたシスターイブを前に、ローニャ達は呆然と立ち尽くす。そんなローニャ達を守る様に騎士達が前に立ち盾を構える。
「ギルドマスター殿!我々が時間を稼ぎます!子供達を連れて外へ!応援呼んで来て下さい!」
「お前らだけでは無理だ!相手は今正真正銘の天使だ、並の人間はそもそも相手にならん!虫みたいに潰されるだけだ!」
「それでもやらねば騎士の名折れです!早く!」
その時イブが手を天に翳した。
「逃がすと思いますか?」
イブがそう呟いた途端教会の入り口の扉を塞ぐように光の柱が出現した。
「くそ!」
さらにイブは逃げ道を塞ぐと続けて魔法を発動した。
「《ヘブンライトフォール》」
イブがそう呟いた瞬間、天井一帯に光が無数に現れ、そこから光の柱が発射された。光は椅子や床、を貫通し装飾品を次々破壊していく。
「っ!!」
カーバッツが氷の壁をを作り何とか光を防ぐ。騎士達もカーバッツの作った壁を少しでも補強するために魔法の壁を作って防ぐ。しかし騎士達の壁は簡単に破られる。何とか必死に防ぐが破られる時間の問題だった。
しかし突然光の雨は止んだ。それと同時にイブが両手を掲げ手の中で光を集めるそして…
「《ホーリーライトレイ》」
集まった光は彼女の手よりも大きくなり、そして光は光線を放つ。カーバッツは氷の壁で何とか防ぐが絶えず降り注ぐ光線の熱と圧力で壁は徐々に溶けていく。防戦一方で為す術も無く壁に隠れて居た時、好きを見てローニャが壁を飛び出した。
「おい待て!」
ローニャの姿が見えたイブは光線をローニャに向ける。ローニャは剣を盾にしながら進む。光線は剣で弾かれるが、弾かれて拡散した光線がローニャにかする。しかしそんな事はお構い無しに突き進む。
「く…!その剣、鬱陶しいですね。」
「はあぁぁ!!」
ローニャは跳び上がりイブ目掛けて剣を振る。だが彼女に届きすらせず無い見えない何かによって剣が弾かれた。
「な…ん!」
床に着地すると同時に追いかけて来る光線を後に跳びながら躱し再び氷の壁に戻った。
「無茶するな!」
「行けると思って!ていうか今の何!見えないけどあいつの周りになんかある。」
「ああ、あの姿になるとその周りに見えない壁が発生するんだ。壊れねえ訳じゃねえがかなり硬い。簡単には壊れねえ。」
「それじゃあアレをなんとかしないと、捕まえるどころか近付く事さえ出来ないって事ですか!?」
「ああ、そうなる。まずはあのバリアを何とかしねぇと、だがこんな狭い所じゃ不利だ、何よりこんな街中で戦えば被害が拡大する。何とかして広い場所に誘導するしか無い。」
「しかしどうすれば。」
降り注ぐ光と見えない壁に阻まれ攻撃を出来ないという圧倒的に不利な状況に全員が悩む中、レーナが口を開いた。
「なあ、俺に考えがある!」
「本当か!?」
「ああ、だがその前に聞きたい。おいおっさん!あのバリアはあいつの体の一部っていう判定になるか?」
「は?多分な!」
「多分か…賭けだな。よし、おっさん!俺が合図したら俺に触れろ!良いな!」
「あ!?ああ!」
「それからローニャ、お前はその剣で防ぎながらあいつに近付け、その後を俺が付いていく。お前も戦力として飛ばす。」
「分かった。」
「んじゃあ合図したら行くぞ。」
レーナの指示の下ローニャがレーナの前に立ちその後ろにレーナが付く。レーナが必死に首飾りを弄り、それを終えそして
「今だ!」
攻撃が一瞬止んだ瞬間に二人が飛び出した。
「また性懲りも無く、大人しく隠れて焼かれるのを待っていれば宜しいのに。」
イブがそう言って微笑みながらローニャ達に向かって光線を放つ。先程の光線よりは小さいがそれでもローニャの剣に強い衝撃が伝わる。しかしローニャはイブに向かって進む。
「貴女には学習能力が無いのかしら!」
イブは翼を大きく羽ばたかせ羽を散らす。その羽根はピタッと止まり、そしてローニャたちに向かって飛んで行く。何とかして羽を防ぎながらローニャはレーナを掴んだまま高く跳び上がった。
「おっさん!来い!」
レーナの合図に壁を張るのに専念していたカーバッツがその手を止め、足に力を込める、そして走り出そうとする。その瞬間アリスとマテリアがしがみつく。
「私達も!」
「え?…ああ…良いか!しっかり掴まれ!」
カーバッツは二人を抱えて背中に氷を付け、氷を操って体を押し出す。高速でレーナ二人に追いついた。
