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第一部 転生編
第58話 魔物は近づく前に殲滅すればいいじゃない
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クレイはヴァレットの街から旅立った。
この世界では、交通機関はほとんど発達しておらず、馬車での移動が中心である。馬車の速度は歩くよりは早い(小走り程度)が、それは街中で路面の状態が良い場合であり、悪路では歩いたほうが速い事が多い。(そして、馬車の乗り心地は決して良いものではない。)
馬に乗って飛ばせば、瞬間的には馬車の数倍の速度は出せるが、それも長くは続かない。その速度で長旅を続けようとしても馬が参ってしまう。
当初、クレイは徒歩での気ままな一人旅もよいかと思っていたのだが……よく考えればここは魔物が闊歩する世界である。街は城壁で守られた城郭都市となっているのが普通であり、街の外の移動は冒険者を護衛に雇うのが普通である。
護衛は、貴族の場合は自分たちの子飼いの騎士達を使うが、商人は冒険者に依頼する。
しかし、魔物が出るとは言え、多く人が行き交う街道であればそれほど危険な魔物は出ない。(出れば冒険者に討伐依頼が出るか、騎士達に討伐命令が出て排除される。)弱い魔物なら出たとしてもクレイ一人でも問題はないのだが…
…クレイはたまたま商隊の護衛依頼を見つけたので、それを受ける事にしたのであった。
依頼者は国内の各町に支店を置いて手広く商いをしている大商店で、各街を定期的に行き来して物資の調達/販売を行っているそうだ。
そういう大きな商店の場合は専属の護衛を雇っているのだが、人手が足りない事が多く、よく冒険者を臨時で雇ったりするのであった。
ゴウ 「Fランク? 大丈夫か?」
ジロリとクレイを睨むこのゴウと言う男が、商隊の護衛冒険者のリーダーである。
クレイ 「遠距離攻撃が得意です。役に立てると思いますよ?」
ゴウ 「ふん、まぁいいだろう。だがいいか、勝手な事はするな。俺の指示には従えよ?」
トニー 「大丈夫だって、コイツの腕は俺が保証する」
ゴウ 「お前は?……ふむ、Bランクの斥候か。なるほど、役に立ちそうだな」
実はアレンのパーティ【黄金の風】は一時活動休止と言うことになったのだ。パティが子供ができたので冒険者を引退すると言い出したからである。
父親のノウズは子供のために稼ぐと張り切っていたのだが、子供のために危険な仕事はなるべくやめてくれとパティに窘められ、ヴァレットを拠点とする事にした。(ヴァレットの近くにあるペイトティクバは安定しており、他のダンジョンに比べると比較的安全と言われているのだ。)
アレンは新人冒険者の指導・育成という新しいやりがいをみつけ、他のトレーナーのリーダーとしてかなり重要な立場となっていたため、街を離れられなくなっていた。
しかしトニーだけは、それほど後進の指導にも情熱が持てず、街にとどまる理由もなかったので、冒険者を続けるべく、迷宮都市に行くというクレイに付き合う事にしたのだ。
トニーは商隊の先頭の馬車の屋根の上に登って周囲の索敵を引き受けたのだが、クレイ道連れにされてしまった。トニーが魔物を発見し、クレイが狙撃するという意図は理解していたが、陽に焼けてしまうので、クレイとしてはできたら馬車の中に居たかったのだが。
トニー 「魔物の気配がある……ほれ、五百メートル先に魔物発見だ。ゴブリン数匹。やっちゃっていいよな?」
護衛のリーダーに問いかけるトニー。
ゴウ 「本当か? うちの索敵担当は魔物の気配など感じないと言っているが?」
トニー 「信じないならいいよ。忘れてくれ」
ゴウ 「いや、信じないわけじゃないんだが…」
トニーは手を振って屋根の上に引っ込んでしまった。
それからしばらくして、索敵担当のサリーが言いにくそうにゴブリンが近づいてきている事をゴウに報告したのであった。
