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第一部 転生編

第53話 証拠を出せよ

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ガミオラ 「言いがかりはよせよ! 証拠を出せよ! ダンジョン内で見てもいない事の証拠があるならな」

アレン 「だが被害者である子供達がそう言っている」

ガミオラ 「浮浪者のガキなんて嘘つくに決まってんだろ? 大方、コボルトに負けて悔し紛れに嘘ついたんだろうよ」

受付嬢 「子供達は、コボルトと戦って傷ついていたんですよね? そこに通りかかったと?」

アレン 「ああそうだが…」

受付嬢 「だとすると、その子達がコボルトにやられたのか、冒険者にやられたのかは確認しようがないですねぇ」

アレン 「だが、本人たちがそう言ってる」

受付嬢 「…その子達はどこですか?」

アレン 「いや、事を荒立てたくないから報告しなくていいと…」

受付嬢 「そうですか……それじゃぁどうしようもないですね……」

パティ 「でも! 冒険者が一般人に暴行したとなると重罪よね?」

受付嬢 「そうなんですが、その子達は冒険者達の手伝いという名目で日常的にダンジョンに潜っていたという事ですから、准冒険者として認められると思います。ので、ある程度は自己責任という事になってしまうかも知れませんね…」

クレイ 「正式に裁判して、隷属の首輪でコイツラに証言させれば真実は分かるんじゃないのか?」

ガミオラ 「なっ! こんな事程度で裁判するのかよ!!」

受付嬢 「それも難しいかと。基本、冒険者同士のいざこざは冒険者ギルドの内部で決着をつけるという事になっていますので。殺人となれば話は別ですが、今回は誰も死んでいないようですし…」

受付嬢 「それに、正式裁判となれば、お金も時間も掛かりますが、子供達には払えないですよね?」

アレン 「なら、その金は俺達が出してもいい」

ガミオラ 「あんなガキ共にそこまで肩入れすんのかよ? だいたい浮浪者のガキが殴られたくらいで領主が動くわけねぇだろうが」

※街ごとの法律の運用はそこの領主に任されている。そたのめ、治安維持に関わらない内容では、平民同士の犯罪を積極的に取り締まろうとはしない領主も多いのである。(ダンジョンの中での冒険者同士の喧嘩やイザコザなど、ギルドで解決しろという領主が多いのである。)

受付嬢 「この街の領主様は子供達のケアにも大変気をつかっていらっしゃいますので、裁判を受け付けてくれる可能性は高いと思いますが」

ガミオラ 「!?」

トニー 「ここにいるクレイは領主様の息子だしな! そのクレイが頼めば…!」

クレイ 「おい!」

ガミオラ 「?!」

受付嬢 「はい?」

クレイ 「俺はただの平民だよ、ファミリーネームはもう捨てたんだ」

アレン 「トニー、余計な事を言うんじゃねぇといつも言ってるだろうが」

トニー 「あ、ごめん……」

受付嬢 (貴族だったんですね…)

クレイは受付嬢の自分を見る目つきが若干変わったような気がして寒気がした。

受付嬢 「……ただ、当の被害者である子供達が訴える気がないのでは、難しいかも知れませんね」

受付嬢 「それに、その子達は、孤児院の子ではないんですよね? だとすると、保護されるのを嫌って、正式な手続きは嫌がるのではないですか?」

アレン 「ううむ、それは確かに…」

ガミオラ 「けっ! 分かりゃあいんだよ! 行くぞ!」

ガミオラは仲間二人を連れ、ノウズを押しのけて逃げるように出ていった。

アレン 「……なぁ、その子達の事なんだが…」

受付嬢 「はい?」

アレン 「その子達は、もう十分冒険者としてやっていける実力がある。今回も怪我をしながらもコボルト達を撃退していた。まだ成人の年齢ではないんだが、早めに冒険者として登録させてやる事はできないか?」

受付嬢 「そうですね、それは私には即答できませんのでギルドマスターに確認してみますが…

…多分可能だと思います、過去にそういう事例はあったはず。そうなれば、冒険者としてギルドも便宜を図ってあげる事もできるようになりますしね」

アレン 「ああ、頼むよ。今度その子達を連れてくる」

だが、その後、ダンジョン入口の村から、パピ達の姿は消えてしまったのであった。



  * * * *



ボン(ガミオラの子分1) 「おいガミオラ、どうするんだよ? どこへ行くんだ?」

ガミオラ 「ダンジョンに潜る」

ジザ(ガミオラの子分2) 「ええ? さっき出てきたばっかりなのに?」

ガミオラ 「正式裁判はマズイ、隷属の首輪で証言させられたら嘘はつけねぇ」

ボン 「だけど、訴えても無理だろうって…」

ガミオラ 「領主の息子が出てくるとなったらどうなるか分からん。どうせ、リジオンに行く途中で立ち寄っただけの街だ。ダンジョンの中にしばらく潜伏したら、そのまま次の街へ向かうぞ」

ジザ 「ちぇ、少しゆっくり休みたかったんだがな」

ガミオラ 「あの事件でマジックバッグを失くしちまったからな。代わりのモノを手に入れねぇと、昔のようには稼げねぇ。それにはリジオンに行くしかねぇんだ。マジックバッグさえ手に入れたら、また昔のように面白おかしくやれるようになるさ」

ボン 「シリスの奴、死ぬ前にバッグくらい置いてけばよかったのに」

ジザ 「使用者制限がかかってるから、バッグだけあったって意味ねぇだろ」

ボン 「そっか」

ガミオラ 「それもこれもみんなダンジョンを彷徨いてるクソガキどものせいだ…あの、パピとかいったか? アイツラも今度も見かけたら本当にぶっ殺してやる」

ボン 「なぁ兄貴、アイツラはモンスタートレイン※やったガキどもとは関係ないだろ? なんでガミオラは怒ってるんだ?」

(※モンスタートレインとは、強いモンスターに追われた者が、そのまま他の者にモンスターを押し付けてしまう事である。)

ジザ 「八つ当たりだよ、八つ当たり」

ボン 「そっか、八つ当たりか、じゃぁ仕方ないな」


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