レーナはローニャに掴まれたまま高く跳び上がりローニャの前に手を突き出し見えない壁に触れる。イブが二人に手を翳し光を貯める。次の瞬間アリスとマテリアをくっつけたカーバッツがレーナに触れる、そしてレーナは首飾りを握りしめ『カチッ』と音を鳴らした。するとレーナ達は光に包まれ、レーナに触れていた者、それに連なる者、そしてイブ共々その場から掻き消えた。
取り残された騎士達はキョロキョロと周りを見渡し戸惑う。そんな時教会の扉が激しく開かれた。
少し前 学園長室
学園長が黙々とデスクに向かって書類仕事をしていた時、突然一人の教員がノックも無く、慌てた様子で入って来た。
「なんだ?どうしたんだい?」
「学園長!大変です!北部の教会で何やら戦闘が起こってます!」
「へ!?本当かい!?」
「はい!至急応援を!それからその教会にこの学園の生徒が入って行ったと言う目撃情報もあるそうです!」
「は!?急いで行く。君は寮の生徒達が向かわないようにしてくれ。」
「はい。」
学園長は机の近くに立て掛けていた杖を手に取り、窓を開け窓から飛び降りた。そして魔法で浮き上り凄まじい速さで教会目掛けて飛んでいった。
ほんの一分程で到着し教会に降りようとする。しかし壁を突き破って光が無数に飛んで来た。
「うわ!」
避ける事も防ぐ事も出来るが中々近付けない。隙を見て素早く近付き、光線の間をくぐり抜ける。そして教会の扉を開いた。しかし中には騎士しか居らず生徒の姿は無かった。
「君達!君君以外の者は居ないのか!?」
「あなたは賢者様!いえ、今さっきまで一連の事件の容疑者とそれからギルドマスター殿と学生四人が居たのですが突然掻き消えてしまって。我々も訳が分からず。」
「そうか、おそらく転移でもしたんだろう。なら状況からして転移先は街の外か…くそ!街の外を手当たり次第に飛び回るしか無いか。」
学園長はすぐさま教会を出て、空に浮き上がり街の外に向かって飛び立った。
レオンハール王国 東側
何も無い野原の真ん中で閃光が走る。そこからローニャ達が現れる。ローニャ達はワープ直後にイブから距離を取った。
レーナ以外の全員が辺りを見渡し戸惑う。
「何処だ此処は!?」
「うるさい、耳元で大声を出すな。」
「レーナちゃん此処何処なの?」
「え!?お前ら付いて来たのか!?」
「ええ!それより此処何処なの!?」
「う~んと…お…俺の…実家の近くの丘。」
「え!?帰ってなかったんじゃないの!?」
「帰ってはねえよ。ただ…村の様子が気にって偶に来るだけだ。」
「そんな事はいい!それよりあいつに集中しろ!」
カーバッツが場を鎮めた。
「そうだな。悪いなおっさん。」
「そうですわね、まずアレをなんとかしましょう。私達は何をすればよろしいですか?」
「いや、三人は村に降りて村人を逃してくれ。」
「え、でも。」
「お前らはウォーカー狩りで魔力も殆ど無いだろ。だからお前らは避難してくれ。」
「レーナさんは?」
「俺は…行けない…分かれ。」
「…分かった。無事ていてね。」
アリスがレーナにそう言葉を掛け。レーナとカーバッツを除いた村に向かって走った。
村に着いた三人は手分けして手当たり次第に村の家の扉を叩いて回り、道行く人に声をかけた。
「すみません!そこの人!」
「はい?」
「突然すみません、村の近くの丘で戦闘が始まります。おそらく激しい戦いになるかも知れません。なので一時的にで良いので丘から反対方向に避難して下さい。」
「いきなり何を言い出すんだお嬢さん。そんな事言われてもね。」
「お願いします!」
「誰かいますかー!」
マテリアが『ドンドン!』とドアを叩く。
「何でしょう?」
「ごめんなさいお婆さん。もうすぐあっち側で戦いが起こります。なのですぐにでも逃げて下さい。」
「なに?突然。そんな事言われても信じられないよ。まさか、そんなこと言って私達を遠ざけて物を盗むにかい?そんな事させないよ!」
「いや、ちが―」
お婆さんは物凄い剣幕で扉を勢いよく閉じた。
村中央部
三人はその後も全てよ家を当たったが誰もまともに取り合おうとしなかった。
「はぁ…はぁ…どうしよう誰も話を聞いてくれない。」
アリスが道で立ち止まっていると一人の男性が話し掛ける。
「どうかしたのかい?」
「あ、すみません、実はこの村な近くの丘で戦闘が始まるんです。村の人に一時的に避難してほしくて呼び掛けてるんですけど、誰も聞いてくれなくて。」