トニー 「言ったろ? で、やっちゃっていいか?」
ゴウ 「…この距離で攻撃できるのか? ウチの弓士・魔法士ではまだ届かん距離だが」
トニー 「大丈夫だよ、なぁクレイ?」
返事の代わりにクレイは遠距離狙撃用ライフルでゴブリンを吹き飛ばして見せた。
ゴウ 「おほう! これは、大したもんだな」
クレイ 「役に立つって言ったろう?」
その後はトニーとクレイのコンビは商隊でも重宝される事となった。五百メートルから時には1キロ先の魔物を発見し、ライフルで駆逐してしまうので、護衛達は出る幕もない。もちろんそれで文句があるはずもない。
本来は退治した魔物は埋めるなり燃やすなり処置しなければならないのだが、これだけ離れていればそれも必要ないという事だった。また、冒険者の狩りではないので、討伐の証明部位や魔物の素材を集める事もしないのであった。(よほど希少な魔物であった場合は別であるが。)
だが、比較的平らな場所は良いのが、やはり見通しが悪い場所に来るとそうは行かなくなってくる。
中でも峠超えでは商隊に緊張が走った。いつもここで襲われるのだそうだ。なるほど、両側が切り立った崖になった切り通しのような場所である。そして案の定、上から猿の魔物と鳥の魔物? に襲われたのであった。
これを、主に遠隔攻撃組が弓と魔法、そしてクレイの魔導銃による攻撃で撃退していく。接近を許してしまった場合は近接戦闘担当の護衛が戦う事になるが、今回はクレイの散弾が面白いように魔物を撃退していくので、ほとんど出番はなかったのであった。
結局、特に被害を出す事もなく商隊は次の街へと着くことができた。
雇い主である商会の番頭と護衛隊長のゴウにトニーとクレイは甚く感謝され、次の街へ向かうキャラバンの護衛も引き続き頼まれたのであった。(この商隊はこの街までで、同じ商店の別の商隊が次の街へと行くので、そちらに紹介してもらったのであった。そちらの護衛は人手が足りていたのだが、ゴウと前の番頭が次のキャラバンに熱心に推薦してくれて、参加する事となったのであった。)
そうしていくつかの街を経由して、ついに迷宮都市リジオンへと到着した。
この世界では、交通機関はほとんど発達しておらず、馬車での移動が中心である。馬車の速度は歩くよりは早い(小走り程度)が、それは街中で路面の状態が良い場合であり、悪路では歩いたほうが速い事が多い。(そして、馬車の乗り心地は決して良いものではない。)
馬に乗って飛ばせば、瞬間的には馬車の数倍の速度は出せるが、それも長くは続かない。その速度で長旅を続けようとしても馬が参ってしまう。
当初、クレイは徒歩での気ままな一人旅もよいかと思っていたのだが……よく考えればここは魔物が闊歩する世界である。街は城壁で守られた城郭都市となっているのが普通であり、街の外の移動は冒険者を護衛に雇うのが普通である。
護衛は、貴族の場合は自分たちの子飼いの騎士達を使うが、商人は冒険者に依頼する。
しかし、魔物が出るとは言え、多く人が行き交う街道であればそれほど危険な魔物は出ない。(出れば冒険者に討伐依頼が出るか、騎士達に討伐命令が出て排除される。)弱い魔物なら出たとしてもクレイ一人でも問題はないのだが…
…クレイはたまたま商隊の護衛依頼を見つけたので、それを受ける事にしたのであった。
依頼者は国内の各町に支店を置いて手広く商いをしている大商店で、各街を定期的に行き来して物資の調達/販売を行っているそうだ。
そういう大きな商店の場合は専属の護衛を雇っているのだが、人手が足りない事が多く、よく冒険者を臨時で雇ったりするのであった。
ゴウ 「Fランク? 大丈夫か?」
ジロリとクレイを睨むこのゴウと言う男が、商隊の護衛冒険者のリーダーである。
クレイ 「遠距離攻撃が得意です。役に立てると思いますよ?」
ゴウ 「ふん、まぁいいだろう。だがいいか、勝手な事はするな。俺の指示には従えよ?」
トニー 「大丈夫だって、コイツの腕は俺が保証する」
ゴウ 「お前は?……ふむ、Bランクの斥候か。なるほど、役に立ちそうだな」
