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第一部 転生編
第42話 変態か!
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ガリアン 「ああ、いやいや、ちょっと待て。
私は奴隷を盗まれたとしか聞いていないのだが? 子爵の娘??? まさかお前は、貴族の令嬢を奴隷にしたというのか?」
コルニク 「あ、いや、その…、子爵の娘と言っても庶子でして…ラーズ子爵とは婚姻関係のない平民の連れ子でして…その、これを見て下さい! 子爵の正妻であるイザベラ様から買い取ってくれと頼まれたのです、この通り、契約書も御座います!
魔力紋を見ていただけば、これがイザベラ殿の署名である事は分かるはず!」
ブランド 「そんなものは無効だ! ガリアン伯爵、それはゲオルク―――ラーズ子爵が不在の間に後妻のイザベラが勝手にやった事なのです。正当な取引とは言えない!」
ブランド 「そもそもケイトはゲオルクの子だ、連れ子などではない。イザベラだって、ゲオルクが望んで結婚したわけではない。おそらく前妻の子が邪魔になって、当主不在の間に追い出そうとしたのでしょう」
ガリアン 「おお、よくある話だな?! 政略結婚の後妻が前妻の子を虐待するという…」
コルニク 「ですが、イザベラ様は現在ラーズ子爵の正式な夫人です。ラーズ子爵が不在ならば、夫人がその代行として正式に認められるのではないですか?」
コルニク 「ラーズ子爵家の主の代行者が交わした正式の契約です。国が定めた法律に基づいた契約を、伯爵と言えども反故にする事はできないのではないですか?」
ガリアン 「それは確かにそうだが…。しかし、貴族の子を勝手に奴隷として売り飛ばすというのは…さすがに少々行き過ぎではないか?」
ブランド 「そうです! だから契約を見直すため、ゲオルクが戻ってくるまで令嬢を預かっているのです」
コルニク 「…ヴァレット子爵閣下。とうとう契約を知っていて故意に令嬢を匿った事を認めましたな?」
ブランドはしまったという顔をする。
コルニク 「道義的に議論の余地はあるのかも知れませんが、それは私には関係ないこと。これは法律的には正式な契約である事には変わりないはず。国の法律に従えないというのは、国家に対する反逆と言えるのではないですか?」
コルニク 「契約に不備があったというのであれば、後でラーズ子爵が法律に則って手続きをすればよい事でしょう。それまでは契約は有効、奴隷の所有権は我々にあるはずです」
ブランド 「だからといって、貴族の令嬢を、当主の許可なく奴隷商の手に渡す事などできん。後で開放されるにしても、その間どんな扱いを受けるか信用できんからな」
コルニク 「心外ですな。まぁ、今回は、事情が事情ですから、それなりの待遇をいたしますよ、ええ、もちろん…」
ブランド 「よく言う。私が保護しなければ、そのまま奴隷として扱うつもりだったのだろうが?」
コルニク 「心外な、いくら子爵とは言え、言葉が過ぎるのでは? それより、奴隷を盗んだ罪でヴァレット閣下も罪に問われるのではないですか? そこんところはどうお考えで?」
ブランド 「…私に非がある部分についてはもちろん償うさ。だが、貴様もこの屋敷を襲った件で罪に問われる事になるのを忘れるな」
コルニク 「それは証拠がない」
ブランド 「正式裁判で改めて証言させればいいだけだ」
コルニク 「そううまく行きますかな?」
ガリアン 「まぁ待て! 一つ確認なのだがコルニク? お前は確か、奴隷に隷属の首輪を着けたと言っていなかったか? だが、ラーズ子爵の令嬢は二人とも、そのようなモノはつけていなかったぞ? お前が引き取ったのは本当にラーズ子爵の娘なのか? 人違いなのではないか?」
コルニク 「そんなはずはありません! 隷属の首輪を上手く隠したのでしょう、ですがその奴隷をこの場に連れてきてください、そうすれば分かる事! 隷属の契約は既に完了していますから、私の命令が届けば逆らえない。それが何よりの証拠となるでしょう」
やれやれと肩を竦めるブランド。
ほどなくして、ヴィオレとケイトが執事に連れられてやってきた。
コルニク 「やっと会えたな。こっちへ来い!」
だが、ケイトはきょとんとした顔で命令に従う気配はない。
コルニク 「馬鹿な!」
慌ててコルニクがケイトに近づき襟を掴んで開くが、そこにあるはずの首輪が見当たらない。
コルニクは慌ててケイトの頸や肩をまさぐる。さらに、襟をもっと大き広げようとしたので、見かねたガリアンがその手を掴んで引き剥がした。