「丘で?あそこかい?」
男が丘を指さしながら質問をする。
「はいそうです。」
「う~ん、話しかけといてあれだけど、あんな所に人は行かないよ。」
「でも!」
アリスが男に必死に説得を試みる。その話し声を聞いてぞろぞろと村人が集まってくる。マテリアとローニャも合流し三人はその全員に聞こえるように説明をする。
「お願いです!村の近くで戦いが始まります、どうか避難を!」
「そんなこと言って家に盗みに入る気だろ!」
「これが都会の盗人の手口か?」
「とっとと帰れ!」
「ちが…私達は盗賊じゃありませんわ!皆さんの安全のためです。」
「嘘つけ!」
村人たちの疑いの目が更に強まり、三人が説得は無理だと思い始めたその時だった。
レーナ達が居た場所から大きな音と共に大きな光の柱が現れた。それは本の一瞬の出来事だったが村人達は驚き、困惑した。そしてこの機に乗じてアリスが再び村人達に呼びかけた。
「皆さん!たった今戦闘が始まりました!一時的にでいいのでさっきの光から反対方向に逃げてださい!」
先程の光でようやく信じた村人達がアリスの呼び掛けに応じるように一斉に逃げ始めた。アリス達は村人達を誘導しながら残ってる村人にも声を掛け誘導する。ある程度村人を逃す事に成功した時、ローニャがアリスに声を掛けた。
「アリス、私は二人の加勢に行く。後は頼んだ。」
「分かった。任せて。」
そうしてローニャは急いで二人の元へと向かった。
レーナ、カーバッツ側 丘上
三人が村に向かって走り去って行った直後に二人は出来るだけ時間を稼ごうと、イブに話し掛けた。
「お話は終わったみたいですね。」
「律義に待っててくれたのか。優しいんだな。」
「私は慈悲深いので。」
「は!どうだか。なぁ聞かせてくれよ。何で慈悲深いあんたが人殺しなんて。あんた聖職者だろ。神に背く行為を何故平然と出来る?」
カーバッツが詰めるように問いかけた。
「確かに、はたから見れば悍ましい行為でしょう。しかしこれは仕方の無い事なのです。」
「どういう意味だ?」
「私がしてきた行いは、全て…私を神に罰して頂く為です。」
「意味が分からん。」
意味深な事を言ってイブは語り始めた。
「始まりは…私がまだ子供だった頃。私は両親に愛されていました。」
「身の上話か?いいぜ聞いてやるよ。」
「私の両親はとても敬虔な信者でした。でもそれよりも両親は私を愛してくれました。しかしある日…私は道端で死にかけていた子猫を見つけ、助からないと思い、せめて自然の摂理の中で死なせてあげたいと思っただけ。ただそれだけで、両親は私を化け物と言い、私を殺めようとしました。私を咄嗟に抵抗して、その結果私は二人を殺めてしまった。誰よりも、何よりも愛した両親を。私は祈りました。血を流し…倒れ込む二人の亡骸の横で、神祈り続けました。「どうか私を罰して下さい。そして天国でもう一度両親に会わせて下さい」と。しかし神は応えては下ださらなかった。何時間も何時間も祈ったのに…」
そう話すイブの声には悲しみと怒りが籠もっていた。
「そこで私は理解したのです。神は…私の事など見ていないのだと。神が見ているのは生き物の流れだけ。一個人など神にとってはただの小粒程度なのだと。目に止める事など無いのだと。」
「そんな事で。」
「いいえその時は私もまだ若かった。例えそう理解したとしても。私は神に祈り続けました。何時か神が振り向いて下ださると信じて。しかしやはり神は応えては下さらなかった。私が聖職者になっても尚。私は…もう諦めてしまおうかと思っていました。」
そう話を続けるイブの顔は次の瞬間満たされたような笑顔に変わった。
「でもある日の奇跡が起きたのです。」
「奇跡?」
「そう…私にの前に“天使様”舞い降りて来たのです。美しかった…神々しい光に、翼…今思い返しても嬉しくなる。」
「天使…だと?存在する訳が無い…仮に居るとして、そいつはどんな姿だったんだ?」
「いえ、姿は見ていません。ただ私の後ろに立ってお声を掛けていただいたのです。」
「何と行ったんだ。」
数年前
誰も居ない教会で一人、イブが膝を突いて祈りを捧げている。
「はあ…やはり…駄目なのですね。」
溜息を吐き立ち上がって振り返ろうとした時だった。誰も居ないはずのイブの背後から声が聞こえて来た。