実はアレンのパーティ【黄金の風】は一時活動休止と言うことになったのだ。パティが子供ができたので冒険者を引退すると言い出したからである。
父親のノウズは子供のために稼ぐと張り切っていたのだが、子供のために危険な仕事はなるべくやめてくれとパティに窘められ、ヴァレットを拠点とする事にした。(ヴァレットの近くにあるペイトティクバは安定しており、他のダンジョンに比べると比較的安全と言われているのだ。)
アレンは新人冒険者の指導・育成という新しいやりがいをみつけ、他のトレーナーのリーダーとしてかなり重要な立場となっていたため、街を離れられなくなっていた。
しかしトニーだけは、それほど後進の指導にも情熱が持てず、街にとどまる理由もなかったので、冒険者を続けるべく、迷宮都市に行くというクレイに付き合う事にしたのだ。
トニーは商隊の先頭の馬車の屋根の上に登って周囲の索敵を引き受けたのだが、クレイ道連れにされてしまった。トニーが魔物を発見し、クレイが狙撃するという意図は理解していたが、陽に焼けてしまうので、クレイとしてはできたら馬車の中に居たかったのだが。
トニー 「魔物の気配がある……ほれ、五百メートル先に魔物発見だ。ゴブリン数匹。やっちゃっていいよな?」
護衛のリーダーに問いかけるトニー。
ゴウ 「本当か? うちの索敵担当は魔物の気配など感じないと言っているが?」
トニー 「信じないならいいよ。忘れてくれ」
ゴウ 「いや、信じないわけじゃないんだが…」
トニーは手を振って屋根の上に引っ込んでしまった。
それからしばらくして、索敵担当のサリーが言いにくそうにゴブリンが近づいてきている事をゴウに報告したのであった。
トニー 「言ったろ? で、やっちゃっていいか?」
ゴウ 「…この距離で攻撃できるのか? ウチの弓士・魔法士ではまだ届かん距離だが」
トニー 「大丈夫だよ、なぁクレイ?」
返事の代わりにクレイは遠距離狙撃用ライフルでゴブリンを吹き飛ばして見せた。
ゴウ 「おほう! これは、大したもんだな」
クレイ 「役に立つって言ったろう?」
その後はトニーとクレイのコンビは商隊でも重宝される事となった。五百メートルから時には1キロ先の魔物を発見し、ライフルで駆逐してしまうので、護衛達は出る幕もない。もちろんそれで文句があるはずもない。
本来は退治した魔物は埋めるなり燃やすなり処置しなければならないのだが、これだけ離れていればそれも必要ないという事だった。また、冒険者の狩りではないので、討伐の証明部位や魔物の素材を集める事もしないのであった。(よほど希少な魔物であった場合は別であるが。)
だが、比較的平らな場所は良いのが、やはり見通しが悪い場所に来るとそうは行かなくなってくる。
中でも峠超えでは商隊に緊張が走った。いつもここで襲われるのだそうだ。なるほど、両側が切り立った崖になった切り通しのような場所である。そして案の定、上から猿の魔物と鳥の魔物? に襲われたのであった。
これを、主に遠隔攻撃組が弓と魔法、そしてクレイの魔導銃による攻撃で撃退していく。接近を許してしまった場合は近接戦闘担当の護衛が戦う事になるが、今回はクレイの散弾が面白いように魔物を撃退していくので、ほとんど出番はなかったのであった。
結局、特に被害を出す事もなく商隊は次の街へと着くことができた。
雇い主である商会の番頭と護衛隊長のゴウにトニーとクレイは甚く感謝され、次の街へ向かうキャラバンの護衛も引き続き頼まれたのであった。(この商隊はこの街までで、同じ商店の別の商隊が次の街へと行くので、そちらに紹介してもらったのであった。そちらの護衛は人手が足りていたのだが、ゴウと前の番頭が次のキャラバンに熱心に推薦してくれて、参加する事となったのであった。)
そうしていくつかの街を経由して、ついに迷宮都市リジオンへと到着した。
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