ガリアン 「いい加減にしろ! 幼いとはいえ令嬢の頸や肩をベタベタ触って、変態か!」
コルニク 「いや、しかし、確かに… そうか、首輪は外されたのです、きっと!」
ガリアン 「隷属の首輪は、嵌めた者しか外す事はできないと聞いたが? 違うのか?」
コルニク 「それは…そうです…が……」
ガリアン 「もし無理に壊そうとすると装着者が傷ついてしまうとも? だが、見たところ令嬢に特に怪我や不調があるようにも見えないが」
コルニク 「それは…そうなのですが…。ヴァレット子爵は先程、屋敷を襲撃した犯人に隷属の…首輪を……」
ブランドは、捕縛した襲撃犯に隷属の首輪を着けて吐かせたと言っていた。だが、その男にはコルニクの隷属の首輪が嵌められていたはず。という事は、何らかの方法でブランドがコルニクの嵌めた首輪を外したという事になる。のだが……
それを認めてしまうと、ブランドが首輪を外せる事の証明はできるが、自分がヴァレット子爵邸を襲うよう指示したことも認める事になってしまう事に気づき、コルニクは言い淀んでしまったのであった。
ガリアン 「そういえば、先程、宿をこの街の衛兵で囲んで、この男を逮捕しようとしていたな? 何があったのだ?」
ブランド 「はい、実は昨晩、この屋敷に賊が侵入しまして。一人襲撃犯を捕らえたのですが、その者がコルニクの命令でやったと証言したのです」
ガリアン 「なんだと?」
コルニク 「違います! その賊は、ヴァレット子爵に隷属の首輪を着けられて嘘の証言をさせられたのです」
ガリアン 「……ヴァレット子爵がなぜそんな事をする必要がある?」
コルニク 「それは…ラーズ子爵の令嬢を庇って、私を排除しようとしたのでしょう」
ブランド 「私の屋敷が襲われたのは事実だ。それがなければ逮捕などしようとはしなかったさ」
ガリアン 「なるほど、どうやらこの男を逮捕しなければならんようだな?」
コルニク 「あなたは! ヴァレット子爵を逮捕しに来たのではないのですか?」
ガリアン 「うーん、どうもお前の言うことは信用できない印象でなぁ。令嬢は居たが、首輪はなかったしな。貴族の令嬢を奴隷として売るというのもちょっと信じがたい」
コルニク 「契約書を見せたでしょう? 私は嘘など言ってません」
ガリアン 「だが、隷属の首輪は外せないと自分で言っていただろう? だが、今度は外されたと言ってみたり…どうも言動が不安定で信用できん」
コルニク 「そんな…」
ガリアン 「それに、仮に契約書が本物で、令嬢の頸に首輪があったとしてもだ、貴族の令嬢を、貴族家の当主の了解なしに奴隷として売り飛ばすというのは、やはりちょっとおかしいと私は思うぞ?
私は自分の心象だけで捜査と仮処分を与える権限がある。というわけで、ヴァレット子爵の主張を認め、ラーズ家当主が戻るまでの間、ヴァレット家にラーズ家令嬢が保護する事を仮処分として認める」
コルニク 「そんな!」
ガリアン 「いいじゃないか、正式な裁判後に、お前の主張が認められれば、奴隷はお前のものになるのだから。
まぁそれとは別に、お前がヴァレット子爵家を襲ったという件についての裁判があるだろうがな」
コルニク 「ヴァレット子爵が使ったのは私的な隷属の首輪です、そのようなモノを使った証言では、逮捕する根拠には…」
ガリアン 「そうか? ここはヴァレット領だ、領内の犯罪については領主が逮捕・裁判・処罰の権限を持っていると考える。
―さぁ、邪魔して悪かったな、ヴァレット子爵。逮捕劇の続きをやってくれていいぞ」
コルニク 「っ、拒否します! この街では公正な裁判など受けられない! 王都に裁判を移管する事を私は希望します!」
ガリアン 「…そう来たか」
コルニク 「これは正当な権利として認められるはず。法律に詳しい王宮査問官ならご存知ですよね?」
ガリアン 「ふ~む、誰に入れ知恵されたのか知らんが。まぁいいだろう。では王都で裁判をするがいい。隷属の首輪を使って裁判するのだから、結果はどこであっても一緒だ。ヴァレット子爵もそれで良いな?」
ブランド 「もちろん構いません」
私は奴隷を盗まれたとしか聞いていないのだが? 子爵の娘??? まさかお前は、貴族の令嬢を奴隷にしたというのか?」
コルニク 「あ、いや、その…、子爵の娘と言っても庶子でして…ラーズ子爵とは婚姻関係のない平民の連れ子でして…その、これを見て下さい! 子爵の正妻であるイザベラ様から買い取ってくれと頼まれたのです、この通り、契約書も御座います!