「貴女と声、届きましたよ。」
イブは驚いて振り返ろうとした。が
「振り向いてはいけない!私の姿を見たら、貴女の目は焼け潰れてしまう。」
そう言われてイブは振り返るのをやめた。
「あなたは…いったい。」
「私は天より舞い降りた天使。必死な貴女の声を聞いてやって来たのです。」
「天使…様…しかし信じられません。何か証明して見せて下さい。」
「良いでしょう。」
天使を名乗るそれはそう言ってイブの後ろから眩い光を放ちながら、翼を広げた。壁に広がるその影は、イブの影に重なり、正しく天使のようだった。
「嗚呼…そんな…本当に天使様が私に…でもどうして?」
「貴女は神に見てもらおうと何年も祈り続けている。しかし貴女も気付いている通り、神は貴女の事など見てはいない。それでも祈り続ける貴女がとても可哀想で…だから私は貴女にお告げを与えに来たのです。」
「お告げですか…」
「はい、貴女の望み、叶えられるかもしれません。」
「本当ですか!?」
「ええ…」
「どうすれば宜しいのですか!」
「いいですか?しっかり覚えて下さい。この地上には、“天使に成る事のできる首飾り”があります。それを手に入れるのです。」
「そんな物が…」
「はい…それを使って貴女は天使に成るのです。そうすれば、貴女は神に近い存在として神に見ていただける様に成る。しかしそれは、とある貴族が持っています。或は何処かの国の宝物庫に。」
「では…私に盗みをしろと?」
「場合によっては…人を殺める事になるでしょう。」
「そんな…」
「でも心配はいりません。天使に成れば神はきっとその全てを許して下さるでしょう。恐れないで。これは使命です。貴女ならきっと出来ます。やり遂げれば貴女は家族に会えます。」
「…ええ…そうですね。やってみせます、必ず、何としてでも。」
「それで良い。私は貴女が使命を全う出来るよう祈っています。」
「待って!最後にあなたのお名前を教えて下さい。」
「もちろんです。私の名前は【サマ】。それではさようなら。」
サマと名乗った天使?は光と共に静かに消えて行った。イブはゆっくりと振り返る。振り返った目線の先には天使の石像が置かれていた。
「ありがとうございます…見ていて下さい、必ずやり遂げます。」
「天使様から頂いた使命を全うする為、仕方の無い犠牲だったのです。全ては、神に私の存在を知って頂き、私に罰を下して頂き、もう一度愛する家族に会う為です。ご理解頂けましたか?」
不敵な笑みを浮かべてイブは話し終えた。
「ああよ~く分かったよ。てめえが根っこからイカれてるって事がな!天使から貰った使命?仕方ない犠牲?そんなもんは全部貴様の妄想だ!家族を失ったのも、貴様が信じる神とやらに見てもらえないのも、全部貴様の自業自得だろうが!そんなに死にたいなら一人で行きやがれ!自分勝手な妄想に周りを巻き込んでんじゃねー!!そもそもてめえみたいなクズはな!天国なんか行けねー!てめえが行くの地獄なんだよ!」
話しを聞いたカーバッツは堪らず怒号を浴びせた。
「はぁ…ご理解頂けませんか、仕方有りませんね。では私がお二人を一緒に天国へ導いて差し上げましょう、そうすれば、お二人もきっと理解してくれるはずです。」
「まっぴらごめんだね、てめえは天国には行けないし俺達も天国には行かない。そしててめえが行くのは牢屋の中だ。」
「私を阻みますか?貴方出来るのですか?何でも魔獣との戦いで負けたと聞いていますが?」
「ああ…そうだな、俺はあの狐の魔獣に負けた、それは認めるよ。だが言い訳がましいようだがあの時の俺は机に向かってする仕事ばかりしててな、鈍ってたんだ。だが今はあの時とは違う、あれから毎日鍛えるようにしてるからな、思い上がった女一人抑える程度は出来るかもな。」
「強がりですね。今の私は天使、人間に何かが出来る筈が有りません。」
「そうか?やってみないと分かんねーだろ!」
カーバッツは手を翳した魔法を発動した。
「《パーフェクトフリーズ》!」
魔法が発動しイブは一瞬の内に氷に包まれた。
「おい嬢ちゃん!」
「あ!?」
「合わせろ、まずはバリアを破壊する。」
カーバッツがそう指示を出していると氷の中から光が見えてくる。光は段々と大きくなり、その光は巨大な柱となって氷を粉砕した。光に包まれながら氷の中から抜け出したイブは全くの無傷だった。
