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第五章 コジローの恋

第96話 モニカ救出2

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だが、ちょっと待てとコジローは思う。

ダンジョンの最奥の宝箱から出てきたものが、玩具のハンマーであるはずがない。(そもそも、この世界にはプラスチックは存在していない。)

もしかして、と思ってコジローは脳内百科辞典から情報を探ってみると、あった・・・

『別世界からの来た古代の魔道師が作った武器』

その別世界というのは、多分、地球の日本ですよね?

しかも、古代の、となっているのはおかしい。ピコピコハンマーが造られたのは、二十世紀以降なのではないか?

色々とおかしな事が多く混乱したコジローだったが、この武器の効果を知って、再度驚いた。

高ランクモンスターの「咆哮」と同じような効果を封じ込めてあり、これで頭を叩かれた相手は脳に衝撃を直接叩き込まれ、瞬時に意識を失う。相手を一切怪我させずに気絶させる事ができる。

これは、コジローがほしかった、相手を傷つけずに倒す事ができる武器であった。

半信半疑であったコジローは、ダンジョンから転移で外に出ず、ダンジョンの中を歩いてモンスターにこれを試して見ることにした。

結論から言うと、ダンジョン内の魔物にはすべて有効であった。

ゴブリンなどの人型の魔物も、頭をピコッと叩くとバタッと意識を失って倒れる。獣型の魔獣も、それどころか、パペットマンやゴーレムですら有効であった。ただし、パペットマンやゴーレムなどの無機物系の魔物は一瞬動きを停止するものの、しばらくするとまた動き出すのであるが。時間にしておよそ1~2分程度、OSが強制再起動しているような感じなのかも知れないとコジローは思った。生物系の魔物も、時間が立てば意識を取り戻すのであるが、ゴーレムほど早くはなかった。


――――――――――――――――――――


モーボヤのダンジョンの核は、ダンジョンの拡張を失敗してしまい、長い間、成長を停止していた。

地下三階を作った際に、次のフロアへ進むギミックに凝りすぎて、不具合が生じていたのである。結果、その先に誰も進んで来なくなってしまった。

ダンジョンは、人が来なければ意味がない。

なぜ自分がこの世に誕生したのかは分からないが、ダンジョンの核としてこの世に生み出されたからには、人を呼び込み、手こずらせるのが使命であると、本能的に理解していた。

だが、人間達が一人も地下四階に入ってこないため、その先を開拓する意味がなくなっていたのだ。

だが、これからは違う。地下四階に入ってきた人間が居た。そして、自分(核)が発見されてしまった。だが、その人間は自分を殺さずに去っていった。これは、もっとダンジョンを拡張しろという事なのだろう。人間の要望通り、ダンジョンを拡張してやろうではないか・・・

核は、自らを隠すため、さらに深い階層へと沈んでいくのであった。

その日から、モーボヤのダンジョンは再び成長を始めた。



新しい階層が発見されたという知らせがコジロー達からもたらされた事で、その後、人間の世界も少しにぎやかになる。

モーボヤの村には、新しい階層に挑む冒険者が集まり、活気を見せるようになっていくのである。

ダンジョンは地下四階はおろか、五階、六階、七階と高速で深さを増していく。あまり危険な魔物が出てくるようなダンジョンは破壊してしまう必要があるが、このダンジョンは周辺都市からはある程度離れており、出てくる魔獣も浅い階層では相変わらず初心者向けの魔物しか出てこないので問題ないとされた。

ダンジョンは広がり続け、やがて発展したモーボヤの村は迷宮都市の仲間入りをするのであるが、それはまだ大分先の話である。


――――――――――――


帰りの馬車の中、何故かモニカとジョニーの仲が妙に良くなっていた。

ダンジョン最下層で襲われていたモニカを救出したのはコジローなのだが、実はモニカはジョニーが助けれくれたと勘違いしていたのである。

そして、その勘違いにコジローは気づいていないのであった・・・。



コジローの転移を使えば村には一瞬で帰れるのであるが、あくまでダンジョン冒険の勉強・体験という意味で、帰りも馬車である。

その道中で森の中でコジロー達は、馬車が魔物に襲われているのを発見した。


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