魔力紋を見ていただけば、これがイザベラ殿の署名である事は分かるはず!」
ブランド 「そんなものは無効だ! ガリアン伯爵、それはゲオルク―――ラーズ子爵が不在の間に後妻のイザベラが勝手にやった事なのです。正当な取引とは言えない!」
ブランド 「そもそもケイトはゲオルクの子だ、連れ子などではない。イザベラだって、ゲオルクが望んで結婚したわけではない。おそらく前妻の子が邪魔になって、当主不在の間に追い出そうとしたのでしょう」
ガリアン 「おお、よくある話だな?! 政略結婚の後妻が前妻の子を虐待するという…」
コルニク 「ですが、イザベラ様は現在ラーズ子爵の正式な夫人です。ラーズ子爵が不在ならば、夫人がその代行として正式に認められるのではないですか?」
コルニク 「ラーズ子爵家の主の代行者が交わした正式の契約です。国が定めた法律に基づいた契約を、伯爵と言えども反故にする事はできないのではないですか?」
ガリアン 「それは確かにそうだが…。しかし、貴族の子を勝手に奴隷として売り飛ばすというのは…さすがに少々行き過ぎではないか?」
ブランド 「そうです! だから契約を見直すため、ゲオルクが戻ってくるまで令嬢を預かっているのです」
コルニク 「…ヴァレット子爵閣下。とうとう契約を知っていて故意に令嬢を匿った事を認めましたな?」
ブランドはしまったという顔をする。
コルニク 「道義的に議論の余地はあるのかも知れませんが、それは私には関係ないこと。これは法律的には正式な契約である事には変わりないはず。国の法律に従えないというのは、国家に対する反逆と言えるのではないですか?」
コルニク 「契約に不備があったというのであれば、後でラーズ子爵が法律に則って手続きをすればよい事でしょう。それまでは契約は有効、奴隷の所有権は我々にあるはずです」
ブランド 「だからといって、貴族の令嬢を、当主の許可なく奴隷商の手に渡す事などできん。後で開放されるにしても、その間どんな扱いを受けるか信用できんからな」
コルニク 「心外ですな。まぁ、今回は、事情が事情ですから、それなりの待遇をいたしますよ、ええ、もちろん…」
ブランド 「よく言う。私が保護しなければ、そのまま奴隷として扱うつもりだったのだろうが?」
コルニク 「心外な、いくら子爵とは言え、言葉が過ぎるのでは? それより、奴隷を盗んだ罪でヴァレット閣下も罪に問われるのではないですか? そこんところはどうお考えで?」
ブランド 「…私に非がある部分についてはもちろん償うさ。だが、貴様もこの屋敷を襲った件で罪に問われる事になるのを忘れるな」
コルニク 「それは証拠がない」
ブランド 「正式裁判で改めて証言させればいいだけだ」
コルニク 「そううまく行きますかな?」
ガリアン 「まぁ待て! 一つ確認なのだがコルニク? お前は確か、奴隷に隷属の首輪を着けたと言っていなかったか? だが、ラーズ子爵の令嬢は二人とも、そのようなモノはつけていなかったぞ? お前が引き取ったのは本当にラーズ子爵の娘なのか? 人違いなのではないか?」
コルニク 「そんなはずはありません! 隷属の首輪を上手く隠したのでしょう、ですがその奴隷をこの場に連れてきてください、そうすれば分かる事! 隷属の契約は既に完了していますから、私の命令が届けば逆らえない。それが何よりの証拠となるでしょう」
やれやれと肩を竦めるブランド。
ほどなくして、ヴィオレとケイトが執事に連れられてやってきた。
コルニク 「やっと会えたな。こっちへ来い!」
だが、ケイトはきょとんとした顔で命令に従う気配はない。
コルニク 「馬鹿な!」
慌ててコルニクがケイトに近づき襟を掴んで開くが、そこにあるはずの首輪が見当たらない。
コルニクは慌ててケイトの頸や肩をまさぐる。さらに、襟をもっと大き広げようとしたので、見かねたガリアンがその手を掴んで引き剥がした。
ガリアン 「いい加減にしろ! 幼いとはいえ令嬢の頸や肩をベタベタ触って、変態か!」