「ギルドマスター殿!我々が時間を稼ぎます!子供達を連れて外へ!応援呼んで来て下さい!」
「お前らだけでは無理だ!相手は今正真正銘の天使だ、並の人間はそもそも相手にならん!虫みたいに潰されるだけだ!」
「それでもやらねば騎士の名折れです!早く!」
その時イブが手を天に翳した。
「逃がすと思いますか?」
イブがそう呟いた途端教会の入り口の扉を塞ぐように光の柱が出現した。
「くそ!」
さらにイブは逃げ道を塞ぐと続けて魔法を発動した。
「《ヘブンライトフォール》」
イブがそう呟いた瞬間、天井一帯に光が無数に現れ、そこから光の柱が発射された。光は椅子や床、を貫通し装飾品を次々破壊していく。
「っ!!」
カーバッツが氷の壁をを作り何とか光を防ぐ。騎士達もカーバッツの作った壁を少しでも補強するために魔法の壁を作って防ぐ。しかし騎士達の壁は簡単に破られる。何とか必死に防ぐが破られる時間の問題だった。
しかし突然光の雨は止んだ。それと同時にイブが両手を掲げ手の中で光を集めるそして…
「《ホーリーライトレイ》」
集まった光は彼女の手よりも大きくなり、そして光は光線を放つ。カーバッツは氷の壁で何とか防ぐが絶えず降り注ぐ光線の熱と圧力で壁は徐々に溶けていく。防戦一方で為す術も無く壁に隠れて居た時、好きを見てローニャが壁を飛び出した。
「おい待て!」
ローニャの姿が見えたイブは光線をローニャに向ける。ローニャは剣を盾にしながら進む。光線は剣で弾かれるが、弾かれて拡散した光線がローニャにかする。しかしそんな事はお構い無しに突き進む。
「く…!その剣、鬱陶しいですね。」
「はあぁぁ!!」
ローニャは跳び上がりイブ目掛けて剣を振る。だが彼女に届きすらせず無い見えない何かによって剣が弾かれた。
「な…ん!」
床に着地すると同時に追いかけて来る光線を後に跳びながら躱し再び氷の壁に戻った。
「無茶するな!」
「行けると思って!ていうか今の何!見えないけどあいつの周りになんかある。」
「ああ、あの姿になるとその周りに見えない壁が発生するんだ。壊れねえ訳じゃねえがかなり硬い。簡単には壊れねえ。」
「それじゃあアレをなんとかしないと、捕まえるどころか近付く事さえ出来ないって事ですか!?」
「ああ、そうなる。まずはあのバリアを何とかしねぇと、だがこんな狭い所じゃ不利だ、何よりこんな街中で戦えば被害が拡大する。何とかして広い場所に誘導するしか無い。」
「しかしどうすれば。」
降り注ぐ光と見えない壁に阻まれ攻撃を出来ないという圧倒的に不利な状況に全員が悩む中、レーナが口を開いた。
「なあ、俺に考えがある!」
「本当か!?」
「ああ、だがその前に聞きたい。おいおっさん!あのバリアはあいつの体の一部っていう判定になるか?」
「は?多分な!」
「多分か…賭けだな。よし、おっさん!俺が合図したら俺に触れろ!良いな!」
「あ!?ああ!」
「それからローニャ、お前はその剣で防ぎながらあいつに近付け、その後を俺が付いていく。お前も戦力として飛ばす。」
「分かった。」
「んじゃあ合図したら行くぞ。」
レーナの指示の下ローニャがレーナの前に立ちその後ろにレーナが付く。レーナが必死に首飾りを弄り、それを終えそして
「今だ!」
攻撃が一瞬止んだ瞬間に二人が飛び出した。
「また性懲りも無く、大人しく隠れて焼かれるのを待っていれば宜しいのに。」
イブがそう言って微笑みながらローニャ達に向かって光線を放つ。先程の光線よりは小さいがそれでもローニャの剣に強い衝撃が伝わる。しかしローニャはイブに向かって進む。
「貴女には学習能力が無いのかしら!」
イブは翼を大きく羽ばたかせ羽を散らす。その羽根はピタッと止まり、そしてローニャたちに向かって飛んで行く。何とかして羽を防ぎながらローニャはレーナを掴んだまま高く跳び上がった。
「おっさん!来い!」
レーナの合図に壁を張るのに専念していたカーバッツがその手を止め、足に力を込める、そして走り出そうとする。その瞬間アリスとマテリアがしがみつく。
「私達も!」
「え?…ああ…良いか!しっかり掴まれ!」
カーバッツは二人を抱えて背中に氷を付け、氷を操って体を押し出す。高速でレーナ二人に追いついた。
