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第一章 始まりの章

第11話 魔狼活躍

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大量のゴブリンとサンダーベアを倒して一息つけるかと言うタイミングで、新たな敵が現れた、それも大群・強敵である。

電撃柵は破壊された状態であり、魔獣の侵入を防ぐ術はない。

まさに絶対絶命の状況である。

コジローは転移を使って全員避難すべき迷ったが、その時、マロが吠えた。



先程ゴブリンの動きを止めた 「咆哮」 ではなく、遠吠えである。そして、すぐに、その遠吠えに応えるように、森の中から遠吠えがいくつも帰ってくる。

すぐに、たくさんの魔狼が森から飛び出してきた。

魔狼達は一斉にコボルト達に襲いかかる。咆哮、サンダーブラスト、ファイアーアロー、ウィンドカッター、次々と魔狼達から攻魔法撃が放たれ、あれよあれよとコボルトは殲滅されていく。

さらに、ひときわ大きな白い魔狼が森から飛び出して来て、サンダーベアに向かっている。マロの母だった。

まっすぐ自分に向かってくる脅威(フェンリル)に気づき、慌てて雷撃を放つサンダーベアであったが、マロの母狼もまた、同時に雷撃をを放っていた。

先程と同じ展開だが・・・

大人のフェンリルの攻撃力は、子供のマロとは桁が違った。

母狼(フェンリル)とサンダーべアの中間地点でぶつかりあった雷撃は、しかし先程と違い、易々と雷熊のそれを霧散させ、なお衰えることなくそのまま標的に直撃、サンダーベアを爆散させてしまった。



突然の大群の襲撃であったが、魔狼達の攻撃であっという間に殲滅は完了してしまった。それ以上の襲撃はないようだった。

母に挨拶するマロ。母狼はマロを何度か舐めたあと、また森へと帰っていった。



「これからは、武器箱の中にもポーションをいれておいたほうがよいな。」

マドリーが肩をグルグル回しながら言う。

ネリーが家の中から取ってきたポーションを肩にかけてもらい、矢傷を受けたマドリーの肩はもう完治していた。

地球ならばそう簡単に怪我は治らない、さすが魔法の世界だとコジローは感心する。

マドリーは、ポーションが武器箱の中にあれば、怪我を治療して、すぐに戦線復帰できたはずだったと反省していたわけである。



「しかし、君たち、凄いな。コジロー、さっきのは転移魔法か?」

マドリーが言う。

「マロちゃん、ありがとーねぇ」

ネリーは再び子犬に戻ったマロを撫で回していた。

「その子魔狼、ただの魔狼じゃないな、フェンリルじゃないか・・・」

とマドリー。

よく見れば、白い美しい毛並みと神々しい雰囲気がある、フェンリルの子供で間違いないとマドリーは言う。

「魔狼達はディザスターウルフだったが、リーダーの白い狼はフェンリルだったな。マロのお母さん?なるほど。ありがとな~」

マドリーもマロを撫でる。

しかし、電撃柵が壊されてしまったのは困った。マドリー達では直すことはできないのである。早急にゼフトに直して貰う必要がある。

ネリーが家に入って行くと、数分も立たないうちに地面に魔法陣が浮かび、ローブを着た骸骨が現れた。どうやら、コジローの渡されたオーブのペンダントと同じく、マドリー達もゼフトと連絡する手段があるようだ。



魔法による結界を使用した防御柵は、ゼフトによってあっという間に直ってしまった。

しかも今度は、電撃が効かない魔物に破壊されてしまった事、矢を防げなかった事を考慮し、「電撃柵」はやめ、空間魔法を使用することにした。空間を捻じ曲げて、反対の空間に繋げてしまったのである。

内側から外に出る場合は何も影響を受けない。しかし、柵の外側から入ろうとすると、そのまま反対側の柵の外へと抜けてしまうのだ。これならば、いかなる攻撃も、魔法も、すべて素通りしてしまうというわけだ。

出る場合は柵を超えても出られるが、一度完全に出てしまうと、再び柵の中に戻るには門を通るしかないとの事。逆に言えば、門から入ってくる外敵を警戒する必要はあるわけだが・・・

それについては、ゼフトは門番を用意した。

見ると、門の両脇に人形?が立っていた。金属製のボディ、四角い顔に目鼻口がついている。
ゴーレムである。ゼフトはこんな魔法も使えるようだ。

コジローが門を出て、再び入ろうとすると、ゴーレムは持っていた杖を交差し、行く手を阻んだ。

『その者はコジロー、通して良い。』

ゼフトが言うと、ゴーレムは道をあけてくれた。

なるほど、登録型のセキュリティというわけだ、相変わらず知的なセキュリティだ。

とりあえず、マドリーとネリー、コジローは覚えてもらった。

マドリーの娘は部屋の中で臥せっているので、出られるようになったら覚えてもらえば良いだろう。

来客用に、鐘でも吊り下げておいて鳴らしてもらうようにしようかとネリーが言った。



正直、そこまで厳重なセキュリティは必要ないだろうとゼフトも思っていたし、実際、これまでは必要なかった。そもそも、柵に到達する以前に、家の周辺には魔物が嫌うような広範囲結界も張ってあるのだ。普通であれば、この家の周囲に魔獣は近づいては来ないはずだった。

今回のケースはかなり異常な事態なのである。

異常な大群、しかも脇目も振らずまっすぐ家に向かってきた事、魔獣同士では一切争っていなかった事を考えると、何かおかしい。

ゼフトは言った。

『どうも、人為的に起こされたようじゃの。』


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