コルニク 「いや、しかし、確かに… そうか、首輪は外されたのです、きっと!」
ガリアン 「隷属の首輪は、嵌めた者しか外す事はできないと聞いたが? 違うのか?」
コルニク 「それは…そうです…が……」
ガリアン 「もし無理に壊そうとすると装着者が傷ついてしまうとも? だが、見たところ令嬢に特に怪我や不調があるようにも見えないが」
コルニク 「それは…そうなのですが…。ヴァレット子爵は先程、屋敷を襲撃した犯人に隷属の…首輪を……」
ブランドは、捕縛した襲撃犯に隷属の首輪を着けて吐かせたと言っていた。だが、その男にはコルニクの隷属の首輪が嵌められていたはず。という事は、何らかの方法でブランドがコルニクの嵌めた首輪を外したという事になる。のだが……
それを認めてしまうと、ブランドが首輪を外せる事の証明はできるが、自分がヴァレット子爵邸を襲うよう指示したことも認める事になってしまう事に気づき、コルニクは言い淀んでしまったのであった。
ガリアン 「そういえば、先程、宿をこの街の衛兵で囲んで、この男を逮捕しようとしていたな? 何があったのだ?」
ブランド 「はい、実は昨晩、この屋敷に賊が侵入しまして。一人襲撃犯を捕らえたのですが、その者がコルニクの命令でやったと証言したのです」
ガリアン 「なんだと?」
コルニク 「違います! その賊は、ヴァレット子爵に隷属の首輪を着けられて嘘の証言をさせられたのです」
ガリアン 「……ヴァレット子爵がなぜそんな事をする必要がある?」
コルニク 「それは…ラーズ子爵の令嬢を庇って、私を排除しようとしたのでしょう」
ブランド 「私の屋敷が襲われたのは事実だ。それがなければ逮捕などしようとはしなかったさ」
ガリアン 「なるほど、どうやらこの男を逮捕しなければならんようだな?」
コルニク 「あなたは! ヴァレット子爵を逮捕しに来たのではないのですか?」
ガリアン 「うーん、どうもお前の言うことは信用できない印象でなぁ。令嬢は居たが、首輪はなかったしな。貴族の令嬢を奴隷として売るというのもちょっと信じがたい」
コルニク 「契約書を見せたでしょう? 私は嘘など言ってません」
ガリアン 「だが、隷属の首輪は外せないと自分で言っていただろう? だが、今度は外されたと言ってみたり…どうも言動が不安定で信用できん」
コルニク 「そんな…」
ガリアン 「それに、仮に契約書が本物で、令嬢の頸に首輪があったとしてもだ、貴族の令嬢を、貴族家の当主の了解なしに奴隷として売り飛ばすというのは、やはりちょっとおかしいと私は思うぞ?
私は自分の心象だけで捜査と仮処分を与える権限がある。というわけで、ヴァレット子爵の主張を認め、ラーズ家当主が戻るまでの間、ヴァレット家にラーズ家令嬢が保護する事を仮処分として認める」
コルニク 「そんな!」
ガリアン 「いいじゃないか、正式な裁判後に、お前の主張が認められれば、奴隷はお前のものになるのだから。
まぁそれとは別に、お前がヴァレット子爵家を襲ったという件についての裁判があるだろうがな」
コルニク 「ヴァレット子爵が使ったのは私的な隷属の首輪です、そのようなモノを使った証言では、逮捕する根拠には…」
ガリアン 「そうか? ここはヴァレット領だ、領内の犯罪については領主が逮捕・裁判・処罰の権限を持っていると考える。
―さぁ、邪魔して悪かったな、ヴァレット子爵。逮捕劇の続きをやってくれていいぞ」
コルニク 「っ、拒否します! この街では公正な裁判など受けられない! 王都に裁判を移管する事を私は希望します!」
ガリアン 「…そう来たか」
コルニク 「これは正当な権利として認められるはず。法律に詳しい王宮査問官ならご存知ですよね?」
ガリアン 「ふ~む、誰に入れ知恵されたのか知らんが。まぁいいだろう。では王都で裁判をするがいい。隷属の首輪を使って裁判するのだから、結果はどこであっても一緒だ。ヴァレット子爵もそれで良いな?」
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