レーナはローニャに掴まれたまま高く跳び上がりローニャの前に手を突き出し見えない壁に触れる。イブが二人に手を翳し光を貯める。次の瞬間アリスとマテリアをくっつけたカーバッツがレーナに触れる、そしてレーナは首飾りを握りしめ『カチッ』と音を鳴らした。するとレーナ達は光に包まれ、レーナに触れていた者、それに連なる者、そしてイブ共々その場から掻き消えた。
取り残された騎士達はキョロキョロと周りを見渡し戸惑う。そんな時教会の扉が激しく開かれた。
少し前 学園長室
学園長が黙々とデスクに向かって書類仕事をしていた時、突然一人の教員がノックも無く、慌てた様子で入って来た。
「なんだ?どうしたんだい?」
「学園長!大変です!北部の教会で何やら戦闘が起こってます!」
「へ!?本当かい!?」
「はい!至急応援を!それからその教会にこの学園の生徒が入って行ったと言う目撃情報もあるそうです!」
「は!?急いで行く。君は寮の生徒達が向かわないようにしてくれ。」
「はい。」
学園長は机の近くに立て掛けていた杖を手に取り、窓を開け窓から飛び降りた。そして魔法で浮き上り凄まじい速さで教会目掛けて飛んでいった。
ほんの一分程で到着し教会に降りようとする。しかし壁を突き破って光が無数に飛んで来た。
「うわ!」
避ける事も防ぐ事も出来るが中々近付けない。隙を見て素早く近付き、光線の間をくぐり抜ける。そして教会の扉を開いた。しかし中には騎士しか居らず生徒の姿は無かった。
「君達!君君以外の者は居ないのか!?」
「あなたは賢者様!いえ、今さっきまで一連の事件の容疑者とそれからギルドマスター殿と学生四人が居たのですが突然掻き消えてしまって。我々も訳が分からず。」
「そうか、おそらく転移でもしたんだろう。なら状況からして転移先は街の外か…くそ!街の外を手当たり次第に飛び回るしか無いか。」
学園長はすぐさま教会を出て、空に浮き上がり街の外に向かって飛び立った。
レオンハール王国 東側
何も無い野原の真ん中で閃光が走る。そこからローニャ達が現れる。ローニャ達はワープ直後にイブから距離を取った。
レーナ以外の全員が辺りを見渡し戸惑う。
「何処だ此処は!?」
「うるさい、耳元で大声を出すな。」
「レーナちゃん此処何処なの?」
「え!?お前ら付いて来たのか!?」
「ええ!それより此処何処なの!?」
「う~んと…お…俺の…実家の近くの丘。」
「え!?帰ってなかったんじゃないの!?」
「帰ってはねえよ。ただ…村の様子が気にって偶に来るだけだ。」
「そんな事はいい!それよりあいつに集中しろ!」
カーバッツが場を鎮めた。
「そうだな。悪いなおっさん。」
「そうですわね、まずアレをなんとかしましょう。私達は何をすればよろしいですか?」
「いや、三人は村に降りて村人を逃してくれ。」
「え、でも。」
「お前らはウォーカー狩りで魔力も殆ど無いだろ。だからお前らは避難してくれ。」
「レーナさんは?」
「俺は…行けない…分かれ。」
「…分かった。無事ていてね。」
アリスがレーナにそう言葉を掛け。レーナとカーバッツを除いた村に向かって走った。
村に着いた三人は手分けして手当たり次第に村の家の扉を叩いて回り、道行く人に声をかけた。
「すみません!そこの人!」
「はい?」
「突然すみません、村の近くの丘で戦闘が始まります。おそらく激しい戦いになるかも知れません。なので一時的にで良いので丘から反対方向に避難して下さい。」
「いきなり何を言い出すんだお嬢さん。そんな事言われてもね。」
「お願いします!」
「誰かいますかー!」
マテリアが『ドンドン!』とドアを叩く。
「何でしょう?」
「ごめんなさいお婆さん。もうすぐあっち側で戦いが起こります。なのですぐにでも逃げて下さい。」
「なに?突然。そんな事言われても信じられないよ。まさか、そんなこと言って私達を遠ざけて物を盗むにかい?そんな事させないよ!」
「いや、ちが―」
お婆さんは物凄い剣幕で扉を勢いよく閉じた。
村中央部
三人はその後も全てよ家を当たったが誰もまともに取り合おうとしなかった。
「はぁ…はぁ…どうしよう誰も話を聞いてくれない。」
アリスが道で立ち止まっていると一人の男性が話し掛ける。
「どうかしたのかい?」
「あ、すみません、実はこの村な近くの丘で戦闘が始まるんです。村の人に一時的に避難してほしくて呼び掛けてるんですけど、誰も聞いてくれなくて。」
「丘で?あそこかい?」
男が丘を指さしながら質問をする。
「はいそうです。」
「う~ん、話しかけといてあれだけど、あんな所に人は行かないよ。」
「でも!」
アリスが男に必死に説得を試みる。その話し声を聞いてぞろぞろと村人が集まってくる。マテリアとローニャも合流し三人はその全員に聞こえるように説明をする。
「お願いです!村の近くで戦いが始まります、どうか避難を!」
「そんなこと言って家に盗みに入る気だろ!」
「これが都会の盗人の手口か?」
「とっとと帰れ!」
「ちが…私達は盗賊じゃありませんわ!皆さんの安全のためです。」
「嘘つけ!」
村人たちの疑いの目が更に強まり、三人が説得は無理だと思い始めたその時だった。
レーナ達が居た場所から大きな音と共に大きな光の柱が現れた。それは本の一瞬の出来事だったが村人達は驚き、困惑した。そしてこの機に乗じてアリスが再び村人達に呼びかけた。
「皆さん!たった今戦闘が始まりました!一時的にでいいのでさっきの光から反対方向に逃げてださい!」
先程の光でようやく信じた村人達がアリスの呼び掛けに応じるように一斉に逃げ始めた。アリス達は村人達を誘導しながら残ってる村人にも声を掛け誘導する。ある程度村人を逃す事に成功した時、ローニャがアリスに声を掛けた。
「アリス、私は二人の加勢に行く。後は頼んだ。」
「分かった。任せて。」
そうしてローニャは急いで二人の元へと向かった。
レーナ、カーバッツ側 丘上
三人が村に向かって走り去って行った直後に二人は出来るだけ時間を稼ごうと、イブに話し掛けた。
「お話は終わったみたいですね。」
「律義に待っててくれたのか。優しいんだな。」
「私は慈悲深いので。」
「は!どうだか。なぁ聞かせてくれよ。何で慈悲深いあんたが人殺しなんて。あんた聖職者だろ。神に背く行為を何故平然と出来る?」
カーバッツが詰めるように問いかけた。
「確かに、はたから見れば悍ましい行為でしょう。しかしこれは仕方の無い事なのです。」
「どういう意味だ?」
「私がしてきた行いは、全て…私を神に罰して頂く為です。」
「意味が分からん。」
意味深な事を言ってイブは語り始めた。
「始まりは…私がまだ子供だった頃。私は両親に愛されていました。」
「身の上話か?いいぜ聞いてやるよ。」
「私の両親はとても敬虔な信者でした。でもそれよりも両親は私を愛してくれました。しかしある日…私は道端で死にかけていた子猫を見つけ、助からないと思い、せめて自然の摂理の中で死なせてあげたいと思っただけ。ただそれだけで、両親は私を化け物と言い、私を殺めようとしました。私を咄嗟に抵抗して、その結果私は二人を殺めてしまった。誰よりも、何よりも愛した両親を。私は祈りました。血を流し…倒れ込む二人の亡骸の横で、神祈り続けました。「どうか私を罰して下さい。そして天国でもう一度両親に会わせて下さい」と。しかし神は応えては下ださらなかった。何時間も何時間も祈ったのに…」
そう話すイブの声には悲しみと怒りが籠もっていた。
「そこで私は理解したのです。神は…私の事など見ていないのだと。神が見ているのは生き物の流れだけ。一個人など神にとってはただの小粒程度なのだと。目に止める事など無いのだと。」
「そんな事で。」
「いいえその時は私もまだ若かった。例えそう理解したとしても。私は神に祈り続けました。何時か神が振り向いて下ださると信じて。しかしやはり神は応えては下さらなかった。私が聖職者になっても尚。私は…もう諦めてしまおうかと思っていました。」
そう話を続けるイブの顔は次の瞬間満たされたような笑顔に変わった。
「でもある日の奇跡が起きたのです。」
「奇跡?」
「そう…私にの前に“天使様”舞い降りて来たのです。美しかった…神々しい光に、翼…今思い返しても嬉しくなる。」
「天使…だと?存在する訳が無い…仮に居るとして、そいつはどんな姿だったんだ?」
「いえ、姿は見ていません。ただ私の後ろに立ってお声を掛けていただいたのです。」
「何と行ったんだ。」
数年前
誰も居ない教会で一人、イブが膝を突いて祈りを捧げている。
「はあ…やはり…駄目なのですね。」
溜息を吐き立ち上がって振り返ろうとした時だった。誰も居ないはずのイブの背後から声が聞こえて来た。
「貴女と声、届きましたよ。」
イブは驚いて振り返ろうとした。が
「振り向いてはいけない!私の姿を見たら、貴女の目は焼け潰れてしまう。」
そう言われてイブは振り返るのをやめた。
「あなたは…いったい。」
「私は天より舞い降りた天使。必死な貴女の声を聞いてやって来たのです。」
「天使…様…しかし信じられません。何か証明して見せて下さい。」
「良いでしょう。」
天使を名乗るそれはそう言ってイブの後ろから眩い光を放ちながら、翼を広げた。壁に広がるその影は、イブの影に重なり、正しく天使のようだった。
「嗚呼…そんな…本当に天使様が私に…でもどうして?」
「貴女は神に見てもらおうと何年も祈り続けている。しかし貴女も気付いている通り、神は貴女の事など見てはいない。それでも祈り続ける貴女がとても可哀想で…だから私は貴女にお告げを与えに来たのです。」
「お告げですか…」
「はい、貴女の望み、叶えられるかもしれません。」
「本当ですか!?」
「ええ…」
「どうすれば宜しいのですか!」
「いいですか?しっかり覚えて下さい。この地上には、“天使に成る事のできる首飾り”があります。それを手に入れるのです。」
「そんな物が…」
「はい…それを使って貴女は天使に成るのです。そうすれば、貴女は神に近い存在として神に見ていただける様に成る。しかしそれは、とある貴族が持っています。或は何処かの国の宝物庫に。」
「では…私に盗みをしろと?」
「場合によっては…人を殺める事になるでしょう。」
「そんな…」
「でも心配はいりません。天使に成れば神はきっとその全てを許して下さるでしょう。恐れないで。これは使命です。貴女ならきっと出来ます。やり遂げれば貴女は家族に会えます。」
「…ええ…そうですね。やってみせます、必ず、何としてでも。」
「それで良い。私は貴女が使命を全う出来るよう祈っています。」
「待って!最後にあなたのお名前を教えて下さい。」
「もちろんです。私の名前は【サマ】。それではさようなら。」
サマと名乗った天使?は光と共に静かに消えて行った。イブはゆっくりと振り返る。振り返った目線の先には天使の石像が置かれていた。
「ありがとうございます…見ていて下さい、必ずやり遂げます。」
「天使様から頂いた使命を全うする為、仕方の無い犠牲だったのです。全ては、神に私の存在を知って頂き、私に罰を下して頂き、もう一度愛する家族に会う為です。ご理解頂けましたか?」
不敵な笑みを浮かべてイブは話し終えた。
「ああよ~く分かったよ。てめえが根っこからイカれてるって事がな!天使から貰った使命?仕方ない犠牲?そんなもんは全部貴様の妄想だ!家族を失ったのも、貴様が信じる神とやらに見てもらえないのも、全部貴様の自業自得だろうが!そんなに死にたいなら一人で行きやがれ!自分勝手な妄想に周りを巻き込んでんじゃねー!!そもそもてめえみたいなクズはな!天国なんか行けねー!てめえが行くの地獄なんだよ!」
話しを聞いたカーバッツは堪らず怒号を浴びせた。
「はぁ…ご理解頂けませんか、仕方有りませんね。では私がお二人を一緒に天国へ導いて差し上げましょう、そうすれば、お二人もきっと理解してくれるはずです。」
「まっぴらごめんだね、てめえは天国には行けないし俺達も天国には行かない。そしててめえが行くのは牢屋の中だ。」
「私を阻みますか?貴方出来るのですか?何でも魔獣との戦いで負けたと聞いていますが?」
「ああ…そうだな、俺はあの狐の魔獣に負けた、それは認めるよ。だが言い訳がましいようだがあの時の俺は机に向かってする仕事ばかりしててな、鈍ってたんだ。だが今はあの時とは違う、あれから毎日鍛えるようにしてるからな、思い上がった女一人抑える程度は出来るかもな。」
「強がりですね。今の私は天使、人間に何かが出来る筈が有りません。」
「そうか?やってみないと分かんねーだろ!」
カーバッツは手を翳した魔法を発動した。
「《パーフェクトフリーズ》!」
魔法が発動しイブは一瞬の内に氷に包まれた。
「おい嬢ちゃん!」
「あ!?」
「合わせろ、まずはバリアを破壊する。」
カーバッツがそう指示を出していると氷の中から光が見えてくる。光は段々と大きくなり、その光は巨大な柱となって氷を粉砕した。光に包まれながら氷の中から抜け出したイブは全くの無傷だった。
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